新薬誕生の要といえる治験ですが、日本国内では知名度が低いことやさまざまな整備がまだ不充分なため、海外に比べて遅れをとっているのが現実です。治験が世の中にとって必要だということをもっと多くの人が知らないといけませんね。
目次
基礎研究から製造承認を経てひとつの薬が世に出るまで10~18年という長い歳月を必要とします。その間、途中で開発を断念したものの費用まで含めると、1品あたりの薬の開発費用は150~200億円にものぼるといいます。
薬の開発は、植物や化学物質、微生物の中から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出すための研究から始まります。
薬として可能性のある物質を対象に、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べます。
「非臨床試験」の段階で安全性・有効性ともにパスした薬(治験薬といいます)について、実際に人が使っても安全で有効性があるかどうかを調べる最終的な確認作業を行います。この臨床試験の段階が「治験」にあたります。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われます。
製薬メーカーは治験で安全性や有効性などが証明された治験薬について、厚生労働省に製造承認の申請を行います。数段階の審査を受け、それにパスすると初めて「薬」として市場に出ることができます。ちなみに「基礎研究」段階で新薬候補とされた物質(化合物)のうち、製造承認を得ることができるものはわずか1万分の1程度です。
販売開始後も薬はさまざまなチェックを受けます。病院などの医療機関でさらに多くの患者に投与された結果を元に、開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われます。
治験への参加は、
などがあります。
申し込みセンター(コールセンター)につながります。治験は目的に応じてそれぞれの募集の基準があるので、年齢や性別、症状の内容と程度、病歴、通院が可能かどうかなどを確認します。基準に合えば、治験を行っている病院が紹介されます。
申し込みセンターで紹介された病院で、担当医師や治験コーディネーターから治験の目的や予想される副作用、新薬の特徴など、文書を使って詳しく説明を受けます。また、疑問に思うことは全部医師に聞いて確認します。
これは「インフォームド・コンセント」といい、治験に参加する人の人権を守る大切なステップです。
インフォームド・コンセントで用いられた文書をじっくり読み、自分自身が治験について理解でき、参加することに納得できれば、「同意書」にサインをします。もちろん、同意できなければ断ることもできます。また、同意書にサインした後でも取りやめることができます。
治験の種類によって通院の回数や期間が変わってきます。治験に参加中は薬(治験薬)の決められた用法用量を必ず守ること。体調が悪くなった場合は、すぐに担当医師に連絡を。
また、必ずしも希望する薬を使えるとは限りません。治験薬と薬効や安全性などのデータを比較するために用いられるプラセボと呼ばれる偽薬(成分はショ糖など)を用いることもありますが、これが治験薬なのかプラセボなのかは参加者自身はもちろん、医師にも知らされていません。
治験終了後も参加者の個人情報は厳密に管理されます。とりまとめられた治験データは 製薬会社から厚生労働省に申請され、承認が出れば薬として売り出されます。