疾患・特集

あなたも気付かないうちに貯めこんでいませんか?中性脂肪

体についたぶよぶよ贅肉は、誰もが気になるもの。こうしたぜい肉の大部分は「中性脂肪」と呼ばれる脂肪で、別名トリグリセリド。脂肪組織を総称する「体脂肪」のもとです。ぜい肉の原因である中性脂肪がどのように作られ、溜まってしまうのか解説します。

贅肉の正体は中性脂肪だった!

体についたぶよぶよ贅肉は、誰もが気になるものです。こうした贅肉の大部分は「中性脂肪」と呼ばれる脂肪です。別名、トリグリセリドといいます。脂肪組織を総称する「体脂肪」のもとで、3つの脂肪酸とグリセロールという物質が結びついてできています。

中性脂肪の産生には、2つのルートがあります。ひとつは脂肪分から作られるルート。もうひとつは炭水化物から作られるルートです。

(図1)脂肪分がリパーゼによって小腸で消化(分解)・吸収され、中性脂肪として体の中に
脂肪分がリパーゼによって小腸で消化(分解)・吸収され、中性脂肪として体の中に

(図2)炭水化物(糖質)がエネルギーとして消費され、残ったものが肝臓で中性脂肪に変換されて体の中に
炭水化物(糖質)がエネルギーとして消費され、残ったものが肝臓で中性脂肪に変換されて体の中に

何かと目の仇にされる中性脂肪ですが、じつは人間が生きていくのになくてはならない役目を果たしています。
まず、「エネルギー貯蔵庫」としての役割があります。体を動かすエネルギー源として、通常、血液中に含まれる糖分が使われていますが、この糖分が枯渇したときは、中性脂肪がそのかわりとなります。次に、「断熱材」としての役目があります。寒い冬なども外気から体を守り、体温を一定に保つには不可欠の存在です。さらに、衝撃を受けたときには「クッション材」としてもはたらきます。骨や内臓など、体のさまざまな組織を守るには、皮膚だけでは十分ではないのです。

ただし、必要以上に貯めこむのは大問題!肥満症になるばかりではありません。いったん、中性脂肪値が跳ね上がると、今度はなかなか分解できなくなってしまいます。エネルギーに変換されない中性脂肪は、善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やしてしまいます。その結果、血管にコレステロールが付着したり、血液がどろどろになったりして高脂血症に発展。このほか動脈硬化や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、肥満症による糖尿病などを発症することもあります。研究では、食後の中性脂肪の増加・持続が、循環器系疾患に最も影響する因子であることがわかっています。

中性脂肪の脅威が日本に上陸!?

日本人の脂肪摂取量の推移

ところが、食生活が欧米型となりつつある日本では、脂肪摂取量がぐんと増えています。1日に必要な脂肪摂取量は約50gですが、最近ではなんと約40%の人が80g以上の脂肪を摂取しています。また、食事のエネルギーに占める脂肪エネルギー比率も増えており、適正比率である25%を超えています。平成12年国民栄養調査「中性脂肪値の分布」では、40歳以上の平均値は男女ともに、「高脂血症一歩手前」となっていることが明らかになりました。とくに男性の危険度は高いようです。

隠れ中性脂肪にご注意!

「私はそんなに太っていないから大丈夫」と安心するのはまだ早いようです。それは、体重が少ないからといって、中性脂肪が低いとは限らないから。中性脂肪が貯め込まれるのは「脂肪細胞」という細胞で、成人で250億~300億個あり、その大きさを3~4倍にまで膨張させることができます。脂肪細胞が膨張すると中に蓄積された中性脂肪も増えるため、危険度が高くなります。
また脂肪細胞は妊娠末期の胎児期、乳児期、思春期と3つの時期に増えることがわかっており、基本的に減りません。したがって、これらの時期に太っていた人は、中性脂肪を貯め込みやすい体質といえます。

また、脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類がありますが、中性脂肪を蓄えるのは白色脂肪細胞のほうです。白色脂肪細胞は、皮下脂肪だけでなく肝臓や内臓にもあります。つまり、見た目が太っていなくても肝臓や内臓に脂肪がついていれば、生活習慣病を引き起こす可能性が高いのです。

中性脂肪を測ってみよう

血液中の中性脂肪の値は、病院や健康診断、人間ドックなどで血液検査をすればすぐわかります。次の注意事項を守って血液検査をしてみましょう。

  • ●検査前日の夜8時以降には食事はしない
  • ●検査前日の食事で、脂っこいものをたくさん食べたり、お酒を多量に飲んだりしない
  • ●検査当日は、朝食を摂らない