どれくらい「お疲れ」?疲労蓄積度をチェックしてみよう

多くの日本人が抱えている「疲労」に対し、厚生労働省は「労働者自身も自らの疲労度を把握・自覚し、積極的に自己の健康管理を行うことも大切」として、疲労蓄積度のチェックリストを公開しました。このようなチェックリストを使って、まずは自分自身の疲労の程度を客観的に測ってみましょう。

厚生労働省作成 疲労蓄積度チェックリスト

Step.1 自覚症状(13問)

最近1ヵ月間の自覚症状について、各質問に対し最も当てはまる項目にチェックしてください。
(ほとんどない…0点、ときどきある…1点、よくある…3点)

1. イライラする

2. 不安だ

3. 落ち着かない

4. ゆううつだ

5. よく眠れない

6. 体の調子が悪い

7. 物事に集中できない

8. することに間違いが多い

9. 仕事中、強い眠気に襲われる

10. やる気が出ない

11. へとへとだ(通勤後を除く)

12. 朝起きたとき、ぐったりした疲れを感じる

13. 以前と比べて疲れやすい

Step.2 勤務の状況(7問)

最近1ヵ月間の勤務の状況について、各質問に対し、最も当てはまる項目にチェックしてください。

1. 1ヵ月の勤務外労働

2.不規則な勤務(予定の変更、突然の仕事)

3. 出張に伴う負担(頻度・拘束時間・時差など)

4. 深夜勤務に伴う負担*1

5. 休憩・仮眠の時間数および施設

6. 仕事についての精神的負担

7. 仕事についての身体的負担*2

  • *1:深夜勤務の頻度や時間数などから総合的に判断してください。深夜勤務は、深夜時間帯(午後10時~午前5時)の一部または全部を含む勤務を言います。
  • *2:肉体的作業や寒冷・暑熱作業などの身体的な面での負担

Step.3 総合判定

次の表を用い、「Step.1 自覚症状」と「Step.2 勤務の状況」の評価から、あなたの仕事による負担度の点数(0~7)を求めてください。


Step.1
Step.2
  Step.2
勤務の状況の合計点
Step.1 0点 1~2点 3~5点 6点
以上
自覚症状の合計点 0~4点 0 0 2 4
5~10点 0 1 3 5
11~20点 0 2 4 6
21点以上 1 3 5 7

※糖尿病や高血圧症などの持病がある場合は判定が正しく行なわれない可能性があります。

あなたの仕事による負担度は?

  • 0~1点→低いと考えられる
  • 2~3点→やや高いと考えられる
  • 4~5点→高いと考えられる
  • 6~7点→非常に高いと考えられる

さて、あなたの負担度はどうでしょうか?自分自身の疲れの原因がわかっているでしょうか?疲れたときに、どんな行動に出てしまうか、自覚できているでしょうか?これを機会に、一度自分の「疲労」と向き合ってみましょう。

スッキリ疲労?グッタリ疲労?

誰もが日々感じている、体のしんどさや節々の痛み、心の晴れない様子をまとめて「疲れ」と呼んでいますが、そもそも疲れとは一体なんでしょうか。

人間の体には本来、「痛み」「発熱」などのように、重要な警報装置が備わっています。痛みや発熱があると、原因を特定し、薬を用いたり、休養をとったりするなど、なんらかの対策を講じるもの。「疲労」もまた警告のひとつで、疲れによって死や障害が近づきつつあることを自己に知らせているものです。体が発する3つの警告を、しばしば「三大アラーム」と表現しています。

「疲労」とひとことでいっても、軽い運動をした後の「スッキリした心地よい疲労」と、仕事などでストレスを抱えた状態で感じる「イヤな感じのグッタリした疲労」があり、両者の疲れ方はまったく異なっています。

「スッキリ疲労」は、主に筋肉の疲労です。いつもより働きすぎたり、休日のスポーツで頑張ったりした後に感じる疲労で、十分に栄養を摂ったり、お風呂に入ってリラックスしたり、一晩ぐっすり眠ったりすればだいたい回復するでしょう。

それに対して「グッタリ疲労」の原因は複合的です。PC作業などで背中や腰、肩の筋肉に不自然に負担をかけることや、職場の人間関係やプレッシャー、家庭でのトラブルなど、精神的に緊張状態を強いられ続けると、それも疲労感として知覚され、グッタリした疲れを招いています。現代人を煩わせているのはこのグッタリ疲労で、改善方法も難しいです。
「疲労」という警告を無視して対策をとらずにいると、免疫やホルモンなどを正常に維持するシステムのバランスが崩れ、体のだるさ、目のかすみ、内臓の不良といった不定愁訴となって現れます。

疲労を感じたら何よりも早めのケアを。それでも改善されないようなら内科などを受診し、進行させないようにしましょう。

疲労回復のコツ

十分な休養と睡眠をとろう

眠っているときは、筋肉が弛緩して休養状態になります。運動後、きちんと休憩をとって体を休めることも大切です。

体を動かしてみよう

運動後、軽い運動をして疲労回復を図る方法を「積極的休養(アクティブレスト)」といいます。10分程度のウォーキングやストレッチなどで血流がアップすると、筋肉付近にたまった疲労物質が再び心臓に向かって送り出されます。
軽めの運動は、逆に全く体を動かしていないような場合の疲れにもおすすめです。PCに向かいっぱなしなど、長時間同じ姿勢をとり続けると、全身の血行が悪くなってしまいますが、僧帽筋など一部の筋肉だけは、ずっと緊張しているため、やはり疲労します。軽く動いて疲労物質を筋肉から追い出しましょう

マッサージやお風呂も効果的

滞った血行を促進するために手っ取り早いのが、マッサージ。また、ぬるめのお湯にゆっくりとつかるのもおすすめです。

きちんと栄養補給しよう

豚肉などに含まれるビタミンB1は、疲労を回復させるはたらきがあると言われています。また、運動ストレスを解消するビタミンCも大切です。もちろん、エネルギー代謝をおこなうための炭水化物や、細胞を活性化する各種ビタミン、ミネラルもきちんと摂取したいもの。

広がりつつある慢性疲労症候群

あなたや、あなたの周りの人で、「激しい疲れで、会話や食事をするのも面倒」、「いくら寝ても寝足りない」、「頭痛や微熱、不眠が半年以上続いている」などの症状が見られる人はいませんか?これらは「慢性疲労症候群」の代表的な特徴です。

「慢性疲労症候群」は「慢性疲労」と似ていますが、こちらはれっきとした病気で、治療が必要となります。がんや甲状腺疾患、更年期障害などの病気はないのに、仕事や家事など生活に支障をきたすほどの極端な疲労状態が半年以上も続き、疲労感のほかに、微熱や頭痛、リンパ節の腫れ、関節痛、抑うつ状態、睡眠障害などの症状もみられます。
「正しく治療すれば再発しない」とされているので、上記の症状に心当たりがあるなら、早めに慢性疲労症候群の専門医を受診することをおすすめします。

その疲れに別の病気が隠れている可能性も…

疲れには、さまざまな病気が隠れていることもあります。
例えば、「糖尿病」です。疲れにプラスして、ひどく喉が渇いて水をたくさん飲む、尿の量が多いなどの症状も見られるようなら、糖尿病を疑うべきでしょう。
そのほか、「肝炎(+黄疸)」、「貧血(+動悸)」、「肺炎・結核(+発熱・咳・たん・呼吸困難)」、「がん(+体重減少・微熱)」、「膠原病(+体重減少・微熱・関節痛)」などの病気でも、症状のひとつに疲れやすさが指摘されています。
早期発見・早期治療のためにも、疲れと同時に現れる症状にもよく気をつけて過ごしましょう。

板倉先生ワンポイントアドバイス

ヒトは自分の体を健康に保とうとする力を秘めています。傷ができると、それを治そうと免疫細胞が集まり、サイトカインと呼ばれるシグナルを発して全身に異常を知らせます。異常を発熱、疼痛、疲労感として感じて治療を優先させます。脳もはたらきますが、なかでも視床下部が中心的役割を果たしています。
ヒトは活動するとエネルギーを使うので、老廃物ができるとともにエネルギー源の補給も必要です。休養が必要になりますが、疲労感として強く感じる場合とあまり意識しない場合もあります。
疲労感が強い場合は休養・睡眠が不充分であったり、栄養素の過不足があったりするシグナルかもしれません。生活を見直してみましょう。

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■参考

監修:板倉 弘重先生

板倉弘重 先生

ご活躍の場所 日本動脈硬化学会 名誉会員
日本ポリフェノール学会 理事長
日本栄養・食糧学会 名誉会員
日本臨床栄養学会 理事長
国立健康・栄養研究所臨床栄養部長
ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授
ご専門 動脈硬化、栄養関係、高脂血症、糖尿病、高血圧など 認定臨床栄養指導医
ご経歴 東京大学大学院医学研究科博士課程修了後、同大学第三内科入局。
カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所留学、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授。
2000年から2010年まで茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授。
日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。
2006年「瑞宝双光章」受賞。
2009年度国際栄養学連合(IUNS)のFellowに認定(栄養学研究分野で顕著な貢献をした世界の研究者10名の1人)。
2010年「動脈硬化疾患の予防と治療に関する栄養学的研究」により日本栄養・食糧学会功労賞を受賞。
芝浦スリーワンクリニック名誉院長
所属団体 日本内科学会、日本動脈硬化学会 名誉会員、日本ポリフェノール学会 理事長、日本老年医学会、日本肥満学会、日本栄養・食糧学会 名誉会員、日本臨床栄養学会 監事、日本栄養改善学会、日本健康・栄養システム学会 理事長
公開日:2021/07/09