CKD(慢性腎臓病)セルフチェック

糖尿病や高血圧の人、コレステロール高めの人は注意

腎臓は、肝臓や膵臓と同じように沈黙の臓器といわれています。最近は透析や末期腎不全になる患者さんや、腎臓の病気に関連して脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増加しています。高齢になると、年をとるにつれて腎臓のはたらきが落ちやすいといわれていますが、問題なのは働き盛りの世代で腎機能が低下している人が増えていることです。

腎臓のはたらきをチェックしてみましょう。年齢、性別、健康診断で測定した血清クレアチニン値を入力してください。

eGFR計算*1

  • ※算出された結果については、ご自身で判断せず、対応などを含め医師に相談しましょう。
年齢
(半角数字)
※対象年齢は18歳以上です。
性別
血清クレアチニン(Cr.)
mg/dL(半角数字)
※小数点以下2桁まで入力してください。

あなたのeGFR値は

eGFR値(GFR区分)によるワンポイントアドバイス

板倉弘重先生

eGFR値はいくつでしたか?CKDの重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価されます
板倉弘重先生にeGFR値ごとのアドバイスをいただきました。

■eGFR値が90以上の方
(G1:正常または高値)

板倉弘重先生「腎臓の糸球体ろ過機能は良好な状態と推定されます。尿検査で蛋白尿やアルブミン尿や尿沈育の異常がなく、腎臓画像診断などの精密検査で異常がなければCKDにはかかっていないと言えるでしょう。蛋白尿がある場合には、尿中の蛋白量に応じてCKD重症度4段階分類の第2、第3段階に入ることになるので腎臓の保護に努めることが大切です。
そのためには食事、運動、休養、睡眠、禁煙など日常生活に気を付ける必要があります。血糖値、血圧、血清脂質、尿酸、体重、腹囲などの変動に注意して、食事摂取量、各栄養素の摂りかたを加減します。塩分の過剰摂取は控えます。タンパク質摂取量は体重1kgあたり1g程度を目安に加減しますが0.8g以下では不足気味です。
CKDではない方は、現在の健康状態を維持するように生活習慣に注意してください。またメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの合併症のある方は、そのままでは腎臓に負担をかけますので治療するようにしてください。」

■eGFR値が60~89の方
(G2:正常または軽度低下)

板倉弘重先生「腎臓の糸球体ろ過機能は良好な状態と推定されますが、eGFRが60に近い方は蛋白尿が無い方でも、CKD発症の一歩手前であり、腎機能がそれ以上進行しないように、特に食事などの日常生活に気を付けるように努めてください。定期的に医療機関で腎機能の検査と腎機能障害リスクの評価を受けて、自分の状態を知ることが大切です。
蛋白尿がある場合には、尿中の蛋白量に応じてCKD重症度4段階分類の第2、第3段階に入りますので腎臓の保護に努めることが大切です。
CKDでない方でもCKDに罹患されている方でも、腎臓の保護のためには食事、運動、休養、睡眠、禁煙など日常生活に気を付ける必要があります。血糖値、血圧、血清脂質、尿酸、体重、腹囲などの変動に注意して、食事摂取量、各栄養素の摂りかたを加減します。塩分の過剰摂取は控えます。タンパク質摂取量は体重1kgあたり1g程度を目安に加減しますが0.8g以下では不足気味です。」

■eGFR値が45~59の方
(G3a:軽度~中等度低下)

板倉弘重先生「腎臓の糸球体ろ過機能が軽度ないし中等度低下しており、CKDに罹患していると疑われます。蛋白尿の合併によりCKD重症度ステージが変わります。高度蛋白尿を合併する場合は重症度ステージが最も高い第4ステージが考えられ、末期腎不全への進行のおそれがありますので医療機関への受診がすすめられます。
血糖値、血圧、血清脂質、尿酸、体重、腹囲などの異常は腎機能障害を増悪させる要因であり、これらの合併症を改善させるように食事などの日常生活に注意するようにしてください。必要に応じて薬物療法も行われます。
日常生活では食事、運動、休養、睡眠、禁煙などに気を付ける必要があります。また腎機能低下により発症する腎性貧血、ミネラル異常、骨異常などが合併してくる可能性があり、息切れ、倦怠感、むくみ、夜間尿などの症状が見られるようになります。合併症の状態により食事療法が変わってきますので、医療機関を受診して食事指導を受けることをお勧めします。」

■eGFR値が30~44の方
(G3b:中等度~高度低下)

板倉弘重先生「腎臓の糸球体ろ過機能が中等度から高度に低下したCKDと考えられます。腎機能低下による合併症である腎性貧血、ミネラル異常、骨異常などの頻度も高くなってきます。腎機能低下の進行が更に促進されるおそれもあるため治療が必要になります。医療機関への受診を勧めます。
血糖値、血圧、血清脂質、尿酸、体重などの異常や喫煙など腎機能障害を増悪させる因子を出来るだけ改善するようにします。日常生活では食事、運動、休養、睡眠、禁煙などの対策が必要です。特に合併症に合わせて食事療法の見直しが大切です。ミネラルでは特にリンやカリウムなどの異常がおこりやすいので摂取量の低減などの注意が必要です。」

■eGFR値が15~29の方
(G4:高度低下)

板倉弘重先生「腎臓の糸球体ろ過機能が高度に低下したCKDです。腎機能低下による合併症である腎性貧血、ミネラル異常、骨異常の合併率が高くなり、治療が必要になります。CKD重症度ステージでは末期腎不全や重篤な心不全、脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患リスクの最も高い第4ステージの段階です。
腎機能と合併症の程度により、日常生活での食事、運動、休養、睡眠、禁煙などの注意の仕方が変わりますので、腎臓専門医療機関でのアドバイスに従って対応することが大切になります。食事療法ではタンパク質摂取量の制限を適切に行うことは、末期腎不全への進行を抑え、筋肉委縮を起こさないようにするために大切です。ミネラルでは特にカリウムやリンの増加がないか注意が必要です。カリウムは1日に1.5g以下に制限することが勧められます。」

■eGFR値が15未満の方
(G5:末期腎不全)

板倉弘重先生「末期腎不全と推定されます。透析治療や腎移植が必要な一歩手前の状態と考えられます。腎機能低下に伴う腎性貧血、ミネラル異常、骨異常、尿毒症などのさまざまな合併症が高率に見られ治療が必要になります。心不全や血液循環器系疾患による死亡のリスクも高く、腎臓専門医療機関での治療が必要です。」

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CGA分類

CKDの重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。

■CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012)*2

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr比)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30~299 300以上
高血圧
腎炎
多発性膿胞腎
腎移植
不明
その他
尿蛋白定量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr比)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15~0.49 0.50以上
GFR区分
mL/分/1.73m2
G1 正常または高値 90以上      
G2 正常または軽度低下 60~89      
G3a 軽度~中等度低下 45~59      
G3b 中等度~高度低下 30~44      
G4 高度低下 15~29      
G5 末期腎不全 15未満      

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)

  • 注:わが国の保険診療では、アルブミン尿の定量測定は、糖尿病または糖尿病性早期腎症であって微量アルブミン尿を疑う患者に対し、3ヵ月に1回に限り認められている。糖尿病において、尿定性で1+以上の明らかな尿蛋白を認める場合は尿アルブミン測定は保険で認められていないため、治療効果を評価するために定量検査を行う場合は尿蛋白定量を検討する。

■CKD診断基準(以下のいずれかが3ヵ月を超えて存在)

腎障害の指標 アルブミン尿(AER≧30mg/24時間;ACR≧30mg/gCr)
尿沈渣の異常
尿細管障害による電解質以上やそのほかの異常
病理組織検査による異常
画像検査による形態異常
腎移植
GFR低下 GFR<60mL/分/1.73m2

AFR:尿中アルブミン排泄率、ACR:尿アルブミン/Cr比

(KDIGO CKD guideline 2012)

出典:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)

  • *1:GFRは血清クレアチニン(Cr)値、性別、年齢から日本人のGFR推算式*3を用いてeGFRとして算出します。
    eGFR creat(mL/分/1.73m2)=194×血清クレアチニン(Cr)値(mg/dL)-1.094×年齢-0.287
    女性の場合には×0.739
  • *2:日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2012,東京医学社,2012.
  • *3:Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis 2009;53:982‒92.

CKD(慢性腎臓病)とは

CKD(慢性腎臓病)とは、慢性的に腎臓の機能が低下している状態のことをいいます。IgA腎症やネフローゼ症候群、リウマチ関連の病気のループス腎炎、糖尿病性腎症といった原因や病態が異なるさまざまな病気を包括してCKDと総称しています。
※CKDはchronic kidney diseaseの略

日本腎臓学会のCKD診療ガイドライン2018によると、日本人のCKD患者数は約1,330万人、成人約8人に1人はCKDであることが推定されています。

腎機能低下の主な原因として、加齢と塩分の多い食事、喫煙などが挙げられますが、糖尿病、肥満や高血圧といった生活習慣病を合併していると、腎機能の低下を加速させるので注意が必要です。なかでもよく知られているのが糖尿病で、その3大合併症のひとつである糖尿病性腎症は、透析導入の原疾患の第1位となっています。

透析や末期腎不全、脳卒中や心筋梗塞・心不全を発症するリスクとなる病気のため、腎機能のはたらきが低下しているかどうかを早く発見して早く適切な治療を受けてもらうことが推奨されています。

おさらい◎腎臓の機能とは?

腎臓は、横隔膜の真下に左右に一対ある臓器で、大きさは握りこぶし程度。その形からよく「そら豆」に例えられます。

体液量の維持 体内のナトリウム量に応じて、体液の質・量のバランスを取る
血液浸透圧の調整 血液と細胞とで行われている栄養分や老廃物のやりとりを調整
体内の酸性度の調整 血液を弱アルカリ性に保つ
老廃物の選別 体内の老廃物をろ過し、尿として排出
血圧の調整 腎臓がつくるホルモンによって血圧などを調整

腎機能のはたらきを調べるには?

腎機能のはたらきが低下しているかどうかは、血清クレアチニン値という健康診断の検査項目と年齢、性別から、ろ過して尿をつくるためのフィルター役となる糸球体のろ過量(推算糸球体ろ過量:eGFR)で調べられます。
ガイドラインによると、eGFRは腎臓のはたらきやCKD(慢性腎臓病)を調べる指標として推奨されています。CKDの重症度は原疾患(病気)、腎機能、蛋白尿・アルブミン尿に基づく下記のCGA分類で評価します(CGA分類のCrはクレアチニンの略語です)。

CKDの治療は?

CKDの治療は、主治医や管理栄養士と相談しながら、塩分の少ない食事(1日6g未満)、タンパク質、水分、カリウムの摂取制限といった食事面の管理を行うことが基本となります。
さらに肥満の解消、禁煙など、生活習慣の改善を行いながら、高血圧や糖尿病といった原疾患の治療や腎臓機能を保護するための薬を服用していきます。

糖尿病性腎臓病(DKD)に注意

CKD(慢性腎臓病)は進行すると末期腎不全になり、さらに悪化すると透析に移行する場合があります。透析患者数も増加傾向にあり、日本透析医学会統計調査の2016年末時点における年次調査の結果(4,336施設の回答)では透析患者数は32万9,609人でした。
透析患者さんの病気で4割を占めていたのが糖尿病腎症でした。
問題なのは、末期腎不全にいたる前に脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増えていることです。

そこで最近は、糖尿病を発症しはじめた段階から腎機能の低下を見逃さないために「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」が日本腎臓学会から提唱されています。また、尿細管の機能異常を早期発見できる検査が注目されており、研究結果も報告されています。

腎臓は沈黙の臓器といわれ、加齢とともに腎機能は低下していきます。腎機能が低下しはじめた段階では無症状なことが多く、放置していると透析だけでなく生命を脅かす脳卒中や心筋梗塞・心不全などが起こる引き金になりかねません。
糖尿病や血糖値が高めの人、血圧やコレステロールが気なる人は腎機能も定期的に検査を受け、早期発見に努めましょう。

板倉先生ワンポイントアドバイス

日常生活に気を付けて腎臓の健康を維持しましょう

腎臓は尿を作り、老廃物を排泄してくれる大切な臓器ですが、その他にも血圧調節、造血、骨形成、体内水分量やミネラルの調整など休みなく働いている臓器です。食物を過剰に摂取しても、腎臓は黙々と働いて体の恒常性を維持してくれますが、腎臓に負担をかけていると次第に腎機能が低下してきます。さまざまな要因が関係していますがCKDとしてまとめて健康管理に配慮するように勧められるようになりました。
糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝疾患、高血圧などの心血管系疾患、自己免疫性疾患、細菌感染症など腎機能障害を引き起こす疾患も少なくありません。食事、運動、休養、睡眠、禁煙など日常生活に気を付けて腎臓の健康を維持するようにしてください。

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監修:板倉 弘重先生 芝浦スリーワンクリニック名誉院長

板倉弘重 先生

ご活躍の場所 医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック 名誉院長
日本動脈硬化学会 名誉会員
日本ポリフェノール学会 理事長
日本栄養・食糧学会 名誉会員
日本臨床栄養学会 理事長
国立健康・栄養研究所臨床栄養部長
ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授
ご専門 動脈硬化、栄養関係、高脂血症、糖尿病、高血圧など 認定臨床栄養指導医
ご経歴 東京大学大学院医学研究科博士課程修了後、同大学第三内科入局。
カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所留学、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授。
2000年から2010年まで茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授。
日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。
2006年「瑞宝双光章」受賞。
2009年度国際栄養学連合(IUNS)のFellowに認定(栄養学研究分野で顕著な貢献をした世界の研究者10名の1人)。
2010年「動脈硬化疾患の予防と治療に関する栄養学的研究」により日本栄養・食糧学会功労賞を受賞。
芝浦スリーワンクリニック名誉院長
所属団体 日本内科学会、日本動脈硬化学会 名誉会員、日本ポリフェノール学会 理事長、日本老年医学会、日本肥満学会、日本栄養・食糧学会 名誉会員、日本臨床栄養学会 監事、日本栄養改善学会、日本健康・栄養システム学会 理事長
公開日:2021/05/17