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「集中力」と「やる気」はどちらが先?集中力とやる気のホルモンTRH

通常では考えられないようなパワーを発揮する「集中力」とは何で、なぜ発揮されるのでしょうか。「集中力」と「やる気」のメカニズムを紹介します。

集中力とはパワーだ

スポーツマンが驚異的な新記録を樹立し、一介のビジネスマンが誰もがサジを投げかけた難問を解決する。受験生がほぼ無理とされた難関校を突破…。普段のその人の能力では信じられないことを成し遂げてしまうパワー、そこに私たちは集中力のすごさを感じるのではないでしょうか。

もっと身近な例でも、普通なら2~3時間はかかる仕事なのに我知らず没頭して1時間ほどでできてしまったとか、普段はお掃除が嫌いなのに始めたら夢中になって家中ピカピカにしてしまったとか、誰もが体験したことがあるはずです。集中力とは、まさにこのこと。一点集中で事にあたることによって、普段の能力以上の結果を引き出すパワーのことなのです。

集中すると普段以上の能力を引き出せるのは、なぜ?

自分でも周囲の人でもかまいません。集中している人を観察してみると、ほかの人に声をかけられたり、呼ばれたりしているにもかかわらず、まったく聞こえていないとしか見えないことがあるでしょう。そう、実際に、ほとんど聞こえていないのです。なぜなら集中しているとき、脳はほかの感覚や機能を必要最低限に抑え込み、集中している対象への能力をフル稼働させているから。空腹すらも感じないこともあります。こうしたほかの機能を抑え込んでまで一点集中することによって、結果として通常以上の能力が発揮されるのです。

マイナス要素としての集中力もある

集中力を発揮すれば、通常ではできないこともできる可能性が高くなります。ですが、だからといって「集中力バンザイ」というわけにはいきません。集中力とは、ひとつのことに没頭することであって、対象となる物事を問いません。つまりマイナス思考へと集中してしまうこともあるのです。例えば悩みや不安、怒りなどに多大なパワーを発揮する集中力を注いでしまえば、心身症にもなりかねません。
集中力も長所・短所を見極めて、スイッチをオン・オフできるようにしたいものです。

やる気ホルモン「TRH」とは?

さらに脳の中を見ていくと面白いものが見つかります。甲状腺刺激放出ホルモン=TRHです。これは別名「やる気のホルモン」とも呼ばれるもので、分泌されると集中力を増し、次のやる気へとつなげていくはたらきがあるとされます。集中力とやる気ホルモンがあれば、どんなことも怖くない…と言いたいところだが、難点はTRHがとても感情的なホルモンだということです。

ここでちょっと考えてみてください。今やろうとしていることが好きなこと・興味があることなら、やりはじめる前から「やる気」が満ちてきます。だが、あまり気乗りのしない仕事や勉強の場合は、はじめる前はやる気などまったく感じられないのが普通ではないでしょうか。

そう、TRHが分泌されるのは、好きなこと・興味があることに対してか、実行することによって好ましい報酬(栄誉、お金、快感など)が得られることがわかっているときなのです。あとは、ひとつのことを実行しはじめて集中力が高まっていかない限り、分泌されません。

つまり、TRHのサポートを受けるには、目の前にある実行しなければならないことを好きになってしまうか、それによって報酬を得られるようにするか、はたまた何も考えずにはじめてしまうかの3つにひとつの選択しかないのです。


TRH(甲状腺刺激放出ホルモン)が分泌される仕組み

公開日:2003年6月16日