子育てと親の介護をする「はざま世代」に「がん」が加わったら?

子育て、親の介護、仕事など、ただでさえ忙しい生活を強いられる40〜50歳代の「はざま世代」と呼ばれる人たち人が「がん」を背負ってしまうと、どうなるのでしょうか。フィットネス団体「キャンサーフィットネス」の広瀬眞奈美さん、リンパ浮腫対策の商品を販売するお店を開いた大塚美絵子さんなどに聞きました。

「はざま世代」と「がん」

思春期・若年成人期(15歳から39歳)はAYA世代と言われています。高齢者を65歳とすれば、その間の40〜50歳代は「はざま世代」と呼ばれることがあります。子育てや親の介護をするなど「挟まれる」というのが言葉の由来です。
子育て、親の介護、仕事などに追われ、ただでさえ忙しい生活を強いられるはざま世代の人が「がん」を背負ってしまうと、どうなるのでしょうか。はざま世代の女性では、がん新規罹患者が男性に比べて多いことも課題です。がんを経験したことをチャレンジに切り替えて社会復帰し、フィットネス団体「キャンサーフィットネス」を設立した代表理事の広瀬眞奈美さん、リンパ浮腫対策の商品を販売するお店を開いた大塚美絵子さんなどに聞きました。

「はざま世代」と「がん」 写真はイメージです

乳がん、婦人科がんの20〜30%にはリンパ浮腫という症状が起こる

国立がん研究センターがん対策情報センターの最新がん統計*1によると、全がんの罹患率(全国推計値)は30歳代後半から50歳代前半では女性が男性よりも高く、45歳位の年齢では女性の罹患率は男性に比べてより高かったのです。また、がんと診断された患者さんの5年相対生存率*2は6割といわれているので*3はざま世代の女性がん経験者の多くは社会復帰を目指す人が増えているといえます。
ところが、治療終了後は医療機関とは関わりが少なくなります。医療スタッフなどによる心の支えがないなか、体力の低下や後遺症、支出の増大など環境が激変します。がん経験者は外見からは普通に見られますので周囲の期待に応えようとしますが、現実とのギャップに対して落込むという負のスパイラルに陥ります

あまり知られていませんが、がん患者は四肢の痛みや痺れ・ケモブレイン(抗がん剤による記憶力や理解力の低下など)など治療終了後も長きにわたってさまざまな後遺症に悩まされます。これは、男女共通です。
そして、手術でリンパ節を取り除いたり(郭清といいます)、放射線で傷害した場合には、リンパ液の体幹への還流が妨げられ、リンパ浮腫という症状を発症する場合があります。
リンパ浮腫は命を脅かすものではありませんが、現在でも特効薬はなく長期間にわたり根気のいる治療が必要になります。

  • *1:国立がん研究センターがん対策情報センターの最新がん統計、地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年〜2013年)
  • *2:あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体*で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救い難いがんであることを意味します。
    * 正確には、性別、生まれた年、および年齢の分布を同じくする日本人集団
  • *3:国立がん研究センターがん対策情報センター地域がん登録によるがん生存率データ(1993〜2008年)によると、2006年から2008年においてがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で62.1%(男性59.1%、女性66.0%)との報告があります。

「動くことは生きること」をモットーにフィットネス事業を展開

乳がんとの闘病経験をもとにがん経験者をサポートするフィットネス団体「キャンサーフィットネス」(http://cancerfitness.jp/)を設立した代表理事の広瀬眞奈美さんは、9年前に治療を受けました。
ツライことや不安なことがありましたが、毎日を元気かつ充実した生活をするために体力や持久力をつけて、自身の身体をケアしていかなければと考え、治療前から運動をして自身を励ましてきました。
治療後の副作用も運動を続けたことでがんを乗り越えてきました。運動は、リハビリのセルフケアや健康管理、そして今後の人生を自分らしく生きるために大切だと思ったこと、同じ境遇の仲間から支えてもらった経験から、キャンサーフィットネスを2014年に設立しました。

キャンサーフィットネスのインストラクターはがん経験者です。現在、そのインストラクターが全国で活動を展開しています。
より多くのがん経験者に、インストラクターが運動を通して背中を押してあげることにより、がんを乗り越えて明るく笑顔で社会に復帰してもらえることを願っているからです。
治療が終了した後のサポートは社会の枠組みのなかで考えないといけませんし、現在は「がんと共に生きる時代」です。広瀬さんは「動くことは生きること。動けば、心もかならず動きます。命を輝かせます」をモットーに活動しています。

がん経験者の社会復帰に向けたサポート体制を充実すべき

卵巣がんの闘病経験をもとにリンパ浮腫対策の商品を販売するお店「リンパレッツ」(https://www.lymphalets.biz/)を開業した大塚美絵子さんは、「治療が終了しても抗がん剤の副作用と思われる四肢の痛みや痺れ、体力低下、ケモブレインなどの症状が長く残りました。そのため、社会復帰の意思があっても、なかなか働き口を見つけられませんでした。そのため今後の経済見通しも立てられず、しかし「それを誰に相談したらよいかもわからなかった」といいます
さらに、手術で60個近くリンパ節を郭清したため、脚のだるさや違和感に悩まされました。治療中に病院の売店で弾性ストッキングを購入しようと思っても、商品数が少ないうえ試着もできません。どの弾性ストッキングが自分のリンパ浮腫の状態に合うのか、製品同士の比較もできないことや、相談できる人がいないといった経験をしました。
ところが、旅行先のミュンヘンでは街中の健康グッズ店で、高品質の弾性ストッキングを試着の上簡単に買うことができたのです。
がん患者さんが治療後のQOLを少しでも向上させるためには、ミュンヘンで自分が入ったようなお店を作ろう、製品を比較して試着してから購入できるうえ、患者さんの悩みを聞いてくれるようなお店を作ろうと思い、リンパ浮腫対策の弾性ストッキングや弾性スリーブなどを販売するお店を開店したのです。

また、大塚さんは多くの患者会のイベントやセミナーで講演活動などを積極的に活動しています。
講演では、「30〜50歳では女性のほうが男性の倍くらいがんに罹患する人が多いのです。この世代の女性は子育てに親の介護が加わり非常に重要な社会的役割を担っています。しかしあまりに忙しく非正規雇用の人も多い。そのため、この年代の女性の声が政府や雇用者になかなか届いていないと感じられます。この年代の女性には、国を挙げてサポート対策を構築してほしい」と強調しています。
治療中と治療終了後のギャップが大きすぎるがん経験者が、治療を終了して社会復帰するために、サポート体制を充実させることが今後の課題といえるのではないのでしょうか。

公開日:2018/06/18
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