おしえて先生

味覚障害は抗がん剤の副作用?

新潟黒姫(#)・60~74歳男性 2008/11/25 投稿

突然で誠に申し訳ございません。実は私、今年6月10日より小細胞肺がんのため大学病院で抗がん剤治療を受け、9月13日に退院して来ました。
現在の自覚症状は耳鳴り口内炎(舌に少々)があり治療をしています。
お伺いしたいのは味覚についてでございますが、味は解かりますが、ご飯、など食べたときまたは水を飲んだときなど薄い塩味がします。これも抗がん剤の副作用でしょうか?対処法など教えて戴ければ幸いです。
季節の変わり目お体ご自愛下さい。

抗がん剤による副作用も。味付けや盛り付けを変えるなどして食事を楽しめるような工夫もおすすめです。

こんにちは新潟黒姫さん。新潟黒姫さんは、抗がん剤の治療を受けられ、その後、味覚に薄い塩味を感じるようになったのですね。
抗がん剤による味覚の変化は、治療の効果に直接影響するものではないので、見過ごされやすい副作用です。しかし、抗がん剤治療を受けた人の約3割が、何らかの味覚の変化を経験しているという報告もあります。症状としては、「金属のような味」、「砂を噛んでいるような感じ」、「舌に膜が張ったような感じ」、「味がわかりにくい」、「味が強く感じる」などがあります。
抗がん剤によって、味を感じる味蕾(みらい)を構成する味細胞自体や、味細胞から中枢に向かう神経が障害を受けることで味覚が変化することがありますし、口内炎や末梢神経障害(体表面や体内のいろいろな器官に分布する神経が障害を受けること)を生じると、味覚障害を起こしやすくなります。抗がん剤のなかには、体のなかで代謝された後、唾液に含まれて排泄されるものもあり、これが、味覚を変化させてしまうようです。
また、唾液には、味の成分を味蕾(味を感じる細胞)に運搬する働きがあるため、抗がん剤の副作用によって、唾液の分泌が減少し、口のなかが乾燥しやすくなると味がわかりにくくなります。
更に、味細胞は加齢とともに減少し、味を感じる機能が低下してしまいます。高齢者では、唾液分泌が低下し、口のなかが乾燥しやすく、舌苔(ぜったい)と呼ばれる舌の付着物(歯垢と同じような成分)が増加するなどの原因も重なり、味覚障害を起こしやすくなります。
別の原因として、亜鉛が不足すると味細胞に異常が生じることも分かっています。抗がん剤の中には亜鉛の吸収を低下させるものがあるので、亜鉛不足にならないよう注意する必要があります。
対処方法としては、口内炎や、口のなかの感染症を予防又は悪化させないようにすることで、ある程度味覚障害を軽くできます。食事の前に、レモン水やレモン味の炭酸水でうがいすることや舌のブラッシングなどで口の中をきれいにするのもよろしいでしょう。
お食事では、昆布やカツオなどのだしの風味にしたり、胡麻、レモンなどの風味や香りを取り入れてみてもいいでしょう。又、酢の物も効果はあるかと思います。
味付けが、なんでも塩味に感じてしまうのは、辛いことですね。残念ながら、味覚障害そのものを予防することは難しいのですが、食卓や食器、盛り付けを工夫したり、眺めの良い場所を選んでみるなどの工夫をしたりして、少しでも、お食事を楽しめるようになることを願っています。
寒くなってきましたので、新潟黒姫さんも風邪などにお気をつけ下さいね。
味覚障害」ライブラリや「癌(がん)」ライブラリにも関連情報が掲載されていますので、ご参考になさって下さいね。

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HelCナース

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