大学に入りたての学生に5月頃に多く見られ、一般に知られるようになった「五月病」。「適応障害」や「気分障害」という精神疾患である可能性もあるようです。
大学に入りたての学生や、新社会人に5月頃に多く見られる「五月病」。新しい生活に夢中でいる間はいいが、それがひと段落する5月頃に、知らずしらずのうちに蓄積されていた心身の疲れや、新しい環境や人間関係などについていけないストレスのせいで、やる気が出ない、ふさぎこんでしまうなどの状態になることをこう呼びます。
新社会人の場合は、新人研修などが終わって実際の仕事をはじめた後の6月頃に見られることが多いため、「六月病」などと呼ばれることもあります。
この五月病と六月病、実はどちらも病院などで使われる正式な病名ではなく、きちんとした定義もありません。医学的に考えると、このように環境の変化についていけないことで起きる精神疾患として「適応障害」があります。適応障害は5月・6月だけでなく、人によっては夏休みを終えた9月頃に発症するなど、その発症は季節を限定しません。
5月頃に、やる気が出ない、気分が沈みがちといった状態になったら、「気分障害」という精神疾患の可能性もあります。気分障害には、比較的よく知られる「うつ病」や、暗いうつ状態と明るい躁状態を繰り返す「双極性障害」のほか、うつ病ほど症状は重くありませんが、2年以上の長期にわたって不調が続く「気分変調症」(気分変調障害)などがあります。特に気分変調症は症状がそれほど重くないことが多いため、深刻な状況にはなりにくく、一時的な落ち込みだと誤解される恐れがあります。
気分障害のひとつであるうつ病は、かつて、几帳面、マジメ、完璧主義などの性格の人が発症しやすいといわれていましたが、そうではない人でも発症することがわかってきた。遊んでいるときは明るいのに、仕事中などはうつ状態になる「非定型うつ病」はその一例でしょう。このような人は、まわりの人もうつ病とは気づきにくいので、5月頃に発症すると「どうせ五月病だから、時間がたてば治るだろう」ととらえられてしまうかもしれません。
体調や気分の異変が続くようなら、適応障害や気分障害などの可能性を考え、できるだけ早く病院に行くことが望ましいです。もしこれらの精神疾患だとしたら、治療の遅れが症状の悪化につながりかねません。抗不安薬や抗うつ薬の投与などの治療によって、症状の改善が期待できるので、いつもと様子が違うことを自覚したら、自分では判断せず、早めに医師に相談しましょう。まわりの人には、心療内科や精神科の受診を勧めてあげると良いでしょう。
学校や職場など、環境が絶えず変化する現代は、「自分には精神疾患なんて関係ない!」とは今や誰にも言い切れない時代です。自分自身はもちろん、まわりの人がつらそうな様子をしていないか、絶えず注意して見てあげるようにしましょう。