疾患・特集

「タイカレー」ヘルシーの秘密

ユニークな食文化を持つタイに注目

何かと疲れやすい梅雨の季節。そんなときこそ、暑い気候を乗り切る知恵が生かされている、アジアの料理でしゃきっとしたい。その中でおすすめなのが、最近食べられる店が増えてきた人気のタイカレーだ。一度も植民地にされることなく独立を保ってきたこの国では、独自の食文化が発達してきた。もちろん健康を保つ食の知恵が生きている。

タイ人は昔から肥沃な大地に水田を作り、川から獲れる魚を食べてきた。仏教が盛んなことから、肉はできるだけ避け野菜を積極的にとる点では、日本と似ている。そして、周りを囲む中国やインド、遠くは貿易を通してペルシャやポルトガルなどから、数百年をかけて徐々に多様な食材を取り込んできた。外国から来た素材を伝統料理に取り込んできた点でも、日本と共通しているといえそうだ。
もうひとつ、日本と似ているのは、地理的条件を反映した地方色が豊かなことである。

タイ

タイ北部

20世紀の初めまで孤立していた山岳地方で、独自の食文化が発達した。ミャンマー(ビルマ)の影響が強い。肉や内臓料理が多く、薄味でしょう油を使う。カオ・ヌン(蒸したもち米)やミャンマー色の強いカオ・ソーイ(揚げ麺のせカレーラーメン)などが代表的な料理。

東北部

イサーンと呼ばれるこの地域は、やせた土地が多く雨も少ない。そのためか、カタツムリやアリの卵を使う珍味料理も多い。食文化はラオスと共通している。トウガラシをふんだんに使う。辛い、塩辛いと言われることが多い。ソム・タム(青いパパイヤのサラダ)などが代表料理。

中央部

600年以上に渡る政治と経済の中心地。平野部で水が豊かな穀倉地帯。果物、野菜の生産も盛ん。タイ湾に面しているため、漁業も盛ん。麺類や炒め物など、華僑が持ち込んだ中国料理が日常食となっている。宮廷料理が食べられるレストランから、バンコク名物屋台料理まで、さまざまな食を楽しめる。東北部からの出稼ぎも多いので、その影響もある。ケーン(カレー・汁物)やヤム(和え物、サラダ)が代表料理。

南部

細い半島のこの地域は、うっそうとしたジャングルが山を覆う熱帯地方。マレーシアに隣接した地域ではイスラム教徒が多く、彼らはマレー語も話す。プーケット島などには中国人が多い。ココナッツや油、地元で獲れる魚介類もよく使われる。ターメリックや乾燥スパイスを使うインド料理の影響も強い。インド風カレーのパネン・ガイなどが代表料理。インドネシア料理のナシゴレンなども。

タイカレーの特徴

多様な食文化を持つタイの人たちが食べるカレーは、もちろん私たちが馴染んできた日本的家庭カレーとも、インドカレーとも違う。多くはスープカレーで、色あざやか。そして辛い。タイカレーは世界一辛いという説もあるほどだ。その辛さを和らげるのがココナッツの甘さとたっぷり入った生ハーブの爽やかさ。そんな独特の個性にこそ、ヘルシーの秘密が隠されている。例えば、日本でもポピュラーな3種類のカレーには、健康によいこんな材料が入っている。

グリーンカレー(ゲーン・キャウワーン)

グリーンカレー

プリッキーヌーという小粒で激辛の青トウガラシを使ったカレーペーストが入っているので、味も激辛。日本のレストランで食べる場合、その辛さを和らげるココナッツクリームがたっぷり入っていてそれほど辛くない場合も。バジル、バイマックルー、レモングラスといった生ハーブの爽やかさも特徴のひとつ。具材は鶏肉やナスが定番。ビタミンCやカロテンの多いホム・デーン(赤小たまねぎ)を使うのは、他のカレーとも共通する。

レッドカレー(ゲーン・ペッ)

レッドカレー

プリック・チーファーという辛味の少ない大型トウガラシを使っているので、グリーンカレーより辛味は少ない。しかし、スパイスの辛味が直接舌を刺激するので、逆に辛さを感じる場合も。具材はさまざまで、豚肉や合鴨、鶏肉などの肉類または海老を使い、パイナップル、バジル、たけのこなどを入れることが多い。

イエローカレー(ゲーン・カリー)

イエローカレー

インドの香辛料を使った日本でも馴染みのあるカレー。トウガラシは、プリック・チーファーを乾燥させたプリック・バンチャンという韓国産トウガラシに近い甘みと香りのあるもの。クローブやシナモン、コリアンダーパウダーなどの乾燥スパイスを使うのが特徴。具材には、骨付き鶏肉、豚肉、ジャガイモ、ピーナッツなどがよく使われる。

健康の元は食材にあり

タイカレーによく使われる食材には、それぞれ健康によいさまざまな成分が含まれている。その中でも特徴的なのは、なんといっても薬用植物である生ハーブ・スパイスをたっぷり使うこと。トウガラシやこしょう、ニンニクといった薬効がよく知られた定番スパイス以外に、タイカレーならではの食材の薬効を紹介しよう。

●バジル

イタリア料理などでもおなじみの甘くすっきりした香りが特徴のしそ科のハーブ。サポニンを含み、咳を鎮める作用がある。強い強壮作用で、疲労回復に役立つ。イライラや落ち込みを和らげ精神を安定させる効果もあり。

●レモングラス

レモンに似た香りのイネ科のハーブ。タイ料理では、トム・ヤム・クンに入れるハーブとして知られるがカレーにも必須。強い抗菌作用があり、利尿作用や月経促進に役立つほか、胃腸の調子を整え感染症の予防に役立つ。血小板凝集抑制作用があるので、脳梗塞や心筋梗塞の予防にも。脂肪分解作用もあり。

●パクチー

英語ではコリアンダー、中国語では香菜として知られる。タイ料理には欠かせないハーブだが、独特の強い香りが日本では好き嫌いが分かれる。抗菌性があり、解毒薬としても利用される。消化器系にはたらきかけ胃腸を丈夫にする。口臭予防や咳止めにも役立つ。ビタミンCも豊富。最近、余分なものを体から排出するデトックスに役立つハーブとして注目を浴びている。

●バイマックルー

日本語ではコブみかんの葉。かんきつ類特有の爽やかで強い芳香を持つ。その香りが食欲増進に役立ち、におい消しの役割を果たす。

公開日:2006年6月5日