疾患・特集

医師が教える「花粉症の薬、ここが知りたい!」

今年も花粉症のシーズンがやってきました。しかし、憂うつな気分で毎日を過ごすよりも、できるだけ快適に過ごすための方法を探したいもの。今からでもまだ間に合う、花粉症の治療法とその中心となる花粉症の薬について、専門医の先生にお話をうかがいました。

取材協力:アクティ大阪耳鼻咽喉科医院 大橋淑宏先生

花粉症対策、どうすればいい?

Q. 花粉症の症状を悪化させないためにはどうすればいい?

取材協力:アクティ大阪耳鼻咽喉科医院 大橋淑宏先生
アクティ大阪耳鼻咽喉科医院
大橋淑宏先生

できるだけ早く、本来は症状が出る前から治療を開始することが理想です。以前使われていた抗ヒスタミン薬は、即効性はありますが、作用の持続が比較的短時間でした。しかし、現在治療の中心となっている第二世代と呼ばれる抗ヒスタミン薬には、作用持続時間も長く、抗アレルギー作用を有するものもありますので、継続して服用することで症状が大幅に軽減されます。

Q. 初期治療はいつ頃からはじめるのがベスト?

地域によって予想される飛散開始日が異なり、その予想がずれることもありますので、飛散開始予想日の2週間前から薬を服用するよう指導しています。シーズンの終わりに、「症状が出る前に薬を飲んで備えたいが、来年はいつごろ来院すればいいか」と医師に確認すると良いでしょう。症状が出る前から早めに備えることが、シーズンを通して楽に過ごせるコツだと思います。

Q. 今シーズンから症状が出た場合、どうすればいいでしょうか?

スギ花粉の時期は、風邪も多い時期なので、強い鼻風邪の可能性もあります。その判断をするためにもアレルギー検査が必要でしょう。その逆に花粉症でも症状の軽い場合、「ずっと鼻風邪を引いている」と思っている人もいます。この季節に鼻風邪かなと思ったときは、まず耳鼻科を受診してみましょう。

Q. すでに症状が出てしまっている場合、治療はどのように行いますか?

まず症状を取りのぞく治療を行います。やはり治療の基本となる薬は、今出ている症状を取るだけでなく、明日、あさっての症状を軽減することができる第二世代の抗ヒスタミン薬です。そこにステロイドの点鼻薬や抗ヒスタミン薬以外の内服薬などを追加します。ただし、花粉症の治療は、開始が遅れるほど、症状が改善されるまでの時間が長くなりますので、できるだけ早く医師に相談してほしいと思います。

花粉症の薬、ここが疑問!

治療の柱となる花粉症の薬。しかし、病院で処方される薬と薬局で購入する薬、最近の薬の違いや、効果面についてはまだまだ誤解も多いようです。そこで、花粉症の薬の疑問について、引き続き先生にうかがいました。

Q. 花粉症の薬に眠気はつきものなのでしょうか?

以前は、病院で処方される薬も、強い眠気が出るものが主流でした。そのため、患者さんには「花粉症の薬=眠気が出るもの」という意識が定着してしまったようです。なかには、副作用だから仕方ないというよりも、眠気が出ていることが「効いている証拠」と捉える方もいるほどです。最近は少しずつメディアで取り上げられるようになったため、眠くならない薬をくださいと希望される方もいますが、まだ一握りです。きちんと効果を発揮し、眠くなりにくい薬があることを知らない方がほとんどというのが現状でしょう。

Q. 眠気の強い薬の方が、効果が高い気がしますが…

これにはまったく根拠がありません。また、花粉症の症状がつらく、夜も眠れないという方のなかには、眠気が出る薬の方がいいと思う方もいるかもしれませんが、夜間はもともとヒスタミンがあまり分泌されませんので、睡眠の改善度に差はありません。むしろ、眠気が出る薬の場合、夜間の睡眠が改善されても、日中に眠気や倦怠感が残ってしまうので、マイナスでしょう。

Q. 薬局で購入できる薬について教えてください

この時期は耳鼻科が混んでいることもあって、病院で受診するのをためらう方も多く、薬局で購入できる薬で対処している方もいます。しかし、現在販売されている鼻炎の薬に入っている成分は、古いタイプの抗ヒスタミン薬です。1日、2日程度で症状が治まるのなら薬局の薬でも構いませんが、何ヵ月も症状が続く花粉症の場合には、病院で処方される新しいタイプの非鎮静性抗ヒスタミン薬の方が、症状は楽になります。

薬の副作用にどう対処する?

今回紹介した花粉症の薬の服用に伴う「自覚できない集中力・作業能率低下=インペアード・パフォーマンス」。その問題点と、薬の服用の注意点について、さらにうかがいました。

Q. インペアード・パフォーマンスについて教えてください

私はこれを「うっかりさん状態」、「今いちパッとせん脳」などと呼んでいますが、本人が気づいていないうちに起こっている集中力や作業能率などの低下がインペアード・パフォーマンスです。何かヒヤッとした経験があっても、それを薬のせいだと思わない、薬の影響だと結びつかないのが問題だと思います。日常生活を送るうえで、作業効率が下がってもいいという方はおそらくいないと思いますが、知らず知らずのうちに起こってしまうのが怖いところです。

Q. 現在病院で処方される薬はみな、インペアード・パフォーマンスが起こりにくいのでしょうか?

必ずしもそうではありません。現在病院で処方される薬の多くは第二世代と呼ばれるものですが、そのなかにも、眠気などの副作用や、脳内に入りこむことでインペアード・パフォーマンスを起こすものがあります。「眠くなりにくい薬にしてください」と医師に伝えたり、確認する方がよいでしょう。

Q. そのほかに、花粉症の薬の服用に関して注意する点はありますか?

点鼻薬などは症状がなくなった時点でやめてもいいと思いますが、基本となる抗ヒスタミン薬は、シーズンが終わるまできちんと飲み続けることが大切です。症状が治まったからといってすぐに薬の服用を止めず、花粉シーズンが完全に終わるまで飲み続けるようにしましょう。

Q. つらい症状に悩む患者さんにアドバイスをお願いします

少しずつではありますが、新しい薬についての情報が、一般の方にも知られるようになってきました。このような情報を敏感にキャッチしている方は、医療機関で、眠くなりにくくて有効性に優れた薬の処方を受け、以前と比べ快適に花粉症の季節を過ごしています。どうすれば楽にこの季節を乗り切ることができるか、まずは医師に相談するところからはじめてください。