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注目!「コエンザイムQ10」入門講座

コエンザイムQ10(CoQ10)とはどんなものか、またエネルギーを作り出す補酵素としてのはたらきはどんなふうなのかをまとめた。

「コエンザイムQ10」ってどんなもの?

部位別コエンザイムQ10の量 グラフ:部位別コエンザイムQ10の量

体内の生命活動のために酵素が潤滑にはたらけるよう、助けるのが補酵素の役目。コエンザイムQ10もそのひとつだ。黄色からオレンジ色の結晶状の物質で、匂いはなく水にはほとんど溶けない。

このコエンザイムQ10、実は人間が生命活動を営むために必要なエネルギーを作り出すのに重要な関わりがある。体内でエネルギーを作り出しているのは、全身の細胞に含まれているミトコンドリアという小器官であり、1細胞当たり50~200ほど含まれている。このミトコンドリアは、人間が生命活動に必要なエネルギーの約95%にも上るほどの一大エネルギー工場なのである。そして、このミトコンドリアにコエンザイムQ10は多く含まれ、エネルギー産生に一役買っているのだ。

また、コエンザイムQ10は人間の体内のすべての細胞に存在するが、その濃度は部位により異なる。特に、心臓には多く含まれており、不足すると心臓に影響が出やすいとも言われている

コエンザイムQ10とアミノ酸、どこが違うの?

アミノ酸とはたんぱく質を構成している最小の物質で、約20種類ある。人間の体を作っているたんぱく質は約10万種類あると言われているが、すべてわずか20種類のアミノ酸でできている。コエンザイムQ10はビタミンに近いはたらきをするビタミン様物質。体力向上、美肌効果など、メリットは似ているが、別々の物質なのだ。

どんなふうにエネルギー産生するの?

エネルギー産生メカニズムと
コエンザイムQ10の果たす役割
図:エネルギー産生メカニズムとコエンザイムQ10の果たす役割

体内のエネルギー工場である細胞内のミトコンドリアでは、どのようにエネルギー産生が行われ、コエンザイムQ10がはたらいているのだろうか。

人間が筋肉を収縮させたり、呼吸をしたり、何か考えたりするには必ずエネルギーが必要となる。そして、そのエネルギーを得るために食事をする。それは、車が走るためにガソリンが必要なのと同じだ。
そして、食事から摂取したエネルギーは、すべて化学エネルギーとして供給される。このときのエネルギーが「ATP(アデノシン三リン酸)」と呼ばれるものだ。

糖質やたんぱく質、脂質などの栄養素をエネルギーに変換する回路には、それぞれ「解糖系」「TCA回路(クエン酸回路)」「電子伝達系」と呼ばれる3つがある。
食事から摂取した糖質は、ブドウ糖になり、解糖系と呼ばれる経路によりピルビン酸まで変化する。その過程で若干ATPが作られる。さらに、このピルビン酸はTCA回路に入り、電子が発生する。ここで発生した電子は電子伝達系に送られ、酸化されて水になる。この酸化の過程で発生する大量のエネルギーを利用してATPを合成するのだ。その時に必要なのがコエンザイムQ10である。
ここでコエンザイムQ10が不足するとエネルギー工場のはたらきもストップしてしまい、エネルギーが産生されなくなるため、コエンザイムQ10は欠かすことのできない存在なのである。

なぜ、コエンザイムQ10は不足するの?

これほど欠かすことができないコエンザイムQ10。でも、不足してしまうことがある。

原因その1:加齢

加齢によるコエンザイムQ10量の減少 グラフ:加齢によるコエンザイムQ10量の減少
資料提供:日清ファルマ株式会社

コエンザイムQ10は、体内での合成と体外からの補給という2つの方法で供給されているが、体内で合成されるものは20歳をピークに40歳ごろからどんどん減少していってしまう。特に、心臓や肺などの臓器での減少が目立つ。

原因その2:食生活

食物中のコエンザイムQ10の量 グラフ:食物中のコエンザイムQ10の量
資料提供:日清ファルマ株式会社

イワシやサバなどの青魚やウナギ、牛に多く含まれるコエンザイムQ10であるが、さまざまな研究により健康維持や老化防止のために目安として1日30~60mgの摂取が推奨されている。が、30mgのコエンザイムQ10を摂るためには、イワシなら6匹分、牛肉ならなんと950gも必要なのである。実際、食事だけではなかなかまかなえない。上手にサプリメントなどで補給するのも賢い方法だろう。

原因その3:病気

病気にかかってしまうと、血中のコエンザイムQ10の量が減ってしまうことも確認されている。例えば、健常者の心臓の血中コエンザイムQ10濃度は0.8~1.0μg/mlであるのに対し、心臓疾患者では0.5μg/ml以下。そのほか、糖尿病や肝硬変などの病気でも血中コエンザイムQ10濃度は低くなっているのだ。

コエンザイムQ10、もともとは医薬品だった!

1950年代初期:ユビキノン発見
1974年:世界ではじめて医薬品としてコエンザイムQ10を販売
1980年代初期:延べ600万人の心疾患患者が使用
1991年:一般医薬品として薬局薬店で販売を開始
2001年:厚生労働省がコエンザイムQ10を食品としても位置付ける

日本ではもともと心臓疾患の医療品として使われてきたコエンザイムQ10。2001年の食品規制の緩和により健康食品として販売されるようになり、私たちの身近なものになっている。
アメリカではすでに10年ほど前からコエンザイムQ10のサプリメントが販売され、人気を呼んでいる。サプリメント以外にもスポーツドリンクや歯周病予防の歯磨き剤、基礎化粧品なども発売されているとか。今後日本でもコエンザイムQ10の新しい商品が開発されるかもしれない。

公開日:2003年3月3日