疾患・特集

がん治療後の後遺症のむくみでお悩みの方のためにリンパ浮腫患者スクールを開講 キャンサーフィットネス

乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの治療後に悩まされる後遺症の1つに、腕や脚にリンパ液がたまってむくみができるリンパ浮腫があります。「悩んでいるのは自分だけ」ではありません。キャンサーフィットネスが開講したリンパ浮腫患者スクールは、悩みやストレスを軽減させて、毎日のセルフケアを正しく安心して継続できるよう、各専門分野の第一線で活躍する15人の先生方の講義(20講座)から、あらゆることを学べます。

知識は大きなチカラ、大切な人生をリンパ浮腫のために犠牲にせず自分らしく生きよう

がん転移を防ぐためにリンパ節を取り除く手術や放射線治療などにより、体内のリンパ液の流れが悪くなると、腕や脚などにリンパ液がたまり、リンパ浮腫(がん治療後のむくみ)が腕やわきの下あたり(上肢)や太ももや足首(下肢)に起こることがあります。
根治的な治療法がないため、家事や仕事などに影響し、長年悩みがつきない後遺症ですが、医療のサポートも十分ではありません。毎日のセルフケアを悪化させないために重要なことはわかっていますので、患者さんが自分で安心してセルフケアができることが大事です。

そこで、キャンサーフィットネス(代表理事:広瀬眞奈美さん)は専門医15人の講義とQ&A、参加者の座談会などを盛り込み、リンパ浮腫についてあらゆることが学べるリンパ浮腫患者スクール(年間12回・20講座)を開講しました。
広瀬さんは、リンパ浮腫患者スクールを開講した意義について、以下のとおり話しています。

リンパ浮腫は、情報が少ないために、患者さんは日々の暮らしで困ることがよくあります。だからといって、すぐに相談できる医療者もなかなかいません。自分自身がしっかりと知識を身に付けることで、虫刺されなどの日常での些細なことにも対処でき、安心して暮らすことができます。

リンパ浮腫に悩む方への暮らし、セルフケア、運動のポイントとは

リンパ浮腫対策で大切なこととして、圧迫療法や運動、スキンケア、体重管理など、自分でしないといけないことが多くあります。そのために、しっかりと自分でセルフケアができるようになって、いまの状態を悪化させずに維持あるいは改善していくことが重要です。
だからこそ、知識は大きなチカラになります。大切な人生をリンパ浮腫のために犠牲にしないで、自分らしく生活して欲しいと願い、リンパ浮腫患者スクールを開講したそうです。
以下は、スクールで広瀬さんが解説した暮らしのポイントです。

●リンパ浮腫のかたの暮らしのポイント

  • 正しい知識を増やす
  • リンパ浮腫への自分だけの対処法を増やす
  • 体重管理(肥満予防)
  • ときどき計測する(診察に行く)
  • セルフケアの継続が大事:スキンケア(ボディチェック・ドレナージ)、圧迫療法、運動療法
  • 長時間、同じ姿勢を取り続けない
  • 疲れすぎない 
  • 生活を楽しむ
  • 休養や睡眠を大切にする

さらに、場所を選ばずに運動できる動画「CF®リンパケアエクササイズ」もあります。広瀬さんは運動のポイントとして以下を挙げています。

●リンパ浮腫を改善する運動のポイント

  • 弾性着衣で運動
  • 腹式呼吸
  • 有酸素運動
  • レジスタンス運動
  • 関節運動/ストレッチ
  • 毎日継続できる自分に合う運動を見つける
  • 運動を楽しめるように工夫する
  • ひどい筋肉痛や疲労感を残さない程度の運動(物足りないという感覚を大切に)

不安を笑顔に変えるために知識は大きな支え!

各専門分野の第一線で活躍する先生方の講義は、解剖・生理学から、乳がんや婦人科がんなど、がん種別の診断・治療、リンパ浮腫の発症リスクや対処法などです。ガイドラインやエビデンスをもとに、医療者が学ぶ研修レベルの基礎知識が盛り込まれています。
専門医15人の講義(年間12回・20講座)を1年間でStep1~3の順に修得できます*

Step1:リンパ浮腫の基礎を学びます。
Step2:自分自身のリンパ浮腫の状態を理解し、必要なセルフケアの方法を学びます。
Step3:リンパ浮腫の患者さんの心のケアの方法と、セルフケアを継続するための方法を学びます。

とにかく、リンパ浮腫を知るために必要な専門知識、セルフケアの具体的な実践方法、メンタルケアとセルフケアを継続する方法を学ぶことが重要です。
知識があっても、スキルがなければできず、またスキルを習得しても、気持ちが落ち込んだり、生活が落ち着かなければ、セルフケアができなくなります。
リンパ浮腫患者スクールのStep3では、自分自身について考えたり、生活を見直したりしながら、セルフケアを習慣にして継続していく方法も学んでいきます。
リンパ浮腫だけでなく、健康的な生活習慣へと改善できます。

広瀬さんからみなさんへ目指すべきメッセージをいただきました。

リンパ浮腫の診察を受けられる環境ではない患者さん、実際に診察を受けているけれど、日常の生活やケアをどのようにしたらよいのかわからない患者さん、リンパ浮腫をまだ発症していないけれどリスクのある患者さん、さらに家族のかたを対象にして、学ぶ場をつくりたいと思い、全国どこに住んでいても参加できるWeb方式のリンパ浮腫患者スクールを開講しました。
リンパ浮腫の解剖・生理学、診断・治療まで正確な知識を持ってもらい、QOLを向上してもらいたいと考えています。さらに、全講座を修了した受講者のかたが、在住する地域でリンパ浮腫患者さんのピアサポートが行えるような仕組みができることをはじめ、リンパ浮腫になっても安心して暮らすことができる社会づくりをしていきたいと考えています。

  • *:2020年リンパ浮腫患者スクールの専門医による講義(Step1の第1回~第4回)の概要

    第1回(4月18日)
    ●リンパ浮腫総論:リンパ浮腫の疫学、リンパ浮腫診療の歴史、現在のリンパ浮腫診療の実状と課題を理解する
    ●診療の流れ:診療の流れ(代表的な合併症とその対応を含める)、クリニカルパス(治療計画書)を理解する。
    講師:慶應義塾大学リハビリテーション医学教室准教授・辻哲也先生

    第2回(5月23日)
    ●リンパ浮腫の成因と治療の原則を理解するために、リンパ管系の解剖学的構造を理解する。浮腫に関係する脈管系や循環器系の生理、病理、病態を理解する
    講師:星ヶ丘医療センター血管外科部長・保田知生

    第3回(6月13日):領域別の基礎知識その1 乳がん/その2 婦人科がん
    ●領域別の基礎知識その1 乳がん(以下は学習のポイント)
    ・乳がんの進行度(病期) ・病期と基本的な治療方針・術式別のリンパ浮腫発症頻度
    ・リンパ浮腫発症の時期と部位・化学療法に伴う浮腫、リンパ浮腫・リンパ浮腫発症の危険因子と予防対策
    ・リンパ浮腫発症後の治療選択肢 ・運動療法について
    講師:聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科副部長/准教授・小島康幸先生
    ●領域別の基礎知識その2 婦人科がん(以下は学習のポイント)
    ・各疾患の進行期別治療法について ・治療法別のリンパ浮腫発症頻度
    ・リンパ浮腫発症の時期と位置 ・リンパ浮腫発症予防 ・リンパ浮腫発症後の治療
    講師:がん研有明病院健診センター検診部長/リンパ浮腫治療室長/婦人科(細胞診専門医・教育研修指導医・国際細胞診専門医)・宇津木久仁子先生

    第4回(7月4日):領域別の基礎知識その3 外科的治療/その4 リンパ浮腫の合併症
    ●領域別の基礎知識その3 外科的治療:外科治療の種類、適応とその限界を理解する
    講師:東京歯科大学市川総合病院形成外科講師・佐久間恒先生
    ●領域別の基礎知識その4 リンパ浮腫の合併症(以下はポイント)
    ・リンパ浮腫患者の皮膚合併症の診断と治療(蜂窩織炎、リンパ小胞・リンパ漏、Stewart-Treves症候群、関連領域として、うっ滞性皮膚炎・脂肪織炎、皮膚潰瘍) ・アピアランスケア
    講師:静岡県立静岡がんセンター皮膚科部長・清原祥夫先生

    第5回(8月22日)から、Step2(疾患の特徴を理解し、患者自身が状態を理解し、適切なセルフケアに必要な知識を習得しましょう)です。第5回の講義テーマは「リンパ浮腫 セルフケア指導」(講師:千葉大学大学院看護学教授・増島麻里子先生)です(オンラインで受講できないかたのためにDVD受講もあります)。

  • リンパ浮腫患者スクールの詳細:http://cancerfitness.jp/lymph/
公開日:2020/07/29
監修:キャンサーフィットネス代表理事・広瀬眞奈美さん