2月14日はバレンタインデー。日本でチョコレートの消費量が一気に高まる日だ。このチョコレート、「にきびや虫歯の原因になる」「食べると太る」などと言われ、普段は何かと旗色が悪いが、実は食べ方によっては脳を活性化させるはたらきもある。チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムの副委員長でもある板倉弘重先生に、脳を活性化させるチョコレートの食べ方をうかがってみた。
カカオは薬屋さんで売られていた

チョコレートの原材料であるカカオ豆の学名は「
テオブロマ・カカオ」といい、18世紀のスウェーデン人科学者・リンネによって命名された。「テオブロマ」とは、"神の食べ物"というギリシャ語で、その名の通り、カカオポリフェノール始め、良質の脂肪分、食物繊維など、
さまざまな薬効成分が含まれていることが知られている。
中南米原産のカカオが、全世界に広まるきっかけとなったのは、1521年にスペイン人・コルテスがアステカ帝国を征服し、カカオ豆を持ち帰ったことに始まると言われている。アステカ帝国では、カカオは王や貴族、勇敢な兵士にだけ許された贅沢な飲み物であり、
貨幣であるとともに、医薬品として珍重されていた。その効能は多岐にわたり、ヨーロッパに持ち込まれた際も、当初は薬屋で売られていたほどだ。
チョコレートに含まれる、脳を活性化させる成分
チョコレートの中に含まれている成分で、
頭をスッキリさせたり記憶力を助けたりする成分を、いくつかご紹介しよう。
テオブロミン
大脳皮質を刺激し、集中力、記憶力、思考力を高め、やる気を出す。カフェインの仲間だが、カフェインに比べて興奮作用がずっとマイルド。また、自律神経を調節する作用があり、リラックス効果も。そのせいか、欧米のホテルにはベッドサイドにチョコレートが置いてあることもある。
ブドウ糖
脳は、その重さが全体重の約2%に過ぎないにもかかわらず、消費エネルギー全体の20~30%を使ってしまうほど食いしん坊だ。その脳にとって、唯一の栄養素がブドウ糖。
脳をはたらかせるエネルギー源となるばかりか、脳の神経伝達物質・アセチルコリンの材料ともなる。
香り成分
フェニルアルデヒド、ジメチルピラジン、フェニルメチルヘキサナールなど、チョコレート特有の香気成分は、中枢神経系に作用して
集中度を向上させる作用があり、注意水準を向上させることが認められている。
ビタミン、ミネラル類など
チョコレートに含まれるビタミンEやナイアシンなどのビタミン類や、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リンなどのミネラルも脳の代謝に必要な栄養素。また、カテキンやアントシアニンなども脳血管内で抗酸化作用を発揮し、ボケ予防に効果があるといわれている。
ドクター直伝!脳を活性化させる食べ方とは?
■このドクターに聞きました

チョコレート博士! 板倉 弘重先生
茨城キリスト教大学 生活科学部食物健康科学科 教授
著書:「チョコレートの凄い効能」「赤ワイン健康法」ほか
チョコレートをいつ食べたらよいでしょうか?
A. 試験前に食べるなら、1時間前に。
「チョコレートを食べると、食後だいたい1時間で血糖値や抗酸化作用のピークを迎え、2時間後には徐々に下がっていきます。そのことから、
食べるタイミングは試験の始まる1時間前がいいでしょう。
食べる量は、板チョコの4分の1から2分の1程度が目安です。脳をうまくはたらかせるには、チョコレートに含まれている成分だけでなく、EPAやDHAなどの脂肪酸、ビタミンB12、さまざまな抗酸化物質、ギンコライド、アミノ酸などが必要ですが、食べ過ぎて眠くなることもあるので要注意です。」
どんな種類のチョコレートを食べたらよいでしょうか?
A. エネルギー補給には「ミルクチョコレート」、カテキンやポリフェノール補給には「ビターチョコレート」を。
「ブドウ糖やカルシウムを補いたいなら、カカオマスが十分入ったミルクチョコレートを。ただし、空腹時に多量に食べると、体質によっては逆に
低血糖気味となり、気持ちが悪くなることもあるので、気をつけてくださいね。
また、ダイエットを考慮する場合には、ミルクと砂糖が少なめで、カカオマスの含有量が多いビターチョコレートがおすすめです。こちらはカテキンやポリフェノールを補うイメージですね。カカオマスが高価なのは難点ですが…。プレゼントを贈るときも、ちょっと太目の相手にはビターなチョコレート、スリムな相手にはミルクチョコレートというふうに、選ぶのもいいと思いますよ。」
先生のお気に入りのチョコレートは?
A. ビターなブラックチョコが好きです。
「そのときどきによって違いますが、概して、アーモンドチョコ、ビターなブラックチョコが好きです。フルーツ入りやブランデー入りもいいですね。お酒の入ったチョコレートはアルコール成分で血行がよくなり、リラックス効果も期待できるんですよ!」