疾患・特集

食物繊維はがんを防ぐ!

国別大腸がんによる死亡率

「食物繊維の摂取量が少ない先進国と比べると、摂取量の多いアフリカ諸国でのがんの発生率は低い」。疫学的な調査から、食物繊維の摂取量が多いと、大腸がんの発生率が低いことが明らかにされました。

例えば10万人中の大腸がんによる死亡は、スコットランドでは51.5人、アメリカ(白人)では42.2人、カナダで37.6人、スウェーデンで28.8人、フィンランドで15.8人です。
一方、日本では13.1人、食物繊維を多くとるナイジェリアでは5.9人、ウガンダでは3.5人と極端に少なくなっているのが分かります。(調査は昭和44年/実施)

大腸がんによる死亡率

国名 調査年 死亡率(人/10万人)
スコットランド 1969 51.5
アメリカ(白人) 1969 42.2
カナダ 1969 37.6
スウェーデン 1969 28.8
フィンランド 1969 15.8
日本 1969 13.1
ナイジェリア 1969 5.9
ウガンダ 1969 3.5

出典:木村修一、栄養学の新規点、1992

発がん物質に関する一つの仮説

この食物繊維の摂取量と大腸がんによる死亡率の関係から、バーキットとトローウェルという研究者が立てた仮説は以下のことでした。

  1. 精製度の高い食事は必然的に脂肪を多く含むことになる。そうした食事を取ると胆汁酸の分泌が盛んになり、腸内細菌によって胆汁酸が分解され、その分解産物が発がん物質を促進する因子となる。
  2. 食物繊維の摂取量が少ないと、便の移動速度が遅くなる。胆汁酸の分解産物が大腸の粘膜と接触する時間が長くなり、粘膜ががん化する確率が高くなる。

食物繊維が胆汁酸を減らし、毒性を軽減させる

多くの動物実験からこの仮説の大略を支持する結果が得られています。しかし、人においては実験によって食物繊維の摂取量と大腸がんの発生の因果関係を直接証明する結果は出ていません。

ただ、現在では食物繊維をたくさん含んだものを食べると、腸内の余分な胆汁酸を減らし、それによって胆汁酸の毒性を軽減するはたらきが生まれるというのが一般的なとらえ方です。

食物の摂取と大腸がんの発生との間には深い関係があることは確かですが、食物繊維だけが、大腸がんの発生を直接予防する効果を持つかどうかは、まだ明らかではないのです。