生活習慣病の一次予防策として鍵を握る喫煙。たばこは百害あって一利なし。たばこは肺がんや循環器系の疾患を引き起こすだけではなく、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓などのリスクが増加することが統計的に示されています。さらに長年の喫煙が別名「たばこ病」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という病気を発症させ、肺機能が低下して最終的には呼吸不全などで死亡する恐れも。また受動喫煙によって家族など身近な人を巻き込むリスクもあります。
今、若い女性の喫煙率の増加が、大きな問題となっているのをご存知ですか?問題としてよく知られているのが、喫煙が肺がんのリスク要因になっていることですが、実はもっと身近な問題が潜んでいます。 目次 増えています!若い女性の喫煙者 なぜ問題??若い女性の喫煙 心配なのは、肺がんだけじゃない! 増えています!若い女性の喫煙者 今、若い女性の喫煙率の増加が、大きな問題となっているのをご存知ですか?これまでの成人女性の喫煙率をみてみましょう。 調査開始時の昭和40年当初と比べると、40歳代から60歳以上の喫煙率は徐々に減少してきています。 これに対し、20歳代および30歳代は徐々に増加しはじめ、今では、40歳代から60歳以上の喫煙率を超えた状態が続いています。 なぜ問題??若い女性の喫煙 問題としてよく知られているのが、喫煙が肺がんのリスク要因になっていることです。女性の場合、非喫煙者に対する喫煙者の肺がんリスクは2.8倍にもなるといわれています。しかし、このことを、自分にふりかかる恐れのある身近な問題としては、想像しにくいかもしれません。 実は喫煙には、肺がんよりももっと身近な問題が潜んでいます。 肺がんとは? 人体が呼吸するときの空気の通り道の細胞に、がんが発生すること。長びく咳、胸の痛み、呼吸時のヒューヒュー、ゼーゼーする音(喘鳴:ぜんめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)などの症状があらわれます。発生には、喫煙習慣のほか、アスベストや砒素(ひそ)、ディーゼル排ガスなどの要因も関係することがあると言われています。 心配なのは、肺がんだけじゃない! 美容の大敵!! ・血管が収縮して血行が悪くなる ・ビタミンCやEが体内で大量に消費され、肌荒れ・シミ・そばかすができやすい(たばこ1本で約25mgのビタミンCを消費) 歯の黄ばみ口臭・歯周病 ・歯肉にメラニン色素が沈着 ・歯にタールが沈着 ・歯肉炎などの歯周病にかかりやすい 妊娠・出産への影響(たばこを吸わない妊婦との比較) ・不妊の危険性が高まる ・1.5倍ほど自然流産しやすい ・1.4~1.5倍ほど早産しやすい ・1.2~1.4倍ほど、周産期死亡(妊娠28週以降の死産と生後1週間未満の早期新生児死亡)が高い ・出生時の子どもの体重が平均200g軽く、2500g以下の低出生体重児が生まれる頻度が約2倍高い(ニコチンと一酸化炭素によって胎児と胎盤系が低酸素状態になるため) 子供への影響 ・イライラ、眠れない、吐く、下痢、頻脈などのニコチン中毒症 状を起こすことがある(母乳に含まれたニコチンの影響) ・肺炎・気管支炎などの呼吸器疾患になりやすい ・身体発育への影響 骨量の減少 ・骨量の減少(1~2年閉経が早くなり、女性ホルモンが減るため) (財)日本食生活協会発行「健康づくりのためのたばこ対策行動指針」より 最近では、かわいらしいパッケージや、フレーバーにこだわったタバコなど、女性をターゲットにした商品も増えています。また、働く女性が増えた現代において、気が紛れる、気持ちの切り替えができるといったことなども、若い女性の喫煙者を増やしているのかもしれません。 しかし、ここでもう一度、喫煙が自分の体にあたえるデメリットを考えてみてはどうでしょうか。 公開日:2008/09/22
パッケージにみる禁煙対策 たばこは健康に良くない。それはいまどき子供でも知っている常識だ。たばこは人体にさまざまな健康被害をもたらし、医療財政を逼迫するとして社会的にも問題となっている。しかし、国によって禁煙対策にも温度差があるのをご存じだろうか? それは各国で販売されているたばこのパッケージにも現れている。例えばEU諸国で販売されているたばこのパッケージには、喫煙によってボロボロになった醜い口腔の写真が貼られていたり、「smoking kills:喫煙はあなたを殺す」といった恐ろしげな注意書きが記されている。一方、わが国で義務づけられている警告表示の例は「人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます」程度で、警告というには程遠い。 どれくらい禁煙は進んでいるのか? こうした中途半端な警告表示のせいもあってか、日本は先進国の中では喫煙率が最も高く、「喫煙大国」と呼ばれることもある。昔に比べて全体的な喫煙率は減少傾向にあるものの、20代女性を中心にスモーカーが増えつつあり、啓発の甘さが「たばこ=おしゃれ」という間違った意識づけの一因となっていることも否めない。 また、行政が実施する禁煙対策事例を示すと、海外では州をあげて、国をあげて広範囲での規制を行っているのに比べ、わが国は「区」単位と狭い範囲での規制に留まっているケースが多い。 つまりわが国においては、一部の地域をのぞいて路上で歩きたばこをしても注意されることなく、飲食店に入ってもたいていはたばこを吸うことができるという状況なわけだ。 海外/日本のおもな禁煙対策事例 国名 実施時期 内容 アイルランド2004/3屋内の職場および公共施設での喫煙を禁止 スウェーデン2005/6飲食店、バー、ナイトクラブでの喫煙を禁止 ハワイ州2006/11レストラン、ショッピングセンター、ホテルのロビー等、州が定める公共場所での喫煙を禁止(罰金最大50ドル) スペイン2006/1屋内の公共場所での喫煙を禁止 フランス2007/2屋内の公共場所での喫煙を禁止 日本2002/10千代田区が路上喫煙禁止条例スタート 2007/4JR東日本が新幹線を全面禁煙 肺がんだけじゃない!たばこの健康被害 たばこによる健康被害としてよく知られているのは肺がん、そして循環器系の疾患だろうか。たばこの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害する。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓などのリスクが増加することが統計的に示されている。 そして最近わかってきているのは、長年の喫煙がCOPDという病気を発症させることだ。COPDとは慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の略で、別名「たばこ病」と呼ばれ、90%が喫煙者。長年の喫煙により肺胞が破壊され、肺機能が低下して最終的には呼吸不全などで死亡する。世界の死亡原因の第4位とされ、日本での推定患者数も約530万と、増加の一途を辿っている。しかも受動喫煙でも発症する人が多いため、家族など身近な人を巻き込む恐れもある。 なかなか進まない禁煙の一方で、このような恐ろしい病気が増えている現実を十分認識する必要があるだろう。 公開日:2007年5月28日
2005年2月27日「たばこ規制枠組み条約」が発効した。たばこ消費量が世界3位の日本でも、社会的に喫煙者へ風当たりが強くなってきている。本人だけでなく周囲の人や子どもへの影響も深刻なたばこ。たばこ規制の実態をみてみよう。 目次 たばこ規制枠組み条約が発効 どこまで進んだ?たばこの規制 深刻な子どもへの影響 たばこ規制枠組み条約が発効 5月31日は世界禁煙デー。公共の場で禁煙・分煙を進めたり、嫌煙者に有利な生命保険が登場するなど、社会的に喫煙者へ風当たりが強くなってきている。この機会に、いまいったいどこまでたばこ規制が進んでいるかをチェックしてみよう。 最近のニュースとして大きいのが、今年の2月27日、世界保健機関(WHO)が主導する「たばこ規制枠組み条約」が発効したことだ。この条約は、たばこの消費を減らして喫煙による健康被害を減らすことが目的。締約国は、5年以内に広告を全面禁止し、健康警告表示の拡大などをしなければならないなどの内容が盛り込まれている。日本はもちろん、世界167カ国とEU(欧州連合)が署名。うち、日本を含む57ヵ国が批准した。ちなみに日本はたばこ消費量が世界3位。首位の中国、2位のアメリカはまだ署名のみで批准していない。 禁煙が進む国はどこ? 葉巻で有名なキューバ、諸外国からも絶対に禁煙にできないと思われていたアイルランドのパブなど、喫煙者にとって居心地がよいとされていた国・場所でも禁煙が決まり、世界に波紋を広げている。 ●ブータン:完全禁煙 ●キューバ:公共の場を禁煙、たばこ自動販売機を撤去 ●アイルランド:パブを含む全職場内を禁煙に ●ノルウェー、ニュージーランド:職場、レストラン、パブのほとんどを禁煙に どこまで進んだ?たばこの規制 たばこ規制枠組み条約により、日本ではどこまでたばこ規制が進んだか、最近の新聞記事などから拾ってみよう。 ●2005年1月18日 日本経済新聞「受動喫煙対策、全国の公共施設を総点検・厚労省など」 厚生労働省が中心となり、2005年度から公共施設などで、禁煙・分煙がどこまで進んでいるか、受動喫煙対策の実態調査を始める。調査対象は学校、病院、劇場、百貨店、事務所、飲食店、ホテル、鉄道駅、娯楽施設、タクシー車内など。 ●2005年2月28日 朝日新聞「未成年の喫煙対策強化」 成人の喫煙率が長期的にみると低下する一方で、増えているのが未成年者の喫煙。2000年時点での高校3年生の喫煙率は、男子36・9%、女子15・8%もいる。政府は、未成年者らの禁煙支援や、中高生向けの健康問題の教材配布などを行う。警視庁は補導を強化する。その他、電車・バス・屋外へのたばこ広告が禁止されるといった、規制強化一般の動きも紹介。JT(日本たばこ産業)は、F1のスポンサーからも2006年秋で撤退の予定。 ●2005年4月2日 朝日新聞「禁煙ビーチ増えるかな」 家族客の多い熱海市サンビーチ、鳴き砂で知られる京都府京丹後市の琴引浜と石川県門前町の琴ヶ浜、兵庫県豊岡市の竹野浜海水浴場が、浜辺を禁煙にしている。鳴き砂の浜については、不純物が入ると音がしなくなるとのことで、環境保護の意味もあり花火も含めて火の使用を禁止した。海外でも禁煙ビーチは広がっているらしい。 ●2005年4月7日 読売新聞「持ってないと買えません、たばこカード2008年導入」 日本たばこ協会は、協会が成人を対象に発行するICカードがないと、自動販売機でたばこを買えない制度を導入することを発表。実施は2008年4月1日からの予定で、全国のたばこ自動販売機すべてが対象となる。 ●2005年5月8日 読売新聞「喫煙所どーする?路上禁煙の自治体」 千葉県柏市、我孫子市では、路上禁煙を禁止したが、駅周辺では喫煙所を整備した。分煙ルールを掲げて喫煙所を整備した東京都渋谷区では、吸殻のポイ捨ては大幅に減ったものの、渋谷駅ハチ公口の喫煙所周辺では、喫煙エリア内の倍以上の喫煙者が路上に広がる。東京都千代田区を先駆けに、首都圏を中心に各地の自治体で路上禁煙を条例化しているが、完全分煙・禁煙を実現するのが難しい実態をレポートする。 深刻な子どもへの影響 受動喫煙が問題とされるのは、もちろん、たばこの健康被害が本人だけでなく、そばにいる人たちへの影響が大きいことからきている。例えば肺がんリスクは、配偶者が喫煙する場合では、女性なら20%、男性で30%程度増加する。職場で喫煙する人がいる場合は、12~19%程度増加すると推定されている。 さらに深刻なのが、胎児や乳幼児への影響だ。妊娠中の喫煙は、赤ちゃんの体重が減少したり、子どもの認識力や行動面での発達、知能指数の低下など、さまざまな悪影響をもたらしてしまう。そして、赤ちゃんに影響を与えるのは、母親だけではない。 2005年3月12日の湘南新聞によると、神奈川県では、未熟児の出生率がこの10年で急激に増えている。その原因のひとつとして、妊娠中の妊婦の喫煙または夫・パートナーからの受動喫煙が挙げられている。1日に20本以上喫煙する妊婦は、喫煙しない妊婦に比べて自然流産の発生率が約2倍も高くなるといわれている。 妊娠中の女性とその家族はもちろん、喫煙者はどこで受動喫煙の被害をもたらしているかわからない。やはり喫煙するなら、場所を考えたほうがよいだろう。そして、肩身が狭い思いをするなら、いっそ本気でたばこを止めてはいかがだろうか。例えば、肺がんリスクは、禁煙後10年で喫煙継続者に比べて1/3から1/2にまで減少する。その他のがんもリスクが減少するものが多い。やめることで発生リスクが減る病気も確実にある。いまからでも禁煙に挑戦しても遅くはないのでは。 公開日:2005年5月30日
公共施設や交通機関、飲食店でも禁煙とする所が広がりつつある。また生命保険にも非喫煙者向けの割引きサービスが登場するなど、喫煙者は経済的にも損をする時代である。もう一度、健康のリスクについて考えてみよう。 目次 「世界禁煙デー」にたばこを見直そう 禁煙スペースはこんなに広がっている! 喫煙者は経済的にも不利になる!? 一服の楽しみと健康を天秤にかけると… 「世界禁煙デー」にたばこを見直そう 5月31日は、1988年の第1回から今年で17回目となる世界禁煙デーだ。世界保健機関(WHO)が、喫煙者に対しては24時間喫煙を控えるように、また各国の政府・自治体・諸機関・個人に対しては、喫煙と健康問題の認識を深めて適切な対策の実践を求めるという日である。日本では、この日から1週間を「禁煙週間」とし、厚生労働省が記念シンポジウムを開くなど、この時期は禁煙に関するイベントが各地で行われる。 喫煙者の中にも、たばこが体によくないことは知っていても、なかなかやめられない人もいるだろう。嫌煙派にも、日々たばこで嫌な思いをしている人が少なくないのでは?両者とも、この機会に改めて、今どれだけ社会が禁煙ムードになっているか、知っておくのも悪くないのではないだろうか。 禁煙スペースはこんなに広がっている! 東京都千代田区が、指定地区の路上喫煙者に、2000円の罰金を課す条例を定めたのが2002年10月。当時はニュースなどで大きく取り上げられたので、覚えている人もいるだろう。また、東京都中央区、品川区、杉並区でも同様の条例が導入された。 学校や郵便局、市役所といった公共施設に関しても、全国に禁煙エリアが広がっている。よく知られている「スターバックスコーヒー」をはじめ、「松屋」「大戸屋」「CoCoカレー壱番館」などの各種チェーン店、プロ野球球場スタンド、銀行のロビーなども今や禁煙である。 交通機関だって例外ではない。JRのホームでは喫煙スペースがあるが、コンコース内は禁煙だし、飛行機、各地の地下鉄は全面禁煙である。まだ1%に満たないものの、タクシーにも禁煙車が登場している。禁煙タクシーが認可制から届出制になったことで、今後はさらに増える可能性がある。こういった禁煙スペースの広がりは、非喫煙者にとってはありがたい動きといえるだろう。 喫煙者は経済的にも不利になる!? たばこの最大の問題は健康被害の可能性である。そういった健康のリスクを心配するのは、家族や友人といった身近な人たちだけではない。 2002年6月にAIGスター生命が、非喫煙者の保険料を割引く「がんケア・すわナイス割引」を発売したのを皮切りに、現在12の生命保険会社が「ノンスモーカ保険」を売り出している。外資系保険会社が中心であるが、大同生命やあいおい生命など日本の保険会社も含まれており、大半が格付けも「優良」と、非喫煙者がトクをする状況となっている。 さらに、今後は就職でも不利になっていく可能性が出てきた。というのは、社内禁煙の流れが強まるなか、喫煙者を採用選考の対象にさえしない企業も登場しつつあるからだ。このような企業が今後増えるのかどうか、気になる動きではある。 一服の楽しみと健康を天秤にかけると… たばこを吸う人も、吸わない人も、健康によくないことはご承知だろう。たばこの煙を吸うことで、頭痛や心拍増加、血管収縮などの影響がある。また、喫煙者、煙を吸った非喫煙者とも、長期的には肺がんや呼吸器疾患などの被害が予想される。もちろん、たばこを何十年も吸い続けても健康に問題がない人だっているのだから、一概には言えないとはいえ、リスクは大きくなる。 2004年4月23日に厚生労働省の研究班が発表した、喫煙とがんについての調査報告と試算結果によると、喫煙者のがん発生率は、たばこを吸ったことがない人と比べて、男性で1.6倍、女性で1.5倍。さらに、がん患者の5人に1人はたばこが原因であることがわかった。 たばこを吸うことが何よりの楽しみで、仕事の能率も上がるという人は、あくまで可能性に過ぎないリスクを背負ってたばこ人生を満喫する方法もあるだろう。ただし、これからの時代は、自分の行動範囲で気兼ねなくたばこを吸えるカフェや飲み屋を、少なくとも1~2軒は確保しておく必要があるのかもしれない。 公開日:2004年5月17日
禁煙したいと思っている人は多いことでしょう。でも、禁煙をガマンしなければいけないもの、と考えてトライするとなかなか成功しません。それは、禁煙を精神論だけで乗り越えようとするから。喫煙は立派な病気であり依存症であることを認識してから、禁煙に取り組みましょう。 目次 経験者はたばこのこと、どう語る? 禁煙は難しくない! 自分の喫煙習慣を知ること 経験者はたばこのこと、どう語る? 大抵の人が喫煙は体に悪いことが分かっている。さらに、「できれば禁煙したい」と思っている人が多いのも事実だ。 実際、禁煙に成功した人たちに喫煙を止めた理由をアンケートしたところ、やはり第一位は「健康に悪いと思うから」。健康状態が悪いが故に止めたという人も多い。 それでも喫煙を止めない理由として上位にあるのが、「癖になっている」「気分転換ができなくなる」など。 止めるつもりはない人たちの心の中には、どこか「禁煙するとつらくって…」という大前提があるらしい。そんなつらいものなら、やりたくないと言うことのようだ。 でも、決して禁煙は難しいものではない! 禁煙は難しくない! 禁煙したほうがいいと分かっていても、なぜか止められないたばこ。禁煙するときに「とにかく吸いたい気持ちをガマン、ガマン」と、思い込んでいないだろうか。 ハッキリ言って、喫煙は「依存症」という立派な病気である。それを、精神力だけで乗り越えようと思っても所詮無理な話なのだ。 「禁煙すること」=「ガマンすること」と思っていると、ちょっとしたことでもすべて「禁煙のせい」にしてしまいがち。いつもだったらイライラしなかったことに対しても、「なにせ、たばこを止めているからこんなにイライラするんだ」と自分に甘く考えてしまうようになるのだ。 喫煙を「すばらしくいいもの」、禁煙を「ガマンすること」と考えているようでは、禁煙はつらいだけのものになってしまい、それを精神論だけで乗り越えるのは、限りなく不可能なことなのだ。 つまり、胃の痛みや歯の痛みがあるときに治療してもらうのと同様に、禁煙も「治療」だと考えればいい。繰り返しになるが、「喫煙は依存症」であり、その依存症から抜け出すための治療をする、と考えれば、禁煙は難しくないのだ! 自分の喫煙習慣を知ること いくら禁煙を精神論だけで成功させようと思っても難しい、とは言っても「やっぱり意志が弱くて禁煙できない」と言う方もいるはず。 そこで、まず自分のたばこに対する習慣を分析してみよう。どんなとき、どんな精神状態でたばこを吸っているのか、冷静に分析してみれば、禁煙成功率も高くなるというものだ。 喫煙にあこがれ!タイプ ●こんな人が当てはまる! たばこに対して大人びたあこがれを抱いていて、なんとなく吸い始めてしまった人に多いタイプ。友達のマネをして吸い始めてしまった人も。 ●禁煙成功のためのアドバイス 喫煙は決してかっこいいことではなく、国際化社会ではむしろ吸わないことのほうが大人としてのマナー。このタイプは禁煙に成功しやすい! イライラして喫煙!タイプ ●こんな人が当てはまる! 緊張したとき、イライラしたときに喫煙することで気持ちを落ち着かせるタイプ。几帳面な人、神経質な人に多い ●禁煙成功のためのアドバイス イライラしてたばこに手が出そうになったら、その前に深呼吸や軽い運動を。楽しいことを考えてイライラを抑えるのも手。 ひまつぶしタイプ ●こんな人が当てはまる! 特別たばこが吸いたいわけではないのに、なんとなく火をつけてしまうタイプ。たばこの感触を手や口で楽しむことが好きな人に多く、たばこへの心理的依存症が大きい。 ●禁煙成功のためのアドバイス まずはたばこを目に入らない所に片付けて。普段持ち歩かず、なんとなく火をつける習慣を止めよう。ひまつぶしをしたいときには、ガムや昆布、仁丹など糖分の少ないものを代用するように。 食後の一服タイプ ●こんな人が当てはまる! 食後やちょっと休憩のとき、仕事が一段落した時などにゆっくり吸う人。仕事に集中しているときは、しばらく吸わなくてもいられる。 ●禁煙成功のためのアドバイス 仕事が一段落したら、軽い運動をし、食後はすぐ歯みがきをするようにしよう。まずは休憩のときの一服を避けるように。 とにかくたばこを!タイプ ●こんな人が当てはまる! とにかくいつでもたばこを吸っていないと落ち着かないタイプ。眠っているとき以外はたばこを手にしているというほど、ニコチン依存症が強い。前のたばこを吸っているうちに次のたばこに火をつけてしまうほど、チェーンスモーカーな場合もある。 ●禁煙成功のためのアドバイス 起床後の1本を吸う前に、洗顔や運動、食事など、朝の生活をはじめよう。どうしてもたばこが吸いたくなったら水やお茶を口に含んで。最初は禁断症状が出てつらいが、その数日間を乗り越えれば楽になる。 たばこってすばらしい!タイプ ●こんな人が当てはまる! たばこを吸っているほうが、仕事もはかどり気分を高めてくれるものだと思い込んでいるタイプ。一般的に喫煙本数がいちばん多くなり、深く吸い込みがち。 ●禁煙成功のためのアドバイス 禁煙するのにちょっと困難なタイプ。ひとりで禁煙しようと思っても難しいので、専門医に相談し、指導にしたがって禁煙を進めるのが得策。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因 公開日:2002年5月27日
たばこは喫煙者の健康を損ねるのはもちろんのことですが、それよりたちが悪いのが副流煙です。副流煙は主流煙よりアルカリ性が強く有毒な成分が含まれています。妊娠中の女性や子供が副流煙を吸うと、胎児に影響が出たり、ぜんそくの原因になったりします。 目次 吸っていないのに害があるなんて! 妊婦の喫煙は厳禁! 子供のぜんそくもたばこのせい? 吸っていないのに害があるなんて! 職場や公共の場での 禁煙・分煙化 がさかんに言われ、喫煙者は肩身の狭い思いをしている。 それは、たばこから出る 副流煙(たばこの先から立ち上る煙)には、喫煙者が吸う「主流煙」や吐き出す煙よりも強い毒性がある と言われているからだ。 主流煙がpH5前後の酸性であるのに対し、副流煙はpH9前後のアルカリ性で刺激の強い煙。喫煙者の近くにいると 目がチカチカしたり鼻が痛くなる のはそのせいだ。 出典:「たばこ病読本」渡辺文学著 緑風出版 妊婦の喫煙は厳禁! 最近、増えているのが女性の喫煙。平成16年の厚生労働省の調査では、女性の喫煙率は12%だが、20代では18%を超えている。女性の喫煙は男性よりも依存性が早く発生するといわれ、女性特有の問題点が現れてくる。それは、生理不順や皮膚のシワなどだ。さらに、不妊症にも悩まされやすい。 そして、もっと恐ろしいのは、妊婦の喫煙だ。 出典:「たばこで他殺、たばこで自殺」宮崎恭一著 胎児は、母親がたばこを1本吸うたびに息を止めている。そのため、早産、死産、流産が増えたり、先天異常の子供が生まれる危険度が高くなる。また、生まれてくる赤ちゃんも身長、体重ともに小さめだ。 もちろん、妊婦が吸わなくても、受動喫煙があるだけで胎児に影響がある。グラフによれば、妊婦の前で夫が喫煙すれば、非喫煙者に比べて約5倍もニコチンを摂取していることになる。 胎児にとっては母親のお腹の中は密室。生まれた子供にとって、また両親にとっても一生取り返しのつかない悲劇を生まないよう、女性の喫煙や妊婦の前での喫煙は避けたい。 子供のぜんそくもたばこのせい? ぜんそくは患者本人だけでなく、見ている家族もつらくなるほど苦しい病気。特に、小児ぜんそくの最大の原因は両親、家族のたばこが原因であると言われている。 アメリカのメイヨークリニックの調査によると、2~16歳のぜんそく患者400人のうち、家庭内受動喫煙がある場合は67%、ない場合は26%だったとか。 また、幼児期に副流煙を吸い込むと、肺炎や気管支炎など呼吸器疾患にかかる率が高くなる。その割合は、両親とも喫煙する場合、両親とも非喫煙の場合の約2倍以上高くなっているそうだ。 子供をぜんそくにしないためには、少なくとも子供の前では絶対に吸わない、一緒にいる部屋や車の中、寝室などでは絶対に吸わないことが必要だ。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因 公開日:2002年5月20日
ニコチンが体に悪いってホント? 「ニコチンは体に悪い」とはよく聞くが、それは本当だろうか。 たばこの煙には、約4,000種類もの化学物質が含まれており、そのうち現在確認されている有害物質は約200種類。ニコチン・タール・一酸化炭素の三大有害物質をはじめとし、ダイオキシン、シアン化合物、窒素化合物、ヒ素、アセトアルデヒドなど、まさに「毒煙」なのだ。 ニコチンの毒性は非常に強く、その作用は素早いもの。喫煙を常習化してしまう元凶だ。中枢神経や末梢神経を興奮あるいはまひさせてしまう作用があるため、末梢神経が収縮して血流が少なくなる。その結果、血圧が上昇したり、脈拍が速くなって心臓に負担をかけ、血管の老化を促進するのだ。 喫煙が体に与える悪影響 ●非喫煙者に比べ、すべてのがんを引き起こす危険度が高くなる ●ニコチンの影響で血圧が上がり、心拍数が増えて心臓に負担をかける。その結果、心筋梗塞や狭心症などの心臓病の大きな原因となる ●ビタミンAやビタミンCなどの栄養素を破壊する。その結果、視力障害、皮膚がカサカサになる、風邪を引きやすくなるなどする ●歯肉が黒ずみ、免疫機能を妨げるため歯周病を起こす細菌が増えやすくなる ●妊婦の喫煙は流産や早産、未熟児、先天異常などの原因となる また、たばこの影響は喫煙者だけではなく、非喫煙者にまで及ぶ。それが「副流煙」だ。副流煙とは、たばこの先から立ち上る煙のこと。喫煙者が吸う主流煙がpH5前後の酸性であるのに対し、副流煙はpH9前後のアルカリ性で刺激の強い煙。喫煙者の近くにいると、目がチカチカしたり鼻が痛くなるのはそのせいだ。 1日に50本以上たばこを吸う夫を持った非喫煙者の妻は、たばこを吸わない夫を持った妻より2倍以上肺がんの死亡率が高いという結果もあるほど。喫煙の害は、喫煙者だけではないのだ! 女性のほうが肺がんになりやすい!? すべてのがんと関わりあいがあるとも言われている喫煙。なかでも喉頭がんと肺がんは密接な関係を持っており、喫煙者の約7割以上がかかってしまうとも言われている。 がん研究会付属病院の医師の発表によると、男性に比べて女性は、喫煙指数(1日のたばこの本数×喫煙年数で算出される数字。ちなみに、400以上になると肺がんのリスクが高くなるという)が少なくても肺がんにかかりやすいとか。 これは、肺がん手術を受けた1,677人のうち、とくに喫煙と関連が強いがん(扁平上皮がん、小細胞がん、低分化腺がん)の患者(女性71人、男性603人)を対象に調査されたもの。その結果、男性の患者は9割以上が喫煙者であったのに対し、女性はそれ以下だったのだ。間接喫煙による影響が示唆されたとも言われているが、考えられるのは「女性のほうが男性より低い喫煙指数でも肺がんになりやすい」ということ。 もちろん、現在のところは肺がん患者は男性より女性のほうが圧倒的に少ないものの、今後女性の喫煙者が増えるとますます肺がん患者が増える危険性あり!? また、喫煙は肌の衰えにも影響がある。ニコチンは、血管細胞を収縮させるため血のめぐりが悪くなり、肌が衰える。その結果、皮膚の栄養が悪くなって色艶がなくなり、いつもくすんだような肌になってしまう。もちろん、シミ・シワの原因でもあり、そうなればいくら化粧でごまかしても、老け顔になってしまう可能性大。 いつまでも若々しい肌を保つためには、たばこを吸わないことは必須なのだ。 思いきって禁煙しよう! 「いつかは禁煙しよう!」と思っているなら、その「いつか」を「今日から」にしてみよう。「長年吸っていたから、いまさらやめても仕方がない」なんてことは決してない。もちろん、今までに何度も禁煙にチャレンジしたものの、いつも挫折してしまっているという人でも、あきらめず禁煙にトライしよう。
生活習慣病の一次予防策としてもうひとつ鍵を握るのが喫煙。たばこは百害あって一利なし。禁煙が成功しづらいのは、意志が弱いからではなく、ニコチン中毒症だからなのです。そんなあなたの意志を助けるために、禁煙補助薬を利用してみてはいかがでしょうか。 目次 喫煙は「死の五重奏」のひとつ たばこは依存症の一種 禁煙補助薬を利用しよう 禁煙補助薬の種類と使い方 たばこは依存症の一種 たばこは百害あって一利なし。生活習慣病の「死の四重奏」に「喫煙」を加えると、「死の五重奏」とも言われるほど、喫煙は体に悪い。 なかでも肺がんは最もたばことの関係が深い。2002年に厚生科学審議会が示した資料によると、1日に35本以上喫煙している人は非喫煙者と比較すると約8.4倍肺がんになるリスクがある。また、NIPPON DATAの「1980-90年の循環器疾患基礎調査」によると、心疾患や脳卒中で死亡する危険度は、喫煙者は非喫煙者の1.7倍だという。 生活習慣病予防に禁煙は欠かせないのだ。 喫煙本数と肺がん死亡についての相対危険度(日本) (非喫煙者を1とした場合の喫煙者の相対危険度) 出典:「今後のたばこ対策の基本的考え方について」 平成14年12月25日厚生科学審議会 たばこは依存症の一種 やめたい、やめたいと思ってもなかなかやめられないのがたばこ。なぜやめにくいのかというと、それはニコチンに強い習慣性があるからだ。ニコチンは非常に依存度が強く、身体的な依存だけではなく、精神的依存がある。 喫煙は立派な病気である。つまり、禁煙はその病気の治療なのである。その治療を精神的にだけ乗り越えようと思っても、ちょっとツライ。そんなときには、禁煙グッズを上手に利用してみるのも手。 禁煙補助薬を利用しよう 依存度の強い喫煙から抜け出すために注目を浴びている禁煙方法が、ニコチン代替療法。主なものはニコチンパッチとニコチンガムだ。禁煙にチャレンジしてみた人はご存知だろうが、禁煙でツライのはニコチンの攻撃による離脱症状と、生活習慣化した精神的依存から抜け出すこと。このニコチンパッチやニコチンガムは、とりあえず離脱症状を和らげてくれる禁煙お助けグッズなのだ。 これらのグッズを使用してまず喫煙という動作から離れることを可能にし、その後で精神的依存の治療をする、という禁煙プログラムにすれば、成功率もぐんとアップする! 禁煙補助薬の種類と使い方 禁煙補助薬には大きく分けて2つある。 ニコチンパッチ 禁煙中、「あ~、たばこが吸いたい」と思った時に使用するもの。たばこをやめた時の禁断症状を防いだり、和らげたりしてくれる。貼るサイズを変更することで、体内に入るニコチンの量を調節できる。 一般の薬のように薬局・薬店では売っていない。必ず医師の診断を受け、処方箋を書いてもらうこと。どの科で受診してもいいが、ニコチンパッチを出してもらえるかどうか、事前に電話で問い合わせてから診察を受けるといい。医療品だが、健康保険は適用されず、実費がかかる。 ニコチンガム ニコチンパッチと同様に、ニコチンを含んだガム。タールや一酸化炭素などの有毒成分は含まれておらず、ニコチンだけを含んでいる。やはり、禁煙中、たばこを吸いたいと思った時に使用するもの。 以前はニコチンパッチと同様に、処方してもらうには、医師の診断を受けていたが、平成13年9月から医師の処方箋がなくても、薬局・薬店で買えることになった。ただし、使用する際には、薬剤師の説明をしっかり聞こう。 公開日:2003年2月3日
やめたい人が80%。しかし成功するのは10%程度。みんなたばこをやめたいと思っているのに、できないのは果たして「意志が弱い」「情けないヤツ」だからでしょうか?禁煙を阻むたばこの依存症についてまとめました。 目次 喫煙は「病気」からくる!? たばこの依存症:ニコチン依存症 たばこの依存症:心理的依存症 喫煙は「病気」からくる!? たばこをやめたい人が80%。しかし成功するのは10%程度。みんなたばこをやめたいと思っているのに、できないのは果たして「意志が弱い」「情けないヤツ」だからでしょうか?禁煙に成功するなんて、とても強い意志の持ち主でないとムリなのでしょうか? 答えは「NO!」です。禁煙できないのは「ニコチン依存症(中毒)」と「心理的依存」という2つの依存症の病気がジャマをしているせいで、意志の強さとは関係ありません。 たばこの依存症:ニコチン依存症 肺から血液中に入ったニコチンは、6秒で脳に達し、心臓の鼓動は早まり、アドレナリン分泌の増加、脳が覚醒状態になります。しかし、この効果はたった30分。すると物足りなくなり、またニコチンによる脳の覚醒作用を求めて吸いたくなります。 ニコチンは体に対し、血液中のニコチン濃度を常に一定に保つようしむけます。やめようとすると「離脱症状」と呼ばれる「ニコチン切れ」が苦しい・イライラする・手がしびれるなどの状態を引き起こし、吸わせようとするのです。 ニコチンの依存性の強さはヘロインやコカイン並と言われます。「気持ちや意志の問題」で片付くほど生易しいものではありません。 たばこの依存症:心理的依存症 喫煙年数が長く、もはや喫煙が生活習慣になってしまっているために起こります。ずっと一緒に住んでいた人が突然出て行ってしまったら、誰だってショックを受けます。たまらなく寂しくなるはずです。それと同様の無意識の心理的依存がたばこにもあります。 たばこがストレス解消になっている人の場合、その人がたばこを吸わないでいたら身についていたはずの別のストレス解消方法が必ずあったはずです。しかし、その代わりに喫煙となってしまい、たばこへの心の依存を作ってしまいました。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因
禁煙は健康に良いということをのぞけば、苦しい・ツライだけのものと思っていませんか?ですが、禁煙に成功すると、たくさんの素晴らしいことが待っています。 目次 良いこといっぱい!禁煙効果 禁煙は医学的に効果が認められている 良いこといっぱい!禁煙効果 禁煙は健康に良いということをのぞけば、苦しい・ツライだけのものと思っていませんか?禁断症状に苦しみ「この1本が吸えないくらいなら、人生の楽しみなんてない」と思いつめ、また吸ってしまう人がいっぱいいます。しかし、そのトンネルを抜けられれば、素晴しいことが確実に待っています。実際、禁煙に成功した人がそれを一番よく知っています。 「禁煙で、こんな風になりました!」 禁煙4度目にて成功のパパ・Aさん 41歳 妻・子供2人 1日60本のヘビースモーカー 家と会社の往復だけで1日3000歩程度 つきあいの酒席も多く生活習慣病も心配 まずは禁煙から取り組んでみました ●家族に喜んでもらえた ウチではホタル族。それでもやはり臭いや灰皿、吸い殻が嫌われていたので「禁煙できたのねー!よかった!」と喜んでもらえ、少し誇りに思えました。また、家族が自分の病気を心底、心配してくれていたんだと、身にしみて感じました。 ●食べ物・空気がおいしくなった 「禁煙すると味が解るようになる」と聞いてはいましたが、本当にそうでした。始めて3日で、味噌汁の中に甘みやうまみを感じました。歩いている時、花の香りを感じてビックリしました。 ●こづかいや旅行費用ができた 1日750円はたばこに使っていたため、禁煙で1か月22,500円、1年で270,000円もの節約になりました。2人めの子供ができてから少し諦めていた家族旅行も毎年行けるとは! ●血圧が下がった 「高血圧」というほどではありませんが、医者に「生活上、注意してください」と言われていた血圧が、すぐに下がりました。 ●子供と遊べるようになった 以前はウチに帰ればすぐに寝てしまい、休日もダラダラしていましたが、体を動かすのが、さほど苦痛ではなくなってきました。親が喫煙者の場合、子供も将来喫煙しやすいと聞いていましたが、その心配もなくなりました。 ●気持ちが自由になった 外出した時の、ふと「たばこの火は大丈夫だったかな?」という心配がなくなりました。常にたばこ切れを心配し、たばこ、ライター、携帯用灰皿と持ち歩かなくてもよいので気楽になりました。 ●仕事の能率が上がった 仕事が煮つまるとストレス解消、能率アップとばかりに吸っていた、たばこ。しかし、むしろ禁煙してからの方が集中力がつき、能率は上がりました。 禁煙は医学的に効果が認められている 禁煙と禁煙時間による効果 禁煙時間 効果 20分血圧・脈拍・体温が正常になります。 8時間血液中の一酸化酸素濃度が正常化し、酸素濃度が正常に上がります。 24時間心臓発作のリスクが減ります。 2日以内末梢神経が再成長を始め、嗅覚・味覚が改善します。 2~3日ニコチンが体内から検出されなくなります。 3日気管支が緩み、呼吸が楽になります。 2~3週間循環器機能が良くなり、歩くのが楽になる。肺の機能は30%も良くなります。 1~9ヵ月咳、疲労感、けんたい感、息切れが減る。肺の細胞が修復されキレイになり、細菌感染が減ります。体にエネルギーがみなぎってきます。 5年以内肺がんで死亡するリスクが半分に減ります。 10年以内肺がんの死亡リスクが非喫煙者と同程度になります。ほかのがんのリスクも減ります。
たばこは吸い続けると、肺がん以外にもさまざまな病気のリスクを恐ろしく高めるものです。きちんと知っておきましょう。たばこのもたらす病気のリスクをまとめました。 目次 ちょっと怖くなる数値 ほかにもこんな怖いこと ちょっと怖くなる数値 「たばこは健康に良くないって言うけど、肺がんになるかもっていうくらいでしょ?」と思っているあなた! たばこは吸い続けると、肺がん以外にもさまざまな病気のリスクを恐ろしく高めるものです。きちんと知っておきましょう。 非喫煙者と比較した喫煙者の死亡率(男) 平山 雄 1990 ほかにもこんな怖いこと 1本吸うと、寿命が5分30秒短くなります。 妊娠中の喫煙は障害児の原因となりえます。早産、出生率低下の原因ともなりえます。乳幼児突然死症候群にも関与しています。 喫煙すると多くのビタミンを破壊してしまいます。わずか2本のたばこで1日に必要なビタミンが失われてしまいます。 がんで死亡した人のうち、30%は喫煙が原因でした。 喫煙者は非喫煙者に比べて、若死の危険性が70%も高くなります。 全般的に病気にかかる危険性は、たばこを吸う人の方が2倍高くなります。 たばこの煙には約4,000種類もの化学物質が含まれ、現在有害物質と確認されているものが約200種類、発がん物質は約4種類もあります。 夫が1日20本以上吸う場合、非喫煙者の妻の肺がん発生率は2倍となります。 同室の人が1日50本吸うと、非喫煙者も10年で心筋梗塞、狭心症の発生率が9倍以上になります。 一服するたびに、ヒトは軽い一酸化炭素中毒を起こしています。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因
たばこを手に「禁煙したいんですけどね」と苦笑している人、周りにいませんか。あなたはどうでしょうか?今回は、やめる手順を「たばこ」を例にアドバイスします。お酒や甘いものなど、ほかの悩みに応用できることもあるので、「自分には関係ない」と思わずに、知っておきましょう。 目次 やめるためには準備が必要 イライラ解消リラックス法 やめるためには準備が必要 今までしみついた習慣をやめるためには、あらかじめその習慣に対する自分の傾向と対策を把握しておく必要があります。 下の手順にそって、さっそく分析開始! 1. 禁煙する理由の確認 禁煙する個人的な理由を3つほど書き出し、見えるところに貼っておきます。 例:体調が悪いため。将来の健康によくないから。 (息切れがするから。口臭がひどいから。子どもがたばこの煙で咳き込むからなど、なるべく具体的にします。) 2. 喫煙行動の観察 ある1日、喫煙をするたびに、「どんな状況で、○○をしながら吸った。そのとき、おいしかったか?たばこを吸ったことによる気持ちの変化」などを書き出します。 例: 7:00 起き抜けに新聞を読みながら → 頭がスッキリした 9:00 出社後、コーヒーを飲みながら→特に感じず。やっぱ習慣かな 10:00 仕事中、考えをまとめるため→考えはまとまらなかった。でも落ち着く 24:00 寝る前の一服→特に感じず。寝る前の儀式だよな 3. 傾向の分析と対策づくり 「2」で作ったメモを見ながら対策を考え、メモの横に具体的に書きだします。「イライラ解消法」を参考に、代用できるところは代用します。 例: 7:00 起き抜けに新聞を読みながら → 起き抜けはまず、洗顔、歯磨きをする 9:00 出社後、コーヒーを飲みながら→コーヒーはやめて、持参のこぶ茶にする 10:00 仕事中、考えをまとめるため→イライラしたら、キシリトール入りのガムを噛んでみる 24:00 寝る前の一服→水を味わいながら飲む 4. 禁煙日の設定 たばこは悪習慣、体に悪いと言っても、喫煙者にとってストレス解消になっていることも事実です。そのため、仕事などが忙しくてストレスがたまりやすいときに、無理をして始めると失敗することが多いようです。 全面禁煙は、仕事にゆとりのあるとき、正月休みなどに行うことにして、当面は銘柄を軽いものに変える、本数を半分にするなどの目標にした方が成功することもあります。 ただし、一度決めた禁煙開始日はちゃんと守ること。 イライラ解消リラックス法 たばこに含まれるニコチンは習慣性のある物質です。このため、禁煙するとさまざまな離脱症状が出現します。そこで、その間のイライラなどと戦う手段を紹介しましょう。離脱症状は、通常禁煙3日目がピークとなるようですが、おおむね1週間、長くても2~3週間で消えてしまいます。リラックスして我慢です。 深呼吸をする お腹に空気を送り込む腹式呼吸をしてみます。胸に手をあてて、深く息を吸ったり吐いたりしてみましょう。胸が動かないようならOKです。 呼吸法~鼻とお腹で、ゆったり深~く 水やお茶を飲む ニコチンの離脱症状のひとつとして、やたらとのどが渇くことがあります。そんなときは水やお茶を飲んでしのぎましょう。 なお、禁煙中はコーヒーやアルコールなど、刺激のある飲み物は避けましょう。 代用品を口に 吸いたくなったときに、まずは3分我慢。それでも気持ちがおさまらないときは、糖分の少ないガムや仁丹、干し昆布をかみます。 歯みがき 食後の一服願望を抑えるため、3食後に歯をみがき、口の中を清潔に保ちます。 時計を見る 「吸いたい」衝動が襲ってきたら、時計をにらみます。衝動がおさまるまでの秒数を数えます。 歩きまわる 気分転換の一服願望を抑えるために、仕事が一段落ついたときなどは、軽い体操や散歩をします。会社内の階段を一往復してみては? 1日にたまったイライラを解消する 自宅でのひとときを、ゆっくり楽しくすごせるような手段を見つけましょう。 音楽でもいいし、香りなどにこだわってみてもいいでしょう。 自宅でも、コーヒーやアルコールなどは避けます。代わりに、ホットレモネードやこぶ茶など、手製の飲み物にこってみるのもいいでしょう。 このほか、ネット上で禁煙仲間を探してみるのも、ひとつの手です。アルコールなどの依存症では、同じ悩みを持つ人たちが集まってお互いを励まし合う、グループ治療がよく行われています。禁煙についても、お互いにアドバイスし、励まし合う仲間の存在は大きいはずです。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因
知らぬ間に自分自身を追いつめる「中毒」「依存症」などと呼ばれる悪習慣についてまとめました。物から人まで、執着するものがいろいろあるようです。 目次 やめられない悪習慣、「嗜癖」(しへき) 嗜癖にはどんなものがあるの? やめられない悪習慣、「嗜癖」(しへき) これまで、日本で漠然と「○○中毒」「依存症」と言われていた、自分を破滅に導くような悪習慣。主にアルコール問題などにかかわっている専門家の間で嗜癖(アディクション)と言われるようになったようです。嗜癖とは一体どういうことなのでしょうか? 最初は、「ストレス解消してリラックスしたい」「かっこよく見せたい」など、自分を向上させたいという動機で始めることが多いようです。 習慣を繰り返すうちに、陶酔(快体験)を感じるようになります。 「こんなときたばこを吸えばいいんだ」ということを体が覚え始めます。 「ストレス解消のために始めたのに、それがないとかえってストレスがたまってしまう」など、習慣を続けるうちにそれ自体が目的になってしまいます。 自分の意志では簡単にブレーキがかけられなくなります。 このような状態を嗜癖と言います。 最終的に、嗜癖が自分を傷つけます。 もちろん、嗜癖の対象によって早い遅いの違いはありますし、体質の違いもあるでしょう。でも、自分は大丈夫と必ず言いきれるでしょうか。 ある日突然、致命的な宣告を受けることだってありえるのです。 嗜癖にはどんなものがあるの? 物質嗜癖 たばこ、アルコール、食べ物、薬物など、物質に執着して依存していくことです。嗜癖の中ではもっともわかりやすく、当てはまる人も多いのではないでしょうか。 例えば、アルコール依存症です。日本には250万人いると推測されていますが、そのほとんどが中年サラリーマンではないかと言われています。統計的には40代後半がもっとも多いようです。 行為過程嗜癖 最初に述べたパチンコなど、ギャンブル依存症が典型的です。このほか、最近話題になっている、必要でないものまで何でも買ってしまう買い物依存症も当てはまります。のぞきや痴漢、盗癖、家庭内で繰り返される暴力なども同じです。 もちろん、ギャンブルにしても買い物にしても、たまにしかやらないとか、財布と相談しながら計画的にしている場合は別です。お金のかかる趣味が、すべて嗜癖というわけではありません。 関係嗜癖 この嗜癖のことを「共依存症」ともいいます。 アルコール依存症の配偶者を持つ人たちの中には、配偶者が飲み代で生活費を使い果たし、酔いつぶれて暴言や暴力をぶつけても、彼らから決して離れようとせず、世話をやくのが生きがいになっている人がいるといいます。 このように、ある特定の人との人間関係に依存し、世話を焼くことでしか自分の価値を認められないことをいうのです。 子どもの成績を病的に気にし、塾やおけいこ通いに奔走する親もこのケースにあてはまるかもしれません。 このように、嗜癖といっても物から人まで、執着するものがいろいろあります。
肺活量は身長、性別、年齢、姿勢などによって違う 肺の換気能力がよく分かる数値が肺活量です。 普通の呼吸(1回の呼吸気量)から、思いきり息を吸い込み(予備吸気量)、次いで吐き出せる限りの息(予備呼気量)を吐き出した時の全呼吸気量をいいます。 肺活量は身長、性別、年齢、姿勢などによって違います。18歳以上の成人の推測正常値は次の公式によって得られます。 男性={27.63-(0.112×年齢)}×身長 女性={21.78-(0.101×年齢)}×身長 普通の呼吸で1回500mlの空気が出入り 健康な成人では男性は3000~4000ml、女性は2000~3000mlくらいになります。スポーツ選手の中には、7000mlという高い肺活量を持つ人もいます。 普通、静かに呼吸するときは1回あたり500mlの空気が出入りします。激しい運動の最中にはこれが4000mlにもなります。
たばこは酒より悪くない? 泥酔してへたりこむ人を見れば「お酒に比べれば、たばこなんてカワイイもの」と思えます。「たばこより仕事のストレスの方がキツイよ」と思う毎日もあります。ある日、突然、事故で亡くなってしまう人もいます。 しかし実際に、たばこによる死亡リスクを推定してみると、そのリスクの高さ・キケン度は明らかです。 下の表が示す通り、100万人あたりの死亡数を見ると、アルコール関連が541人、交通事故が187人に対し、たばこは能動喫煙で7,000人にもなります! しかし、逆に、たばこをやめさえすれば、このキケンなリスクから脱することができるのです。 米国における種々の活動による推定リスク:1985年 活動または原因 100万人あたりの年間死亡数(人) 能動喫煙 7,000 アルコール 541 事故 275 疾患 266 交通事故 187 アルコール関連 95 アルコール非関連 92 仕事 113 水泳 22 受動喫煙 19 そのほかの大気汚染 6 サッカー 6 感電死 2 落雷 0.5 蜂刺され 0.2 バスケットボール 0.02 全死因 8,748 全てのがん 1,917 出典:U.S. Department of Health and Human Services 1989より 10万人あたりの生涯リスク 活動または原因 100万人あたりの年間死亡数(人) 喫煙で早死にする 50,000 喫煙による肺ガンで死ぬ 20,000 受動喫煙で早死にする 5,000 受動喫煙による 心筋梗塞で死ぬ(a) 3,000 低体重児 2,000 気管支喘息 2,000 肺がんで死ぬ(b) 1,000 乳幼児突然死(c) 100 早死に(a+b+c) 4,100 交通事故死 1,000 アスベスト使用住宅に住み肺がん死 10 環境汚染物質の許容基準 1 胸部X線撮影(1回)で肺がんになる 0.5 胸部X線撮影(1回)で白血病になる 0.05 出典:松崎道幸 1998より
期待とのギャップ 禁煙効果をチェックリストで確認した結果、以前期待していた通りの効果が得られたでしょうか。それぞれの場合のコメントを参考にしてください。 期待通り、または期待以上の効果が得られた 期待通りの効果が得られて良かったですね。禁煙を続けることで、更なる効果が期待できるので、これまでどおり頑張ってください。 また、プラス効果があったと感じたことをぜひ、フォーラムでほかの禁煙チャレンジャーに伝えてください。 期待通りの効果が出ていない 禁煙によるどのような効果を期待していたのでしょうか。それぞれの効果によって、自覚できるようになるまでの期間に差があります。期待通りの効果が得られなかったといってあきらめないでください。 特に、肉体的な効果は、発現までに時間がかかります。運動の効果が3ヵ月くらい続けて初めて体感できるのと同じことです。つまり、この時期までに自覚できることの多くは、持ち物が減ってきたとか、眼鏡が汚れなくなる、小遣いが減らなくなったなどの物質的なことか、人に不快感を与える心配がなくなったり、火事の心配をしなくても良くなったなどの心理的なことです。 もう少し我慢して頑張ってください。
禁煙後は、口中のニコチン臭が消え、味覚も鋭敏になるので、食べ物がおいしく感じられます。また、胃の調子も良くなり、口さみしさも加わって食べ過ぎになる傾向があります。 禁煙すると体重が増える理由として、以下のようなものがあります。 ニコチンによるエネルギー消費作用がなくなるため たばこを吸っていた時は、ニコチンの作用でエネルギーが余分に消費されていたのが、禁煙するとその作用がなくなり、同じ物を食べても太りやすくなります。 食欲が増加するため 禁煙すると、食べ物の味がよく分かるようになったり、胃の調子が良くなります。そのため、つい食べ過ぎてしまい、太りやすくなります。 たばこの代わりに、甘い菓子類を口にするため 禁煙後、口寂しさを紛らわしたり、ストレスを解消するために、甘いお菓子や脂肪の多いスナック菓子、ジュースや炭酸飲料などを取り過ぎると太りやすくなります。 次の「肥満の予防」へ
食習慣を変える 禁煙後になぜ肥満になりやすいかを考え、上手な体重の調整法を考えてみます。体重が増え過ぎないようにするには、摂取エネルギーと消費エネルギーの収支をマイナスに保つことが大切です。そのためには、食べ物からの摂取エネルギーを抑える方が、運動による消費エネルギーを増やすよりも効果が大きいので、特に食事面に留意することが重要です。 規則正しく3食きちんと食べる 腹八分目で抑える よくかんでゆっくり食べる(1口につき15回以上かむ) 低カロリーの食品を多く取る(キュウリ、ナスなどの野菜、海藻、きのこなど) 辛い味付けは、ご飯の量を増やすので避ける 油を多く使った料理は控える(揚げ物、いため物など) おかずは、なるべく小さな器に盛って食べる アルコールは控える アルコールは、食欲中枢を刺激するほか、理性による抑制を無くします。また、アルコールやそのおつまみに含まれるカロリーも無視できません。 〈ご飯1杯…約200kcal〉 200kcalをお酒に換算すると… 日本酒1合 ウイスキーシングル3杯(90ml) ビール3杯(600ml) 口寂しさを上手にしのぐ 体重を増やさずに口寂しさを紛らす方法として、以下のことがおすすめです。 水やお茶を飲む 比較的糖分が少ないたばこ代替品(歯磨きガム、干昆布、仁丹など)を口にする 歯を磨く たばこに代わるストレス対処法を実行する 禁煙後のストレス対処法として、以下のことがおすすめです。 リラクセーション法 タイムマネジメント法 セルフトーク法 体重をチェックする 毎日、起床時、朝食後、夕食後、就寝前の4回体重を測って、グラフに記録します。喫煙行動の記録と同様、毎日の体重を記録するだけでも理性的な抑制力がはたらき、体重の増加を防ぐ効果が期待できます。 食事日記を付ける 体重のチェックと合わせて、食事日記を付ける。食事日記には、食事の種類、量、時刻、場所などを記録します。日記を付けることにより、食べた物がどのように体重に反映するのかがよく分かり、食べ過ぎを抑えるのに役立ちます。 運動を組み合わせる 食事だけで体重のコントロールをすると、幾つかの弊害が出てしまいます。脂肪だけでなく、大切な筋肉も落ちてしまうことや、体重の減少効果が途中で止まってしまう「適応」現象がみられることなどがそれです。 そこで、毎日無理なく続けられる運動を見つけて、食事による方法とうまく組み合わせます。 〈毎日無理なくできる運動〉 車通勤をやめて、電車や自転車、徒歩で通勤する 電車通勤の場合、1駅手前で電車を降りて歩く エレベーターを使わずに階段を使う 万歩計を購入して1日1万歩以上歩くよう心掛ける 散歩やジョギング、縄飛び、水泳などを定期的にする
たばこの害について自分なりのイメージを持つ 体験をもとに、たばこの害について自分なりのイメージを持つようにします。例えば、風邪をひいてもたばこを吸い続けてせきが止らなくなった時のことや、たばこを吸って真っ黒になった肺の写真のように、視覚的に印象に残ったシーンを思い浮かべると良いでしょう。 禁煙しようと思った理由や禁煙中の努力を思い浮かべる 禁煙したいと思った理由を思い返して、禁煙継続の必要性を再確認します。 また、これまでの禁煙の努力を思い浮かべて、それが報われるよう、これからも頑張るようにしましょう。 禁煙して良かったことを考える 禁煙して良かったと感じていることを絶えず心に留めて、禁煙したことの喜びを味わいましょう。 気楽な気持ちで禁煙を続ける 「今日1日禁煙しよう」というように、目標を身近なところに設定して、気楽な気持ちで禁煙に取り組みます。 「今後ずっと禁煙しよう」と考えると、それがむしろ心理的なプレッシャーとなって、禁煙の失敗につながる場合もあるので、注意が必要です。 禁煙できたことに自信を持つ 無理かもしれないと思っていた禁煙を達成できたことに自信を持ちましょう。しかし、過信は禁物です。 回りの人に禁煙を勧める 禁煙して1ヵ月以上たったら、自分の回りでたばこを吸っている人に禁煙を勧めてみます。人に禁煙を勧めることは、自分の喫煙再開の防止に役立つだけでなく、非喫煙者としての自分自身の立場を社会の中で定着させるのにも有用です。
たばこの香りのアナタが好き? カッコよくたばこをふかすアナタ。隣には素敵な女性や、男性がいて、こんなコトバをささやいてくれる…。 しかし、そんな映画のようには、ナカナカいかない今日この頃。 それは決して、アナタ自身に魅力がないからではありません。 実はアナタのたばこのニオイが、思いのほか、嫌がられているのです。 下のアンケートは「生活の中の気になるニオイ」について。 各世代、男女とも、ダントツなのです。 三菱電機による集計 1997年11月調査 若い人にほどケムたがられていた! 年代別で見ると、下の図の通り、特に若い人ほどたばこに対する目は厳しいのです。 最近、特にケムたがられる愛煙家。今どき、映画のようなシーンは、まず、たばこのないところから始まるのかも知れません。 三菱電機による集計 1997年11月調査
たばこ産業は国を潤すの? 近ごろの不景気。少しでも活発な産業が欲しい。 たばこ産業は下の図の通り、賃金・税金を払い、紙やフィルター、葉たばこなどの素材仕入れはもちろん、多くの広告や輸送などによって、日本の経済に貢献しています。 そして、深刻な国の財政赤字。 喫煙者は「たばこを吸って、より多く納税し、社会貢献している」と言います。 それらのメリットは年間合計、約2兆8千億円にもなります。 たばこ産業経済メリット しかし、日本にとってのデメリットはもっと大きい! けれど、吸っているアナタが、たばこのせいで病気になったら? もちろん医療費がかかります。また、その病気が重ければ、その間、仕事もできなくなります。たばこで火事を起こすかも知れません。 吸っているのは個人でも、これらにかかる保険や税金、大事なアナタが働けなくなること、そうした積み重ねが日本経済にとって、大きなマイナスになるのです。 そのコストは推定、年間約5兆6千億円にもなります。 たばこ産業社会コスト 結局は、たばこによって国全体で約2兆8千億円も損をしているのです! 本人にとっても、経済全体にとっても、アナタが毎日、健康でいてくれることが何よりなのです。 出典:日医雑誌 第16巻・第4号
がんは、たばこより遺伝の問題? たくさんのたばこを吸っていても、がんにならずに往生する人もいれば、吸わないのに肺がんにかかってしまう人もいます。そこで、たばこより、遺伝や体質がモンダイなんだ!と言う人もいるでしょう。両親はヘビースモーカーだったけれど、がんは大丈夫だったから、その二人の子どもである自分も大丈夫!と。 近年、研究により、確かに遺伝子とがんの関係は深いという事が解ってきています。 実際、遺伝子とがんは、どのように関わっているのでしょうか? カラダの中には下のように、発がん性を、ますます高めてしまう酵素と、無害にするための酵素という二種類の酵素があります。そして、それらの酵素をコントロールする各遺伝子にもいくつかのタイプがあり、その組み合わせによって、たばこを吸った結果、がんになるリスクが違ってきます。どんなタイプの遺伝子が、がんになりやすいのでしょうか? 発がん性を、ますます高めてしまう酵素をコントロールする 遺伝子CYP1A1の中のMap1多型 →A、B、Cの3型がある。 うち、C型が肺がんのリスクが高い 発がん性のある活性代謝物を無害化しようとする酵素をコントロールする 遺伝子GST1 →〔-〕と〔+〕がある。 うち、〔-〕が肺がんリスクが高い 喫煙率のレベル別に見た、CYP1A1とGST1の遺伝子の組み合わせに対する肺扁平上皮がんの相対危険(オッズ比) これらの遺伝子のタイプは、親から子へといった単純な遺伝ではありません。両親が大丈夫だったとしても、あなたも肺がんにならないという保証は何ひとつありません。また、たとえ、がんになりにくいタイプの遺伝子だったとしても、グラフの赤い部分が示す通り、たばこを吸った本数(累積喫煙率)が多くなれば、確実に肺がんのリスクは高くはねあがってしまうのです。
たばこやめたら、こーんなにスッキリ! 長年の喫煙者の方は「今さら、たばこをやめたってしょうがないよ」と思っていないですか?そんなことは、決してありません! 1990年の米国公衆衛生長官の報告書の内容には、禁煙による健康改善への効果が記されています。 禁煙は、性別、年齢、喫煙関連疾患の有無を問わず、すべての人々に大きくかつ迅速な健康改善をもたらす。 禁煙者は喫煙継続者よりも長生きをする。例えば、50歳以前に禁煙した者は、その後15年間、喫煙継続者に比べて、死亡率が半減する。 禁煙により、肺がん、そのほかのがん、心臓発作、脳卒中、慢性肺疾患のリスクは減少する。 妊娠前、あるいは、妊娠3~4か月目までに妊婦が禁煙した場合、低体重児が生まれるリスクは、非喫煙妊婦と同程度まで下がる。 禁煙による健康改善の大きさは、禁煙後の体重増加(平均2.3kg)や、有害な精神的影響よりも明らかに大きい。
軽いたばこなら、健康にもオッケー!? ちょっとオシャレで、ニオイも、ニコチン、タールも少ない。 そんな軽いたばこなら健康にも大丈夫? 残念ながら、下のグラフで見ても、たばこ自体の「軽さ」とカラダへの「軽さ」は関係がありません。 たばこがやめられない人は、多くの場合「ニコチン依存症」という病気にかかっています。 「依存症」ということは、カラダが自分で血液中のニコチン濃度を、あるレベルに保とうとしてしまいます。 「軽い」たばこでも、深く吸ったり、本数を増やしたり、根元まで吸ったりしながら、自分のカラダが欲しがるニコチンを無意識に摂取してしまうのです。
たばこは単に「好きだから吸っている」のではない! 「ホントは、たばこをやめたいんだよなあ」そう思っている人は、実は大勢います。たばこが色々な面で良くない事も充分に知っています。何度も禁煙しては失敗している人もいます。 1988年米国公衆衛生長官の報告書によると、喫煙者の70%が、たばこをやめたいと思っているのに、禁煙できない。または禁煙しても、50~75%が1年以内にまた吸ってしまうという事です。 では、何故やめられないのでしょう? 実は、2つの依存に禁煙をジャマをされているのです! 「意志が弱いから…」と言われてしまう人もいます。しかし、これは個人の意志の問題というより「ニコチン依存症」という「病気」にかかっているからなのです。 たばこの中のニコチンは、麻薬やアルコールと同じ依存性薬物です。急性ではありませんが、依存性の高さは、ヘロイン並と言われています。また、たばこは毎日吸う事で、心理的にも依存してしまいます。 1988年 米国公衆衛生長官の報告書の結論 紙巻たばこや、そのほかのたばこは依存性がある ニコチンは、依存の原因となるたばこ煙中の薬物である たばこ依存となる薬理学的および行動学的なプロセスは、ヘロインやコカインの場合と同様である 私はニコチン依存症? では具体的には、どんな人が依存症なのでしょうか? 以下は、1994年米国精神医学会による分類です。 まず、自分にあてはまる項目を、数えてみてください。 著名な耐性があり、反復使用により使用量が増加する 特徴的な離脱症状があり、離脱症状の緩和または回避のために使用する 本人の意図以上に多量、長期間使用する 禁煙または節煙に対して、持続的な欲求がある。 あるいは努力するが失敗する 薬物の入手および使用、その影響からの回復に長時間を費やす 使用により社会的、職業的、娯楽的活動が不可能となったり制限される 使用による身体的、心理的問題の発生・悪化を知りながらも使用する 12か月間に、このうち3つ以上みられると薬物依存症と診断される。 上の分類の項目 2.でいうニコチン離脱症とは、少なくとも数週間以上、毎日たばこを吸っていた人が突然、禁煙や減煙をしている時、24時間以内に、下の4つ以上の兆候が起こることとされています。 不快または抑うつ的な気分 不眠 易刺激性, 欲求不満または怒り 不安 集中困難 落ち着きのなさ 徐脈 食欲増加または体重増加
健康に長生きをしよう! たばこを吸わない人と喫煙者、どのくらい人生の長さや健康に違いがあるのでしょうか? 1日のたばこの本数による人生の長さの違いを見てみると、下のグラフの通り、吸わない人と、1日25本以上のヘビースモーカーとでは、70歳の時点での生存率が、80%と50%で約1.5倍以上もの違いになっている事が解ります。さらに85歳になると33%と8%となり約4倍にもなっているのです。 すなわち、喫煙によって死亡リスクが上がり、人生の長さが違ってくる事は明らかです。 イギリスで男性医師34,439人を1951年から40年間追跡したDollらの調査結果
喫煙は、肺がんはもちろん、こんな病気にも関係が? 健康で長生きするには、がんのほかに脳卒中や心疾患なども心配…。 それらの病気も喫煙との関係が指摘されています。それは、どの程度なのでしょうか? 85歳の時点で、肺がんでは、非喫煙者0.8%に対し1日40本の喫煙者では9.4%と約11.8倍も死亡リスクが高くなり、虚血性心疾患でも3.8%と14.3%と約3.8倍、脳卒中では12.5%と16.5%と約1.3倍と、いずれの病気においてもたばこによって、かなり死亡リスクが高くなってしまうことが下のグラフで解ります。 中村正和 1997
たばこをやめると太る?という話もありますが、禁煙のストレスによる飲酒などにより一時的にBMI、総コレステロール値、最大血圧値、最小血圧値などが増加することが分かっています。しかしそれも一時的なもの。しっかり禁煙し、健康な生活を送りましょう。 目次 禁煙すると「一時的」ではあるが体重やBMIが増加する可能性がある 禁煙すると「一時的」ではあるが体重やBMIが増加する可能性がある やせるために、たばこを吸っていると言う人がいます。たばこをやめたら太るから嫌だと。 また、禁煙でストレスがたまるから、かわりにお酒を飲んでしまい危ないと言う人も。 確かに、下のグラフのように、一時期BMI(体格指数)やコレステロール値が上がったり、平均2~3kg体重が増えることはあります。 1985-94年循環器検診 禁煙後3ヵ月~1年 paired T検定による 注: BMI(体格指数):体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) 例: 身長170cm、体重70kgの場合 70(kg)÷1.7(m)÷1.7(m)=約24 日本肥満学会では25以上が肥満とされています。 しかし、2~3kg体重が増加したとしても、それは、たばこにムリヤリ削られていた、あなたの健康な時の分。 血圧も上昇しますが、決して高血圧になるということではありません。非喫煙者と同じ程度に快復します。 また、禁煙によってアルコール中毒になるということもありません。 むしろ、カラダもアタマもスッキリする生活が、その先にはあります。 BMIチェックはこちら
ストレス対処法 長く喫煙を続けているとニコチン依存症になっているので、禁煙には、さまざまな離脱症状(禁断症状)を伴うことが普通です。これは、体内からニコチンが排出されるために起こるものです。 通常、禁煙後3日位がピークで、その後徐々に軽快してゆき、1週間から長くても2~3週間で消失します。 離脱症状に打ち勝つには、次のような方法が考えられます。 ストレスを上手に解消する方法です。マスターすると、禁煙以外にもさまざまな場面で役立ちます。 代償行動法(たばこ代替物のヒント) 喫煙の代わりに何か別の行動を起こして、吸いたいという気持ちを切り替える方法です。たばこを吸いたいという欲求は、普通数分間で収まります。この間を乗り切れば無理なく吸いたい欲求を抑えて、禁煙を続けられます。この間、たばこの代わりになるものを見付けたり、気分を切り替えるなどの方法があります。自分に合った方法を見つけて、トレーニングしておきます。 行動パターン変更法 喫煙は生活習慣化しているので、毎日の習慣行動と深く結びついています。 生活行動を変えることで、喫煙との結びつきを断ち切り、吸いたいという気持ちに陥らないようにします。 環境改善法 何とはなし、という半ば無意識の喫煙を防ぐため、身の回りを整理して、喫煙のきっかけを減らす方法です。
効果のコメント チェックリストに記入した各項目について、コメントを加えました。参考にしてください。 せきやたんがとまった 禁煙により、たばこの煙によって運び込まれる種々のごみや気道刺激物質が減るため、せきやたんが少なくなります。禁煙開始後間もない頃は、気管の繊毛が修復され始め、今まで肺内に蓄積されたタールなどを体外に出そうとするため、逆にせきやたんが増えることもあります。しかし、2~3週間もすると改善してきたはずです。 もしも、禁煙後1ヵ月以上過ぎてもせきやたんが続く時は、たばこによるものではないかもしれないので、胸部のX線撮影をしてもらいましょう。 呼吸が楽になった 禁煙により呼吸が楽になる原因には、次のようなものが考えられます。 血中の一酸化炭素が消失して、酸素と赤血球中のヘモグロビンとの結合がスムーズに行われるようになったことで換気効率が良くなった ニコチンにより収縮していた気道や毛細血管が拡張することによって換気効率が良くなった 末梢組織におけるガス交換がうまく行くようになった このように体中で、禁煙の効果が出てきています。その調子で頑張りましょう。 目覚めがさわやかになった 今までの起床時は、体内のニコチンが欠乏した状態だったために、不快な症状があったかもしれません。しかし、ニコチンの離脱症状が無くなったあとは、さわやかな朝を迎えていることでしょう。この朝がいつまでも続くように禁煙を継続してください。 歯を磨く時の吐き気がなくなった 禁煙により、胃の調子が良くなり、胃酸の逆流が起こりにくくなって吐き気が少なくなったはずです。また、歯のヤニが減ってきたので、強く磨く必要がなくなったのかもしれません。 食べ物の味が良くなり、食欲が出てきた 禁煙により、口の中のニコチンやタールなどのイヤなにおいが消え、食事のにおいがはっきり分かるようになったことが、大きな原因です。それに加えて、味を感じる味蕾(らい)細胞は、新陳代謝が早いため、たばこによる障害からすぐに回復し、味がよく分かるようになってきたのです。 さらに、禁煙によって腸管の運動が活発になるので、食欲も出てきます。 このため、禁煙後には体重が増えやすいので、禁煙継続が安定してきたら、体重のことも考慮しながら禁煙を続けます。 胃の調子が良くなり、食欲が出てきた 禁煙により、胃の調子が良くなります。これはこれまで、口の中からニコチンやタールが胃に流れ込み、胃がもたれていたことや、ニコチンによる血管収縮で胃粘膜の血流が低下して胃の運動が低下していたことなどが改善されたためです。 しかし、食欲が出ると体重が増加しがちです。禁煙継続が安定してきたら、肥満対策にも気を配りましょう。 顔色が良くなった 禁煙により、皮膚の毛細血管の血流が良くなって顔が赤く見えることや、肺での酸素化が良くなり血液の色がより赤くなってきたことなどが原因です。 また、家庭内の鏡や電灯などの表面に常に付いていたたばこのヤニによる汚れが無くなって、クリアに見えるために、顔色が良くなった感じがするということも考えられます。 他人から見ると、いつも煙越しに見ていた顔が直接見えるので、顔色が良くなったと言われるのかもしれません。 肩凝りがなくなった 肩凝りは、肩の筋肉に疲労物質が溜まることにより引き起こされます。禁煙により、毛細血管の血流が良くなり、疲労物質が筋肉より洗い流されることで肩凝りから開放されます。この状態が続くように禁煙を続けませんか。 花の香りがよく分かるようになった 禁煙により、鼻中にあったたばこのにおいが消えたことと、においを感じる細胞が回復したことにより、外界のにおいが敏感に分かるようになったのです。 これを機に、リラクセーションのためにアロマテラピーでも始めてみませんか。たばこでは得られなかったようなリラックスした気分が得られるかもしれません。 カラオケで声がよく出るようになった 禁煙により、呼吸が楽になったこと、タールで汚れた声帯がきれいになって動きやすくなったことから、声がよく出るようになったのです。また、禁煙しているとカラオケボックス内の空気も汚れず、声が出やすいのかもしれません。 眼鏡のレンズの汚れが少なくなった たばこの煙は直接眼鏡に当たっていたので、禁煙開始後間もなく感じられるメリットです。この効果は、周囲のたばこを吸わない人にも出ているので、きっと喜ばれているはずです。 人に不快感を与える心配が無くなった 周りの人に気を使いながら吸っていたたばこは、さぞおいしくなかったでしょう。非喫煙者にとってたばこの煙は、喫煙者の想像をはるかに超えて嫌なものです。禁煙は、自分自身だけでなく、家族や知人など周りの人も非常に喜んでいることを知っておきましょう。 たばこやライターなど、持ち物が少なくなった 最近はたばこ、ライター、携帯電話、モバイルパソコンなど、持ち歩く小物は増える一方です。禁煙することで、たばこ、ライターを持たなくて良くなり、その分、身軽になったわけです。 小遣いが減らなくてすむようになった 250円のたばこなら、一日一箱吸うと1週間で1750円、1ヵ月では、約7500円、1年では、なんと約9万円の節約になります。禁煙を1年間続けて、浮いたお金で小旅行などに行くのもいいアイディアです。 火事の心配をしなくてすむようになった 火事の原因の多くは、たばこの不始末です。禁煙はたばこによる火事を起こす心配がなくなったことでもあります。 仕事や家庭でも自信がつき、人生観が変わった 禁煙は、喫煙者にとって非常に困難なハードルです。これを越えられたことは非常に誇らしいことで、称賛を受けるに値します。これは大きな自信につながります。 次の「禁煙効果の確認」へ
禁煙効果のチェックリスト 禁煙をして良かったことをチェックリストに記入して確認してみましょう。 また、効果の各項目へのコメントがありますので、参考にしてください。 禁煙して良かったと感じていること 最初に感じた時期 □せきやたんがとまった 禁煙 日目 □呼吸が楽になった 禁煙 日目 □目覚めがさわやかになった 禁煙 日目 □歯を磨く時の吐き気がしなくなった 禁煙 日目 □食べ物の味が良くなり、食欲が出てきた 禁煙 日目 □胃の調子が良くなり、食欲が出てきた 禁煙 日目 □顔色が良くなった 禁煙 日目 □肩凝りが無くなった 禁煙 日目 □花などの香りがよく分かるようになった 禁煙 日目 □カラオケで声がよく出るようになった 禁煙 日目 □眼鏡のレンズの汚れが少なくなった 禁煙 日目 □人に不快感を与える心配がなくなった 禁煙 日目 □たばこやライターなど、持ち物が少なくなった 禁煙 日目 □小遣いが減らなくて済むようになった 禁煙 日目 □火事の心配をしなくても済むようになった 禁煙 日目 □仕事や家庭でも自信がつき、人生観が変わった 禁煙 日目 □そのほか 禁煙 日目 チェックリストを終えたら次の「禁煙効果の確認」へ
行動パターンの変更 喫煙と結びついている生活行動パターンを変更して、吸いたい気持ちを起こりにくくする方法です。 具体例 洗顔、歯みがき、朝食など、朝一番の行動の順序を変える いつもと違う場所で昼食を取る 食後早目に席を立つ コーヒーやアルコールを控える 食べ過ぎない 過労を避ける 夜更かしをしない 電話を掛ける時には、いつもたばこを持っていた手で受話器を持つ …など 環境改善法 喫煙のきっかけとなる環境を改善し、吸いたい気持ちを起こりにくくする方法です。 具体例 たばこ、ライター、灰皿などの喫煙具を処分する たばこが吸いたくなる場所を避ける(喫茶店、パチンコ店、飲み屋など) たばこが吸えない場所を利用する(図書館、映画館など) 喫煙者に近づかない たばこを吸わない人の横に座る たばこを買う場所に近づかない 自分が禁煙したことを身近な人に言う 「禁煙中」のバッジや貼り紙をする 周囲の喫煙者にたばこを勧めないように頼んだり、近くで吸わないようにお願いする たばこをから話題をそらす …など 代替行動法 喫煙の代わりにほかの行動を実行し、吸いたい気持ちをコントロールする方法です。 具体例 深呼吸をする 水を飲む 散歩や体操などの軽い運動をする 歯をみがく シャワーを浴びる 糖分の少ないガムや干昆布などをかむ 机の引き出しなどの整理をする 音楽を聴く 時計を見て吸いたい衝動が収まるまでの時間を数える たばこ以外のストレス対処法を見つける …など
吸いたくなるきっかけのチェックリスト まず、たばこを吸いたくなるきっかけをチェックしましょう。 それぞれの状況でどのくらいたばこが吸いたくなりそうか、0から5の間で6段階評価をしてみて、どんな時に最も問題が起きやすいかチェックします。 全く吸いたくないを0、吸いたい気持ちが最も強いを5として、チェック欄の数値に丸をします。 状態 チェック欄 朝の目覚めの時 0 1 2 3 4 5 食後 0 1 2 3 4 5 コーヒーを飲む時 0 1 2 3 4 5 人と話をする時 0 1 2 3 4 5 会議をする時 0 1 2 3 4 5 嫌なことがあった時 0 1 2 3 4 5 緊張した時 0 1 2 3 4 5 電話をかける時 0 1 2 3 4 5 ほっとした時 0 1 2 3 4 5 手持ちぶさたの時 0 1 2 3 4 5 口寂しい時 0 1 2 3 4 5 アルコールを飲む時 0 1 2 3 4 5 テレビを見る時 0 1 2 3 4 5 調べものや書き物をする時 0 1 2 3 4 5 そのほか( ) 0 1 2 3 4 5 そのほか( ) 0 1 2 3 4 5 吸いたい気持ちをコントルールする自己プラン表 吸いたい気持ちをコントロールする自己プラン表を各自、作ってみます。 チェックリストで4点以上になった項目をあげ、それぞれへの対処の仕方を自分なりに工夫して、表に書き出します。書き出すことで、より禁煙への意欲が高まるはずです。 たばこが吸いたくなる状況 対処法 例 1:朝起きて新聞を読む時 新聞を読む代わりに、散歩をしたり体操をする。新聞は、たばこが吸えない通勤電車の中で読む 例 2:昼食後コーヒーを飲んだ時 昼食後、早目に席を立って歯をみがく。コーヒーは禁煙してしばらくの間は控える 次の「禁煙実行の秘けつ」へと進む
チェックリストでチェックした項目のうち、特に吸いたくなりそうな状況(評価が5や4の項目)については、次のアドバイスを参考にして自分なりの対策を考えておきます。 朝の目覚めの時 睡眠中はたばこを吸えないので、目覚めた時が一日で一番血液中のニコチン濃度が低下している時です。そこで体がニコチンを求め、だれでも吸いたくなります。 この状況を乗り切るためには、起きてすぐに冷たい水を飲んだり、軽く体操するなどして、行動パターンを変えてみます。 食後 食後の一服をおいしいと感じる人は少なくありません。そのような時は、食後、のんびりとテーブルでくつろがず、すぐに立って歯磨きをしたり、散歩するなど体を動かして、吸いたい気持ちを和らげてみます。 コーヒー、アルコールを飲む時 コーヒー、アルコールは、喫煙と仲良しです。しかも、周囲の人が吸っていたら、なおさら吸いたくなります。禁煙を開始して間もない頃は、コーヒー、アルコールから離れておくのが賢明です。 人と話をする時 非喫煙者と話をしている時に吸いたくなったら、相手の気持ちを考えてみましょう。たばこを吸う人と話をする時は、現在、禁煙チャレンジ中であることを告げて、協力してもらいましょう。また、禁煙の場所で話をするのも良い方法です。 会議をする時 最近は、会議中は禁煙というところが増えてきました。 しかし、喫煙可能な会議では我慢するしかないので、禁煙の会議にできるように上司と相談してみます。 嫌なことがあった時 社会生活上、嫌なことは避けることはできません。そんな時は、たばこで気を紛らわすのではなく、好きなことでもやって気分転換を図ります。 緊張した時 緊張すると、体中の筋肉は硬くなり、呼吸も浅くなりがちです。そのような時は、リラクセーション法などによって、深呼吸をし、固くなった筋肉を意識的に緩めるようにします。 電話をかける時 職場での電話は、用件だけにして手早く済ませます。家で電話をかける時は、電話の回りから喫煙用具を片づけて、出し入れに面倒なところへしまい込むなど、吸いにくい環境を作ります。 ほっとした時 ほっとできる時には、のんびり散歩に出かけたり、読書でもしてみてはどうでしょう。 手持ちぶさたの時 机の引き出しの整理や、庭いじりなど、今までしようと思っていながら放っておいたことを片づけるなどして、気を紛らわせます。 口寂しい時 糖分の少ないガムや昆布などをかんだり、歯を磨く、水を飲むなどで代用します。 テレビを見る時 テレビの周囲から喫煙道具を片づけて、出し入れに面倒なところへしまい込むなど、吸いにくい環境を作ります。 調べものや、書き物をする時 作業机の回りから喫煙道具を片づけて、取り出すのに面倒なところへしまい込むなどして、吸いにくい環境を作ります。
禁煙の自信 Q.意志が弱いせいかうまく禁煙できません。よほど意志の力が強くないと禁煙できないのではないでしょうか? A.確かに、禁煙は容易ではありません。禁煙が容易でないのは、意志の力が弱いせいではなく、ニコチン依存症という病気だからです。 また、長年の習慣のため心理的に依存し、たばこなしでは口さみしく、手持ちぶさたとなることも、たばこをやめにくくしています。 禁煙は簡単ではありませんが、しかし、それでも毎年多くの人が禁煙に成功しています。 お送りするメッセージやホームページの内容は、禁煙指導の専門家がこれまでの経験と海外の禁煙プログラムに基づいて作成したもので、たくさんの禁煙の秘けつが載っています。 あとは、あなたが禁煙しようと決心するだけです。 Q.どうしてもたばこを吸いたいと思った時、我慢する自信がありません。どうすればいいですか? A.たばこを吸いたいという欲求は、禁煙後の離脱症状として強いものです。 この欲求は数分間続きますが、その後必ず収まります。 深呼吸したり、水を飲んだり、散歩などの軽い運動をすることによって、吸いたい気持ちを抑えられます。時計を見ながら、たばこが吸いたいという欲求が和らぐまで、時間を数えるという方法などもあります。 禁煙後数週間経てば、たばこを吸いたいという欲求は、ほとんど見られなくなります。 Q.私の周囲には喫煙者が多く、例え禁煙を始めても、すぐにたばこを吸い出してしまいそうで心配です。どうすればいいですか? A.確かに、禁煙の初期には、たばこを吸う仲間を減らすまいとする圧力がかかったり、喫煙を再開させようという誘惑があるかも知れません。しかし、多くの喫煙者は、本当はできればたばこをやめたいと思っているのです。 禁煙を続ける気持ちを相手に伝え、たばこの誘惑をきっぱり断れば、圧力や誘惑は無くなります。逆に、禁煙の仲間を増やそうと自分からはたらきかけてみてください。
禁煙の効果 Q.長年たばこを吸ってきましたが、今からやめても果たして間に合うでしょうか? A.もちろん間に合います。禁煙するのに遅過ぎるということはありません。 たばこをやめると、その禁煙年数に比例して、肺がんや心筋梗塞などにかかる危険は少なくなり、たばこを吸わない人に近づいていきます。 50歳までに禁煙したとすれば、その後15年間に死亡する確率は半減します。 禁煙の効果は、高齢になって禁煙した場合にも見られます。また、喫煙関連疾患の症状が現れてからでも、禁煙によってその予後は改善します。 Q.たばこをやめたらどんな効果がありますか? A.禁煙してすぐ現れる効果としては、せきやたんが止まる、目覚めがさわやかになる、味覚や嗅覚が戻り、食べ物がおいしくなる、肩凝りがなくなる、人に不快感を与えなくてすむ、たばこやライターなどの持ち物が少なくてすむ、小遣いが減らなくてすむ、火事の心配をしなくてすむ、仕事や家庭でも自信がつき、人生観が変わってくるなどがあります。 その上、禁煙して期間が経つにつれて、肺がんや心筋梗塞などにかかる危険が減少していきます。 禁煙に伴う問題 Q.禁煙後に現れる離脱症状のことが心配です。どのような症状が出るのでしょうか? A.たばこが吸いたい、イライラ、落ち着かない、不安、集中困難、軽い頭痛、けん怠感、不眠、便秘などが、よく見られる症状です。しかし、これらの症状の全てが出現するわけではありませんし、その程度は人によってさまざまです。 これらの症状は、禁煙を始めて最初の3~4日間に最も強く現れますが、1週間もすれば症状は軽くなり、2~3週間で消失します。 これらの症状を健康回復のサインと考えれば、例え症状が強くても、打ち勝つことができます。 Q.禁煙すると、体重が増えるのではないかと心配しています。太っても、禁煙する方が良いのでしょうか? A.禁煙すると体重が増える人がいますが、禁煙をしたすべての人に体重増加が見られるわけではありません。体重が増える人でもふつう2~4kg位です。 体重増加の理由は、禁煙により味覚が戻り、胃の調子が良くなって食欲が出ること、口寂しいのでつい食物を口にしてしまうこと、ニコチンによる代謝の高進作用が無くなることなどです。 喫煙による健康への危険は、2~4kg程度の体重増加によるものに比べてはるかに大きいものです。禁煙のメリットは体重増加のデメリットをはるかに上回ることがお分かりでしょう。 禁煙と同時にダイエットを始めるべきではありません。まず禁煙を達成し、禁煙が安定してから肥満対策を実行しましょう。
たばこの効用 Q.たばこは体の健康には悪いかもしれませんが、心の健康には良いのではないでしょうか? A.確かにたばこを吸っている人にとってたばこは、緊張を和らげたり、逆に覚せいさせたりする作用を持っています。これはニコチンの持つ作用です。 しかし一方で、たばこに捕らわれたり、ニコチンに支配されているという状況は、決して心の健康に良いとはいえないのではないでしょうか。 喫煙習慣の本質はニコチン依存症であることが世界的に認められ、診断基準も示されています。「たばこが心の健康に良い」というのは、薬物依存症の世界においてのみ見られる「効用」なのです。 Q.たばこは不利益だけでなく、利益も多いと思いますが、いかがですか? A.確かに喫煙者にとって、たばこは楽しみの一つであり、いら立つ神経を鎮めたり、間を持たせるなど、色々な効用を持っていることでしょう。 しかし同時に、たばこはせきや息切れのもとであり、歯を黄色く汚し、息や衣服を臭くします。その上たばこは、肺がんをはじめ多くの病気にかかる危険を高めます。 たばこか健康かよく考えて選択しましょう。 医学的見地からはもちろん、たばこをやめて健康を選ぶように勧めます。 たばこの害 Q.以前は喫煙していると仕事の能率が上がるような気がしていましたが、最近はそうではないように思います。本当のところはどうなのですか? A.確かに、たばこに含まれるニコチンには脳の覚せい作用がありますので、たばこを吸うと集中力が増し、仕事の能率が上がると感じておられる方は多いと思います。 しかしこの作用は、あくまで、たばこをしばらく吸えない間に、禁断症状によって脳の覚せいレベルが低下したものを、ニコチンの補給によって元の状態まで戻すという程度に過ぎません。平常の喫煙状態では、覚せいレベルの上昇は認められません。 作業能率を調べるテストを喫煙前後で実施すると、喫煙後にむしろ能率が低下するという研究データも報告されています。 Q.低タール低ニコチンのたばこに変えたり、本数を減らしたりすれば、禁煙できなくても良いのではないかとも思いますが、どうなのですか? A.本数を減らすのは、禁煙への良い第一歩です。しかし、安全なたばこや、安全なたばこの吸い方というようなものはありません。 多くの喫煙者は、ニコチン含有量の低いたばこの埋め合わせをするため、吸う回数を増やしたり、深く吸い込むようになります。そのため、タールやニコチンの摂取量が期待したほど低下しません。さらに困ったことに、一酸化炭素の摂取量がかえって増加し、虚血性心疾患のリスクを高めることがあります。
いったん実行できた禁煙なのに、ちょっとしたきっかけで、また喫煙に戻ってしまう人は少なくありません。特に禁煙33ヵ月以内が喫煙再開の危険の高い時期です。次の4つプラスαの秘けつを参考にして、禁煙への意志を再度固めてください。 禁煙継続の秘けつ1/禁煙再開のきっかけを予測しその対処法を考える 喫煙を再開してしまうきっかけは、多くの場合、ちょっとしたことからです。陥りやすいきっかけを知って、そうした因子を生活の中からできるだけ取り除いたり、遠ざける努力をしましょう。 禁煙継続の秘けつ2/禁煙の自信度を確認する 禁煙継続には、たばこを吸わずにいられるという自信を、自分の中で高めておくことが大切です。吸いたくなりやすい状況下で吸わずにいられる自信がどれだけあるか、チェックしてみます。 禁煙継続の秘けつ3/禁煙の効果を確認する 禁煙を続けると、身体面でも精神面でも効果が表れます。これは禁煙によって体調が良くなるためと、禁煙できたという自信から、体調が良くなってくるのです。 禁煙継続の秘けつ4/肥満を予防する だれでもというわけではありませんが、禁煙により体重が増える人がいます。増えても普通、2~4kg程度ですが、禁煙による体へのプラス効果は、体重が例え4、5kgも増加しても埋め合わせられるほどだと言われています。 しかし、太り過ぎが良くないのは言うまでもありません。禁煙に自信がついたら徐々に体重増加への対策にも気を配ります。 プラスα 禁煙継続のための6つのコツ 禁煙成功者たちの体験談から、禁煙を成功させる6つのコツをまとめました。 イメージトレーニングや周囲の協力が大きな力になっています。 禁煙継続のための6つのコツは次へ
ニコチン代替療法に用いる 常習喫煙によってニコチンへの薬物依存症に陥っている場合は、禁煙を試みても失敗する例が少なくありません。 そこで考案されたのがニコチン代替療法です。 ニコチンをたばこ以外の方法で摂取し、その摂取量を徐々に減らし、同時に禁煙指導も行いながら禁煙を成功させようというものです。この代替療法に用いられるものがニコチンガムです。 ニコチンガムは1973年にスウェーデンのレオ社(現ファルマシアレオ社)で開発されたもので、ニコチン以外に何も含まれていないガム状の薬剤です。 禁煙の過程では、つい口さみしいことからたばこに手を伸ばしてしまうことがよくあります。ニコチンガムをかむとニコチンが溶け出して粘膜から吸収され、血液中のニコチン濃度を上げることになり、ある程度離脱症状(禁断症状)を和らげることができます。 すでに50カ国以上で有効性を確認 欧米では臨床使用の蓄積によって、6ヵ月禁煙継続率が高まるなど有効性と安全性が確認されています。使用が認められている国は、世界50カ国以上に上ります。 最近では、日本でもニコチンガムが薬局・薬店などで販売されるようになりました。 ただし、妊娠中や授乳期にある女性、重度の虚血性心疾患がある人、アルコール依存症の人などは使用できません。 また、ニコチン代替療法には、ニコチンを皮膚から吸収するニコチンパッチもしばしば用いられます。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因
小遣い節約法として 中島氏は当時30歳少し前。何回目かのプロポーズのあと、ようやく承諾の返事をもらえたばかりです。うきうきしていたところへ、相手からきつい申し入れをうけました。「結婚するにしても、収入から考えてお小遣いはあまりありません」。 そう言われてもたまには友人と飲みに行きたいし、趣味の釣りにもお金はかかるのです。 「仕方なしに考え出した小遣い節約法が、禁煙でした。将来生まれてくる子供も含めて家族にも、迷惑を掛けずにすみますしね」と中島氏さんは話してくれます。 実は、中島さんは1日に60~80本というヘビーというよりもチェーンスモーカー。会社のデスクにたばこの煙が上がっていないことがないほどで、灰皿は特製の大型でした。 側のカーテンは、中島さんの席の辺りだけ黄ばんでいるほどでした。 それほどのスモーカーがきっぱりやめるには、モチベーションが必要です。 中島さんは学生時代の友人・山本氏と一緒に禁煙をすることにして、禁煙できなかった方が高いディナーをおごるという取り決めをしました。お小遣いが不足気味で禁煙を決意したくらいですから、どちらも、意地でも禁煙を破れません。 結局、二人とも成功して、中島さんは無事、結婚15周年を迎えました。
マヤ文化に根づいていたたばこ アメリカ大陸は、スペインのコロンブスによってヨーロッパに知られることになりますが(1492年)、彼らが持ち帰ったのがたばこのヨーロッパ上陸の第一歩でした。 スペイン同様、大航海時代の主役・ポルトガルも、新大陸に足跡を記し、喫煙の習慣を知ります。ほかのヨーロッパ各国へは、主にこの両国を介して、16世紀半ばから後半にかけ、次々に伝えられました。 紙巻たばこの起源は、スペイン人にあると言われています。たばこの葉を巻くものは、アメリカ大陸では植物の薄い皮でしたが、スペイン人が紙に代えたというわけです。 それとは別に、現在のような紙巻たばこの形態は、エジプト人によって広められたという説もあります。 欧州社交界の花形へ フランスでは、駐ポルトガル大使のジャン・ニコが、1559年に新しい医薬としてたばこを王室に献上します。それをカトリーヌ女王が頭痛薬として用いたことから注目され始めました。 その後、パイプ喫煙が普及しますが、やがて貴族が煙を吐くのは見苦しいとされ、上流社会では嗅(か)ぎたばこが用いられるようになります。 イギリスは16世紀後半に新大陸に進出し、ウォルター・ローリー卿らがパイプ喫煙を持ち帰りました。そして、社交界では乗馬、狩猟などと共にパイプをくゆらすのが紳士の条件とされるようになりました。 後に、30年戦争などがあり、各国の軍隊をはじめ多くの人や物資の往来があり、たばこもヨーロッパ中に広がっていきました。 海路アジアへ アジアへたばこが伝わったのは1571年。スペイン人がフィリピンに持ち込んだのが最初とされます。さらに、台湾、中国、東南アジアとたばこは浸透します。 一方、ポルトガル人はインド、セイロン(現スリランカ)、そして日本へと伝え、たばこは約1世紀の間にほぼ世界一周したことになるのです。
ポルトガル渡来のたばこ 初めは薩摩の指宿に入り、やがて長崎へ伝わり、宝暦年間(1751~64)に浦賀に入って全国に普及しました。 江戸の風俗として定着 当時、たばこは相思草、返魂草などと呼ばれ、初期には刻みを巻いて吸っていましたが、ポルトガル人がきせるを伝え、独特のたばこ文化を生み出しました。きせる、たばこ入れ、たばこ盆といった道具は、社交の道具、粋な装身具として発達し、江戸時代の風俗を語るに欠かせないものとなります。その定着ぶりは、数々の浮世絵(鈴木春信「おせん茶屋」など)や歌舞伎にうかがうことができます。 紙巻は文明開化のシンボル 明治時代を迎えると、新しい欧米の文化と共に文明開化のシンボルとして紙巻きたばこが流入しました。日本では岩谷商会、村井兄弟商会による「天狗印」「ヒーロー」などの国産紙巻が人気を集めます。 日清・日露戦争がぼっ発すると、たばこは戦費調達のために使われ、後の太平洋戦争に際しては恩賜(おんし)のたばこが兵士に配給されるなど、たばこは国策と深く結びつくようになりました。 1904年には、たばこ製造販売の専売制が施行されます。 1906年には両切りの「ゴールデンバット」が発売され、現在も続くロングセラーとなっています。
世にもハードな禁煙訓練法? さまざまな本に出てくる細々した事柄について一つひとつピックアップしてジャンル別にデータベース化し、それを元にユニークな評論を展開している西尾忠久さん。「ミステリーがちょっと好きな友へ」は、最近の鬼平ものの本と同様、西尾さんがそのデータベースを縦横に使ったミステリー、ハードボイルドファンには嬉しい本。(東京書籍 1993年) そのなかで、ジェラルド・シーモアの「一弾で倒せ!」の主人公が、「英国情報部の計画による報復工作要員として指名され、シリアの荒涼たる大地潜入に耐えられるように、老練な狙撃手の手で訓練がほどこされる」場面にふれています。以下は、その部分の引用です。 軍歴もなく、特別な運動もやっていない青年は、食事や水の量を自分で厳しく制限することや、煙草や歯磨き、石鹸の使用を禁じられることも含めて、とことん鍛えられる。 〈中略〉 煙草、歯磨き、石鹸の使用禁止は痕跡臭のもとになり潜伏行動にさしつかえるという根拠からだ。 そのあと、西尾さんはこの話にヒントを得て考えた、世にもハードな禁煙訓練法を思い付いています。 「それで思ったのだが、煙草類はまったく乗せていない練習船かなにかで、禁煙実行希望者を徹底的に作業させる旅行かなにかを計画したらどんなものか。あるいは「一弾で倒せ!」のように荒れ地でキャンプを張るとか。本人に強い意志があれば2週間も合宿すれば長年の喫煙習慣を断ち切れるのではなかろうか。」 ところで、実は西尾さん自身も禁煙経験者。 「痕跡臭といえば、ぼくも煙草を断って10年近くなるが、当初なにがいちばんうれしかったかというと、手ぶらで外出できることと洋服にしみこんでいた焦げくさい臭いが消えたことだ。2、3回のクリーニングで臭わなくなった。」 と書いています。 だからこそ、 「ニコチンの禁断症状は、気をほかにまぎらわすしか逃げる方法はあるまい。〈一弾で倒せ!〉のように、体力の限界まで疲労する訓練で意識にものぼらせないのも一つの方法」だと考えての、先ほどの訓練方法の提案だったわけです。
「このままいけば体がぼろぼろに」と警告を受けて アパレルメーカーのキャリアウーマン、武井さんが禁煙を決意したのは、医師からの冷酷な勧めによります。仕事一筋で、多少の体調の悪さなど「我慢して働いていれば忘れてしまう」などといっていた武井さんが、いつになくしつこいせきに悩まされ、ようやく訪ねた病院で、はっきりと「このままいけば体がぼろぼろになりますよ」と警告を受けたのです。 当時、かなり強めのたばこを1日に40本~60本吸っていた武井さんが、「たばことお酒を捨てなさい。両方が無理なら、せめてどちらかをやめてください」という医師の言葉に驚いて、決意したのが禁煙でした。 「お酒は大好き。お付き合いも含めてやめるわけにはいきません。たばこなら、お酒よりはまし」なのだそうです。 禁煙を決意してからも、酒席はお付き合いするのですから、初めはかなりつらかったそうです。それでも「たばこをやめないならお酒をやめなければならない」との思いが、武井さんの決心を支えました。1,2回、つい、たばこを口にしたこともありましたが、不思議にあまりおいしいと感じなくなっていました。 以来、10年、今では武井さんのおしゃれな部屋を訪れた友人たちは、台所の換気扇の下かベランダでしか、喫煙は許されません。壁やインテリアがヤニで汚れることを武井さんが嫌うからです。
禁煙開始日の決め方 禁煙をしようと思えば、今日すぐにでもタバコをやめられると考えているかもしれません。しかし、禁煙を長続きさせるためには、準備期間が必要だといわれています。 準備期間として最低1~2週間とるのが良いでしょう。 禁煙を始める日には、次のような条件を1つでも満たす日を選ぶと、禁煙を続けやすくなります。 仕事が一段落して、あまりストレスがなく、時間にゆとりのある時 夏休みや正月休みなど、禁煙開始日の前後を休みにできる時 宴会やつき合いなど、お酒を飲む機会の少ない時 自分や家族の誕生日、結婚記念日、年始めなど、特別の意味のある日 特別の意味のある日に禁煙を始めることができれば、毎年、禁煙記念日と、特別の意味のある日の両方のお祝いをすることができます
一般的な禁煙の理由 禁煙する理由をはっきりと自覚しているほど、禁煙しようという意欲が高まり、禁煙を継続しやすくなります。 次にあるのは、多くの人が禁煙の理由としてあげるものをリストアップしたものです。 健康を害したから、あるいは、体の調子が悪いので 今後、健康に良くない影響があると思って 経済的理由から 家族、知人から言われて 医者から言われて 周囲の人々の迷惑になると思って 自分の意志力を試したいと思って 子供や周囲の人々の手本になろうと思って 喫煙が社会的に受け入れられにくくなっているから 自分自身の禁煙の理由 では、自分が禁煙しようと思う個人的な理由を3つ考えて、「自己宣言ツール」にその理由を書き込んでみましょう。 (自己宣言ツールは準備期ステージのユーザのみが利用できます) 毎日寝る前に、禁煙したいと思う理由を10回声に出して繰り返し、禁煙への意欲を高めましょう。また、今後禁煙を始めてからくじけそうになった時に、この理由を思い出してみてください。きっと役に立つでしょう。
自分にあった方法を選んで実行! 禁煙開始日までの間に、たばこを吸わない生活に向けて準備を進めます次に、実際に禁煙に成功した人たちが使った準備のためのヒントをあげました自分にあった方法を幾つか(一つ以上)選んで、無理なくできるよう自分なりにアレンジして実行してみましょう。 吸うたばこの銘柄を考えてみる 例:おいしくないと感じる銘柄や、ニコチンの少ない銘柄に変えてみる たばこを吸う時に、たばこを持つ手やくわえる口の位置を変えたり、ライターを使わないでマッチを使うようにする たばこを吸う時間や場所を段階的に制限していく 例:食後に禁煙タイムを設けたり、会議中にはたばこを吸わないようにするまた、家の中での喫煙場所を1カ所に決め、それ以外の場所では吸わないようにする 喫煙行動記録ケースを見て、たばこがどうしても吸いたくなる場所や時間をチェックする 例:起床時、食後、仕事中、商談や会議中、イヤなことがあった時、アルコールやコーヒーを飲んだ時など 家族や友人、職場の同僚の中から、一緒に禁煙を始める仲間を見つける 家族や友人など、周囲の人に禁煙することを伝えて協力してもらう 注:周囲の人に禁煙することを言わずに、秘かにチャレンジした方が成功しやすい人もいます自分により合った方を選んでください たばこをやめてもストレスがたまらないように、たばこに代わるストレス対処法を身に付ける たばこなしで過ごすためのトレーニングをするトレーニングの方法は、たばこが吸いたくなってもすぐには吸わないで、3分間我慢するその間たばこが吸いたくてどうしようもない場合は、たばこの代わりになるものを見付けて実践してみる 禁煙したことのある人は、失敗した理由を思い出し、今回の禁煙チャレンジの参考にする たばこの買い置きはしないようにするまた、家でも職場でもたばこを持ち歩かないように心掛け、自由にたばこの吸えない環境を作り出す 禁煙開始日が近づいてきたら、灰皿をたばこの吸いがらでいっぱいにし、たばこの吸いがらの光景と臭いが非常に不快であることを確認する 禁煙開始日の前日に、残っているたばこや使っていたライター、灰皿などの喫煙具をすべて処分する たばこの本数を極端に減らしたり、完全に禁煙すると、人によって程度の差はあるが、イライラ、頭痛、集中困難など、たばこの離脱症状(いわゆる禁断症状)が出現することをあらかじめ承知しておくこれらの症状の多くは、体内からニコチンが出ていくために起こる一時的な症状で、いわば健康の回復サインである 喫煙再開の多くは、たばこの離脱症状が出現し、まだ体がニコチンに依存している禁煙開始後1~2週間以内に始まることを、あらかじめ認識しておくしかし、この時期さえ乗り切れば、離脱症状はうそのように消え去り、禁煙成功への道は確実に開ける 生涯二度とたばこは吸わないと考えると、精神的に大きな負担になる今日一日だけは吸わないでおこうと、軽い気持ちでチャレンジしましょう。
実行の秘けつ1 離脱症状に打ち勝つ 禁煙を成功させるために、禁煙後に起こる事態を把握しておきます。 禁煙を始めると、さまざまな離脱症状(いわゆる禁断症状)が現れます。その主なものはたばこを吸いたくてイライラしたり、頭痛がするなどですが、すべての症状が全員に出るというわけではなく、程度も人によって異なります。 離脱症状の多くは体内からニコチンが抜けていくことで、ニコチン依存になっていた体が起こす反応です。禁煙開始後1週間程度、長くても2~3週間で消失し、ピークは3、4日目くらいまでです。 実行の秘けつ2 吸いたい気持ちをコントロールする 長年の習慣から、たばこがないと口さみしかったり、手持ちぶさたを感じる人は多いようです。無意識にたばこを口にしてしまうことがないよう、吸いたくなる衝動のコントロール法を考えておきます。 実行の秘けつ3 自分へのほうびを考える 禁煙を続けるには努力が必要です。 その努力を少しでも容易にするための方法として、禁煙成功後に自分になにかプレゼントをすることを考えてみます。 事前に何をほうびにするかを考え、つらくなったらそのことを思い出すのです。オリンピックでのマラソン優勝後に有森裕子選手が「自分を誉めてあげたい」と言った、あの気分です。 実行の秘けつ4 禁煙実行後の生活の仕方を考える 日常生活にもちょっとした工夫をすると、禁煙が無理なく続けやすくなります。生活パターンに合わせて自分なりに工夫してみてください。
「あなたの健康を~」の注意表示はいつから? 現在、日本のたばこのパッケージに印刷されている「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」の文言が入ったのは1990年6月からです。 それまでの表示は、「健康のため吸いすぎに注意しましょう」でした。 喫煙の抑制をやや強く促すような表現になったとはいえ、欧米のたばこの表示とはメッセージの強さがだいぶ異なります。 欧米では、たばこのパッケージの表示は、たばこの害を喫煙者に啓発する有効なメディアと見なされています。 表示には、警告表示と成分表示の2種類の表示がなされているのが一般的です。 欧米ではより直接的な警告 巨大たばこ産業の本拠地の一つ米国では、すでに65年から紙巻きたばこの包装に「注意:シガレットの喫煙はあなたの健康に害を及ぼすかもしれません」と入っています。 世界で最もたばこへの規制が厳しいと言われているアイスランドでは、分かりやすくイラストによって表示することが義務付けられています。 また、スウェーデンでは、成分表示を日本のようにニコチンやタールだけでなく、一酸化炭素についても行うことが義務付けられています。 喫煙の危険性を直接警告する表示の例として、カナダの紙巻きたばこの包装にある警告表示をあげてみます。 「シガレットはがんの原因です」 「喫煙はあなたを殺すかもしれません」 「シガレットは中毒になります」 「シガレットは致命的な肺疾患の原因です」 「たばこの煙は非喫煙者にとって重大な肺疾患の原因になります」 「妊娠中の喫煙はあなたの赤ちゃんを傷つけます」 「シガレットは心臓発作と心疾患の原因です」
喫煙の習慣は依存症の一つ たばこ(ニコチン)依存は、精神医学の代表的な国際疾病分類である世界保健機関(WHO)のICD-10には精神作用物質性障害の一つ「たばこによる障害」として掲げられ、また、アメリカ精神医学会の診断分類DSM-III-Rには「ニコチン依存」としてあげられています。 ありがたくはありませんが、アルコール依存、コカイン依存などといわば同等の地位を与えられたわけです。 禁断症状も現れる 薬物依存とは、ある種の薬物を繰り返し摂取しているうちに、その薬物に対して抑えられない欲求が生じ(精神依存)、また事物によっては耐性を生じ、以前と同じレベルの効果を得るために徐々に用いる量が増加したり、薬物の中断によって離脱症状(禁断症状)が出現する(身体依存)になり、健康な日常生活が疎外された状態をいいます。たばこ依存もこの事物依存のひとつです。 喫煙を続ける理由については、これまでの調査によると、「手持ちぶさた」「習慣」などがあげられ、刺激やとりあえずの落ち着きを求めたり、離脱症状を回避するために自動的にたばこに手が伸びるようになったりするケースが報告されています。 脳の血流量も減少 一方、神経系に対する喫煙の影響としては、脳い縮、聴力障害などがあげられます。脳い縮については、これに重要な役割を果たすと考えられる脳の血流量が喫煙によって減少したためと推測されています。脳血流量は、禁煙によって、その月数に比例して回復します。
戦後の復興と共に肺がん死増える 肺がんは喫煙と最も関連性の高い疾患と考えられています。 わが国では第2次世界大戦後、たばこもほかの物資同様に供給が不足していましたが、朝鮮戦争による特需で景気が急激に上向くと、紙巻きたばこの生産量、消費量共に伸び、それに伴って肺がんの患者数も大幅に増えました。 戦後間もない1947年に年間 768人だった肺がんによる死亡者数は、92年には4万163人と、52倍にも増加しました。 肺がんが多いのは先進国に共通した特徴ですが、21世紀に入った日本でも、肺がんが胃がんを超えて最も多いがんになると予想されています。 喫煙量に密接に関連 肺がんによる死亡率とたばこの消費量を見ると、その上昇カーブは似ています。 また、日本では、男性の喫煙率が低下しているにもかかわらず死亡率が上昇しています。これは、喫煙者1人当たりの喫煙量が増加し、また戦後からの喫煙の蓄積の影響が現れはじめたためではないかと思われます。 多くの疫学調査によると、肺がんによる死亡の危険性は、下記の要素を満たすほど高くなるという結果が出ています。 1日当たりの喫煙量が多いほど ふかすだけに比べて煙を深く吸い込むほど フィルターありに比べてフィルターなしのたばこを吸うほど 低ニコチン・低タールのたばこに比べて高ニコチン・高タールのたばこを吸うほど
1日当たりの喫煙量×喫煙年数 喫煙が人体に与える影響は、それまでに吸い込んだたばこの煙の総量と密接に関係します。 総量を割り出すには、 a…1日当たりの平均喫煙量(本数) b…喫煙をしていた年数 の双方を考慮する必要があります。 ふかすだけなのか、肺まで深く吸い込むかなど、さまざまな条件の違いはありますが、吸入量の目安としては一般に、aとbをかけ合わせた喫煙指数(ブリンクマン指数)が用いられます。 例えば、1日1箱(20本)のペースで、20年吸い続けた場合の喫煙指数は、 20(本)×20(年)=400 となります。 400以上は肺がんに対する注意が必要 過去の研究から日本人について出されている数字を見ると、喫煙指数1200以上は、こう頭がんにかかる危険性が極めて高くなっています。これは、非喫煙者と比べると女性で約6倍、男性は約8倍という数値です(相対危険度は肺がんが女性2.34、男性4.45。こう頭がんは女性3.29、男性32.50)。 男性のこう頭がん患者の大多数はこのレベルに達しており、男性の肺がんについては 400が要注意の数値と考えられています。ご自分でも試しに計算してみてください。 ■関連記事 ファストフードやタバコは老けやすい?悪玉のAGEsが原因
たばこが胃粘膜の血流を阻害 胃がんによる非喫煙者の死亡危険度を1.00とすると、男性喫煙者の胃がんによる死亡の相対危険度は1.45になるという調査結果があります。 非喫煙者と比較すると、喫煙者の胃がんで死亡する率は約5割増しというわけです。 胃は、早ければ約60秒でかいようができるといわれるほど、デリケートな臓器です。 胃の粘膜には毛細血管が張り巡らされており、この血流がスムーズにいかないと胃かいようにかかりやすくなります。 胃粘膜の血流量にたばこの煙が及ぼす影響を測定すると、わずか3服の喫煙によって、常習の喫煙者で約20%、非喫煙者で50~70%も血流量の低下が見られます。 血流が遮られることによって粘膜の防御力は低下し、かいようにかかりやすくなると考えられます。実際に、喫煙者は非喫煙者に比べて消化性かいようにかかりやすく、喫煙本数が多いほど死亡率が高いという調査報告もあります。 かいよう再発率も高まる また、消化性かいようの治療効果が喫煙によって低下したり、再発率が高まったりすることも分かっています。 喫煙者の胃・十二指腸かいようの再発率は、禁煙した人に比べて30ポイントも高く約50%であることが報告されています。こうして治癒が遠ざかるうちに、胃がんへと進行する危険性も出てくるのです。
20代女性の喫煙が急増 日本では、男性の喫煙率は低下しつつあるものの、日本たばこ産業による調査では、96年の日本人男性の喫煙率は57.5%となっており、先進国中ではトップクラスです。 一方、女性は14.2%で世界と比較して喫煙率は低いのですが、欧米諸国が数十年前に経験したのと同様に、若い女性の喫煙率が高くなる傾向が見られます。 特に20歳代の女性の喫煙率は、75年の12.7%から95年の23.3%へと、20年間で約2倍になっています。 女性の方ががんにかかりやすい? 喫煙の女性への影響としては、まず、女性特有のがんである子宮がんについて考えられます。喫煙女性の子宮けい部粘液中に、ニコチンや、これが体内で代謝されたコチニンなどが検出されたことから、たばこの発がん作用が指摘されています。 また、近年、増加の傾向を見せる肺がんについては、男女が同じ本数を吸った場合に女性の方が発がんの危険性が高いという、女性にとっては心配な報告もあります。 たばことピルの併用は避けたい 性機能への影響では、不妊症や月経不順との関連があげられます。たばこ含有物質によって、ホルモン分泌が影響されるからだろうと考えられていますが、喫煙者は非喫煙者に比べて妊娠に至るまでの期間が延びる傾向が高いという報告があります。 また、経口避妊薬(ピル)の服用は、虚血性心疾患の発症リスクを高めるので(心筋梗塞による死亡率が非喫煙者の約6倍という調査結果があります)、ピルの服用者は喫煙を避けることが勧められます。これは喫煙、ピル共に血液凝固を促進するからだろうと推測されています。 そして、お肌の大敵 美容の面への悪影響も見逃せません。ニコチンは血管を収縮させて血流量を低下させるので、顔色が悪くなり、肌も乾燥し、しみやそばかすが増えてしわの多い皮膚になるのです。
たばこで酸素供給が激減 たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させて心臓や筋肉に行く血液を減少させ、一酸化炭素は酸素の運搬役であるヘモグロビンと結びついて酸素の供給を減らします。その結果、心臓のはたらきも筋肉のはたらきも弱まり、運動能力が低下します。 短距離テストを行うと、一般に、喫煙者は非喫煙者に比べるとはるかにスピードが落ちます。 好例は西武ライオンズや千代の富士 プロ野球の西武ライオンズが広岡監督の下で常勝将軍だったのは、広岡氏が喫煙や食事のコントロールを含めた選手の健康管理にうるさがられるほど気を使っていたからだと言われています。 また、大相撲の千代の富士が幕内優勝回数31回という大記録を残したのも、大関になる前にきっぱりとたばこをやめたことが原因ではないかといわれています。 千代の富士は、先代・貴乃花(現・二子山親方)に、「オレはたばこをやめられず、横綱になれなかった。お前はたばこをやめ、けいこに励み横綱になれ」と言われたそうです(『ウルフ物語』)。 優れた選手は、酸素の運搬能力を始め体の能力を最大限発揮しなければ、人に勝ち、良い成績をあげることなどはできないことを、まさに体で知っているのではないでしょうか。
アルカリ性の副流煙は目と鼻を刺激 たばこの煙には4000種以上の化合物が含まれています。そして、火のついている部分の内側はおよそ500~600度の高温になっていて、ここで起こる化学反応が数多くの発がん物質や一酸化炭素などを発生させます。 喫煙者が直接吸い込む「主流煙」に対して、火のついた部分から立ち上る紫煙を「副流煙」と呼びます。煙に含まれる200種以上の有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素など)の含有量は、主流煙より副流煙の方が多いことが分かっています。また、主流煙は酸性ですが、副流煙はアルカリ性で、目や鼻の粘膜をより刺激します。 主流煙と副流煙と有害物質含有量の比較 幾つかの有害物質について、主流煙と副流煙の含有量の比較をしてみます。 たばこの主流煙と副流煙の比較 有害物質 主流煙(mg/本) 副流煙(mg/本) 気相 一酸化炭素 31.4 148.0 二酸化炭素 63.5 79.5 窒素酸化物 0.014 0.051 アンモニア 0.16 7.4 粒子相 ニコチン(フィルターなし) 0.92 1.69 ニコチン(フィルターあり) 0.46 1.27 ベンツピレン 3.5x10α(※) 13.5x10α(※) フェノール系 0.228 0.603 (※)10α=10万分の1(10のマイナス5乗) US Dep.Health,Education and Welfare:The Health Consequences of Smoking(1975),1975
わたしはたばこを吸わないのに 自分はたばこを吸わないのに他人のたばこの煙にさらされ、吸ってしまうことを「受動喫煙」と呼んでいます。 喫煙者と同じ室内にいるだけで、呼出煙(吐き出された煙)や、有害成分を多量に含んだ副流煙が室内の空気を汚染し、それを吸ってしまうことで、肺がん、虚血性心疾患、呼吸機能障害などの健康被害が生じます。 がんによる死亡率は有意に上昇 日本の40歳以上の非喫煙の妻、喫煙していた妻、それぞれの夫を対象とした追跡調査(平山雄、1990年)で、妻の肺がん死亡例と夫の喫煙について分析したものがあります。 妻の肺がん死亡リスクと受動喫煙の量の関係は、夫や妻の年齢、職業などを加味して計算しても結果は変わりません。 副鼻腔がんに関する調査では、さらにこれを上回る数字が出ています。 妻は受動喫煙によって、自分が喫煙をしたと同じような肺がん、副鼻腔がんなどの発症リスクを負うことになるわけです。 心疾患のリスクはさらに大 また、虚血性心疾患については、約 700人の中高年非喫煙既婚女性を対象に米国で行われた追跡調査で、夫が喫煙者であるか、かつて喫煙していた場合、虚血性心疾患による死亡率は、夫が非喫煙者である妻の14.9倍になるという結果が示されています。 夫が非喫煙者で妻が喫煙者である場合は、もちろん夫が上のようなリスクを負うことになります。
赤ん坊は吸いたくはない 妊婦の喫煙は母親にとっては能動喫煙ですが、胎児にとっては受動喫煙、あるいは強制喫煙ともいえるでしょう。妊婦が受動喫煙を余儀なくされた場合も同様です。 妊婦の喫煙の影響としては、ニコチンや一酸化炭素による胎児胎盤系の低酸素状態などによる妊娠合併症、周産期死亡、流産、早産、低体重児出生、先天奇形などがあげられます。 喫煙妊婦の早産の頻度は、非喫煙妊婦に比べて、1.4~1.5倍高いと報告されています。 また、夫が喫煙者である妻は、非喫煙者の妻と比べて低体重児を出産する割合は、1.2倍高いという国内の調査があります。 さらに、500例の満期出産例を対象にした調査で、夫の喫煙数1本当たり、出生児の体重が平均6g減少しているという結果も示されています。喫煙する妊婦から生まれた子の体重は、非喫煙妊婦から生まれた子に比べ、国、人種、年代を問わず平均 200g軽いという報告も出されています。 先天奇形の可能性も高まる 一方、妊婦の喫煙と先天奇形との関連を調べたある調査では、1日21本以上吸う妊婦についての相対危険度は、先天性心疾患が2.0、唇・口がい裂が1.7、無脳症が1.8、そけいヘルニアが2.8という結果が出ています。 数字の上下はあれ、喫煙によって先天奇形の出現率が高まることを裏付ける調査は外にも行われています。 ちなみに、欧米では、たばこの箱に「妊娠中の女性による喫煙は、死産・早産・低体重児出産につながる可能性があります」という表示がなされているものもあります。
お乳の出が悪くなる 母親が授乳中も喫煙を継続していると、乳汁の生産が低下して乳汁分泌が抑制され、さらに授乳期間も短くなります。 また、ニコチンが母乳中に分泌され、乳児の慢性ニコチン中毒を引き起し、夜泣き、食欲低下などが報告されています。 さまざまな呼吸器症状が出現 非喫煙者の両親の子供に比べ、父、母、あるいは両親共に喫煙すると家庭内の空気は汚染されやすくなります。 喫煙者の両親の子供は受動喫煙によって、新生児期に肺炎を起こしたり、呼吸障害による死亡の危険も増し、乳幼児期の咳・痰などの呼吸器症状の有症率が1.2~1.8倍高いという報告があります。 家族の喫煙と3歳児の気管支炎有病率を調べた調査では、家族に喫煙者なしの場合、有病率が1.7%であるのに対し、家族が1~20本吸う場合は2.8%、20本以上の場合は3.4%と、喫煙による影響が明らかになっています。 乳幼児期の呼吸器症状はこの期間にとどまらず、中学生ぐらいの年代まで存在するともいわれ、あるいは、家庭内で両親が喫煙する場合、5~9歳児の呼気流量が少ない傾向があるといった報告もなされています。 また、米国では、妊娠中や出産後の母の喫煙により、乳幼児突然死症候群(SIDS)の出現頻度が高くなるという報告がなされています。
ニコチンは毒性の強い依存性薬物 たばこの煙に含まれる有害物質の代表格がニコチン、タール、一酸化炭素の3つです。 たばこ1本から出る煙の中には平均で、ニコチン0.1~2.0mg、タール10mg、一酸化炭素 20~30mgが含まれています。 ニコチンは青酸に匹敵する毒性を持ち、極めて短時間に吸収されます。初めてたばこを吸った時、あるいはしばらくたばこを止めていて久しぶりに一服した時に目まいがしたような覚えはありませんか。ひどいときは気分が悪くなったり、鼓動が早くなって冷や汗をかいたりします。 これはニコチンの急性中毒症状です。ニコチンには、中枢神経興奮・抑制作用や、血管収縮、心拍数増加などを引き起こす作用などがあり、現在では依存性薬物と認められています。 酸欠状態をもたらす一酸化炭素 タールには発がん作用があり、ベンツピレンをはじめとする多くの発がん物質を含んでいます。 また、一酸化炭素のヘモグロビン結合力は酸素の 200倍以上あることが知られています。たばこの煙に含まれる一酸化炭素が酸素の運搬役であるヘモグロビンを「横取り」してしまうことにより、体内はいわば酸欠状態となって、動脈硬化そのほかの引き金となるのです。
有害物質は 200種以上 たばこの煙からは、現在分かっているだけでも4000種以上の化学物質が発見されています。そのうち、有害であると確認されている物質は 200種を超え、発がん性物質は40種近くあります。 たばこの煙はたばこ自体を透過して喫煙者が吸い込む主流煙と、たばこの点火部から立ち昇る副流煙に分かれます。 いわゆる「紫煙」は後者です。 有害成分の量は副流煙の方が多く、喫煙者の周囲の人が煙を吸い込んでしまう受動喫煙が問題視されるようになったのはこのためです。 3大有害物質の外、ホルムアルデヒド、窒素酸化物などなじみの名前も… また、有害物質は、気相(気体)として、あるいは粒子相(細かい粒子の状態)として吸い込まれます。 3大有害物質と言えるのがニコチン、タール、一酸化炭素です。気相物質の代表格が一酸化炭素、粒子相物質の代表が、ニコチン、タールです。 この3者の人体に対する影響は別項を参照していただくとして、そのほかの有害物質から、紙巻たばこ1本当たりに含まれる量が多く、名前をよく知られているものをあげると、ホルムアルデヒド、窒素酸化物(NOx)、シアン化水素、ヒ素、フェノールなどがあります。 さらに、合成樹脂の原料などに使われ、シックハウス症候群の原因の一つともされるホルムアルデヒド、その水溶液が殺虫剤などにも使われるシアン化水素、軽い知覚まひ作用を持つフェノールは繊毛傷害物質として知られています。気管粘膜などに波打つようにそろってはえている繊毛が、こうした有害物質によってぬけ落ちたり、数が減少したり、短くなるなどの損傷を受け、がんなどが起こりやすくなります。また、ホルムアルデヒドは、発がん物質の作用を強める物質でもあります。 経口、吸入、接触いずれによっても強い毒性を持つヒ素は、がん原物質として知られています。 このほかにも、自動車や工場の排ガスに含まれ大気汚染の元凶とされる窒素酸化物は、毒性物質としてのはたらきが確認されています。
高血圧、狭心症、心筋梗塞 喫煙による急性の影響として、血圧の上昇と心拍数の増加があげられます。血管の内皮が障害を受け、血小板凝集能が高まり、アテローム硬化が進む作用もあります。 国内のある地域で20年間調査を続けた結果では、喫煙が心筋梗塞の大きな危険因子であることが示されています。 特に収縮期性高血圧と組み合わさった場合には、1日に10本以上吸う人の心筋梗塞のリスクは、血圧が正常値で1日の喫煙が10本未満の人の約19倍という結果でした。 日本をむしばむ糖尿病も危ない また、日本人を静かに脅かしつつある病気に糖尿病があります。「糖尿列島」などといわれるほどで、予備軍も含めると1370万人といわれています。 すい臓からも分泌されるインシュリンが不足するために起こる病気ですが、怖いのは糖尿病自体よりも、網膜症、腎症などの合併症や、心筋梗塞などが起こりやすくなるという点です。糖尿病性網膜症は、眼底の網膜に血管障害が起こったものですが、これと喫煙との関連についての結論は不一致ながら、調査によっては網膜症の頻度が喫煙者は非喫煙者の約4倍という結果も出ています。 細小血管障害だけでなく、喫煙によって血中のニコチン濃度が上がり、アドレナリンが分泌されて血糖が上昇する可能性もあり、すべての調査が糖尿病に対してたばこを吸う糖尿病患者の健康に悪影響があるという点では共通の認識があるようです。
ニコチンの致死量は? 急性ニコチン中毒の発生原因として、日常最もよく見られるのが、乳幼児による誤飲です。 1本のたばこは15~20mgのニコチンを含有しています。 乳幼児の致死量は10~20mgですから、たばこ1本分のニコチンをまるまる摂取すると極めて危険です。 実際には、たばこを飲み込んでもニコチンの催吐作用によって、たばこを吐き出してしまうので、重症となることはまれともいわれています。 それでも危険であることは明らかです。もしも子供が誤飲した時は、湯冷まし、牛乳などを飲ませて吐かせると効果的です。 大人の中毒量は1~4mg、致死量は30~60mgとされていますが、たばこ1本の喫煙では平均で3~4mg吸収します。 ニコチンの名は人名から ところで、ニコチンという名は、当時のポルトガル大使で、喫煙の風習を故国フランスに持ち帰って広めたジャン・ニコ(1530?-1600年)にちなむとされています。
近年は喫煙場面が出てくる方が珍しい? かつて、シャーロック・ホームズがコカインとたばこを愛用していたことは、ミステリーファンならよくご存知のこと。 「D.ハメットやP.マーロウが活躍していた頃は、たばこを吸わないハードボイルドの探偵の方が珍しかった。しかし、近年は喫煙場面が出てくる方が珍しい」と、独自のデータベースを元にユニークなミステリー評論を展開している西尾忠久さんは書いています。(「ミステリーをちょっぴり好きな友へ」東京書籍 1993年) その中の、B.プロンジーニ作のシリーズ主人公、サンフランシスコの名無しのオプは、連作の主人公には珍しく、シリーズの途中で禁煙をします。以下、前掲書から引用してみます。 男ざかりとは裏はらに、もくもく・うじうじのこの中年私立探偵初登場から7年後に書かれた、ワイン好きなら「あはーん」と納得するナパ・ヴァレーのワイン醸造所が舞台の、コリン・ウィルコックスとの合作第5話「依頼人は三度襲われる」(物語上では〈第1作の「誘拐」から〉3年しか経過していない)で、きっぱりと煙草をやめてあらわれる。左の肺に影が見つかって禁煙せざるを得なかったのだ。 「何度か禁煙しようと思ってもうまくいかなかったのに、ズバリ、やめなければ死ぬと医者から宣告された以上、人はそのいいつけを固く守るものである。」※ 幸いにも左肺の影はがんではなく良性の腫瘍だったのだが。 「この五ヵ月間、私は一本の煙草も口にしていない。吸いたくなるたびに、といっても、そんなことはますます少なくなっているのだが、そのたびに私は、煙草をふかすのは胸にナイフを突き刺すのと同じことだぞ、と自分にいいきかせることにしている。そのうちに煙草を求める気持ちは消え失せてしまう。」※ ※は、西尾さんが著書の中で「依頼人は三度襲われる」から引用された部分です。自身も禁煙経験者の西尾さんは、この文に続けて「禁煙のいらだちと苦しさはこんなに簡単なものではないが」と、感想を述べています。この作品が出版されたころ(1978年)、サンフランシスコは喫煙への批判が高まっていたころで、「その風潮を作家的な鋭さでいち早く汲みとったのだろう」と西尾さんは評しています。
一人でトライするか講習会形式か 禁煙を希望している人のためには、色々な禁煙指導の方法が開発されています。 禁煙はしてみたものの三日坊主で、ただ一人自分の意志の弱さを嘆き、悩む……。もうそんな時代ではありません。行動科学の成果を生かしたノウハウも取り入れられています。 禁煙指導には個人的な方法と集団的な方法があります。個人的な方法には、コンピュータを使った禁煙プログラム、テキストを書店などで購入したり郵送で入手したりといったもののほか、医師による指導を含めてもいいかもしれません。これらは、時間的に自分の都合に合わせやすい、費用が比較的安いなどの利点はありますが、問題はなんといっても成功率がいいとは言えないことでしょう。 集団的な方法には、病院・保健所・職場での禁煙クリニック・講習会などがあります。もちろん、個人的な方法と集団的な方法の両者を組み合わせることも可能です。 環境づくりも成功の大きな要素 いずれを選ぶにしても、周囲の人に禁煙の意思表示をして協力をあおぐ、喫煙空間を制限するなど、環境づくりが大切です。禁煙経験者を対象にしたある調査では、成功者はわずか11%でした。しかし、何回も取り組むことが禁煙の成功につながります。 ニコチンガムなどを利用した代替療法の開発、客観的な成果の評価法の考案などによって、いまでは随分効果的な禁煙指導ができるようになっています。
喫煙行動の観察によって分かること 喫煙は習慣になっていますから、あまり意識せずに吸っていたはずです。自分の喫煙行動を注意深く観察すると、どんな時間帯に、どのような状況下でよくたばこを吸っているかなど、喫煙パターンが分かり、禁煙を継続する参考になります。 自分がどのような時間帯や状況下でたばこをよく吸うのか分かります。 〈たばこを吸いやすい状況の例〉 商談時、食後、アルコールやコーヒーを飲んだ時 自分がいかに惰性で毎日多くのたばこを吸っているか分かります。 1日に吸うたばこのうち、本当においしいと感じるのは何本くらいありますか? 喫煙行動を記録すると、たばこを意識して吸うようになるので、それだけでたばこの本数が減るという効果があります。
禁煙開始後 最もつらく感じた日 長い間親しんできたたばこに別れを告げるつらさは、経験者でなくとも想像がつきます。 なんといっても長年の喫煙者はニコチン依存症になっているわけですから、なかなか意思通りに禁煙することは大変のようです。 少し古い資料ですが、禁煙を始めて何日目に一番つらいと感じたかを調べた報告を見ると、多くの人が2日目と3日目をあげています。そして5日を過ぎると、苦痛を訴える人はぐんと減少しています。 こうしたことを知っておくと、自分が禁煙を開始したのち、つらさに見舞われても次に来る試練だと考えると、ぐんと気が楽になることでしょう。 第1日 38名(14%) 第2日 95名(31%) 第3日 309名(32%) 第4日 57名(16%) 第5日 64名(7%) (対象人員791 名) 出典:「禁煙と健康に関する調査報告」林高春、1981
粘膜の抵抗力が低下 胃への影響を例にあげてみます。 喫煙によって血流量は低下します。ある実験によると、わずか3服で、いつもたばこを吸っている人が約20%、吸わない人では50~70%血流量が下がりました。 胃粘膜の血流量が減少すると酸素欠乏となり、組織の機能低下、粘膜の抵抗力低下につながり、かいようの発生や再発が起こりやすくなります。 また、抵抗力の低下は加齢による動脈硬化性の変化によっても導かれます。従って、2つの条件が合わされば、より血流障害が助長されることになります。 中年といわれる世代になれば、胃炎や胃かいようの既往のある人は、若い時よりもより注意が必要です。 自律神経にも影響 喫煙はまた、自律神経にも影響を及ぼしますが、これにより胃の下部の幽門括約筋の機能が乱れ、十二指腸液や胆汁の、十二指腸から胃への逆流も起こります。 胆汁などによって胃の粘膜が傷つけられ、胃かいようの悪化や再発を招くことも十分に考えられます。 胃・十二指腸が悪い人はたばこ好き? 胃・十二指腸疾患の患者はそれ以外の疾患の患者よりも喫煙者の割合が大きい傾向があるという報告があります。 同じ報告によると、胃かいよう患者で禁煙を厳守した群では、6年間の経過観察で再発が16.1%だった一方、禁煙できなかった群では48.3%に再発をみています。 また、十二指腸かいようでも、禁煙できなかった群では6年間に51.8%に再発をみています。
動脈硬化の条件がそろう たばこの煙に含まれるニコチンには、心拍数の増加、血圧上昇、末しょう血管の収縮などをもたらす作用があります。また、ニコチンや、ニコチンによって副腎髄質からの分泌を促進されたカテコラミンは、血小板凝集能を高めるため、血栓ができやすくなります。 一方、やはり煙に含まれる一酸化炭素は、ヘモグロビンと大変強い結合力を持ち、両者が結びついたカルボキシヘモグロビンは血管内皮を酸欠状態にし、内皮を傷つけます。 そして、血中の脂質についても、善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすので、動脈硬化はますます起こりやすくなります。 喫煙者と非喫煙者で有病率に明らかな差 心筋梗塞などの虚血性心疾患に関する研究の中には、1日20本を超える喫煙者は非喫煙者に比べて、疾患の発生率が3.2倍という報告もあります。 また、喫煙を開始した年齢と、動脈硬化に起因する心疾患の間にも関連性があると指摘されています。19歳までに喫煙を開始した人は、非喫煙者の2倍強、病気になる危険度があると結論を出した調査もあります。 気道を直接刺激 たばこの煙に含まれる刺激物質は、気道に無数にある繊毛の運動を妨げることが分かっています。 また、喫煙による慢性的な刺激は気道を過敏にし、たばこの葉からの抽出物には、アレルギーのもととなるアレルゲンが含まれていることも最近、報告されています。 従って、たばこは気管支ぜん息などの誘因となっていると考えられています。
前世紀から容疑は濃厚 19世紀末までには、多くの外科医が喫煙は舌がんの原因かもしれないと考えるようになっていましたが、喫煙とがんの科学的な研究が始まったのは第2次世界大戦のころからです。その最初とされるのは、ドイツ人ミューラーの研究で、それによると非喫煙者は肺がんになった人のうちで3.5%と低く、一方、喫煙者は65.1%と高率でした。 たばこが、がん発生のどの段階に作用するのかは、現在も詳細なメカニズムは分かっていません。しかし、ミューラー以降行われてきた、たばこと疾病の優れた対照研究や、たばこの煙による発がん実験の成績などから、たばこが発がんに関与していることはまず間違いないとされています。 今日では、人の発がんに関与する因子の3分の1はたばこで、3分の1は食べ物だといわれています。 DNAの複製の失敗ががん化のポイント 近年、活性酸素の及ぼす害について取りざたされています。 たばこの中に含まれる物質によっても、活性酸素が精製されます。そしてそれによりDNAが傷つけられるという説や、たばこの中のベンゾピレンなどの発がん物質が、体内で活性体に変わり、DNAに結合して発がん性を示すといった説も唱えられています。 いずれにせよ、たばこに含まれるある種の物質が、細胞分裂の際にDNAの複製を正しく行わせない作用をしているようです。 また、たばことがんというとすぐに連想されるように、肺がんの重要な因子であると指摘されてきました。しかし、喫煙者は肺がん以外にも口こう、こう頭、食道、胃、すい臓、腎臓、ぼうこうなどのがんにかかるリスクが、非喫煙者に比べて高いことも明らかにされてきています。
年間 300万人が死亡 喫煙の害というと、多くの人たちは肺がんを連想します。確かに喫煙は肺がんの重要なリスクファクターですが、ほかの多くのがんのリスクも高めているだけでなく、がん以外の、体のあらゆる部位の疾患にも影響しています。 世界保健機関(WHO)などによる試算では、世界中で年間約 300万人が、たばこが原因で死亡しており、現在の喫煙傾向が続くと、20~30年後にはそれが年間約1000万人になると予測されています。 また、日本での、たばこが原因とされる死亡数は、最近の試算によると(95年)9万5000人(うち男性7万6000人、女性1万9000人)でした。20年で約2倍に増加し、この傾向はさらに続くと考えられています。 喫煙関連疾患の一部 喫煙により発症のリスクが増大すると考えられる疾患を「喫煙関連疾患」、あるいは「たばこ病」と呼んでいます。 以下のもののうち、悪性新生物、冠状動脈疾患、脳血管疾患、慢性閉そく性肺疾患は、喫煙が健康に与える悪影響の代表的なもので、英語表記の頭文字がどれもcであることから4cと称されています。 悪性新生物=がん(発がん物質による) - 呼吸器疾患(気道刺激による) 慢性閉そく性肺疾患、慢性気管支炎、ぜん息、肺気しゅ 循環器疾患(血管収縮、動脈硬化による) 冠状動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)、末しょう循環不全 消化器疾患(胃粘膜下血管収縮による) 胃・十二指腸かいよう、逆流性食道炎 精神疾患(習慣性、離脱症状による) ニコチン依存症 産婦人科疾患(胎盤通過による) 周産期死亡、早産、先天奇形 代謝疾患(耐糖能、カルシウム代謝異常による) 糖尿病、骨そしょう症 神経疾患(脳血流低下による) 脳い縮、パーキンソン病 歯科疾患(歯周組織破壊、歯石増加による) 歯周炎、口内炎、口臭 免疫抵抗力(免疫機能低下による) アレルギー性疾患、創傷治癒遅延 スポーツ(低酸素による) 運動能力低下 美容(血管収縮、ビタミンC破壊による) 皮膚温低下、しわ増化 QOL 寝たきり化促進
禁煙後の死亡リスク 虚血性心疾患、慢性閉そく性肺疾患、消化性かいようなどは、病気の進展にたばこが大きくかかわっています。しかし、逆に、禁煙によって、かなり発病や死亡の危険が下がるというデータも明らかにされています。 禁煙期間が長いほど死亡率は下がり、また、吸っていた期間が短い人ほど、吸わない人と同じ危険率にまで、速く下がります。
「不健康な習慣」が死亡率増大に直結 喫煙がさまざまな疾患の発症リスクを高めるとの調査報告は数多くなされていますが、これを裏返せば、喫煙をやめればそのようなリスクを回避できることになります。 米国公衆衛生局が発表した90年統計の死因の分類をみると、「不健康な習慣や行動様式」が50%を占め、「遺伝要因」(20%)、「生活環境や環境衛生に起因」(20%)などに比べて、最も多い死因となっています。 喫煙習慣も「不健康な習慣や行動様式」に含まれていて、喫煙は病気による死亡率の増大に、直接あるいは、間接的に影響を及ぼしていると考えられます。 こう頭がんによる死亡は5%弱にまで減少 別表は、喫煙によって発症する危険が増すと考えられる、喫煙関連疾患(たばこ病)のリスクの大きさを示したものです。 人口寄与危険とは、社会の喫煙率を考慮して、その疾患による死亡者のうち、喫煙による死亡の割合を推定したものです。言い換えれば、その社会で完全に喫煙が行われなくなった時にその疾患が予防される割合を表します。 例えば、男性のこう頭がんのリスクは喫煙によって32.5倍となり、喫煙者が全くいなくなれば、こう頭がんによる死亡者は4.62%にまで減少することを示しています。 死因 男 女 相対危険 人口寄与危険(%) 相対危険 人口寄与危険(%) 全死因 1.29 17.51 1.31 4.43 脳血管疾患 1.08 4.79 1.18 2.30 くも膜下出血 1.82 38.21 1.71 4.62 虚血性心疾患 1.73 35.52 1.90 10.03 胃かいよう 1.86 39.25 2.48 13.48 ぜん息 1.83 37.62 4.02 31.25 動脈りゅう 2.35 50.00 4.43 33.33 末しょう血管疾患 3.83 64.71 1.75 0.00 全がん 1.65 32.33 1.32 4.57 口こういん頭がん 3.00 60.78 1.05 0.00 食道がん 2.24 47.84 1.75 8.70 胃がん 1.45 25.13 1.18 3.48 肝臓がん 1.50 28.26 1.66 8.72 すい臓がん 1.56 28.33 1.44 6.06 こう頭がん 32.50 95.38 3.29 22.22 肺がん 4.45 71.55 2.34 15.60 ぼうこうがん 1.61 30.69 2.29 11.43 出所:Hirayama T.: Life-style and mortality : Large-scale census-based cohort study in Japan. Karger, Basel, 1990.
喫煙すると、動脈硬化の防止作用を妨げる コレステロールには、動脈硬化を促進する方向にはたらくLDLと、予防する方向にはたらくHDLがあります。 1日20本以上の喫煙者はHDLが正常値(40mg/dl以上)を割っていることが多いといわれています。LDLと総コレステロールが正常値でも、HDLが低ければ動脈硬化が進むことになりますから、高脂血症の場合は喫煙が非常に大きな危険因子となります。 また、たばこの煙の中に含まれる物質はLDLの変性を促進し、動脈硬化を進展させるといわれています。 ニコチンの血管収縮作用 さらに、たばこのニコチンが持つ血管収縮作用は、動脈硬化など血管障害を悪化させます。また高血圧の喫煙者が心血管障害で死ぬ確率は、非喫煙者の3、4倍というデータもあります。 たばこが循環器に与える悪影響はHDLを下げてしまうだけではありません。特に高脂血症では、喫煙はできるだけ控えたほうがよさそうです。