食物繊維自体は、エネルギーとして利用できないし、栄養もあまり期待できません。そういった意味では、ビタミンなどのように「1日○g食べなさい!」という摂取目安量は決まっていませんが、食物繊維が不足していると、便で分かるようです。 目次 食物繊維、摂っていますか? 食物繊維のはたらき 食物繊維はどんなものに含まれる? 食物繊維、摂っていますか? かつて、日本人の食事は麦飯にみそ汁と漬物、煮物くらいの献立だったが、戦後の高度成長のもと、肉や魚、卵、乳製品などが大幅に取り入れられ、食の欧米化が進んだ。 そのなかで食物繊維は、栄養価も低く、消化・吸収も悪いため、不要なものだと思われてきたのだが、1970年代になって、イギリスのバーキット博士により、肥満や糖尿病、心臓病、大腸がんなどの病気は食物繊維不足から起こるのではないか、と発表されたのである。 それ以来、食物繊維を見なおす動きが高まったのだ。 1日に必要な量は、どのくらい? 食物繊維自体は、エネルギーとして利用できないし、栄養もあまり期待できない。そういった意味では、ビタミンなどのように「1日○g食べなさい!」という摂取目安量は決まっていないが、ただ食物繊維が不足していると、便で分かる。 食物繊維が足りている便は? 太くて柔らかく、水に浮き、においもあまりしない便が出ていれば大丈夫。硬くてコロコロした便が出るようでは、食物繊維は足りない。 ちなみに、生活習慣病にかかる人が少ないアフリカ人は食物繊維を豊富に摂るため、その便は理想的なようだ。 ■食物繊維を多く摂っているアフリカ人と、都会に住み欧米風の食事を摂っているイギリス人の便の比較 イギリス人 アフリカ人 1回の量 約100g約450g 形状 硬くて細く、くさい太くて柔らかく、におわない 排泄するまでの時間 平均3日平均1日 食物繊維のはたらき 食物繊維は消化されない成分。つまり、口から入ってもそのまま便になって体外に排出されるだけである。一見不要に思われがちだが、それが体内ですばらしいはたらきをするのである。 食物繊維の主なはたらき ●便の量を増やして、腸内の通過を早める 便は腸内で長時間留まると、大腸がんなどの原因になる。食物繊維は便のかさを増やし、排便をスムーズにする役割がある ●余分なコレステロールを排出する 食物繊維は、コレステロールが体内で吸収されるのを防ぎ、また消化液の胆汁酸を抱き込んで体外に排泄されるため、血中コレステロール値が改善される ●胃内で膨らんで満腹感をもたらす 繊維が水を吸収して膨らむので、満腹感をもたらし、胃内の滞留時間も延びるので腹もちがよく、食べ過ぎを抑えることができる 食物繊維はどんなものに含まれる? 食物繊維というと、セロリやごぼうのようになにか筋のようなものが浮かびやすい。でも、必ずしも繊維ではなくもっとミクロなレベルでの食物繊維までみると、水溶性・不溶性などさまざまな種類があり、はたらきも違う。 なかでも海藻に含まれる繊維・アルギン酸は水溶性で、塩分を体外に排出したり、血中コレステロールを低下させるはたらきがある。そのほかの食品を以下にまとめた。 食物繊維のはたらきと含まれる食品 ■不溶性繊維 主な食物繊維の種類 含まれる食品 主な作用 セルロース 穀類、豆類、いも、野菜、果物大腸内で水分を吸収して、便のかさを大きくして柔らかさを保ち、腸内の通過時間を早めて便秘を解消する。 ヘミセルロース 穀類、豆類、野菜 リグニン 穀類、豆類、根菜類他の食物繊維に影響を与え、食べ物の消化率を下げる。胆汁酸を吸着するほか、便の腸内通過を早めるはたらきもする。 ■水溶性繊維 主な食物繊維の種類 含まれる食品 主な作用 ペクチン 果物、野菜、いも、豆類小腸内で栄養素やコレステロールの吸収に影響を及ぼし、胆汁酸を吸着して再吸収を防ぐので、血中コレステロールを下げるはたらきがある。 グルコマンナン こんにゃく、さといも アルギン酸 こんぶ、わかめなどの海藻類 公開日:2002年3月18日
海藻類のなかでも、わりと身近な食品といえば、わかめやひじき。これらの食品には、食物繊維が豊富なのはもちろんのこと、ミネラル・ビタミンもたっぷり含まれています。どのくらい栄養価が優れているか、ちょっと見てみましょう。 目次 海藻は大きく分けると3種類 身近な海藻、わかめ・ひじきの栄養価 わかめやひじきをたっぷり食べる!簡単調理法 海藻は大きく分けると3種類 水中で生きている植物を藻類といい、なかでも海に住んでいるものを海藻という。海藻は大きく分けると、3種類。体の色によって分けられている。 ●緑藻類 葉緑素を持ち、きれいな緑色をしたもの。マグネシウムや銅、アルミニウムなどが豊富。代表的なものは、あおのり、あおさ、みる、など。 ●褐藻類 葉緑素のほかにフコキサンチンと呼ばれる褐色の色素を持ったもの。茶色がかった緑色をしている。アルギン酸を豊富に含み、血中コレステロール低下や高血圧の予防に効果的。代表的なものは、わかめ、ひじき、こんぶ、もずく、ほんだわらなど。 ●紅藻類 葉緑素のほかにフィコエリトリンという赤色の色素を持ったもの。海藻の中では、それほどミネラル含有量が多くない。代表的なものは、あまのりやてんぐさなど。あまのりは、ビタミンA効力、ビタミンB、ビタミンCが豊富。 身近な海藻、わかめ・ひじきの栄養価 海藻類のなかでも、わりと身近な食品といえば、わかめやひじき。これらの食品には、食物繊維が豊富なのはもちろんのこと、ミネラル・ビタミンもたっぷり。どのくらい、栄養価が優れているか、ちょっと見てみよう。 効率よく食物繊維が摂れる! 食物繊維の含有率 資料:地方衛生研究所全国協議会による 出典:「健康食・体になぜいいの?(4)わかめ・ひじき」辻 啓介監修 NHK出版 ひじきやワカメは、海藻類のなかでも食物繊維含有率がかなり高い。例えば、食物繊維を2g摂るために必要な食品の量は、ひじき(乾)なら4g、わかめ(乾)なら5gであるが、同じ量の食物繊維を野菜で摂ろうとすると、さつまいもなら86g、にんじんなら78gにもなるのだ。 海藻は効率よく食物繊維を摂れる食品なのである。 ミネラルが豊富! カルシウム、リン、カリウムなどのミネラルが豊富なのも、わかめやひじきの特徴。ひじきのカルシウムは、まいわしの丸干しやごまと同じくらい。普通の牛乳の10倍以上もあるのだ。 ただ、牛乳のほうが一度にたくさん摂れるため、カルシウムといえば牛乳、というイメージがあるのだが、いろいろな食品から摂るのがベストだと考えれば、ひじきやわかめも摂取したいものだ。 ノンカロリー食品! 「エネルギー源となる栄養がない」=「食べなくてもよい」という考え方から現在は一転し、食物繊維やミネラルを含む、ノンカロリー食品であるという点を利用すると、ダイエットに最適である、と注目されている。わかめには、脂質がごくわずかしかなく、しかも食物繊維は胃の中で水分を吸収してふくらむため、満腹感が得られるのだ。 もちろん、わかめばかりを食べていては、エネルギーが摂れないのでダメ。ダイエットにはバランスが大切! わかめやひじきをたっぷり食べる!簡単調理法 わかめといえばみそ汁に入れる、ひじきといえば煮物ばかりでは、ワンパターン。もっと別の食べ方はないの!?という方に、簡単なレシピを紹介。そのまま食べてもよし。炒めてもよし。 さて、あなたならどうする? ●わかめの煮びたし だし汁にしょうゆ、酒で味をつけて煮立て、もどしたわかめをざく切りにして加えてサッと煮る。緑色が鮮やかになったら火を止め、そのまま冷ます。食べる時には、千切りしょうがを添えて。 ●わかめの韓国風サラダ もどしたわかめを食べやすく切って、さっと熱湯を通しておく。そこにゆでた小エビ、貝割れ菜、薄焼き卵の細切りなどを混ぜる。ドレッシングは、ごま油、しょうゆ、酢、ねぎ・しょうがのみじん切り、ゴマ、砂糖などを合わせて作ると韓国風サラダのできあがり! ●わかめの炒め物 サラダ油を熱し、にんにく、しょうがのみじん切り、長ねぎの千切りを炒め、硬めにもどしたわかめを加えてサッと炒める。しょうゆと酒で味を整え、白髪ねぎをたっぷりのせて。 ●ひじきのサラダ ひじきをもどして熱湯にサッと通す。ゆでたさやいんげんと油を切ったツナを混ぜる。レモン汁とサラダ油を同量混ぜて、ニンニクのみじん切りを加えてドレッシングを作り、かけて食べる。 ●ひじきの炊き込みご飯 ひじき、油揚げ、にんじん、しいたけなどの具を煮て、煮汁ごと炊き込む。ひじきの煮物が余った場合に、ご飯に混ぜてもよし。その混ぜご飯の上に目玉焼きや炒り卵などを載せると、見た目がきれい。 ●ひじきとハムの炒め物 ハムは千切りにし、にんにくをみじん切りにする。油をひいたフライパンでにんにくを炒め、ハム、もどしたひじきを加えてサッと炒め、塩・こしょう・しょうゆで味を整える。 公開日:2002年3月18日
加工食品やインスタント食品でリン過剰に カルシウムはリン灰石〔ヒドロキシアパタイト:Ca10(PO4)OH2〕の形で人体を支える骨をはじめ、歯などの硬組織を形作っています。つまり、骨や歯を形成していくためには、カルシウムだけでなく、リンも大切な無機質なのです。 カルシウムやリンなどのミネラル類は、体内で合成されないため外部より摂取しなければなりません。カルシウム/リン比は1:1が望ましいと考えられています。カルシウムの1人1日当たりの目標摂取量は約600mgなので、リンの目標摂取量も600mgになります。 しかし、最近ではリンが加工食品やインスタント食品に広く用いられていることから、リンの過剰摂取が指摘されています。リンの1日摂取量が2000mgを超えるとカルシウムの摂取が追い付けず、副甲状せんの機能が高進してしまう外、腎臓にも負担がかかります。 バランスの取れたカルシウム食品 「日常食品のリン量及びカルシウムとの比」をみると、干しのりでリン12mg、カルシウム8mgとなっており、その比率は3:2なので、比較的バランスのよいカルシウム食品といえます。 また、ホウレンソウ、牛乳、豆腐もバランスが良く、含有量も多いため、干しのりに劣らないカルシウム食品といえます。 日常食品のリン量及びカルシウムとの比 食品名 1回の摂取量 リン/カルシウム (g) リン(mg) カルシウム(mg) 精白米飯 130 39 3 13.0 ソバ 283 31 9.1 ジャガイモ 130 71 6 11.8 焼きチクワ 120 132 18 7.3 牛肉 120 4 30.0 豚肉 152 4 38.0 ビール 89 13 6.8 食パン 35 18 1.9 サツマイモ 200 88 64 1.4 豆腐 85 120 0.7 牛乳 180 200 0.9 マーガリン 10 1 1 10 ホウレンソウ 50 30 28 1.1 干しのり 2 12 8 1.5 出典:小原哲二郎「リン酸のはたらきその重要性」第一出版、1983
「海藻だけ」は栄養不足 海藻はノンカロリーのうえに食物繊維やミネラルをたっぷり含んでいるので、ダイエット中には積極的に食べたい食品の一つです。しかし「海藻だけ」というのは感心しません。 これだけだと栄養不足になってしまうからです。ダイエットは炭水化物・たんぱく質・脂質などの3大栄養素やビタミンなどをきちんと確保したうえで、つまりバランスの良い食事を行いながら1日のカロリー制限を決めて実行するようにします。 もう少し食べたい時の海藻類 ただ、ダイエット中はどうしてもムキになって量を控えがちです。食べたいのに食べられない、こんなジレンマが襲います。 こんな時に役立つのが海藻類です。もう少し食べたいなと思ったらノンカロリー・ドレッシングをかけた海藻サラダを1品追加するようにします。目標カロリーをオーバーすることなく、満腹感も同時に満たすことができます。
注目され始めたベータカロチン ビタミンAには2種類あり、動物性食品に含まれるものはレチノール、植物性食品に含まれるものはベータカロチンと呼ばれています。ベータカロチンは、緑黄色野菜に多く含まれる成分で、体内に入ると小腸で酵素のはたらきを受け、ビタミンAに変化します。 最近では、ベータカロチンの研究が進み、ビタミンCやEと同じような抗酸化作用(細胞のがん化や老化、動脈硬化を防ぐはたらき)があることも分かってきました。 海藻類にも含む 海藻類にもベータカロチンは含まれています。 例えば焼きのりで100g中ビタミンA(ベータカロチン)の含有量は13000mgで、シュンギク(1900mg)や小松菜(1800mg)、ニラ(1800mg)、ニンジン(4100mg)と比べても圧倒的に多く含まれています。 しかし、常用量(1人前換算)にすると、焼きのりは1人前1gでビタミンA(ベータカロチン)含有量130mgとなり、シュンギク(70g/1330mg)、小松菜(70g/1260mg)、ニラ(70g/1260mg)、ニンジン(30g/1230mg)といった緑黄色野菜と比べると、ごく微量になります。 焼きのりだけを100g食べるのは難しいので、手巻きずしやのり巻きなど焼きのりをたくさん使った料理を工夫するのも良いことです。
ビタミン、ミネラル豊富 海藻類はビタミンやミネラルも豊富に含まれています。 例えば、ワカメのビタミンAは100g中1800mgも含まれ、緑黄色野菜と比べてもひけをとりません。 昆布のカルシウムの含有率は100g中760mg、干しヒジキのカルシウム含有率は100g中1400mgと高い上に、鉄分も100g中55mgと、他の食品と比べても圧倒的に多く含まれています。さらに、モズクにも鉄分が多く、100g中6.0mg含まれています。 もう一つ、海藻類はノンカロリーで食物繊維がたっぷりという特色があり、ダイエットしながらビタミンやミネラルを摂取するには、打ってつけの食材です。バラエティーのある調理法で大いに利用してみる価値があります。 具だくさん昆布巻き サバ、ロースハム、ニンジン、タケノコ、インゲン、シラタキなどの具を昆布でのり巻きのようにぐるりと巻いて、カンピョウで縛り、しょうゆと砂糖、みりんであっさり和風に煮ます。これ1品でビタミンAが1000IU、ビタミンCが25mg以上も取れます。 切り昆布のふりかけ 削りガツオ、小麦はい芽、切り昆布を細かくすり混ぜ、これにゆでて細かく刻んだ大根の葉を混ぜて塩で味付けした簡単メニュー。ビタミンA、E、Cが毎食手軽に取れます。 サバとワカメの酢の物 よく焼いてほぐしたサバと熱湯にサッとくぐらせたワカメとピーマンを合わせ酢で和えたスピード料理です。ビタミンがバランス良く入っています。
みその栄養プラス、ワカメの効用 みそは、塩分が多めという側面だけがクローズアップされがちですが、良質の大豆たんぱくの他、炭水化物、ビタミンB群・Eなどのビタミン類、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウムなどの各種ミネラルなど、体に必要な栄養素が含まれています。 さらに、みそ汁にする際、具に工夫をすれば、塩分を排せつする作用があるカリウムや、日常不足がちなマグネシウムなどを補うこともできます。 ワカメ(特に乾燥ワカメ)は、カリウム、血圧降下作用のあるカルシウム、高血圧を始めあらゆる疾患や便秘を防ぐ食物繊維などを含むため、塩分が気になる人のみそ汁の具には適しています。