人気を集めるメディカルハーブ。ですが、安易に服用すると、思わぬ副作用が出ることもあります。医薬品に近いものとして慎重に利用したいメディカルハーブの現状を紹介します。
近頃よく聞く「メディカルハーブ」。「今までのハーブと何か違うの?」と疑問に感じたことはないだろうか。実は、似ているようで少し違う。辞書などを引くと、たいてい【ハーブ=香草、薬草】などと出ているが、メディカルハーブとは、言葉通り、ハーブの中でも薬効に注目した薬用植物のこと。
範囲も、シンプルに「薬用植物」というだけあって、幅広い。お料理やアロマテラピーにも使われるミント、ラベンダー、レモンバームといった欧米生まれのものから、高麗人参や葛根といった漢方薬に使われるもの、さらには昔から日本の民間療法として親しまれているヨモギや南天なども含まれる。その数、なんと世界で数千種類にものぼると言われている。
また、薬効も多彩だ。がんに効果があるとされるもの、血糖を下げるもの、風邪の症状をやわらげるものなどなど。なかには医師が処方してくれる薬と大差ないほど効果が強いものまである。このため、イギリスでは「ハーブ医学校」があり、卒業した人は医療ハーバリストとして活躍しているほどだ。また、ドイツでは、メディカルハーブのサプリメントの多くは医薬品として扱われている。つまり、メディカルハーブは、もはや医薬品に近いものなのだ。
こうしたメディカルハーブが日本でも人気を集めはじめたキッカケは、アメリカで医療費を抑えるために、メディカルハーブなどの栄養補助食品の効能が公表され、人々が積極的にセルフメディケーションに取り組みはじめたため。「病院に行くほどではないけれど、体調が芳しくない」といったときには、メディカルハーブから試してみよう!ということらしい。だが…。
平成12年、厚生労働省は、医療関係機関や医薬品製造メーカーに、異例の注意を指示した。
気分の落ち込みを緩和するハーブとして人気が高く、優れた抗うつ作用も認められているメディカルハーブ「セントジョンズワート」と、強心剤などを併用すると、薬の作用が弱まってしまうというのだ。
また、薬との併用を続けていた人が、急に併用を止めるのも危険。今度は薬が効き過ぎてしまう可能性があるのだ。
さらに平成14年には、国民生活センターが、イチョウの葉(ギンコウ)に、アレルギーを引き起こす物質が含まれていると発表。
イチョウの葉は、特に脳の血液循環を改善する作用が認められ、体内の活性酸素を除去するはたらきもあると注目を集めるハーブ。だが、これに含まれる「ギンコール酸」が、人によっては腹痛や湿疹、ひいては皮膚障害や消化器障害を招いてしまうのだ。
国民生活センターでは今後、特有成分の含有量や注意を表示するなどの改善点を各メーカーに要望していく、としている。
このように、メディカルハーブは、その薬効ゆえに、医薬品に近いもの。日本ではメディカルハーブのサプリメントは「食品」扱いとなっているが、私たちが普段の生活の中で利用する場合は、薬効はもちろん、禁忌・注意事項まで含めて正しい知識を持ち、くれぐれも慎重に取り入れたい。
出典:「メディカル・ハーブ」ペネラピ・オディ著 中埜有理訳 河出書房新社
メディカルハーブ=医薬品に近い、となると服用の仕方も薬のようにサプリメントが普通…というワケではない。それぞれの薬効と注意点がわかっていれば、ベランダで育てて生で摂ってもいいし、市販のハーブティーを利用してもいい。特に欧米のメディカルハーブには味や香りの良いものが多く、味覚的にも楽しめる点も魅力のひとつといえそうだ。ぜひ、一人ひとり自分の好みに合った利用法で、取り入れてみてほしい。
メリット:使う部位や使用法によって違う薬効を、まるごと利用できる。
例えばバーべイン(クマツヅラ)なら、お湯に浸して飲めば肝臓機能の回復に、生の葉をつぶして塗布すれば虫さされに、煮出して湿布にすればネンザや筋違いに効果的、といった具合だ。
利用時の注意:種類によって利用できる部位が異なるので、注意が必要。また、生で利用する場合は、農薬などが使われていないものを選ぶこと。育てるときも無農薬で。
メリット:長く保存ができ、お茶にしたり、湿布薬にしたりと、用途が広い。
利用時の注意:信頼のおけるハーブショップで、品質の良いものを選ぶこと。また、ショップで利用法を説明してもらい、無農薬のものなど、安心して服用できるものを選ぶこと。不安な場合は服用しない。
メリット:味や香りが良く、味覚的に楽しみながら服用できる。また、いつでも手軽に利用できる。
利用時の注意:一種類が入っているもの、複数をブレンドしているものと種類はさまざま。使われているメディカルハーブをよく確かめること。
メリット:いつでも手軽に利用できる。
利用時の注意:服用時の注意点などがキチンと表示された信頼できるメーカーのものを選ぶこと。