部位別の死亡者数・罹患者数で上位を占めている胃がんは、早期に発見されれば多くの人が治るとされています。早期発見のためには検診が重要です。ここでは、検診の実施間隔や検診方法などについて解説します。
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胃がんはかつて、日本人の部位別のがん死亡者数で、もっとも多いがんとして知られていました。近年は第1位でこそないものの、依然として男女ともに、部位別の死亡者数で肺がんや大腸がんとともに、上位を占めています。また、部位別の罹患者数(りかんしゃすう:がんにかかった人数)でも、胃がんは上位となっています。
自治体が行う胃がん検診として、厚生労働省から長年にわたり、バリウムを飲んで行うX線検査(レントゲン検査)が推奨されてきました。それが2016年4月以降より、X線検査とともに内視鏡検査(胃カメラ)も推奨されることになりました。さらに、対象年齢は「50歳以上」、実施間隔は「2年に1回」に変更されます。ただし、X線検査は当分の間、これまでどおり対象年齢は「40歳以上」、実施間隔は「1年に1回」としても、問題はないとされています。
変更前 | 変更後 (2016年4月以降) |
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検診方法 | X線検査 | X線検査または内視鏡検査 |
対象年齢 | 40歳以上 | 50歳以上 |
実施間隔 | 1年に1回 | 2年に1回 |
推奨される胃がん検診を変更する根拠となったのは、韓国の大規模な調査の結果や、いち早く内視鏡検査を導入している新潟県・鳥取県での調査の結果です。これらによって、内視鏡検査で胃がんによる死亡率を下げられることや、「50歳以上・2年に1回」という対象年齢・実施間隔で問題ないことが確かめられました。
なお、胃がん検診の方法として、ほかにも血液検査(ペプシノゲン検査、ヘリコバクターピロリ抗体検査など)がありますが、厚生労働省が推奨する検診方法には含まれていません。
胃がん検診の結果が陽性(胃がんの疑いあり)だった場合は、精密検査を受けることが勧められます。精密検査で行われるのは内視鏡検査ですが、胃がん検診の内視鏡検査とは、異なる点があります。
胃がん検診の内視鏡検査は、胃がんの疑いのある人を発見することを目的として行われます。一方、「診療」と位置づけられる精密検査の場合は、色素の散布や細胞の採取など、体にはたらきかける処置が行われるという違いがあります。そのため、胃がん検診としての内視鏡検査よりは時間がかかり、体にかかる負担もそれだけ大きくなりますが、がんがある場合は進行度なども含め、より詳しく調べることができます。
胃がん検診の内視鏡検診を普及させるには、課題もあります。その一つが費用で、内視鏡検査は、X線検査よりも多くの費用がかかります。また、検査を実施する医師・医療施設の確保や、検診を行う体制の整備も必要であるため、すぐには導入できない自治体もあると考えられます。なお、自治体の胃がん検診でX線検査を受ける人が負担する費用は、自治体によっても異なりますが、安ければ無料で、高くても3,000円程度です。
胃がんは、早期に発見されれば90%以上の人が治ると言われています。発見が遅れれば、がんが進行して治る可能性も下がってしまうので、対象年齢に該当する方は、胃がん検診を受けることが勧められます。受けられる胃がん検診の内容や費用、実施している施設など、詳しくはお住まいの自治体のがん検診担当窓口に問い合わせましょう。