ハイヒールばかり履き続ける女性に多く見られる「下肢静脈瘤」。脚の表面にボコボコと小さなコブがたくさんできて見た目が悪くなるほか、むくみ・だるさ・ほてりなども。そんな下肢静脈瘤の予防法について紹介します。 目次 ハイヒールでさっそうと歩く姿はカッコイイけれど… ふくらはぎの筋肉が、脚の血流を促進する 日頃のセルフケアが大切!下肢静脈瘤の予防法 ハイヒールでさっそうと歩く姿はカッコイイけれど… ビシッとしたスーツやキレイな服を身にまとい、10㎝のハイヒールで歩く女性の姿は、街や職場で憧れの視線を集めます。しかし、カッコイイからといってハイヒールばかり履き続けると、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)のリスクが高くなる可能性があります。 下肢静脈瘤は下肢、すなわち脚の静脈が膨らむ病気で、脚の表面にボコボコと小さなコブがたくさんできて見た目が悪くなるほか、むくみ・だるさ・ほてりなどが起きます。また、色素沈着やかゆみ・湿疹などの皮膚炎が起きるケースも多くみられます。 ふくらはぎの筋肉が、脚の血流を促進する 下肢静脈瘤の原因は、脚の静脈血が心臓へうまく戻らないことにあります。やがて静脈血の逆流やうっ滞が起き、血液の逆流を防ぐ弁が壊れて、発症へと至ります。 この病気と大きく関わるのが、ふくらはぎにある腓腹筋(ひふくきん)です。この筋肉には、静脈血の流れを促すはたらきがあり、衰えると静脈の血流が悪くなります。ハイヒールを履き続ける人や、立ちっぱなし・座りっぱなしの仕事をしている人に起きやすいのは、この筋肉が十分にはたらかず、血流が悪くなっているからだと考えられます。 一般的に、患者数は女性が男性の約3倍だと言われ、なかでも30~60歳代の出産経験のある人で多くみられます。女性は脚の筋肉をあまり使わないことに加え、エストロゲンという女性ホルモンには静脈の血流を悪くさせる作用があること、妊娠・出産時には骨盤内や脚の静脈内部の圧力が高まることなどが、女性の発症が多い理由だと考えられます。 日頃のセルフケアが大切!下肢静脈瘤の予防法 下肢静脈瘤を予防するには、脚の静脈血を心臓へ戻すことがポイントとなります。そのためには、日頃から自分でケアすることが大切です。改善されない場合は、放置しても悪化するばかりなので、医師に相談しましょう。 下肢静脈瘤を予防するセルフケア ●脚(特にふくらはぎ)の筋肉を使うことを意識して歩く スニーカーを履き、かかとから着地して親指で地面を蹴りだすようにして、散歩やジョギングを行うと効果的です。ハイヒールをよく履く人は、定期的に履かない期間を入れましょう。 ●長時間にわたって、同じ姿勢を保ち続けない 静脈の血流を促すために、意識的に姿勢を変えたり、脚を動かしましょう。 ●ガードルなど、締めつけの強い下着はできるだけ避ける 締めつけが強いと、脚の静脈血がうっ滞することがあります。はく場合は、太ももや股関節周囲の締めつけ感が少ないものを選びましょう。反対に弾性ストッキングやハイソックスは、下肢静脈瘤の予防効果が期待できます。 ●太りすぎに注意する 肥満により腹圧が高くなると、静脈血が心臓に戻りにくくなります。それとともに、静脈瘤が皮下脂肪で隠れてしまい、早期発見が難しくなるので注意が必要です。適度な運動で、肥満を解消しましょう。 ●風呂あがりなどに、脚をよく観察する むくみや色(赤み)の左右差がないかチェックしましょう。脚の裏側は自分では分かりにくいので、家族などに確認してもらうと良いでしょう。 ●寝るときは足先を高くする 足の下にまるめた座布団などを敷き、心臓より高い位置まで上げることで、静脈血が脚から心臓へ戻ることが促進されます。 ■関連記事 糖尿病足病変のサインはふくらはぎの張りや痛みを呈する「閉塞性動脈硬化症」 足のむくみ、だるさにご注意!「下肢静脈瘤」という病気 公開日:2012/05/21
汚れた血液がたまるとどうなる? 私たちの血液には、大きく分けて2種類がある。 心臓から全身へ送り出される「動脈」と、全身からふたたび心臓へ戻っていく「静脈」だ。静脈は、体中の組織に酸素や栄養を送り届けた後、二酸化炭素や老廃物などのゴミを受け取って心臓に戻る役目を持っている。足の静脈は重力に逆らって心臓に戻らないといけないため、筋肉の力が必要なのと同時に、ところどころに逆流を防ぐための弁まである。 しかし、その弁が壊れ、血流が逆流して足にたまってしまう病気がある。下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)だ。長年の立ち仕事や出産などで静脈の機能がうまくはたらかなくなり、血液が心臓に戻されないままその場にたまり、皮膚の上から見ても異常な状態になってしまうというのだ。 どんな人がなりやすい? 美容師など長時間立ちっぱなしの職業の人に多いほか、女性では妊娠(とくに2回目以降)をきっかけになることが多い。これは、妊娠で大きくなった子宮によって骨盤内の静脈が圧迫され、そこから下の静脈にうっ血が起こるため。静脈の弁や壁がもろいといった遺伝的な要素もあると考えられている。 クネクネと虫のようにはう血管 下肢静脈瘤になると、特有の症状が出る。典型的なのはむくみ、だるさ、鈍痛、熱い感じ、かゆみ、足がつる、足が疲れるなどの症状だ。見た目にも血管がふくれ上がって瘤のようになり、クネクネ蛇行するのも特徴的な症状だ。東北地方では昔から下肢静脈瘤のことを「すばこ」と呼んできたそうだが、これは「すばく(寸白)」がなまったもので、サナダムシなど寄生虫のことを指す。血管の中にまるで寄生虫がはっているかのように見えたのだろう。 それ自体は命にかかわるような問題ではないが、放置するとやっかいなことになる。重症になると、たまった血液成分が静脈から皮膚にしみだし、皮膚が黒ずんでかたくなり、湿疹ができてかゆみを感じ、さらに進行すると潰瘍ができるのだ。足に異常を感じたら、早い段階で医師の診断を受けることが大事だ。 放置すると医師でさえ気づかないことも 治療法も確立されている。 症状が軽いときは、夜寝るときに足を少し高くするなどして血液がたまるのを防ぎ、弾力ストッキングをはく。かゆみや痛みをともなうなど症状が進行してしまっている場合は、積極的な治療をおこなう。 これまではふくらんだ静脈をしばる、抜去する手術などが行われてきたが、入院が必要となるほか手術跡が残るなどの理由から、ためらう人も多かったようだ。最近では、軽度から中等度の症例に対しては、ふくらんだ血管の中に硬化剤を注入して固めてしまう「硬化療法」が行われるようになった。 これは手術療法とくらべると再発が多く、治療後軽い血栓形成があるなどの欠点もあるが、外来で治療でき、短時間ですむことから今後硬化療法を行う医療機関はさらに増えると思われる。 皮膚が黒ずむほど症状が進行してしまうと、医師でさえ「下肢静脈瘤」とは気づかずに別の病名を診断してしまうケースも多いという。足のだるさ、むくみ、血管のはれに気づいたら放置せず、早めに医療機関を受診しよう。 ■関連記事 糖尿病足病変のサインはふくらはぎの張りや痛みを呈する「閉塞性動脈硬化症」 歩き方から下着選び、寝る姿勢まで…下肢静脈瘤を予防しよう! 公開日:2007年8月13日