疾患・特集

甘く見るとヤケドする!日焼け「基本のき」

小麦色にやけた肌は健康的で美しいもの。しかし、日焼けそのものは体に有害な場合も。太陽光線に含まれる紫外線は、しみ、そばかす、皮膚がんなど、さまざまなトラブルを発生させることがある。一年のうちでも、春から秋にかけては紫外線量が多くなる季節。紫外線と日焼けについての正しい知識を持ち、太陽と上手に付き合うようにしよう。

紫外線は有害?

太陽光線は、目に見える光「可視光線」の他に、赤外線や紫外線という光を含んでいる。このうち紫外線は、地表に届く光の中で最も波長が短い光線だ。種類は3つ。オゾンなどの大気層で吸収され、地表に到達しない「UV-C」、一部が地表に到達し、皮膚や目に有害な「UV-B」、長時間浴びると、健康への影響が心配される「UV-A」である。

紫外線には体内のビタミンDをつくるはたらきがあるため、日光浴が体によいとされていた時代もあった。しかし、最近では1日15分間日光にあたれば、必要なビタミンDは生成できるとされている。

さらに、近年は大気中に排出されたフロンにより、上空の成層圏にあるオゾン層が破壊されつつある。そのため、有害な紫外線が地上に到達し、皮膚がんの発生など、健康へのさまざまな影響が懸念されているのだ。ちなみに、オゾン層の厚さが1%減ると、地上の紫外線量は約1.5%増加する。なお、1997~2001年に観測したオゾン量の平均値は、1980年に比べ、北半球で3%、南半球で6%低下しているのだ!

赤の「サンバーン」、黒の「サンタン」

紫外線による日焼けには2つある。ひとつは肌が赤くなる「サンバーン」。もうひとつは肌の色が黒くなる「サンタン」。サンバーンは波長の短いUV-Bによって引き起こされる。紫外線によって皮膚に化学物質が生成されるため、血管が拡張してしまう現象だ。また、サンタンをもたらすのは波長の長いUV-A。色素細胞がメラニン色素を合成し、皮膚の色をだんだんと褐色に変えてゆく。これは、皮膚の細胞の遺伝子を紫外線から守るための作用だ。

通常は、日光に当たって8~24時間でサンバーンがピークとなり、2~3日後にサンバーンが消失するとサンタンが起こる。ただし中にはほとんどサンバーンが見られない人や、サンタンが起こらない人もいる。

痛み、ほてり、皮膚がんまで…日焼けダメージ・トラブル

日焼けによる肌へのダメージは少なくない。サンバーン状態がひどくなると、水ぶくれやむくみが起こる。ときに痛みやほてりをともなう場合も。慢性的に紫外線を浴びた場合は、一部の色素細胞がメラニンを合成し続けるようになり、やがてしみとなってしまう。さらにこの状態が続くと皮膚の弾力性が失われ、しわができる。

そして最も心配なのが皮膚がんだ。通常、皮膚の基底細胞にある遺伝子は、UV-Bによっていったん傷つけられても再び修復されるが、ときに修復過程でエラーが起こることがある。そのエラーにより突然変異となった細胞が、やがてがんに発展してしまうというわけだ。日焼けと皮膚がんの関係は、まだはっきりとはわかっていないが、長期にわたって浴び続けないよう気を配りたいもの。また、がんには至らなくても、悪性のほくろや日光角化症という皮膚症状があらわれるケースもある。

さらに、人によっては、紫外線を浴びることで免疫機能に支障をきたすことがある。このようなトラブルが起こると、感染症にかかりやすくなるので注意しよう。

すぐできる日焼け予防

  • 午前10時から午後2時の、最も日差しの強い時間は、直射日光にあたらないようにしよう。
  • 日中の外出の際は、なるべく帽子や日傘、サングラスを使うようにしよう。衣服は濃い色の長袖がベスト。
  • 日焼け止めクリームを塗ろう。分量・有効時間を守り、時間ごとに塗り変えることが大切。戸外のレジャーなどの際は、日焼け止め効果を表すSPF表示の高いものを選ぼう。

焼けちゃった!ときの応急手当

焼けちゃった!ときの応急手当

  • 冷たい水で湿らせたタオルを当てたり、氷で冷やすようにしよう。全身に日焼けをしたときは、水風呂につかるのもよい。
  • 水泡ができたら清潔なガーゼで保護し、皮膚科で治療をしてもらおう。
  • 頭が痛くなったり熱が出たりしたら、日の当たらない涼しい場所で休養を。

ヒリヒリ日焼け後のタブー4ヵ条

  • その1:ひどい日焼けのあとに化粧品を塗ると、症状が悪化しかねない。当分は口紅などのポイントメークに徹しよう。
  • その2:衣服の着脱はそっとおこなうこと。乱暴に脱ぎ着すると皮膚がこすれてしまう。
  • その3:熱いお風呂は皮膚に刺激を与える。ぬるめのお湯にそっとつかるようにしよう。
  • その4:日焼け後は、できるだけ日光を避けることが大切。当分は日陰でゆっくりと体を休ませるようにしよう。

このように、たかが日焼けとあなどると、意外なトラブルに苦しみかねない。紫外線を恐れるあまりまったく日に当たらないというのも問題だが、旅行やレジャーを楽しむ場合は、きちんと対策をするようにしよう。

南や標高の高い山はとくに紫外線が強いので、他の地域と比べると警戒が必要だ。また、海やプールでは水の反射により、体に浴びる紫外線量が激増する。水中でも紫外線は届くので、くれぐれも油断は禁物だ。

公開日:2004年8月16日