疾患・特集

免疫がないと発症率はほぼ100%!麻疹(はしか)を防ぐには?

麻疹(はしか)は感染力が強く、発熱、咳、鼻水や発疹などの症状が現れます。7~10日で治まりますが、妊婦の場合は流産や早産が起きることもあります。空気感染するため、確実に予防するには、子供も成人も予防接種を2回受けることが必要です。予防接種を受けられる医療施設は、厚生労働省検疫所のウェブサイトで検索できます。

免疫のない人が感染すると、発症する確率はほぼ100%!

2016年の8月から9月にかけて、突如として国内で流行した麻疹(はしか)。例年、麻疹の流行は、春から初夏にかけて、0~1歳の子供を中心に起きます。それに対して、2016年の流行で中心となったのは成人で、9月18日の時点で患者数が130人を超えました。これは、前年2015年の年間患者数の3倍以上に相当します。流行の経緯として、関西の空港を中心に集団感染が起き、感染者の移動に伴い関東でも感染が広まったと報じられています。

麻疹は、麻疹ウイルスに感染して引き起こされる感染症です。その感染力は非常に強く、免疫をもたない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。一度発症すれば免疫ができ、その後は一生かかることがありません。

発熱や発疹が主な症状だが、妊婦は流産や早産のリスクも…

麻疹は、ウイルスに感染してからの10~12日の間は、症状は特に現れません。潜伏期間と呼ばれるこの無症状の期間を過ぎると、発熱、咳、鼻水、のどの痛み、目の充血などの風邪に似た症状が現れ、口の中に1mmほどの小さな発疹ができます。熱は2~3日続いた後にいったん下がるものの、再び上がり39度以上の高熱となり、それと同時に全身に赤い発疹が現れます。麻疹にかかると、合併症として肺炎や中耳炎などほかの病気にも同時にかかりやすく、脳炎や肺炎による死亡が患者1,000人に1人の割合でまれに起きると言われています。

妊婦が麻疹にかかった場合は重症化しやすく、流産や早産が起きることがあります。胎児奇形が引き起こされることはないものの、胎児の発育異常や羊水量の異常、新生児麻疹(分娩時罹患)などが起きる可能性があるとされています。

麻疹の症状が治まるのは、発症から7~10日後

麻疹を根本的に治す方法はないため、治療においては、症状を抑える対症療法が行われます。麻疹の症状が治まるのは、肺炎や中耳炎などのほかの病気にかかっていなければ、発症から7~10日後。肺炎や中耳炎などにかかっている場合は、それらの治療のために抗菌剤の投与が行われます。

感染者と同じ空間にいるだけで感染する「空気感染」

麻疹ウイルスにはいくつかの感染経路がありますが、もっとも特徴的だと言えるのは「空気感染」です。感染者の咳やくしゃみで飛んだしぶきの水分が蒸発すると、そこに含まれていたウイルスが空気中に浮遊します。そのウイルスを吸い込むことで起きる空気感染は、感染者と同じ空間にいるだけで起きる恐れがあります。たとえ体育館のような広い場所であっても、そこに感染者が1人でもいれば、その場にいる全員に感染のリスクがあるのです。
空気感染以外に、ウイルスが含まれた咳やくしゃみのしぶきが体内に入って感染する「飛沫感染」や、手に付着したウイルスが体内に入って感染する「接触感染」でも、麻疹にかかります。

手洗い・うがい・マスクでは防げない!有効なのは予防接種

空気感染する麻疹は、手洗い、うがい、マスクだけでは十分に予防することができません。麻疹の予防方法として有効なのは、麻疹ワクチンによる予防接種です。接種は2回受けることが必要で、1回だけでは免疫が十分にできず、確実な予防効果が得られません。厚生労働省が推奨している子供の予防接種のタイミングは、1回目は1歳になったときで、2回目は小学校入学前の1年間です。この期間の接種費用は公費で負担されるため、無料で受けることができます。自治体によっては、条件を満たせば中学生・高校生でも無料で接種できることがあるので、詳しくは各自治体に問い合わせましょう。
子供の頃に受けなかった人も、成人後に受けることで免疫ができますが、費用は自己負担となります。一般的に費用は5,000~10,000円とされていますが、医療施設によって異なるので、各施設に問い合わせましょう。なお、麻疹の予防接種は、麻疹の単独ワクチンか、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)のどちらかが用いられます。
予防効果とは異なるワクチン接種後の反応は副反応と呼ばれ、麻疹ワクチンの場合は発熱や発疹などが現れることがあります。副反応が起きた場合は、医師に相談しましょう。

妊婦は麻疹ワクチンの接種を受けることができません。麻疹にかかったことがなく、また予防接種を2回受けていない場合は免疫ができておらず、麻疹にかかる可能性が高いので、流行地域での外出はできるだけ控えましょう。女性は妊娠していなくても胎児への影響を考慮して、接種後2ヵ月ほどは避妊する必要があります。

とても簡単!予防接種を受けられる医療機関の見つけ方

過去に麻疹にかかったことがある人は、すでに免疫ができているため予防接種を受ける必要はありません。かかったことがあるかどうか、あるいは接種を2回受けたかはっきりと分からない場合は、医師に相談しましょう。かかったことがある人が麻疹ワクチンを接種しても、予防効果に変化はなく、副反応が強く出ることもありません。

麻疹ワクチンを取り扱っているのは、小児科やワクチン外来、海外渡航者外来などです。予防接種を受けられる医療機関が分からない場合は、厚生労働省検疫所のウェブサイトで検索するとよいでしょう。

麻疹の予防接種を受けることで、発症を防げるだけでなく、自分が感染源となってまわりの人に感染させてしまうのを防ぐこともできます。麻疹の免疫ができていない人は妊婦を除いて、ぜひ予防接種を受けましょう。

公開日:2016/10/11