想像するだけで口の中が唾液でいっぱいになる梅干。この梅干に含まれているクエン酸は体の疲労物質を取り除いたり、体脂肪をため込まない効果があるため、積極的に摂取したほうがいい栄養素です。
暑くなると、さっぱりしたものが口にしたくなるもの。そんなときの、お助け食材のひとつが「梅干」だ。見ているだけで口の中が酸っぱくなってきて唾液が出てくる、そんな梅干には暑さを乗りきる健康パワーがある。
パワーの正体は「クエン酸」。クエン酸とは、酸っぱいものに含まれている有機酸類の一種で、グレープフルーツやレモン、酢などにも含まれている。このクエン酸が体内の代謝を円滑にするためにはたらいているのだ!
食事からとった脂質やたんぱく質、炭水化物、糖質などの栄養素は、消化されてエネルギーとなる。このことを解明したのは、1953年にノーベル賞を授与されたイギリスの学者、クレブス博士の「クエン酸サイクル理論」だ。
ちょっと難しい話になるが、例えば糖質は分解されて、最終的には酸化して熱を作る過程に入る。この過程を「クエン酸サイクル」と呼ぶ。つまり、クエン酸サイクルで熱(エネルギー)が作り出されているのだ。
食べものから取り込まれた糖質はすべてグルコースに変換され、グリコーゲンとなり、肝臓などに蓄積されるがそのとき使われなかった余分なグルコースはそれぞれの細胞に送られ、細胞内で代謝されてピルビン酸になる。
ピルビン酸はさらにアセチルCoAという物質になり、クエン酸サイクルへと進むのだ。
吸収された糖質がクエン酸サイクルに入ってしまえばすべてエネルギーに代わり、脂肪合成されることはないので体脂肪はたまらない、ということになる。
「クエン酸サイクル」で、クエン酸が不足するとどうなるのだろうか?
普通なら、ピルビン酸からアセチルCoAへと段階を進むはずだが、クエン酸が不足することでクエン酸サイクルが活発にはたらかなくなり、ピルビン酸がクエン酸サイクルに入ることができず乳酸へと変化してしまう。そこで疲れを感じるようになるのだ。
また、アセチルCoAもクエン酸サイクルに入ることができず、脂肪酸へと変化してしまう。その結果、体脂肪がたまってしまうことになる。
つまり、クエン酸不足は疲労や体脂肪増加を招いてしまうのだ!
これが、「酸っぱいものを食べると健康になる!」と言われる所以である。
さて、梅干にまつわるちょっとした話をここでご披露!
梅が伝わったのは大和朝廷のころ。中国から渡来したと言われている。遣隋使によって持ち込まれた梅の木は長い年月をかけて日本の風土に合うようになっていった。梅の実を梅干に加工する方法を誰が考案したかははっきりしていないが、平安時代に書かれた書物に梅干のことが書かれていたり、臨済宗・栄西によって作られた、という説もあることから、平安時代から鎌倉時代にかけて考案されたと言われている。
梅は中国のものであっても、シソと一緒に梅干を漬ける、という発想は日本人が考えたとか。そうすると、「梅干」は日本で生まれ育った食べものということになるのだ!
梅干には食中毒を防止したり、コレラや腸チフスなどの伝染病の予防や治療に効果を発揮するとして、江戸時代頃に薬として重宝がられた。
もし、梅干がなかったら…?と不安に思った当時の人々は、「梅干は切らしてはいけない、腐らせてはいけない」と言い、それが「梅干が腐るとその家に不幸が起きる」ということわざになったのだ。
よく言われる食い合わせの中でも、「ウナギと梅干」はダメ、という話は超有名。でも、医学的な根拠はまったくない。江戸時代に、夏の土用の丑の日に「『う』のつくものを食べると夏負けしない」と言われて平賀源内が土用の丑の日にウナギを食べる習慣をはじめたと言われているが、同じ「う」のつく梅干も、夏バテ防止食品としてはもってこい。
夏を乗り切るために、梅干も食べよう!