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病気には「かかりやすい時刻」があるってホント?

「寝る子は育つ」には根拠があった
健康と時間6月10日は時の記念日。 私たちの健康は、"時間"によってかなり左右されていることをご存知だろうか。人間の体は、いつも一定の状態で保たれているわけではなく、一定の生体リズムのもとで動いているからだ。例えば、細胞分裂を促す成長ホルモンの活動は、夜中に最大となり昼が最小になる。そのため、「寝る子は育つ」し、お肌も「夜作られる」のである。ちなみに、冬に夜が長い北欧の人が南国の人より背が高いのは、夜の時間の長さに影響されているらしい。日本でも北国の人のほうが九州・沖縄の人より、背が高い傾向があるそうだ。

病気も生体リズムに影響されるため、病気によってかかりやすい「魔の時刻」が違ってくる。例えば、頭痛は明け方に発生しやすく、脳卒中はお昼頃に発生することが多い。最近では、こういった生体リズムを治療に利用する「時間治療」が注目され始めている。

魔の時刻が生じるわけ
では、なぜ病気によって、かかりやすい時刻が違ってくるのだろうか。
実は、人間の体には、体の成分やその活動が、それぞれ最も活発な時間帯とそうでない時間帯があるのだ。例えば、人間の体温は、昼過ぎに一番高く、夜中の2時頃に最も低くなる。体力も同様で、昼が最もあって夜が最も少なくなる。脈拍も昼が一番速く、血圧が高くなる。また、人間は昼を中心に活動するが、ふくろうやゴキブリなどのように夜行性の生き物もいる。それは、生体リズムが異なっているからなのだ。

このように、生き物は一日の中で規則的に変化する体内時計が刻むリズムによって、活動が支配されている。このリズムを、サーカディアンリズム(概日リズム)と呼ぶ。人間の場合、朝起きてから、体温や血圧が上昇し日中に活発に活動ができるようになり、夕方から夜にかけて体温や血圧が下がり始め、十分な休息を取れる体制を整える。体温や血圧が昼に最も高くなるのは、このようなサーカディアンリズムの影響を受けているからなのである。病気も当然のことながら、サーカディアンリズムの影響を受ける。例えば、「痛み」のリズムは夜に活発に活動する成長ホルモンの分泌と関係があるため、歯痛や頭痛など痛みを感じる症状は夜に起こりやすくなる

病気別「魔の時刻」
では、個々の病気について、発生しやすい魔の時刻とそのメカニズムについて紹介しよう。ただし、病気はいくつもの要因に基づいて発生するので、以下の表はあくまで傾向を捉える目安と考えてほしい。

病名 発生しやすい時刻 メカニズム
がん
夜
成長ホルモンが夜に増加するのと同様、がん細胞も夜、活発に分裂する。そのため、がんが大きくなるのも夜ということになる。
急性心筋梗塞 朝8時〜12時頃、
午前10時頃がピーク
朝8時〜12時頃、午前10時頃がピーク
心筋梗塞は高血圧や血圧の変動が危険因子。血圧は午前2時頃に最低で、その後上昇して午後2時頃にピークを迎える。血圧は朝目覚めたときに急激に上昇するために、午前中に発症しやすくなる。血液が明け方に固まりやすいことも関係していると考えられる。
アレルギー性疾患 夜間から明け方
夜間から明け方
アレルギーを示すヒスタミンの値が、ぜんそくでは午前4時頃がピークになる。気管支粘膜が明け方に過度に反応して、粘膜からの分泌が過度になることが影響している。アレルギー性鼻炎も午前中の早い時間に症状が出やすい。アトピー性皮膚炎の場合、午前中と比べて夜間は3倍皮膚が赤くはれやすいという報告がある。かゆみのピークは午後7時から12時くらい。
胃潰瘍
夜
胃酸の分泌は夜に多く、朝が少ない。胃酸分泌が多い夜は、胃がただれやすくなっている。ただし、アスピリンなど胃に強い刺激を与える薬による胃粘膜障害作用は、夜間より午前中に強く現れる傾向がある。
脳血栓 明け方
明け方
血液は明け方に固まりやすく、しかも、いったん固まった血液を溶かすはたらきも低下しているため、朝起こりやすくなっている。
糖尿病 午前4時〜8時頃
午前4時〜8時頃
夜間の成長ホルモンなどが盛んに分泌されるため、明け方3、4時頃から「暁現象」と呼ばれる血糖値の上昇が起こる。これに応じてインスリンの分泌量も増えないと、次第に血糖値が上がっていく。インスリン注射治療を行っている人の場合、注射の量が多すぎ、「ソモジー効果」という血糖値の急上昇が起こる場合があるが、この早朝に起こった場合は、「暁現象」の可能性もある。

生体リズムを利用した「時間治療」
病気にはそれぞれ発生しやすい時刻があるということが明らかになるにつれ、生体リズムを利用してより効果的な治療をしよう、という「時間治療」の試みが行われている。薬の効果を高めて毒性を抑えるため、一日の中で最も適切な投与時刻を設定するのだ。

高血圧や不整脈、狭心症の時間治療は活発に研究され、実践が始まっている。気管支喘息は、時間調整可能な製剤が登場し、成果を収めている。また、がんの化学治療については、欧米で治療法が確立され、日本でも試みが始まっている。2005年4月28日の毎日新聞では、がん細胞の活動が活発になる夜間に抗がん剤を投与することで、集中的にがん細胞を攻撃でき、改善した例も報告されている。しかも、夜間は抗がん剤を代謝する酵素の分泌が活発になり、早く排泄されるため、副作用も少ない。

今後は、時刻と薬の効果・副作用の研究がさらに進むことにより、合理的な薬物治療の発展が期待できるのではないだろうか。


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