自助具は、関節の痛み・変形・破壊を予防したり、関節リウマチによって困難となった日常生活をサポートしてくれるが、間違った使い方をしては意味がないという。そこで、代表的な自助具とその使用方法を伺った。 また、見た目を気にする女性のために工夫している点、購入時のポイントなども紹介してもらった。
お話を伺った先生:
社団法人 日本作業療法士協会
作業療法士 鴻井 建三先生、古田 崇浩先生
(右側より)鴻井 建三先生、古田 崇浩先生
股関節が痛いとき、なるべく股関節に負担をかけずに靴下を履けるようにする自助具。素材が固いと靴下を装着しにくいため、シート部分がやわらかい素材を選ぼう。また、シートの足に接する面は滑りやすく、床に接する面は滑りにくい素材にすると履きやすい。ストッキングが履けるものも市販されている。
(1)ゴムが取り付けられた
柔らかいシート状の素材
(2)シートに、靴下を
装着する
(3)装着された靴下に
足を入れる
(4)ゴムを引っぱると
靴下が上がり、
履くことができる
「物」を握ると、小指側に大きな力(負担)がかかる。 関節リウマチの患者さんでこの状態が続くと指の関節が小指側に曲がってしまうこと(尺側偏位:しゃくそくへんい)があるため、手の指・手首への負担を減らし、変形を予防する自助具。
家事だけでなく、いつまでも趣味を楽しむためにも手をいたわろう。
包丁
スコップ
グリップが直角になっているため、手首の力を使わず、肩と肘を前後に動かすことで、切れる。
手の指・手首への負担を減らすことができる。
持ち手が長いブラシ!
肩関節への負担を減らす自助具。肩が痛くてお風呂で背中が洗えない、櫛でブラッシングできないときなどに便利。このように持ち手が長く作られている自助具は、到達(リーチ)を補うという意味で、リーチ系の自助具と総称される。
スプリントを装着した様子
関節リウマチでは、指先が白鳥の首のような形状に変形すること(スワンネック変形)があるため、関節を固定して変形を予防したり矯正したりする。このような目的で使われる道具は装具(そうぐ)と呼ばれ、肘から手先の関節において使用する装具のことを、スプリントと総称する。
海外ではこのような形状の指輪を作っている。日本でも、女性の作業療法士が、白い部分にアクリル絵の具でネイルアートのようにデザインを施すなど、工夫している施設があるのだとか。
テーピングしている様子
仕事中や仕事後に腫れやすい関節に医療用のテープを巻き、できるだけ関節を安静に保って、痛みや腫れを軽減するテーピングも有効な手段のひとつ。
白色のテープが一般的だが、見た目が気になる女性のために肌色のテープもある。また、皮膚がかぶれる人には、アレルギーがでないテープを使うことも。
できることやできないことには個人差があるので、自分に必要な自助具は何か、正しい自助具の使用方法、装具(スプリント)やテーピングを活用した関節の保護法などを身につけておこう。関節の症状が悪化する前に、自助具を楽しみながら使用しておくと、徐々に習慣化され、正しく使えるようになることもあるのだとか。
専門の介護グッズとして市販されている自助具もあるが、100円ショップの安くて軽い素材などを工夫して作業療法士が作ってくれることもある。また、装具(スプリント)やテーピングも、作業療法士が専門的な立場から相談にのってくれるので、作業療法士のいる病院を受診することも心に留めておこう。