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161:一卵性双生児でも指紋は違う?手の「指紋」 指紋の研究は100年以上前に日本で始まり世界に広まった(3)(望月吉彦先生) - ドクターズコラム
大人の健康情報 望月吉彦先生 更新日:2022/06/13 前回より続きます。 同一のDNAを持っている一卵性双生児でも指紋は違います(参考:Identical Twins and Fingerprints)。不思議です。指紋は受精後10-16週で決まります。その間の胎内環境で指紋が違ってくるのです。 なおフォールズ医師の業績を紹介した文献「The Preservation ion of friction ridges(Laura A. Hutchins 著)」に以下の記載があります。 To prove permanence, Faulds and his medical students used various means—razors, pumice stones, sandpaper, acids, and caustics—to remove their friction ridges. As he had hoped, the friction ridges grew back exactly as they had been before. 「指紋が不変である事を証明するために、フォールズ医師と彼の医学生たちは、カミソリ、軽石、紙やすり、酸、苛性剤など様々な手段を使って指紋を取り除いた。フォールズが期待した通り、指紋は元通りになった。」 つまり、指紋を取り除いても皮膚が再生すれば元通りになるのですね。 さて、下の写真は当クリニックで切断指を治療した患者さんの指です。再生した指の指紋と以前の指紋は、多分、同一だと思いますが証明する方法はありません。 (注:当院ではこのような指の再生治療を行っています) さて、前々回で紹介したスコットランド医師ヘンリー・フォールズ(Henry Faulds、1843-1930)が『NATURE』 (1880年10月28日605号)に寄稿した「指紋に関する論文」を紹介します。 この論文を翻訳してみました。古い英語が使われていたりするので間違っているかもしれませんが、大意はあまり変わらないと思います。 手の「指紋」について ヘンリーフォールズ 筑地病院 東京 日本 一年ほど前、日本で発見された先史時代の土器の標本を見ていたら、粘土がまだ柔らかいうちに作られた際に付けられたと思われる指の跡に気づきました。それから「指の跡」に注目するようになりました。残念ながら、古い土器に付いている指紋はどれも曖昧ではっきりとしたものではなく、土器に付いている指紋はあまり参考にはなりませんでした。しかし最近作られた陶器に残っている指の跡は結構はっきりとしていて、それで人間の指紋の特徴を観察することができるようになりました。 最初に猿の指紋の研究をしました。猿の指紋は人間の指紋と似ています。私は後で追求しようと思っていることについて幾つか述べる機会がありましたが、その点については別の手紙で発表するかもしれません。そういう機会があれば良いと思っています。 一方で、キツネザルの興味深い遺伝的関係に光を当てるための追加の手段として、これに関連したキツネザルなどの慎重な研究を提案したいと思います。 私は、日本の人々から多くの指紋を採取しました。現在、他の民族からも採取しているところです。ここで、いくつかの興味深い点を紹介します。 指紋の溝は非常に非対称的な発達を示す人がいます。このような場合、片方の手の指はすべて同じような線の配列をしていますが、もう片方の手ではそのパターンが逆になっています。 私が調べたジブラルタル猿(Macacus innus)にもこのような配列がありました。私がここで検査した数少ないヨーロッパ人にもこのような配列が見られます。 植物観察用レンズは、このような指紋の詳細な特徴を記録するのに役立ちます。 指紋のループが発生しているところでは、一番内側の線は単に切れて突然終わることもあれば、またループが現れて終わることもあります。元の方向に向きを変えて切れ目なくループが続いていることもあります。また鉄道地図の中には分岐点のように合流したり、分岐したりする指紋線もあります。しかし様々な種類の指紋を印刷すると、両手が私たちに与える対称性の一般的な印象と似ているかもしれません。 日本人の場合、両手の親指の線は似たような螺旋状の渦巻きを形成しています。左手の人差し指の指紋線は独特の楕円形の渦巻きを形成していますが、右手の対応する指紋線は右手の人差し指の線とは全く逆の方向を持つ開いたループを形成しています。右の薬指にも楕円形の渦巻きがありますが、対応する左指には開いたループがあります。 特定の掌紋は両手で平行に並んでおり、非常に対称的であり、したがって英国人のそれとはかなり異なっています。 これらの例は両民族の典型的なパターンを示すものではなく、単に観察すべき事実の種類を示すものだと思っています。 私の観察方法は、まず指をよく観察してできるだけ正確に曲線の大まかな傾向をスケッチし、国籍、性別、目と髪の色を記録し、後者の標本を確保することです。私はこれをシダの葉の記録に使う方法である「ネイチャープリンティング」を使って記録することにしました。必要なのは一般的なスレート板や滑らかな板、またはブリキのシートを印刷用インクを非常に薄く均一に広げたものだけです。より強い記録を残したい場合は、しっかりと柔らかく押し付けて、少し湿った紙に転写します。 私はガラス板に指紋の記録を残すことに成功しました。この方法だと非常に繊細な部分まで記録できます。実際にはやや淡いですが、微細な毛穴の細部まで非常によく表現されているのでデモンストレーションには役立つでしょう。色の違うインクを使うことで、2つのパターンを重ね合わせて比較することができます。ガラス記録した指紋は投影装置で表示できるかもしれません。 私は必要に応じて各事件の詳細を記入するための空欄の用紙と、顕微鏡検査のための毛髪の標本を添付したいくつかのアウトラインハンドを用意していました。 それぞれの指先は単独で行うのが最善であり、人々はまれにプロセスに従おうとします。少しのお湯と石鹸でインクを除去します。ベンジンはインク除去に、より効果的です。 これらの無限の品種を通じた遺伝の優勢は、時に非常に印象的でした。 私は親子の間に似た指紋のパターンを発見したことがあります。しかし否定的な結果もあります。親子関係に関して何も証明しないかもしれません。注意を払うことが重要です。 私は、これらのパターンを注意深く研究することがいくつかの点で役立つかもしれないと確信しています。 私がサルに存在することを発見した類似性を他の動物にも拡張できるかもしれません。 これらの類推は更なる分析を認めるかもしれないし、よりよく理解された場合には、民族学的分類に役立つかもしれません。 もしそうなら古代の陶器に見られるものは、歴史的に非常に重要になるかもしれません。しかし、私はこれについて非常に疑わしいです。 ミイラの指は特別な準備をすれば、比較のために結果が得られるかもしれません。しかし、私はそれには懐疑的です。 粘土やガラスなどに血のついた指紋記録が残っていれば、犯罪者を科学的に特定するのに役立つかもしれません。私はすでにそのような2つのケースを経験しています。 1番目のケースでは、脂ぎった指の指紋が、強いアルコールを飲んでいた人間を特定しました。その模様はユニークなもので、私は以前にその人(アルコールを飲んだ人)の指紋記録を入手したことがあったのです(注:どうも教えていた学生が夜中にフォールズの研究室にあったアルコールを飲んでいて、それに気づいたらしい、フォールズ、結構お茶目です)。元の指紋とアルコールグラスの指紋は一致しました。 2番目のケースは、白い壁に残っていた煤けた指の跡が容疑を否定する証拠として使われました(注:犯人の指紋と、指紋が違ったらしい)。 他のケースでは、いくつかの切断された被害者の手だけが発見されたときのように、医学的な法的調査が発生する可能性があります(以前に知られていれば、それらはペニー小説家の標準的なモグラよりも価値ではるかに正確である)。以前に知られていなかった場合には、遺伝学の専門家は、多くの場合にはかなりの確率で、またいくつかの場合には絶対的な精度で親族を決定することができるかもしれません。このような場合、原告はこの原則の範囲を超えていないかもしれません。 認識可能なTichborne型があるかもしれないし、専門家が事件を関連付ける可能性のあるOrton型があるかもしれません。絶対的な同一性は、いくつかの状況では子孫関係を証明するでしょう。 私は、このような一般的な結論に到達してから、私たちが指紋を記録するのと同様、中国の犯罪者の指紋記録が残されていたと聞いたことがあります。しかし、私はまだ、この点についての正確な、あるいは信憑性のある事実を得ることに成功していません。エジプト人は、日本人が現在行っているように、犯罪者の自白を親指の爪で封印していたことが、最近の発見で証明されています。しかし、これは全く別の問題であり、興味深いことに、我々の国イギリス、給仕の女は、同様な方法で封印された手紙にスタンプを押していたのです。 写真の他に重要な犯罪者の指紋の記録を残すことの利点については疑いの余地がありません。昔、中国人が犯罪者の指紋記録を残していたことを知るのは驚くべきことではないと思います。本当にそういう記録を見つけることができたら嬉しいと思います。それは方法の有用性を確認するのに役立つし、蓄積されたかもしれない事実は忍耐強い観察者のための豊かな人類学の宝庫になるでしょう。 以下、次回続く。 【参考文献】 コリン ビーヴァン著、茂木 健訳「指紋を発見した男―ヘンリー・フォールズと犯罪科学捜査の夜明け」主婦の友社:2005刊 HENRY FAULDS著「Dactylography; Or, the Study of Finger-Prints」1912年刊 HENRY FAULDS著「Guide to finger-print identification」1905年刊 HENRY FAULDS著「How the English fingerprint method arose」1915年 HENRY FAULDS著「Nine Years in Nipon. Sketches of Japanese Life and Manners」1888年 西岡研介著:「噂の眞相」トップ屋稼業 (河出文庫):上述の指紋の話の他にも、あれれ?という話が沢山紹介されています。 2-5は全て、電子化されています。 「Historic Works on Fingerprints」というサイトで読むことができます。 The Project Gutenberg EBook グーテンベルグプロジェクトでも上記文献2.は紹介されています。 https://www.gutenberg.org/files/47911/47911-h/47911-h.htm 望月吉彦先生 所属学会 日本胸部外科学会日本外科学会日本循環器学会日本心臓血管外科学会 出身大学 鳥取大学医学部 経歴 東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学) 獨協医科大学教授(外科学・胸部) 足利赤十字病院 心臓血管外科部長 エミリオ森口クリニック 診療部長 医療法人社団エミリオ森口 理事長 芝浦スリーワンクリニック 院長 医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック 東京都港区芝浦1-3-10 チサンホテル浜松町1階 TEL:03-6779-8181 URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/ ※記事内の画像を使用する際は上記までご連絡ください。
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潰瘍性大腸炎・クローン病、痛み・疲労、リウマチの患者さんをオンラインサポート
オンラインの患者さんサポートは、新型コロナの影響により不安と孤独に陥った患者さんを勇気づける機会として、交流を深める機会として役立ちます。潰瘍性大腸炎・クローン病、線維筋痛症、リウマチの患者さんへの支援活動について紹介します。 目次 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんは就労と通院診療が課題 きんつう相談室:癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」を発表 関節リウマチの痛みと天候・運動との関連からサポート 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんは就労と通院診療が課題 潰瘍性大腸炎やクローン病(炎症性腸疾患:IBD)は、20~30歳代の働き盛りで発症しやすく就労が課題です。そこで、オンラインの「Gコミュニティ」は、5月11~20日に新型コロナウイルス感染症の影響についてアンケートを実施しました。 ユーザー149人(患者さん、家族など)の回答を見ると、9割近くがコロナウイルス感染症に対して不安を抱えており、不安の要因は外出や公共の交通機関の利用(それぞれ3割)、薬の服用が7割近く(多くの患者さんは免疫を抑制する薬を服用しています)などでした。 また、いままでの通院スタイルではなく、オンライン診療(遠隔診療)を希望する人の割合が7割近いことがわかりました。通院へのサポート、就労へのサポートが必要です。 調査結果の詳細(Gコミュニティ) きんつう相談室:癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」を発表 線維筋痛症や痛み・疲労のカウンセリングルーム「きんつう相談室」に生活に役立つ読者投稿が寄せられています。 熊本県で患者団体スマイルハートを運営する加藤マサヨさんからは、手で握る力が弱いので生活の工夫として、キャップオープナーやお風呂で体や紙を洗うときに使うブラシなどを紹介してくれました(詳細はブログ)。 また、患者さんたちがみなさんに言い表したいこと、コミュニケーションを「ゆるり」と取り持つことをイメージした癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん(ぴあにゃんはピアカウンセリングのピアが由来)を有償で提供しています。 LINEスタンプは、イラストレータの山岸史さんが制作したもので8個あります。スタンプ8個ワンセットが120円で、ポイントでも購入できます。プレゼントもできます。 LINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」 猫妖精ぴあにゃんLINE STORE 関節リウマチの痛みと天候・運動との関連からサポート 関節リウマチは、痛みやこわばりなどの症状は天候に影響されやすいと言われています。そこで、順天堂大学膠原病内科学講座の研究グループは、日常生活の中で自分の症状把握をサポートするアプリ「リウマジョイ」を開発しました。 アプリを用いて、利用者の日々の体調、痛み、こわばり、その日の天候や、前日の歩行数などをタッチ画面で簡単に記録すると、関節痛とその日の気圧、前日の歩行数の変化がグラフ表示され、日々の症状の変化を把握できるようにしています。治療薬の内服や注射を忘れないよう、カレンダーやお知らせ機能も備えています。 また、手のひらを撮影すると、人差し指と薬指の長さが測定され(2D/4D比といいます)、その結果から胎生期の性ホルモン量が推定されて、予測される優れた資質や身体的特徴をお知らせする機能もあります(順天堂大学プレスリリース)。 新型コロナの影響により2020年春以降、コロナ感染への不安を持ちながら通院するケースや、患者さんには者さんは少なくないのが現状です。 そこで、不安を和らげて、同じ境遇にあるかた同士でつながりを深めてもらうために、オンラインでサポートする取り組みが活発になっています。ぜひとも活用しましょう。 ■関連記事 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントとは?Gコミュニティ 痛みと疲労に悩む人に役立つ医師&患者会セミナー 全身の激しい痛みで寝たきり状態を経験、患者さんに伝えたいこと 医療者が線維筋痛症患者になって思うこと(3) 公開日:2020/10/07
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潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントとは?Gコミュニティ
潰瘍性大腸炎やクローン病は働き盛りに発症するケースが多く、仕事との両立が課題です。そこで、患者さんとそのご家族をサポートするGコミュニティ(IBD患者オンラインコミュニティ*1)が、2019年12月に患者さん同士や患者会、専門家などとリアルに触れ合ってもらうために開催した交流イベントから、患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントを得ることを目的にしたセッションについて紹介します。 目次 20歳以降の働き盛りに多い病気なので就労サポートが重要 就職活動で病気のことをうまく伝えるコツとは? 企業の福利厚生などと自分の状況と照らしあわせて検討することも必要 自分の症状や体調の変化を理解したうえで会社の身近な人から伝えていくべき 20歳以降の働き盛りに多い病気なので就労サポートが重要 潰瘍性大腸炎やクローン病(以下、IBD:Inflammatory Bowel Disease)は、原因不明の腸の炎症を伴う病気で、生涯にわたり治療が必要なので国の難病に指定されています*2。 現状では、患者数は25万人以上と言われており、最近は右肩上がりで患者数が増加し続けています。20~30代の働き盛りの発症例が多いので、仕事と病気の両立が課題です。 そんな患者さんのサポートのために、同じ境遇にある患者さん、専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)が集まるGコミュニティ(IBD患者オンラインコミュニティ)があります(関連記事:働き盛りに多い潰瘍性大腸炎、クローン病、仕事と両立する鍵は?Gコミュニティ)。 Gコミュニティに参加している患者さんから、オンラインだけでなく、リアルに交流できる場が欲しいとの要望がありました。 そこで、同じ不安や悩みを持つ患者さん同士、専門家、患者団体、栄養士、キャリアアドバイザーなどがリアルに触れ合って気軽に交流を深められるイベント「IBDエキスポ*3」が2019年12月14日に開催されました。 イベントでは、患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントを得ることを目的にしたセッションがありました。 潰瘍性大腸炎の20代の患者SOUさん(仮名)、埼玉のIBD患者会の代表の仲島雄大さん、キャリアドバイザーの加藤みつきさんが登壇し、就職活動や就業と体調を両立させるのかなどについて講演し、IBDエキスポに参加した患者さんたちとディスカッションしました。 就職活動で病気のことをうまく伝えるコツとは? キャリアアドバイザーの加藤さんの講演によると、あるアンケート結果では潰瘍性大腸炎患者さんの約3割が、病気のことを会社に開示しないで就業していました*4。 就職活動で「伝え方がわからない」、あるいは「伝えることが怖い」と考える患者さんが少なくないことが考えられます。 加藤さんからは、病気を伝えるときは、安心感を与えられる表現で、また具体的に職場がどのような配慮をしなければならないのかというイメージを企業の採用担当者に与えられることが大切とのアドバイスがありました。 就職面接のときに会社の人事担当が病気のことを詳しく知らない状況で、いきなり病名を伝えられると「このかたは、仕事は大丈夫なのか?長く続けられるのか?」といったことを疑問に思う可能性があるからです。 ストーマを装着した患者さんの転職事例も紹介されました。それによると、ストーマ装着前後の自分の状況など、次の内容を理解してもらえたことが成功の理由とのことです。 ストーマを装着する以前は体調が安定せず業務に影響しており、転職せざるを得ない状況になるケースがあった。 面接時はストーマを装着していることにより体調が安定しており、規則正しい生活ができている。 通院に関しては、仕事にはさほど影響せず、有給休暇の取得範囲内でおさまる。 企業の福利厚生などと自分の状況と照らしあわせて検討することも必要 潰瘍性大腸炎患者のSouさんは、大学生時代に就職活動をしていた経験から、当時の状況を紹介してくれました。 Souさんによると、面接時は病気のことを全面に押し出すのではなく、大学時代に取り組んできたことや志望動機を積極的に伝えたとのことです。 また、潰瘍性大腸炎に関しては詳しくは話しませんでした。もともと腸が悪く、入院歴があったことを人事担当者の面接官に伝えました。 質問に答えるだけでなく、就職先候補企業の有給休暇など、福利厚生のことを人事担当者から聞き出したとのことです。 就職活動をこれから行う患者さんに対しては、自分の状況と照らしあわせて、就職先としてマッチするのかどうかを検討することが重要とのアドバイスをいただきました。 自分の症状や体調の変化を理解したうえで会社の身近な人から伝えていくべき 長年にわたりIBD患者さんの就労支援に関わってきた患者会・埼玉IBDの代表・仲島さんは、就業と体調を両立するために、自分の病気の状態を長い時間をかけて観察し、症状が悪化する時の特徴や再発時の体調の変化を理解することが重要との話がありました。 そのうえで、就職や転職の際は自分の病気のことを隠さずに開示するほうがいいと考えているとのことでした。 というのは、就職した後に病気と付き合っていかなければならないためで、定期的な通院やトイレの回数が多いが、業務には支障がないと伝えることで、会社が配慮しなければならないことを伝えることが大事との話でした。 また、会社の全ての人に病気の理解を求めても難しいので、人事や近くで働く同僚から、少しずつ自分の病気のことを伝え、徐々に理解してもらうこともアドバイスされました。 例えば、トイレに行く際にも逆に心配してもらえるような関係性を築いていけるようにすることなどを挙げていました(詳細は、動画「IBD患者の就業に関する実態と課題」:https://gcareglobal.com/ibd-expo/を参照)。 IBDは腹痛、下痢、血便などの症状が悪化する活動期と、症状が落ち着く寛解期を繰り返えすので入退院を繰り返し、高額な薬剤や外科手術が必要なこともあり、日常生活、仕事、そして結婚・出産などのライフイベントにも大きく影響します。 生涯にわたり病気と付き合い、多くの不安を抱えている患者さんのことを理解してもらえる社会になることが求められているのではないでしょうか。 *1:株式会社ジーケアがオンラインコミュニティプラットフォーム「G コミュニティ」を運営しています〔登録数:736人 (2020年5月14日時点)〕。 *2:潰瘍性大腸炎とクローン病との違いは体内で発症するところです。潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こり、肛門側から連続性に口側へ広がります。 クローン病は,全ての消化管に炎症が起こる疾患で、特に小腸,大腸,肛門に起こりやすく、食道や胃に起こることもあります。病変と病変の間に正常な組織が存在(スキップ)することも特徴です。 *3:IBDエキスポは、Gコミュニティに参加する患者さんからリアルに交流できる場が欲しいとの要望を受け、患者さん同士、医療者、栄養士、キャリアアドバイザーなどと直接かつ気軽に交流できるイベントとして2019年12月14日に開催されました。患者会のTokyo IBD(http://www5a.biglobe.ne.jp/~IBD/)や埼玉IBD(http://saitama-ibd.org/)、企業も参加しました。 *4:ヤンセンファーマ株式会社「IBD患者の就労に関するインターネット定量調査」2018 公開日:2020/05/27 監修:Gコミュニティ(IBD患者さんのオンラインコミュニティ)
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働き盛りに多い潰瘍性大腸炎・クローン病、仕事と両立する鍵は?Gコミュニティ
潰瘍性大腸炎やクローン病は、20~30代で発症することが多く、患者さんの多くが仕事と病気と両立させることに課題を抱えています。そこで、患者さんとそのご家族が、他の患者さんや専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)とつながることができるGコミュニティ(オンラインコミュニティ)*1に寄せられた就業に関する悩みや解決の糸口になるアドバイス内容を紹介します。 目次 患者数は推定25万人以上、10~20歳から発症する人が多くなる病気 「IBDだから、この仕事はできない」はありません 働き方にはさまざまな工夫・アイデアを考えよう 患者数は推定25万人以上、10~20歳から発症する人が多くなる病気 潰瘍性大腸炎やクローン病は、原因不明の腸の炎症を伴う疾患です(Inflammatory Bowel Disease:IBDと総称されます)。生涯にわたって治療が必要なので、国の難病に指定されています。 患者数は、現在では推定25万人以上で、最近は患者数が右肩上がりに増加し続けています。このことから、潰瘍性大腸炎の軽症患者の一部は国の医療費助成制度(医療受給証)の対象から除外され始めています。 平成28年度衛生行政報告例によると、2016年度末時点で医療受給証の交付を受けている潰瘍性大腸炎の患者さんは16万7872人、クローン病の患者さんは4万2789人です。20歳以降の患者さんが多く、働き盛りの世代に多い病気といえます(図)。 図:年代別に見た潰瘍性大腸炎とクローン病の患者数 出典:平成28年度衛生行政報告例〔特定医療費(指定難病)受給者証所持者数,年齢階級・対象疾患別〕 IBDは腹痛、下痢、血便などの症状が悪化する活動期と、症状が落ち着く寛解期を繰り返すなど入退院を繰り返し*2、高額な薬剤や大腸の摘出などの外科手術が必要なこともあり、日常生活、仕事、そして結婚・出産などのライフイベントにも大きく影響します。 そこで、同じ境遇下にある患者さんや家族、専門家(医師、栄養士、キャリアアドバイザーなど)、関連団体(患者会・関連企業など)が集まる患者さんや家族同士が交流できるオンラインコミュニティ「Gコミュニティ」があります。 Gコミュニティは、IBDの臨床経験豊富な消化器専門医や栄養士、キャリアコンサルタントなどから最新情報が提供され、患者さんの悩みに対してアドバイスがもらえる場です。 「IBDだから、この仕事はできない」はありません Gコミュニティ内のおしゃべり広場では、就職・就労に関して、活発なやりとりがオンラインで行われています。 例えば、「比較的、働きやすい職種、業種というのはありますでしょうか?」という患者さんから質問があり、キャリアアドバイザーから以下のようなコメントがありました。 「体力を酷使しないという点で、事務系職種として働いているかたが多いです」 「営業・技術系職種(自動車整備士)に関しては、事務業務にとどまらず体調とうまく両立させながら働いている人もいるので、自身のご体調を踏まえて働きやすい仕事内容・やりたいことを選んでいる印象があります」 別の患者さんからは、前向きになれるアドバイスが寄せられていました。 「IBDだから、この職種はできないというのはありません。できそうな仕事ではなく、やりたい仕事じゃないと、あとあと続かないと思うので、妥協しないほうがいいかなと個人的には思っています」 働き方にはさまざまな工夫・アイデアを考えよう また、「働き方に関して工夫していることは?」との質問が寄せられました。質問に対し、歯科に勤める患者さんから以下のような前向きになれるアドバイスがありました。 「トイレの時間を考慮して、余裕を持って臨めるように協力してもらっています」 「勤務先の近くに引っ越したことで、駅のトイレが混んでいて入れなかったりするストレスが軽減しました」 IBDは活動期と寛解期を繰り返す病気で、患者さんは病気と付き合いながら就職や就業をしなければならず、多くの不安を抱えています。生涯にわたって病気と付き合う患者さんに、Gコミュニティのようなサポートの取り組みが必要です。 次回は、Gコミュニティの活動の一環として、オンラインコミュニティ以外で開催されている直接交流のイベント*3から、若い患者さんの就職活動の実体験、キャリアアドバイザー、患者会からのアドバイスなどを紹介します。 *1:株式会社ジーケアがオンラインコミュニティプラットフォーム「G コミュニティ」を運営しています〔登録者数:736人 (2020年5月14日時点)〕。 *2:潰瘍性大腸炎とクローン病との違いは体内で発症するところです。潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こり、肛門側から連続性に口側へ広がります。 クローン病は,全ての消化管に炎症が起こる疾患で、特に小腸,大腸,肛門に起こりやすく、食道や胃に起こることもあります。病変と病変の間に正常な組織が存在(スキップ)することも特徴です。 *3:Gコミュニティの活動の一環として、オンラインだけではなくリアルに触れ合って交流を深めるイベント「IBDエキスポ」も開催しています。Gコミュニティに参加する患者さんからリアルに交流できる場が欲しいとの要望を受けて、同じ不安や悩みを持つ患者さん同士、専門家、患者団体(Tokyo IBD:http://www5a.biglobe.ne.jp/~IBD/、埼玉IBD:http://saitama-ibd.org/などがIBDエキスポでブースを出展)、栄養士、キャリアアドバイザーと直接かつ気軽に交流できるイベントで、2019年12月14日に開催されました。 公開日:2020/05/20 監修:Gコミュニティ(IBD患者さんのオンラインコミュニティ)
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腸の病気が増えている!若い世代の腸が危ない
外出先で急に下痢になったり、慢性的な便秘などでお腹が痛くなるのは、腸にトラブルがあるサインです。とくに、若年層に増えている潰瘍性大腸炎やクローン病を中心に、どんな病気なのか、症状などをご紹介します。 目次 腸の病気が増えている ところで、腸ってどんなはたらき? 潰瘍性大腸炎やクローン病って? 腸の病気が増えている 出典:「潰瘍性大腸炎」福島恒男著 保健同人社 食生活の欧米化に伴って、大腸がんの患者が増えている、と言われているが、増えているのは大腸がんだけではない。それと同時に腸疾患、例えば過敏性腸症候群や、潰瘍性大腸炎やクローン病などにかかる人も増えているのだ。 あまりなじみのない病名かもしれないが、潰瘍性大腸炎やクローン病は厚生労働省から難病指定を受けている病気で、しかも若い世代に増えているというからやっかいだ。 若者のおなかが大ピンチ!?潰瘍性大腸炎&クローン病 ところで、腸ってどんなはたらき? 口から入った食べ物は、胃や腸を通って肛門から便となって出る。その通り道は口から肛門まで約6mあり、消化管と呼ばれる。胃で消化された食べ物は、小腸へ送られ、その後大腸へ送られる。 小腸、大腸のはたらき ●小腸 長さ3~4mの臓器。前半を空腸、後半を回腸といい、食べ物を細かく攪拌して約90%の栄養分や水分を吸収する。 ●大腸 長さ1~1.5mの臓器。小腸から送られてきた残りかすは、回腸(上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸)から結腸、直腸へと送られる。小腸で吸収されなかった水分が吸収され、だんだん便になっていく。直腸に一時的にためられた後、肛門から便となって排出される。 潰瘍性大腸炎やクローン病って? 若者の間で流行りつつある、潰瘍性大腸炎やクローン病。日本ではなじみは薄いが、欧米ではかなり有名な病気だ。 さて、どんな病気だろう?この2つの病気は、突発性炎症性腸疾患(IBD)とも言われる。 潰瘍性大腸炎 ■どんな病気? 大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる病気。進行する順序は、たいてい肛門からいちばん近い直腸から炎症が始まり、大腸をさかのぼるように広がっていく。原因は、はっきりしないが、自分の体の一部であるはずの大腸粘膜を自分の敵として攻撃してしまった結果、起こるとも言われている。専門的に言えば、「自己免疫の異常」ということ。大腸の粘膜や粘膜下層にのみ炎症が起こる。 ■症状 とくにこれと言った誘因もなく、下痢や血便が見られることがある。いったんよくなったりもするが、また再発する。症状が進むと、粘血便や下腹部痛を伴い、たびたび下痢に悩まされる。重症の場合は、嘔吐、頻脈、貧血、1日10回以上の下痢(血便)、脱水症状などが起こる。 ■どんな人に起こる? 2歳以下、または70歳以上の発症例もあるが、20歳代に高いピークがあり、患者全体の3分の1を20代が占めているとも言われている。 クローン病 ■どんな病気? 潰瘍性大腸炎と同様、腸に炎症が起こる病気。潰瘍性大腸炎が大腸にしか起こらず、直腸からさかのぼるようにして炎症が進むのに対し、クローン病は、大腸から小腸にかけて断続的に炎症が起こることがある。腸の壁をつらぬいてまわりの臓器に及ぶことも。炎症が起こると腸管が狭くなり、腸閉塞を起こしやすくなる。 ■症状 主症状は慢性の下痢。潰瘍性大腸炎が初期にはほとんど痛みがないのに対し、クローン病は最初から腹痛を伴う。また、血便もそれほど出ず、多くの場合、ドロっぽい便が出る。 公開日:2001年11月5日