疾患・特集

乾癬(かんせん)の誤解と偏見がない社会を目指す!患者会が啓発活動

乾癬(かんせん)は、皮膚や関節の病気ですが感染症とはまったく違います。しかし、正しい情報が行き届いていないのが現状で患者さんは皮膚などの症状の苦痛があるのに加え、病気に対する誤解や偏見によって精神的ストレスや悩みが重なることで孤立やうつ状態に陥るケースが多く、問題になっています。そこで、全国22地域ある患者会が啓発活動を展開して患者さんを支援しています。

乾癬は免疫に関わる病気なので感染症とはまったく異なる病気

乾癬は感染症ではなく免疫が関わる病気です。免疫には、病原体から身を守るために攻撃して排除する機能がありますが、自分自身の体を誤って攻撃してしまう病気として自己免疫疾患があります。乾癬も自己免疫疾患のひとつで、皮膚症状がでて、時として関節の症状を伴う場合があります。
自己免疫疾患は、感染する病気ではありません。代表的な病気は関節リウマチ、皮膚の病気は強皮症やエリテマトーデスなど数多くあります。

人目につく肌の症状を見られることにストレスを感じやすい

乾癬の症状は、赤い皮膚症状の紅斑(こうはん)の上に銀白色のフケのような「鱗屑(りんせつ)」が厚く付着し(角化)、鱗屑が乾いてフケのようにはがれ落ちるようになります。乾いたことが病名に関係しているといわれています。
患者さんからよく聞かれるのは、人目につくところの皮膚症状があるとストレスを感じやすくなり、外見上の悩みにより人前にでることを避けて引きこもりがちになることです。
うつ病を発症するケースも少なくないとの指摘もあります。2018年9月に海外から報告された研究結果によると、乾癬患者さん4万5641人、乾癬でない3万6299人を対象にうつ病発症との関連を長年追跡したところ、乾癬患者さんのうつ病発症リスクは高く、リスクが最も高いのは40~50歳の重度の患者さんだったとのことです。
(論文アブストラクト:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30229872

患者会、学会、製薬会社との共催で世界乾癬デーイベントを実施

乾癬患者さんが症状や外見上の悩みにストレスを感じているのに追い撃ちをかけてストレスを増大させているのが、乾癬を「うつる」病気と誤解されていることです。
そこで、病気の正しい理解が広まり、患者さんが誤解や偏見に悩まされず、適切な治療を受けられる環境をつくるために、日本乾癬患者連合会、日本乾癬学会、製薬会社が共催で2018年10月24日に世界乾癬デー(毎年10月29日)の啓発イベントを開催しました。

イベントでは、医師と患者会によるパネルディスカッションがあり、話題になったのは乾癬患者さんへの誤解と偏見でした。東京逓信病院副院長/皮膚科部長の江藤隆史先生から、患者さんでない一般人を対象に実施したアンケート結果が報告されました(アッヴィ社が2010年に実施)。
江藤先生によると、回答した519人中14.8%が乾癬を「うつる病気」と認識していました。「電車やレストランでの同席に抵抗感がある」は47.3%(回答1,030人)、温泉やプールでの同席に抵抗感があるのは82.4%(回答783人)で、理由の大半は「感染しそう」でした。

道端アンジェリカさんプロデュースで患者さんがモデルのファッションショー開催

イベントでは、世界規模で行われた患者さんへのアンケート結果も紹介されました(ノバルティスファーマ社が2016年に実施)。
それによると、皮膚症状のある日本の患者さん142人のうち82%が「クリアな肌を取り戻すことが難しい」と回答しました。世界31カ国(4733人)の平均(55%)より高い結果でした。また、医師への相談をしない患者さんも日本は世界平均に比べて多い傾向でした。
外見上の悩みがある患者さんが多いことに対し、イベントでは乾癬をカミングアウトした道端アンジェリカさんプロデュースのファッションショーが行われました。
ショーのモデルは有志の患者さんでした。女性患者さんは、襟のついたシャツや膝丈のスカート、花柄のワンピース、男性患者さんでは羽織る服などで皮膚症状を隠すことや、周囲の目線を服装に向けさせるためのコーディネイトが紹介されました(以下は写真案)。


道端アンジェリカさん(写真中央)プロデュースのファッションショー。
最左はイベントの総合司会をつとめた町亜聖さん、道端さんの右となりは江藤隆史先生、
おしゃれかつ華やかな衣装をまとっている5人はモデルを努めた有志の患者さん。

全国22地域で活動している患者会では悩み相談ができるうえ正しい情報も得られます

患者さんは、症状の悩みだけでなく、精神的・社会的な悩みに苦しめられているのが現状です。そうした患者さんをサポートするために、日本乾癬患者連合会を構成する全国22地域で活動している患者会(http://jpa1029.com/kanjyakai/kanjyakai.html)に相談できます。
お住まいの近くにある患者会では、病気や治療法に関する正しい情報や医療機関の情報などを提供したり、患者さんの体験談を紹介したりしています。

公開日:2019/02/18