妊娠・産後は、ママの体から赤ちゃんに栄養が奪われるため、この時期は特にビタミン・ミネラルなどの栄養の補給に気を配らなければなりません。この時期に押さえておきたいビタミン・ミネラルについて確認しておきましょう。
妊娠すると女性の体にはさまざまな変化が現れます。妊娠初期に現れるつわりはもちろんのこと、肌や髪のトラブル、情緒不安定、だるさや疲れやすさなどその症状はさまざまです。また、妊娠中だけではなく、産後もしばらくの間はこうしたトラブルが続くことが多いようです。月経が再開するとしだいにホルモンバランスは戻っていきますが、それまでは不定愁訴や体調の変化に悩まされることもしばしばです。妊娠中、そして産後の女性に現れる不快な症状とはどのようなものなのか、事前に症状をチェックしましょう。
症状 | 主な原因 | 対策 |
---|---|---|
眠くてだるい | ホルモンバランスの乱れ、ストレス、貧血などの要因が絡み合って起こります | 妊娠により疲れやすくなっているので、とにかくぐっすり眠ること |
気持ちが悪い | 妊娠初期に起こる、いわゆる「つわり」です。吐きづわり、空腹づわりなどタイプもさまざまです | つわりの場合は、食べたいときに食べたいものを。もちろん、無理に食べなくてもOK |
頭がズキズキ | 妊娠中毒症が原因の場合、血圧の上昇に伴って起こります。めまいがしたり、目の前にチラチラしたものが見えることもあります | 市販薬などを自己判断で飲まず、早めに受診を。妊娠中毒症の場合は安静を心がけ、塩分控えめの食事を |
フケ・かゆみ | 皮脂腺が閉じやすくなっているのに皮脂の分泌が多くなるため | 頭皮を清潔に。刺激の少ないシャンプーでやさしく洗いましょう |
シミ | 貧血やストレスなどが原因となって起こります | 栄養をしっかり補給。紫外線を防止し、悪化を防ぐことも大切です |
憂うつ・イライラ | ホルモンバランスの乱れやストレスが自律神経に影響を及ぼします | あまり物事を考え過ぎない、思いつめないこと。気分転換やリラックスも大切です |
妊娠中は、おなかの赤ちゃんにママの体から栄養が奪われてしまいます。また、初期のつわりではほとんど食べられないという人も多く、さらに中期以降では体重管理とともに必要なビタミン・ミネラルまで減らしてしまい、栄養不足に陥るケースもあります。妊娠中に起こりやすいトラブルに関連した必要な栄養素をチェックし、足りない場合はサプリメントで補うことも賢い選択でしょう。
なお、サプリメントを利用する際は、注意事項をよく読むように。なかには、妊娠・授乳中の場合には控えた方がよいものもあります。迷ったら販売元や医師に相談をしましょう。
予防したい症状 | 必要な栄養素 | 妊娠中の1日の所要量 ( )内は授乳中の1日の所要量 |
必要な理由 |
---|---|---|---|
貧血 | 赤血球のヘモグロビンのなかに含まれる鉄、赤血球の再生に必要な葉酸、ビタミンB12など | 鉄…20mg(20mg) 葉酸…400μ g(280μg) ビタミンB12…2.6μg(2.6μg) |
妊娠が進むにつれ体内の血液が急激に増えるため、赤血球の生産が追いつかなくなります |
つわり | つわりの人に多いといわれる「キサンツレン酸」の増加を間接的に防ぐビタミンB6など | ビタミンB6…1.7mg(1.8mg) | ビタミンB6が不足すると、アミノ酸の代謝異常が起こり、「キサンツレン酸」が増加します |
眠気やだるさ、イライラ | 脳や神経の興奮を鎮め、精神を安定させるカルシウム | カルシウム…900mg(1,100mg) | 胎児の骨や歯の形成に、母親の骨からカルシウムが奪われます |
妊娠中毒症 | 血圧を正常に保つカリウム、心臓の収縮をスムーズに行うカルシウム | カリウム…2,000mg(2,500mg) カルシウム…900mg(1,100mg) |
不足すると高血圧になり、妊娠中毒症の原因となります |
栄養所要量の出典:第6次改定日本人の栄養所要量
ママの体のためだけではなく、丈夫で健康な赤ちゃんを産むためにも、栄養のコントロールは欠かせません。ビタミン・ミネラルのなかでも葉酸は、厚生労働省が「神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるために、妊娠の1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月までの間、葉酸の摂取が必要である」としているように、元気な赤ちゃんを産むために大切な栄養素です。
しかしながら、葉酸は通常の食事から必要量摂取するのは至難の業。緑黄色野菜などはゆで野菜にすることで栄養成分が流出してしまいます。また、肉類で摂ろうとするとカロリーも増やしてしまうからです。現実問題として、毎日葉酸の多い食品ばかりを食卓に並べるのも大変なことでしょう。
米国政府では、「妊娠可能な年齢にあるすべての女性」に対し、1日400μg(0.4mg)の葉酸をサプリメントで摂取するよう呼びかけています。また日本でも厚生労働省が、食事だけでなくサプリメントの利用もすすめています。
必要量を毎日無理なく摂るために、食事で摂りきれない分をサプリメントで補うなど上手に組み合わせてみましょう。
参考:2002新食品成分表(五訂日本食品標準成分表準拠)
意外に見落としがちなビタミン・ミネラルの過剰摂取にも注意を。特に、妊娠3ヵ月までにビタミンAを大量に摂ると、新生児の奇形発生率が高まるといわれています。妊婦の場合ビタミンAの必要所要量は2,000IUだが、5,000IUを超えるとリスクが増えるといわれているので、十分に注意しましょう。
出産が近づいてきたら、母乳の質を高め、量もたっぷりと与えられるように気を使うとよいでしょう。生まれてきた赤ちゃんは、妊娠中よりもたくさんの栄養を必要とするので、ママも負けずにしっかり栄養補給することが大切です。特に新生児のビタミンK欠乏性出血症を防ぐため、ビタミンKの摂取は積極的に行いましょう。このビタミンは血液凝固に必要な成分で、不足すると頭蓋内出血を引き起こし、脳障害の原因となります。
また、ホルモンの分泌を正常にし、母乳の分泌を高めるビタミンEや赤ちゃんの骨の育成に関わるカルシウムの補給もお忘れなく。