疾患・特集

治験Q&A 治験の不安や悩みにすべて回答します

新薬の開発においてとても重要な役割を果たしている治験。でも、実際に治験ボランティアに参加しようと思ってもやはり不安というのが正直な感想だと思います。そんなみなさまの不安をQ&A形式でまとめて回答しました。ぜひじっくりご覧になってください。

Q. 治験に参加するとどんなメリットがありますか?

A.新しい治療方法を受けるチャンスとなり、経験豊富な専門医師による丁寧な診察や詳細な検査を受けることができ病気の状態を正確に知ることができます。また、治験に関連する薬代と検査代が無料になり、通院のための自己負担(診察費や交通費など)を軽減するための負担軽減費が支払われる場合が多いようです。
治験薬を服用する際は、その薬が自分に合っているか診てもらえ、治験終了後は治療に対しての薬のアドバイスをもらえることもあります。そして、同じ病気を持つ人や次世代を担う人たちのために、効果的で安心な薬を残すなど社会貢献できます。

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Q. 治験に参加することで何かデメリットやリスクはありますか?

A.指示された通りの服薬や定期的な通院が求められ、日誌や記録を付ける場合があり、丁寧な診察や詳しい検査のため、通常の診察より時間がかかる傾向があります。治験は特定の病院でしか実施していないため、現在通院している場合、その病院以外に通院する必要があり、通院に時間がかかる場合もあります。効果と副作用が確立されていない薬を服用することになり、未知の副作用が生じる可能性もあります。また、開発中の薬とそれ以外の薬を比較する治験の場合、必ずしも開発中の薬を試せるわけではなく、有効成分が入っていない薬(プラセボ)を服用することもあります。

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Q. 治験に参加するには自己負担費用がかかりますか?

A.初診料や再診料は、通常の診療と同じように自己負担になります(健康保険証がある場合、通常の保険診療扱い)。通院のための交通費などは自己負担になります。こうした自己負担を軽減するために「負担軽減費」が支払われる場合が多く、同一医療機関での一般診療と比べて自己負担が少なくなります。
治験に参加する意思を示す同意文書にサインした時点から治験薬代や治験に関する検査代は基本的に無料(製薬会社負担)になります。くわしいことは担当医師や治験コーディネーターなどに尋ねてみるとよいでしょう。

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Q. 治験に参加すると必ず「開発中の薬」を投与してもらえるのですか?

A.治験の方法としては、開発中の薬をそのまま投与する単純な方法もありますが、多くの場合は以下のように「比較」することで効果と副作用を確認します。

  • (1) 既存の薬との比較(開発中の薬と効果・成分が似ている既存の薬とで比較する)
  • (2) プラセボとの比較(開発中の薬とプラセボ「偽薬:有効成分が含まれていない薬」とで比較する)
  • (3) 用量間での比較(開発中の薬の用量を変えて違いを比較する)

比較を行わない場合や(3)の場合には、全員に開発中の薬が投与されます。対して(1)や(2)の場合には公平な比較を行うために、担当医師にも参加される方にも、渡される薬の区別がつかないようにしたうえで、第三者の作成した割り付け表にしたがってどちらの薬を服用するかを決める方法(二重盲検法といいます)が用いられます。
このように「必ずしも開発中の薬が投与されるとは限らない」ことをあらかじめ理解しておきましょう。

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Q. 比較する試験の場合、なぜ担当医師にも参加される方にも服薬する薬がわからない方法が用いられるのですか?

A.もしも、渡された薬がどちらかわかってしまうと、参加される方は「新しい薬だから効果がある」と思い込んでしまいます。また、治験の担当医師においても「新しい効果のある薬を使っている」とわかってしまうと、必要以上に「その薬の効果だ」などと考えてしまったり、医師や参加される方の感情などが入ることも考えられます。
第三者の作成した割り付け表にしたがって、どちらかの薬を服用するかを決める二重盲検法はそうした可能性を取り除くことで、公正で客観的なデータを得るためのものです。

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Q. なぜ治験には、有効成分を含まない薬(プラセボ)を使用して比較する試験があるのですか?

A.昔から「病は気から」といわれるように、人の体にはとても不思議な一面があります。乳糖やでんぷんなど有効成分が含まれていないもの(プラセボ)を「新薬ですよ」と参加される方に服用してもらうと、「新しい効果がある薬だ」という思い込みや「薬を飲んだから大丈夫だ」という安心感から、実際には効果のない薬でも、数値で表せない痛みや症状の軽減など、かなりの割合の人の病状が改善されることがわかっています(反対に症状が悪化したり、副作用が出てしまう場合もあり、この点においても人の体は不思議としかいえません)。
またプラセボではなく既存の薬と比較する試験の場合、「既存の薬本来が持つ効果+新薬を飲んでいるかも?という思い込み(一種のプラセボ効果)」か、「新薬本来が持つ効果」なのかがわかりづらくなる可能性を否定できません。
治験薬は、プラセボと比較してはっきりと上回る効果が認められて、初めて「薬」として認められるのです。
現在のところ、「プラセボを使用した二重盲検法」が薬の有効性と安全性を科学的に比較する方法として唯一世界的に認められている方法です。

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Q. 有効成分が含まれていないプラセボを服用して症状や具合が悪くなったらどうするのでしょう?

A.プラセボを用いた治験では、担当する医師にも参加される方にも、新薬あるいはプラセボのいずれかわからない「二重盲検法」で行なわれていますが、担当医師は、「もしかしたら、プラセボを使用しているかもしれない」と常に念頭に置き、「患者にとって好ましくない兆候」が認められた場合は、速やかに治験を中止し、もっとも適切な治療方法に切り替えます(切り替えることが義務付けられています)。

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Q. 治験は安全なのでしょうか?

A.開発中の薬は、すでに販売されている薬と同様、副作用がないとはいえませんが、海外ではすでに広く使われているものが多く、日本でも第1相臨床試験(薬によっては第2相も)をクリアして安全性については確認されています。
また、治験中は通常よりもこまめで綿密な診察・検査が行われるとともに、患者はいつでも担当医師や治験コーディネーターなどに相談できるようになっており、副作用が発生した場合でもすぐさま対処できる体制が整っています。また治験が行える病院は「医療設備が十分に整っている」「緊急の場合には直ちに必要な治療・処置が行える」などの要件を満たした病院に限定されているので、万が一の場合でも安心といえるでしょう。
このように治験においては、多くの人が不安を抱く「安全性」に対して最も注意が払われています

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Q. 体に不調が現れたらどうすればよいですか?

A.治験中の診察や検査では、副作用について特に注意深くチェックしますが、自分自身で治験開始前と比べて少しでも「おかしい」と感じた場合は、すぐに担当医師に連絡しましょう。担当医師が診察をし、治験を続けるべきかどうかを判断します。また自分から治験の参加の継続を検討し、取りやめたい旨伝えても構いません。その場合患者にとってもっとも適切な処置(治療)を行います(担当医師に義務付けられています)。
なお、副作用と思われる症状により治療や追加検査が必要になった場合の費用は、製薬会社が負担します。担当医師が副作用とみなさなかった場合、これらの費用は自己負担が原則ですが、製薬会社と治験実施医療機関の間の事前の取り決めにより製薬会社が負担することがほとんどです。また場合によっては補償を請求することもできます。

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Q. 治験は何ヵ月くらいかかるのですか?途中で止めることはできますか?

A.治験によってその期間は異なりますので、参加する際に担当医師などに尋ねてみましょう。一般的には、糖尿病や高血圧などの慢性疾患で3ヵ月程度が多く、病気の種類によっては半年~1年のものもあるようです。通院間隔は、1週間に1回のものもあれば、1ヵ月に1回の場合もあります。
また、治験では何よりも本人の自由意思が尊重されるので、何らかの理由で治験を続けることが難しいと思われた場合には、担当医師に申し出ればいつでも止めることができます。勝手に治験薬の使用を止めると悪い影響が出ることもありますので、必ず担当医師に相談してからにしましょう。

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Q. 現在違う病気で治療中ですが、治験に参加できますか?

A.治験は、治験ごとにあらかじめ定められた実施要件をもとに行なわれています。これは一定条件のもと治験を行ない、有効性と安全性を確認するためと、参加される方の安全性の配慮からです。
現在治療中の病気の種類や症状の程度などによって、参加できるかどうかが決まってきます。例えば、他の薬と治験薬とを組み合わせて使用した場合に、それぞれの作用を弱めたり逆に強めたりするなど予期せぬことが起こることもあるからです。
具体的にどの病気が治験に参加できないかは治験薬ごとに異なってきますので、まずは今かかっている病院の医師に相談してみてください。また、治験を行う病院の担当医師にも、他の病院に通院していることを必ず伝えましょう。

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Q. 治験に参加している間に生活で気をつけることはありますか?

A.治験薬の服薬方法や回数などを正確に守ること、使わなかった治験薬は必ず返却すること、治験以外で薬を飲んだり治療を受けたりする場合は必ず担当医師に伝えることなどを守る必要があります。風邪薬ひとつとっても、有効性と安全性の判定に影響を与えることがあるため、飲む前に担当医師に相談しましょう。
このほか治験薬によっては、アルコールやたばこの制限、運動や食事に関する注意事項などがある場合もあります。

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Q. 治験終了後も、引き続きその薬をもらえますか?

A.治験期間が終了した後は治験薬はもらえない場合がほとんどです。まれに、進行性の病気や生命に関わる病気などの治験の場合、倫理的配慮から治験の期間延長の意味合いで継続使用できる場合もあります。
また、治験終了後も引き続きその病院に通院するか、以前通院していた病院に戻るかについても、担当医師にご相談ください。

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Q. コールセンターに電話したら必ず治験に参加しなければいけないのですか?

A.参加するかどうかはあくまでも本人の自由意思によるもので強制されるものでは決してありません。くわしい説明を聞いたり不明点などを確認してから参加を検討してみてはいかがでしょうか。

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