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ストップ!エイズ 「感染しない・させない」基礎知識

12月1日は「世界エイズデー」です。治療薬の進歩などのおかげで、欧米の先進諸国では、新たにエイズを発症する患者や死亡者が減少しています。エイズは、正しく予防をすれば発症を防げる病気。知識を身につけ、しっかり予防対策を行いましょう!

エイズとHIVの違いって?

グラフ:HIV感染者及びAIDS患者報告数の年次推移

エイズ(AIDS)とは、Acquired Immuno-deficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の略です。その原因となるのがHuman Immuno-deficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)、すなわちHIVです。つまり、エイズとはHIVに感染したために起こる病気を指します。よく混同されるのは、「HIV感染者」と「エイズ患者」。HIV感染者は、体内にHIVを持っているものの、病気が発症していない状態の人のことです。これに対し、エイズ患者はHIVの感染がもとで体を病気から守る免疫系が破壊され、体の抵抗力が弱まってさまざまな病気を発症している人を指します。それではいったいどうして、HIVが体内に入ると、エイズが発症されるのでしょうか。

人間には、カビやウイルスなどの病原体と戦う「免疫(抵抗力)」というものがあります。HIVは免疫のひとつ「ヘルパーT細胞」に入り込み、その中で増殖していきます。増殖したHIVはヘルパーT細胞を破壊して外に飛び出し、また別のヘルパーT細胞に侵入します。ヘルパーT細胞は、抵抗力を司る、いわば司令官のようなものです。それが次々と破壊されていくのですから、体全体の免疫がはたらかなくなってしまうのも無理はありません。

その結果、健康なときにはなんでもない細菌・ウイルス・カビなどの攻撃に耐えられず、さまざまな感染症にかかり、神経障害やカポジ肉腫、悪性リンパ腫など悪性腫瘍に侵されることになります。

世界エイズデーにちなんで~「レッドリボン」とは?~

レッドリボン(赤いリボン)はもともとヨーロッパに古くから伝わる風習のひとつで、病気や事故で亡くなった人に対し追悼の気持ちを表すものです。エイズが社会問題化し始めた1980年代の終わりごろから、エイズに苦しむ人々への理解と支援を意思表示するシンボルとして使われはじめ、今ではUNAIDS(国連合同エイズ計画)のシンボルマークにも採用されています。レッドリボンは、エイズに偏見をもっていない、エイズとともに生きる人々を差別しないというメッセージ。レッドリボンを身につけ、エイズをみんなで考えていきましょう。

どんなときに感染するの?3つの感染経路

感染経路

HIVは、血液、精液、膣分泌液、母乳のいずれかによって感染します。したがって、感染経路は以下の3つです。

感染経路1:性行為による感染

膣の中や性器、尿道、肛門の中などの粘膜は、傷などもつきやすく、ウイルスが侵入しやすい状態になっています。また、性交時は摩擦などで皮膚が傷ついたり、炎症を起こしたりすることがあり、HIVに感染しやすいようです。性感染症にかかっているときは、性器や粘膜に炎症が起こっている可能性が高く、さらに感染リスクが上がります。

感染経路2:血液による感染(輸血、非加熱製剤、針刺し事故・注射器の回し打ち)

HIVが入り込むヘルパーT細胞は、血液成分のひとつです。したがって、血液による感染の危険度はとても高くなります。使用ずみの注射器には、HIVの含まれた血液が残っている場合があるため、回し打ちなどはしてはいけません。また、HIV検査目的で献血をすれば、輸血による感染が広がる可能性があります。絶対にやめましょう。

感染経路3:母子感染

抵抗力の弱い赤ちゃんは、母親の血液、母乳により、HIVに感染してしまうことがあります。危険な段階は3つ。まずは子宮内にいるときです。赤ちゃんに母親の胎盤を経由してHIVが感染します。次に出産時。産道を通るときに血液から感染します。また、母乳にもHIVが含まれるため、母乳をあげることで感染しやすくなります。
もっとも危険度が高いのは出産時です。したがって、母親がHIV感染者の場合は、帝王切開で出産をおこなうと感染確率を抑えることができるとされています。

エイズの治療法はあるの?

HIVを体内から完全になくす治療法は現在まだありませんが、HIVの増殖を抑えてエイズの発症を遅らせることで、長期にわたり問題なく生活することはできます。HIVに感染していないか調べるには、HIV抗体検査を行います。感染していた場合、複数の抗HIV薬を投与する多剤併用療法(HAART)によって、HIVの増殖を抑えます。

日本では、新たにエイズを発症する患者が増加傾向にありますが、これは欧米の先進諸国ほどHIV抗体検査が普及していないため、治療が遅れることが原因だと考えられます。検査は、全国の保健所で匿名で受けられ、料金もかかりません。早期発見・早期治療のために、HIV抗体検査の普及が急がれます。

クイズ:HIVに感染するのはどんなとき?

HIVは感染力が弱く、感染経路も限られているため、予防は可能です。日常生活では、性行為以外に感染することはまずありません。だからといって、HIVを甘く見てはいけません!正しい知識を身につけて、適切な対応をするようにしましょう。

さて、以下の行為は感染するでしょうか?YES、NOで答えてください。

問題 YES NO
1. 握手やキスでは感染しない
2. 同じ食器や便器を使うと感染する
3. 蚊やダニがいる場所に一緒にいると感染する
4. 1回や2回のセックスなら大丈夫
5. セックスの際、経口避妊薬ピルやペッサリーを使えば大丈夫
6. かみそりを共有すると場合によっては感染することもある
7. 歯ブラシを共用すると感染する危険もある
8. お風呂やプールに一緒に入ってもかまわない

回答:1.YES 2.NO 3.NO 4.NO 5.NO 6.YES 7.YES 8.YES

コンドーム(男性用)は絶対なの?

感染を防ぐためにも、セックスの際はかならずコンドームを着けるようにしましょう。ただし、それだけで完璧に予防できるわけではありません。コンドームに亀裂や穴があれば、そこから感染しないとも限らないからです。使用前には必ず明るい場所で確認しましょう。また女性は性交時に接触する(膣と子宮頸部の)粘膜の表面積が広いため、男性よりも感染しやすくなります。男性まかせにせず、女性向けコンドームを使うことをおすすめします。

公開日:2005年11月28日