台風の接近など気圧の低下で、片頭痛や関節痛、耳鳴りなどの症状が悪化するといった症状は、俗に「気象病」と呼ばれ、自律神経のバランスの乱れが関わっています。心当たりのある人は、天気予報をチェックし、自律神経のバランスを整えるように注意しましょう。
気温が高い夏は熱中症になりやすく、気温が低い冬は風邪やインフルエンザにかかりやすいなど、気温と健康の関係はよく知られています。しかし、湿度や気圧などの気象状況が影響すると考えられる病気については、患者さん本人やそのまわりの人々を除くと、一般的に気温ほどは知られていません。このように、気温や湿度、気圧などの、気象状況と関わる病気・症状は、医学用語ではありませんが俗に「気象病」と呼ばれることがあります。
気圧の低下によって悪化する症状の多くは、自律神経のバランスの乱れが関わっています。春先や秋口などの季節の変わり目や、台風の接近などによる気圧の低下で、以下のような症状が悪化することがあると考えられています。
片頭痛 | 片頭痛のはっきりとした原因は不明ですが、血管の拡張によって痛みが生じることが知られています。過労や環境の変化などによるストレスとともに、気温や気圧の急激な変化も、痛みの引き金となります。 |
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関節痛 | 気圧が下がり、相対的に体内の圧力が上がることで、関節まわりの炎症部分が圧迫されます。また、気温の低下による血流の増加で、自律神経の痛みに対する過敏性が高まると考えられています。 |
めまい | 気圧の低下により相対的に耳の内部の圧力が高まることで、耳の内部にある器官(蝸牛や三半規管)から内リンパ液という液体が漏れだすことで、回転性めまい(ぐるぐると回っているような感覚になるタイプのめまい)が悪化します。 |
耳鳴り | 気圧の低下により、相対的に耳の内部の圧力が高まることで起きます。エレベーターで高層階に行くときに耳鳴りが起きるのと、同じ仕組みです。 |
過敏性腸症候群(IBS) | 主にストレスによって胃腸の調子が悪くなる状態で、便秘型・下痢型・混合型に分類されます。低気圧が日本に近づく春先や秋口になると、自律神経のバランスが乱れ、起きやすくなります。 |
精神疾患 | 自律神経失調症、パニック障害、うつ病、統合失調症、不安障害などの精神疾患は、自律神経のバランスの乱れを招く気圧の低下によって、悪化しやすいと言われています。 |
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「台風が近づいて気圧が下がると、喘息発作が悪化する」ということは、喘息患者さんの間では体感的に、よく知られてきました。しかし、これは台風接近によるストレスから生じた結果であり、天気予報で詳しい情報が得られ、必要以上に台風を恐れずにすむ現代では、当てはまらないという説があります。秋に喘息発作が悪化する主な原因は、台風の通過による気圧の低下よりも、気温・湿度の変化や、ダニの糞・死骸をはじめとした、ハウスダストの増加だと考えられています。
それぞれの症状の悪化は、気象状況の影響かどうかに関わらず、医療機関を受診して、適切な治療を行うことが何よりも大切です。治療に加えて、気圧が急激に下がることが天気予報でわかっている場合や、日頃から予防する場合は、自律神経のバランスを整えるために、以下をこころがけると良いでしょう。
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