レビー小体型認知症の患者さん本人は多くの場合、実際にはないものが見える幻視などの症状を、自覚することができません。また、高齢者に多い病気であるため、ときには介護も必要となり、生活をともにするご家族のサポートは重要です。
レビー小体型認知症には、薬に対する過敏性が高いという特徴があります。そのため、ご家族が患者さんを観察する際に注意するポイントとして、薬の追加・変更・中止などの際には「副作用が出ていないか」「効きすぎている様子がないか」ということが挙げられます。
実際はレビー小体型認知症でありながら、アルツハイマー型認知症と診断されているケースも多くあります。症状チェックの結果から「レビー小体型認知症なのでは?」と思った場合は、幻視やパーキンソン症状など、レビー小体型認知症の特徴的な症状を中心に医師に伝えると、理解してもらいやすくなります。治療の効果が感じられない場合は、担当医師に薬の変更を相談したり、医療施設の変更を検討してもよいでしょう。
薬による治療だけではなく、環境やコミュニケーションの仕方を変えることで、レビー小体型認知症の症状を改善できる場合があります。ここでは代表的な症状への、ご家族ができる対処法をご紹介します。
幻視は、室内の明かりを変えることで、症状が改善する場合があります。蛍光灯は影を作りやすく、高速で瞬いているため、幻視の原因になりやすいとされています。そのため、白熱灯に交換することが勧められます。部屋によって明るさが異なるのも幻視の要因となるため、明るさを統一することも大切です。
患者さん本人は、幻視を現実のことと思っているので、頭ごなしに否定したり、感情的に対応したりすることは、混乱を引き起こす原因になります。十分に患者さんの訴えに耳を傾け、患者さん自身が納得できるまで繰り返し説明をするといった対応が、効果を現す場合があります。
幻視が妄想に発展したケースで、幻視のほうが改善したのに妄想がなくならない場合があります。妄想がさらにエスカレートする、抑うつ症状が進行する、興奮や暴力につながるといった場合もあります。妄想は、本人がそのことを確信している状態であるため、否定しても正常な思考へと戻すことは困難です。優しく手を握ったり、心拍数と同じテンポ(60回/1分)で背中を軽く叩いてあげたりすると、効果を現すことがあります(文献1)。
レビー小体型認知症では、しばしば歩行障害が起こります。介助する際は、正面から手を引かず、横に立つようにします。また、「1、2、1、2」と掛け声をかけたり、テンポのよい音楽をかけたりすることも効果的です。
転倒にも十分な注意が必要です。レビー小体型認知症の転倒率はアルツハイマー型認知症の10倍という報告もあります(文献1)。反射機能が低下しているため、転んでも手をつくことができず、骨折して寝たきりになるケースもあります。
転倒が起きやすい夕方や夜間の時間帯は、特に気をつけるようにします。また、「つまずく原因となるものを床に置かない」「濡れた床はすぐ拭く」「介護保険サービスを用いて手すりの設置などを行う」といった対策をとります。
さまざまな症状があり、患者さん本人が自力で日常生活をうまく送れないこともあるレビー小体型認知症の介護は、ご家族にとって簡単なことではありません。しかし、いつも患者さんのそばにいて、その状態を正確に把握することは、ご家族にしかできません。病気や治療法について正確な情報を身につけて、患者さんの状態や変化で気になることがあれば、医師に伝えるようにしましょう。