花粉症を含むアレルギー性鼻炎と喘息は実は密接な関係があります。離れた場所にある2つの器官の病気が関連しているのはなぜでしょうか?答えは、どちらも気道で起きる病気というところにあります。「アレルギー性鼻炎」と「気管支喘息」の患者が注意しなくてはならないことなどをご紹介します。
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春になると悩まされる人が多い花粉症は、季節性のアレルギー性鼻炎のひとつです。花粉症とともに通年性のものも含め、アレルギー性鼻炎の患者は年々増えており、2008年現在、国民の39.4%がアレルギー性鼻炎である(*1)といいます。これは、10年前と比べると約10%上昇したことを示しています。さらに2009年には、大規模な全国実態調査「SACRA(サクラ)サーベイ」によって、成人の喘息患者のうちアレルギー性鼻炎を合併している人が67.3%にのぼることが推定されると報告されました(*2)。
症状が鼻に現れるアレルギー性鼻炎と、気管支に現れる喘息。一見、関わりがなさそうな2つの病気ですが、実は切っても切れない関係にあります。海外で行われた調査(*3)において、喘息患者の60~78%がアレルギー性鼻炎との合併があると報告されています。また、日本国内で2005年に行われた調査(*4)においても、成人の喘息患者のうち、アレルギー性鼻炎との合併がある人が48%を占めるといいます。さらに、どちらかが発症してその治療をしないと、もう一方も引き起こされ、お互いが悪化する可能性があることが明らかになっています。
参考:大田健 第59回日本アレルギー学会秋季学術大会
2009年10月29-31日(秋田) 演題番号MS19-#2
離れた場所にある2つの器官の病気が関連しているのはなぜでしょうか。その答えは、どちらも気道で起きるというところにあります。鼻やのどなどは上気道、気管支や肺などは下気道と総称されます。これらは離れた場所にあるものの、ひと続きの空気の通り道となっています。そのうえ、2つの病気は原因となるアレルゲンや、炎症が起きる過程も共通しています。
このことから、アレルギー性鼻炎も気管支喘息も、気道というひとつの器官の病気であるととらえる「One airway,one disease」という考えが、近年医療関係者の間では広まっているといいます。
気管支喘息だけでなくアレルギー性鼻炎の症状もきちんと医師に伝えられれば、別々の病気ではなく、ひとつの病気として治療を行うことができます。そのためには、両方が同じ病気だという認識を患者の側ももつ必要があるでしょう。どちらかにかかっている人は、もう一方の可能性があることも意識して、適切な治療法でしっかりコントロールするようにしましょう。