食事や運動などの予防と、定期的な検診を
乳がんの発症には、複数の因子が関係していると考えられています。その因子としては、
(1)近い血縁に乳がんになった人がいる
(2)初潮が早く、閉経が遅い
(3)未婚で30歳以上、出産数が少なく初産年齢が高い
(4)肥満の人
(5)乳腺の良性疾患の既往がある
などが挙げられます。
ご相談者のヒロさんは、(1)の因子にあてはまります。これに関しては、30~55歳の女性、約12万人を対象としたアメリカでの調査結果がよく引用されます。その報告によりますと、母親が乳がんを発症しなかった女性と比較して、40歳以前に乳がんを発症した母親を持つ女性が乳がんになる確率は、約2倍であるという結果が出ています。その確率は母親の発症年齢が高くなるにつれて減少し、70歳以後に発症した母親を持つ女性では、1.5倍でした。
アメリカは、女性の7人に1人が乳がんを患うといわれるほど、乳がん患者の多い国ですから、この結果をそのまま今回の相談者であるヒロさんにあてはめることはできません。しかしお母さんが乳がんを患っていますから、そうでない日本人に比べれば、ヒロさんが乳がんになるリスクは高いと考えられます。
ちなみに日本人女性が乳がんを患う確率は、約20人に1人です。年々増加傾向にあるのが気がかりですが、これには食生活を含むライフスタイルの欧米化が関係していると言われています。
乳がんを予防するには、動物性脂肪の摂取を少なくし、肥満(標準体重の20%以上)にならないように気をつけること、また適度な運動を定期的に行うのが効果的です。
乳がんは早期発見・早期治療すれば治る病気です。乳がんは自己検診ができる唯一のがんですから、早期発見のためにも、月に一度、日を決めて乳房に触れ、しこりなどの異常がないかを調べましょう。そして40歳からは、2年に1度は乳房撮影(マンモグラフィ)を含む乳がん検診を受けてください。
小川一誠 先生
ドクターご活躍の場所 | 愛知県がんセンター名誉総長 |
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ご専門 | 臨床腫瘍学(癌の化学療法) |
ご経歴 | 名古屋大学医学部卒業 愛知県がんセンター内科医員 メモリアル・スローン・ケッタリング癌センター(米国ニューヨーク市)留学 愛知県がんセンター内科医長 癌研究会癌化学療法センター臨床部部長 癌研究会付属病院化学療法科部長 癌研究会付属病院副院長 愛知県がんセンター病院長 愛知県がんセンター総長 愛知県がんセンター名誉総長 |
著書 | がんの早期発見と治療の手引き(小学館)、抗癌剤の選び方と使い方(南江堂)ほか |
所属団体 | 日本癌学会、日本癌治療学会、日本乳癌学会、日本血液学会、米国癌学会、米国臨床腫瘍学会、欧州臨床腫瘍学会 |
先生からの一言 | 癌の一次予防は、禁煙、バランスのとれた食生活、適度の運動などの生活習慣です。二次予防は、定期的に癌の検診を受けることです。癌は予防可能な病気であり、早期診断・早期治療で治癒します。 |