歯並びが悪く、笑うときについ口元を手で隠してしまうという方、あなたを悩ませる歯並びは、放っておくと全身の健康に影響するかもしれません。歯並びは遺伝的な要因もありますが、多くは生活習慣によって大きく変化します。噛み合せが悪いまま生活を続けていると、全身にさまざまな悪影響が出てくるので注意が必要です。歯列矯正について詳しくご紹介します。 目次 なぜ歯並びが悪くなるのか 歯列矯正のメリットとは? いつまでOK?大人の歯列矯正 なぜ歯並びが悪くなるのか 歯並びは遺伝的な要因もありますが、多くは生まれた後、子どもから大人にかけての生活習慣、クセによって大きく変化します。とくに成長期の骨格がつくられている時期に、不自然なクセをつけてしまうと、不正咬合を引き起こします。逆にこの時期に両方の歯でしっかり噛むことで、あごの大きさのアンバランスさを改善することも可能です。 歯並びが悪くなる原因 幼児期 遺伝的要因 生まれつき歯の大きさ、形、あごが小さい、変形している 乳歯が抜ける時期 虫歯による抜歯、乳歯がいつまでも抜けない 幼児期のくせ 指しゃぶり、唇をかむ、一方向に向いて寝る、頬づえをつく あごの発達 やわらかい食事によるあごの未発達 成人 虫歯や歯周病などの治療 永久歯の抜歯後、そのまま放置している 詰め物やかぶせ物が合ってない 骨折、外傷によるあごの変形 親知らずによって歯が押し出された 呼吸 口呼吸が多い 食事のくせ 一方向ばかりを使って食べる 歯列矯正のメリットとは? 人間の歯は、乳歯が20本、永久歯が32本です。生え変わりや成長の時期にきちんと噛む習慣がつかないままだと、あごが小さくなります。すると、成長した歯がおさまりきらず、歯並びが悪くなってしまいます。歯並びが悪ければ噛み合わせも当然悪くなり、歯のすみずみまで磨けないといった弊害も起こります。 歯並びが悪いまま放置しておくと…… ●虫歯や歯周病になりやすい 歯ブラシがあたりにくく、磨き残しが出ます。 ●笑顔に自信が持てない 人前で笑うことを避け、ストレスの原因になります。 ●食事がうまく噛めない あまり噛まずに飲み込んでしまうため、胃腸に負担がかかったり、早食いとなることで、肥満の原因にもなります。 ●発音が悪くなる 噛み合わせが悪くなると、うまく発音できない音(とくに英語)があります。 ●顎関節症になりやすい 噛み合わせが悪くなり、口が開かなくなることもあります。 上記のように、噛み合わせが悪いまま生活を続けていると、さまざまな悪影響が出てきます。さらにそれが積み重なると、高血圧や肥満などの生活習慣病、不眠、便秘など、全身に影響が及ぶこともあるので、注意が必要です。 ■欧米では、歯並びキレイが当たり前! 日本では、歯並びが悪いからという理由で、仕事やその人自身の評価が下がるということはまずないでしょう。しかし、欧米は異なります。「歯並びが悪い=健康管理ができていない」とみなされ、評価が下がってしまうのです。また一昔前、日本では八重歯=かわいいというイメージがありましたが、それとは対照的に、欧米では古くから八重歯はドラキュラの歯といって嫌われているのだそうです。 主な歯列矯正装置の種類 ●着脱式と固定式 固定式のマルチブランケットが一般的ですが、見た目の悪さが難点です。 ●マルチブランケット法の応用 舌側に装置をつけることで、見た目を克服します(フルリンガル法)。 ●ハーフリンガル法 上の歯には裏側に装置をつけ、笑ったときに見えにくい下の歯には表に装置をつける方法です。 矯正は長い時間がかかるため、その間の見た目も重視されるようになってきました。最近では、セラミックの装置が登場するなど、従来の歯列矯正装置のイメージの悪さを克服する工夫がなされています。 いつまでOK?大人の歯列矯正 歯列矯正は、成長期のほうが短期間に行えるため、子どものころに行うのが理想的です。しかし、この時期の矯正は親の意思によるところが大きく、装置のすき間のブラッシングなど、細かいケアが求められるため、子どもにも負担がかかります。しかし、大人になってから行う矯正は、見た目の美しさや健康のため、噛み合わせをよくしたいという本人の希望によって行うため、根気よくケアを行うことができ、時間はかかっても、うまくいくケースが多いといわれています。 では、歯列矯正はいくつになってもできるのでしょうか――。答えは残念ながら△。 いくら強い意思があったとしても、歯周病が非常に悪化しているケースなど、歯や歯肉といった周辺の支持組織がすでに矯正に耐えられない状態では、行うことは困難です。また、閉経後の女性は、移動する歯根膜の牽引側の骨が新しくなりにくいため、難しいといわれています。また、子どもの歯列矯正に比べ、歯の移動スピードが遅いため、時間もかかるのがネックでしょう。 歯列矯正、気になる費用は…? 歯列矯正は、基本的に自由診療のため、病院によって費用は異なりますが、70~100万円程度(病院や歯の状態によって異なる)といわれています。 ■健康保険が使えるケース ●唇顎口蓋裂の人の歯列矯正……育成・更正医療機関の指定を受けている施設で治療すると、自己負担分に関しても自治体から補助を受けることができる ●顎変形症と診断された人が外科手術を行う前に実施する矯正……顎変形症の術前矯正は、都道府県から顎口腔機能診断基準施設の指定を受けた施設で行う場合、保険が適用となる ●その他……第一・第二さい弓症候群/鎖骨頭蓋異骨症/クルーゾン症候群/尖頭合指症/トリーチャーコリンズ症候群/ピエールロバン症候群/ダウン症候群/ラッセルシルバー症候群/ターナー症候群/ベックウィズ・ヴィードマン症候群 また、子どもの矯正の場合、申請すれば医療費控除を受けることができますが、大人の場合、美容整形のための歯列矯正(自費)は医療費控除の対象にはならないなどケースバイケースなので、事前に矯正を受ける病院で確認しましょう。 ■どう違う?矯正歯科と審美歯科 矯正歯科は、自分の歯を正しい位置に動かすことで、きれいな口元にすることを目指したものです。一方の審美歯科は、歯の色や詰め物の色をホワイトニングするなどして、見栄えをよくするのが基本で、一部の歯を削るなどして歯並びを修正する治療も行っています。大きくわけると、口元全体のバランスを美しくするのが矯正歯科で、ひとつひとつの歯をきれいにすることで、口元全体を美しく見せるのが審美歯科と言えるでしょう。 公開日:2008/02/04
いつまでも自分の歯で食事を楽しみたい 厚生労働省と日本歯科医師会が提唱する「8020運動」の推進や、歯の病気が全身に及ぼす影響などがメディアで取り上げられる機会が増え、ハミガキの習慣化が進んでいる。それに伴い、高齢になっても自分の歯を残せる人が増えているものの(グラフ参照)、一方では、歯周病患者の増加も指摘されている。 歯周病は、歯肉が腫れたり、出血する「歯肉炎」と、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットができたり、歯根が埋まっている骨が溶け出してしまう「歯周炎」の2段階に大きく分けられる。歯周炎まで進行してしまうと、手術や再生療法、抜歯などの治療が必要となるが、歯肉炎の段階であれば、正しいブラッシングによるプラークコントロールだけで治すことも可能だ。「自分の歯を残す」だけでなく、自分の歯で食べる楽しみを味わえる「健康な歯を残す」ためには、ハミガキによるセルフケアが最も重要なのだ。 歯の状態によっても変わるハブラシ選び 正しいブラッシング方法と同様に、大切なのはハブラシ選びだ。その基準は「テレビコマーシャルを見た」「価格が安い」など個々に違いがあるだろう。しかし、ポイントだけは押さえておきたい。最も重要だといわれるのがヘッドの長さだ。下あごの前歯の内側に楽に入る大きさのもので、3cm以下のものを選ぶのが良いといわれている。また、植毛部が平らで、柄がまっすぐな握りやすいものがおすすめだ。奥歯の磨き残しが気になる人は、奥歯やすき間専用のハブラシも併用しよう。 ブラッシング方法別・ハブラシ選び ブラッシング方法 ブラシの毛の長さ ブラシの硬さ、毛先の特徴 毛の脇を使って磨く 10~12mmくらい 毛の直径が太く、かためのもの 毛先を使って磨く 10mm以下 毛先が丸く、やわらかめ~ふつうの硬さ 歯ぐきに炎症があったり出血するときに、硬いハブラシで磨くと、歯肉を傷つけて細菌感染を起こしやすくなる。そんなときはいつもよりやわらかめのハブラシで磨き、炎症が治まったら元に戻すなど、歯や歯ぐきの状態に合わせて上手にハブラシを使い分けたい。また、ブラシがボロボロになるまで使い込むのも正しいブラッシングの妨げになるので、1ヵ月使ったら交換しよう。 知ってる?日本のハブラ史 江戸時代までの日本は、仏教の伝来とともに伝わったとされる楊枝を使って歯の掃除を行っていた。明治に入りハブラシが輸入されると、それを模倣して鯨のひげの柄に馬毛を植えた「鯨楊枝」と呼ばれるハブラシがつくられた。これが日本初のハブラシだという。 大正時代になると、柄はセルロイド、植毛部は馬、豚、ひつじの毛などが使われるようになってきた。この当時は、ハブラシを製造していたのが刷毛をつくる業者だったことから、「歯刷子」と呼ばれていたという。現在販売されているような樹脂とナイロン製のものがつくられはじめたのは第二次世界大戦後で、そのころから今の「ハブラシ」という呼び方が定着してきたという。 スグレものを賢く使おう!歯のセルフケアグッズ 最近では、手動のハブラシだけでなく、高速のブラシストロークでプラーク除去を行う電動ハブラシや音波ハブラシも普及してきた。とくに音波ハブラシは、音波振動によってプラークを除去したり、口内細菌連鎖を破壊するだけでなく、歯周病予防のための歯肉マッサージにも適しているといわれ、人気となっている。 そのほかにも、歯や歯ぐきの状態によって使い分けができるさまざまなセルフケアグッズがある。とくに歯ぐきが痩せてくる中高年以降は、歯と歯のすき間の磨き残しを防ぐための歯間ブラシやデンタルフロスを利用して、歯周病の予防を徹底したい。歯間ブラシは、自分に合わないサイズのものを無理に使うと、歯ぐきからの出血の原因になるので、最初は歯科医師に相談して選ぶのがよい。またデンタルフロスは、抜けにくかったり、すぐに切れてしまうようでは、すでにむし歯になっている可能性もある。痛みがなくても、早めに病院でチェックしてもらおう。 参考文献:「歯ブラシ事典」学建書院 公開日:2007年6月4日
より若々しく美しく見えるために、歯のホワイトニングが注目されている。笑顔に自信がつき、仕事にも積極的になるなど、その効果は意外とあなどれない。虫歯・歯周病予防には歯のクリーニングがおすすめだ。 目次 いま注目のホワイトニングって何? 歯が変色する3つの原因 ホワイトニングのメカニズム 真剣に歯の健康を考えるなら いま注目のホワイトニングって何? 爽やかに笑う青年の口からのぞく、真っ白な歯。容姿をより美しく若々しく見せる白い歯を保つことは、アメリカ、カナダなどではエチケットとして定着している。日本でも、歯磨き粉のCMなどの宣伝効果もあってか、ここ10年ほどで、芸能人やモデルはもちろん、営業職で働く人たちなど、歯をより白くしたいと考える人が増えてきた。 しかし、残念ながら日々の歯磨きだけで真っ白な歯を保つことは難しい。そこで最近人気が高いのが、歯の表面に薬剤を塗布して、実際の色より歯を白くみせるホワイトニングである。もちろん健康に悪影響はない。 ホワイトニングは、まずメンタル面での健康効果が大きい。白く輝く歯は、その人を若々しく見せ、躍動感を感じさせるからだ。会う人の印象を良くするだけでなく、本人にも自信がつく。 今回、取材に協力してくれたホワイトエッセンスの岡本真理子院長によれば、ホワイトニングを希望する人には、営業や接客の人、就職活動、結婚式前のカップルなどが多いという。全体で見ると20~30代の働く女性が中心だが、「若返るから」と喜ぶ年輩の人などさまざまな年代、性別の人がホワイトニングを受けている。中には笑顔に自信が持てるようになって就職が決まった、仕事がうまくいったという人までいるそうだから、その効果はあなどれない。 歯が変色する3つの原因 (1)歯の表面の汚れ 最も多いのが、食品の色素が浸透して変色する場合。歯のエナメル質は、何百万本という半透明のガラス繊維のような小柱からできている。その小柱と小柱の隙間に残った色素は、歯磨きで取り除くことができない。例えば、コップや茶碗が、毎日洗っていてもたまに漂白が必要になるのと同じことである。むしろ、陶器より歯のほうが色素は残りやすい。また、たばこのヤニも着色の原因となる。 もちろん、毎日丁寧に時間をかけて歯磨きをしたり、着色しやすい食品を摂った後、すぐに歯磨きするなど心がければある程度落とすことができる。プロのクリーニングを受けるだけで落とせることも少なくない。 着色しやすい食品:赤ワイン、しょう油、コーヒー、紅茶、コーラ、カレーなど (2)加齢・遺伝 髪や肌の色が人それぞれ異なるように、歯の色にも個人差がある。遺伝的に黄色っぽい人もいる。また、歯の内部にあり神経を守る「象牙質」は、もともと黄色がかっており、年齢と共にじょじょにその色が濃くなっていくため、透明なエナメル質を通してだんだん黄色が目立つようになるのである。この場合は予防が難しいため、黄色が気になる人は、ホワイトニングをするというわけだ。 (3)歯の内部構造が原因 歯の病気や、歯をぶつけて外傷ができたり、薬剤の副作用が原因で変色する場合。これが原因の場合は、残念ながらホワイトニングでも白くするには限界がある。 例えば、70年代に使われていたテトラサイクリンという抗生物質を、母親の妊娠中や幼少期に服用していた場合、歯が縞模様に着色したり、茶色やグレーがかった色になっていることがある。テトラサイクリンはその後使われなくなったため、このケースは30代の人がほとんどである。また、歯の成長過程で、歯の組織形成が不十分だった「エナメル質形成不全症」の場合、歯が茶色く変色していたり、くぼんだ部分があったりする。 ホワイトニングのメカニズム では、ホワイトニングは実際どのようにして行うのだろうか?ホワイトニングに使われる薬剤は、過酸化水素や過酸化尿素。これらの薬剤は、一定温度になると酸素と水に分解される。その際、酸素が歯のエナメル質の色素と結びつき、着色物を無色透明に分解するというしくみだ。 ただし、象牙質の色は変化しないため、象牙質が変色していれば見た目の印象はホワイトニングをする前と変わらない。その場合は、光の反射でエナメル質が白く見えるように加工する方法がある。ホワイトエッセンスの場合、エナメル質を構成する無数のエナメル小柱の形を角状から球状に変化させることで、光が乱反射するようにする。すると、曇りガラスと同じように透明だったエナメル質が白く見える。その結果、象牙質の黄色が見えにくくなるというわけだ。 施術の方法 「ホワイトニングを行う歯科医院に通院する」「自分の歯に合わせた専用トレイを作ってもらい、自宅で薬剤を入れたトレイを2時間ほどかぶせる」の2通りがある。個人差はあるが、通院の場合、3ヵ月程度で完了という人が多いという。また、ホワイトニングで永久治療ができるわけではないため、だいたい3~10ヵ月で元の色に戻る。白さを保ちたい人は月に1度の通院をするケースが多いという。 ホワイトニングが向かない人 妊娠中、授乳中の女性 18歳未満の人 エナメル質形成不全症の人 人工歯の人 虫歯や歯周病がある人は治療後に 真剣に歯の健康を考えるなら ホワイトニングの効果は、白く見せることで自信がつく、若返るといった美容効果である。しかし、歯を白くするだけでなく、虫歯や歯周病予防効果が欲しいという人におすすめなのは、歯のクリーニング。 食品やたばこのヤニなどが原因の表面の変色を、1回のクリーニングできれいに落とせるだけでなく、虫歯や歯周病の原因となる細菌を除去できるからだ。細菌が元の量に戻るまで3ヵ月が目安なので、3ヵ月ごとにクリーニングを受ければ虫歯や歯周病予防にもなるというわけだ。ただし、クリーニングは、保険がきかないのが難点。歯石を取った後、歯の表面の汚れを除去したり、歯茎をマッサージするという予防的な施術を行うからだ。 ティースクリーニングの方法 塩のジェットパウダーで表面の汚れを除去→歯石とり→専用の薬剤で歯磨きでも取れない汚れ・虫歯菌を除去 自分の笑顔に自信がない人、歯を健康に保ちたいという人は、ぜひ一度近くのクリニックを訪れてみてはいかがだろう。毎朝、鏡の中の歯の白い自分に会うのが楽しみになるかもしれない。 取材協力・資料提供:ホワイトエッセンス 公開日:2016年10月3日
自分ではなかなか気づきにくい歯ぎしり。だが、歯ぎしりはほうっておくと、さまざまな二次障害に発展する場合もある。なんと一晩の歯ぎしりは、一生分のそしゃくに匹敵するくらい、歯やあごにダメージを与えるのだ!本当は危険な歯ぎしりについて、ぜひきちんと知っておこう。 目次 歯ぎしりはなぜ本人にわからないの? 原因は噛み合わせとストレス! 虫歯、耳鳴り、自律神経失調症…歯ぎしりによるおもな二次障害 歯ぎしりはどうやって治せばいい? 歯ぎしりはなぜ本人にわからないの? 夜中にギリギリと大きな音を立てられると、そばで寝ている人はかなわない。目がさめたら最後、気になってなかなか寝つけなくなってしまうだろう。ところが当の本人はすやすやと夢の中。自分自身が立てている音なのに、いったいなぜ気づかないのだろうか。 これは、睡眠中、感覚器の伝達経路が遮断されているため。起きているとき、音は筋肉から脊髄を通って脳へと伝えられる。ところが、眠ってしまうとこの回路がはたらかなくなってしまうのだ。したがって、脳はすぐそばのあごで起こっている騒音を感知できなくなる、というわけ。つまり、誰かに指摘されない限り、自分で歯ぎしりに気づくことはほとんどないといってよい。また、ほとんど音を発することなく、歯をぎゅっと噛み締める歯ぎしりも多いという。このように歯ぎしり人口は意外と多いもの。もしかしたら、あなたも常習者かも!? 原因は噛み合わせとストレス! それではいったいなぜ、歯ぎしりは起こるのだろう。第一に考えられるのが、あご筋肉の緊張がアンバランスとなっていること。例えば、虫歯があって歯が痛いとき、高さが不適合な金属冠があるとき、歯の抜きっぱなしなどにより、噛み合わせが狂っているときなどは、こうした現象が起こりやすい。もうひとつの理由は、精神的、または肉体的なストレスだ。歯ぎしりすることによって、不安や憂鬱を発散させているのである。 虫歯、耳鳴り、自律神経失調症…歯ぎしりによるおもな二次障害 歯ぎしりは、歯やあごに大きな負担をかける。ぐっと歯を食いしばっただけでも、自分の体重程度の負荷がかかるのに、前後左右にぎりぎりと歯を動かせば、ダメージは計り知れない。なんと、一晩の歯ぎしりは、一生分のそしゃくに匹敵する、と言われているほどだ。もちろん、一晩中歯ぎしりをすることはないが、30分以上続くようなら、悪影響が及んでいる可能性が高い。歯ぎしりによるおもな二次障害は次の通りだ。 歯のダメージ 歯が擦り減る 歯周組織が損傷される 外骨腫(歯の周りの骨が異常に突出する病気)が起こる あごのダメージ 顎関節症(あごを動かすと音がしたり痛んだりする病気)が起こる その他のダメージ 耳鳴りがする 熟睡できない 自律神経失調症による、体の諸症状があらわれる 怖いのは睡眠時無呼吸症候群と関連が深いことだ。両者の関係ははっきりとはわかっていないものの、歯ぎしりの直後には、睡眠時無呼吸症が起こることがよくある。睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が停止してしまう症状。睡眠不足から、翌日の生活にさしつかえるばかりではない。脳が酸欠状態となり、突然死を引き起こすこともある怖い病気だ。 歯ぎしりはどうやって治せばいい? 歯ぎしりを治すには専門医に相談するのが一番。歯科医か口腔外科を受診しよう。よく行われるのが、上下の歯が接触しないよう、口の中にマウスピースを入れる「スプリント療法」。筋弛緩剤などによる薬物療法がおこなわれることもある。また、噛み合わせを治すことにより、症状を改善する場合も。ただし、ストレスから歯ぎしりが起こっている場合は、心療内科などを訪ね、心のケアを中心に治療したほうがよいこともある。 このように歯ぎしりを放置すると、思わぬ病気に見舞われることもあるので要注意!家族の深刻な歯ぎしりに気づいたら、早めに治療するようすすめよう。 ■関連記事 良質の深い睡眠「黄金の90分」とは?キャンサーフィットネス・心のリハビリ講座(1) 公開日:2004年12月6日
ばくぜんと「加齢と共に歯は抜けるもの」と考えていませんか?実は歯が抜けるのは「歯周病」という病気のせい。歯周病のメカニズムを知って、進行を食い止めなければいけません。 目次 やってみよう!歯の健康チェック 歯が抜けるのは歳のせいではない! 歯周病のメカニズム 歯周病の進行 やってみよう!歯の健康チェック 「歯を磨きなさい!」…子どもの頃、何度も親に言われた言葉だ。大人になった今、歯を磨く習慣がない人はほとんどいないと思うが、自分の歯の健康について関心を持っている人もまた、少ないのではないだろうか?あなたの歯の状態を知るために、まずは下の項目でどれくらい当てはまるかチェックしてみよう。ひとつでも心当たりがあれば、歯の手入れを見直す必要がある。 1年以上、歯科検診を受けていない 歯磨きは、いつもだいたい30秒以内に終わる 歯と歯の間によく食べ物がつまる 冷たいものがしみる 歯が長くなってきた気がする 歯を磨くと歯茎から血が出る 朝起きたとき、口の中がネバネバする 口臭を感じることがある 歯茎がムズムズする(違和感がある) うまく噛めない 参考:「歯の健康ノート4壮年期編」花王株式会社発行 歯が抜けるのは歳のせいではない! 「大人の歯の悩み」について考えるとき、加齢に伴い歯が抜けてしまうとか、入れ歯でうまく噛めないということを想像するのではないだろうか。実際に、1人あたり平均の「現在ある歯の本数」は65歳の段階ですでに20本を切ってしまっている(成人の歯は親知らずを除いて28本)。人生80年とも言われている今、早々と歯を失ってしまうのはなんとも心もとない。 歯周病のメカニズム 「歳をとると歯が抜けるのは仕方がない」と思いがちだが、実は歯が抜けるのは「歯周病」という病気によるもの。歯周病は虫歯とならんで歯を失う大きな原因なのだ。 歯周病とは、歯垢や歯石などの原因から歯周組織(歯肉や歯根膜、歯槽骨など、歯を支えている土台)が破壊されてしまう病気の総称で、歯肉だけ炎症を起こしている状態を「歯肉炎」、さらに悪化して歯槽骨まで破壊された状態を「歯周炎(歯槽膿漏)」という。 歯周病の進行 ■歯肉炎 炎症が起こっている状態。歯肉が赤く腫れ、歯磨きなどちょっとした刺激でも出血しやすくなる。 ■初期歯周炎(軽度) 歯肉の炎症が進み、歯と歯肉の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができる。歯槽骨の破壊も始まり、水などがしみるようになる。 ■中期歯周炎(中程度) 歯肉がブヨブヨに腫れ、歯周ポケットから膿が出て口臭がひどくなる。歯が浮く感じがして、ものが噛みにくくなる。 ■末期歯周炎(重度) 歯槽骨はほとんどなく、歯根が露出。歯肉が腫れて痛み、歯がグラグラになって最後には抜けてしまう。 参考:「歯の健康ノート4壮年期編」花王株式会社発行 歯周病について、一番警戒しなければいけないのは「初期に目立った自覚症状がないこと」である。歯肉炎の段階で医者を訪ねていれば治療できたのに、中期歯周炎頃になって初めて慌てて医者に行く場合が多い。こうして手遅れになり、歯を失ってしまうのだ。 公開日:2002年10月28日
歯も心臓や胃腸などと同様、人間の体の臓器のひとつです。全身に何か疾病があると、それが歯周病に悪影響を及ぼす可能性も…。また女性ホルモンの影響で、歯周病にかかりやすいという事実もあるのです。 目次 歯周病の原因菌は「大人から子ども」に感染する!? 歯周病にかかりやすい因子 女性ホルモンの変化と歯周病 歯周病の原因菌は「大人から子ども」に感染する!? 比較的若い層に歯周病をもたらす細菌は、大人から子どもに感染するという研究報告もある。10歳くらいの永久歯が生えそろう少し前の時期に、親から子へ感染するというのだ。 まだ子どもだから歯周病のリスクがまったくないという思い込みは誤り。実際、15歳~24歳で歯肉に何らかの異変を持つ割合は60%を超えている。 歯肉の所見について 厚生労働省・平成11年歯科疾患実態調査の概要 歯周病にかかりやすい因子 普段あまり認識することはないが、歯も内臓と同様、私たちの体にとってなくてはならない「臓器」のひとつ。歯周病にかかりやすいかどうかは、食習慣などに限らず、内科的疾患やストレス・喫煙など多岐に及んでいる。少しでもこれらの因子をコントロールするように心がけよう。 歯周病にかかりやすい因子 ●食生活 ●内科的疾患:糖尿病 リウマチなど ●薬物の副作用:ホルモン製剤(更年期障害の治療など)、抗てんかん剤、狭心症の予防薬、免疫抑制剤、カルシウム拮抗薬、抗ヒスタミン剤 ●女性ホルモンの影響:妊娠、更年期、思春期 ●精神的ストレス ●喫煙 ●遺伝的な要因 ほかにも、歯の形態や噛み合わせ、不良な歯科治療などが因子としてあげられる。 内科的疾患や薬物の副作用が因子としてあがっているのを見て不安になった人もいるかもしれない。例えば、「糖尿病にかかると、歯周病にもなってしまうの?」というように…。 糖尿病は歯周病を起こす直接の原因ではないが、歯周病を悪化させてしまう因子と考えられる。糖尿病にかかっている人の場合、歯周ポケットの中の細菌を食べてくれる白血球のはたらきが弱くなってしまうので、短期間のうちに重度の歯周病に進んでしまう可能性が高いからだ。糖尿病の人は健康な人よりも歯周病予防に気を配る必要がある。 ほかの因子に該当するものがあった人も、自分の歯周病のリスクが高いことを認識し、日頃から歯の健康についてもケアすることが大切だ。 女性ホルモンの変化と歯周病 「子どもを1人産むたびに歯を1本失う」と言われるように、妊娠・出産は女性の口の中を悪化させる傾向がある。女性特有の歯周病にかかやすい因子として「女性ホルモンの影響」がありそうだ。この時期には、とりわけ日常のケアが必要だ。 妊娠による女性ホルモン・エストロゲンの増加 歯と歯ぐきの隙間からしみでるエストロゲンが増加することで、歯肉炎の細菌が異常増殖してしまう。この菌はもともと口の中の粘膜などにいる害のない細菌だが、あまりに増え過ぎると悪いはたらきを及ぼすようになる。 また、出産と歯周病との関係で言えば、歯周病菌を撃退する免疫反応として分泌されるサイトカインが羊膜を破壊し、早産の原因になったり、低体重児の出産につながるとの報告もある。 閉経後、骨粗しょう症にかかりやすくなること 閉経後、女性ホルモンの分泌が減少することで骨粗しょう症にかかりやすくなる。歯を支える歯周組織の破壊を加速させてしまうことも。 更年期障害や骨粗しょう症の治療に用いられるエストロゲンの影響 更年期障害や骨粗しょう症の治療にはエストロゲンなどが用いられるが、その副作用で歯肉の健康が損なわれるケースもある。 公開日:2002年10月28日
積極的にプロの手を借りてデンタルケアをするための情報をご紹介します。まだあまりなじみのない「かかりつけ歯科医」制度。上手に利用すれば、虫歯から歯周病まで歯のことはなんでも相談できる歯科医を持つことができます。また歯科衛生士による歯のクリーニング「PMTC」を定期的に行うことで、健康な歯の維持につながるのです。 目次 この前歯医者に行ったのはいつ? 「かかりつけ歯科医」制度を利用しよう 「PMTC」で笑顔に自信!標準的なPMTCの流れ この前歯医者に行ったのはいつ? 「痛くならなければ、歯医者に行かない」…これが世間一般の歯医者に対する認識だ。しかし、歯に関しては「痛くなってからでは遅い!」ということを心に留めておいて欲しい。毎年健康診断を受けるように、最低でも年に1度は歯科検診を受けて歯と歯ぐきに異常はないかチェックし、問題があれば早期治療にとりかかるべきなのだ。虫歯や歯周病が進行してしまってからでは治療費がかかるうえ、歯をなくしてしまうことにもなりかねない。 「かかりつけ歯科医」制度を利用しよう 平成13年4月から「かかりつけ歯科医」という新規事項が、医療保険に加わったことをご存知だろうか。「かかりつけ歯科医」とは、病気(歯科疾患)の説明とその治療法の選択、治療日程の情報を、診察を受けた歯科医師本人から提供させることができるという制度のこと。患者側と歯科医師側とがお互いに信頼し合い、長く付き合っていくための合理的なコミュニケーションを図るため、取り入れられた方法だ。 かかりつけ歯科医がいると、虫歯・歯周病などの予防から治療まで幅広い対応をしてもらえたり、家族全体がかかりつけになることで、その人の歯についての生活環境も十分に理解され、予防や治療方針に生かすことができるなど、メリットも多い。 次回歯医者に行ったときは、ぜひ「かかりつけ歯科医」制度を実施しているかどうかを確認してみよう。 「PMTC」で笑顔に自信!標準的なPMTCの流れ 「PMTC」とはプロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略で、専門家による機械での歯のクリーニングのこと。プロの歯科衛生士が口の中をきれいに掃除してくれるので、虫歯や歯周病の予防に効果的。一度受けてみるとその効果は歴然!歯石がとれ、歯が白くツルツルになる。 標準的なPMTCの流れ 歯垢を染色してよく見えるようにしてから、ブラッシング開始 歯間ブラシやフロスなども使って歯と歯の間の歯垢を除去 器具を使って歯石も除去 ここから本格的にPMTCの開始。ラバーのチップやブラシ、研磨剤を使って歯の表面を磨く。歯垢だけでなく、着色やたばこのヤニもすっきり落ちる さらに歯と歯の間も専用の道具で磨く 仕上げに虫歯予防のためのフッ素を塗って終了 1回およそ1時間前後。口の中の状態によって、数回にわたってクリーニングが必要な場合もある。 料金もケースバイケースなので、まずは歯科医に問い合わせてみよう。健康保険内でやってくれるところもある。 自宅での毎日のケアに加え定期的にPMTCで歯のクリーニングを行って、きれいな歯を長持ちさせよう! 公開日:2002年10月28日
歯医者さんに通っている間は「これからは甘いものも食べず、歯をきちんと磨こう!」と心に誓うのですが、いつの間にかまた虫歯ができてしまう…。そんなことを繰り返していませんか?実は虫歯にも発生するタイミングとメカニズムがあるのです。 目次 虫歯発生の4因子 あなたは虫歯になりやすい? 歯のしくみ 虫歯発生の4因子 虫歯は紀元前からあった病気で、医学の父・ヒポクラテスは、歯の中に悪液がたまると虫歯ができると主張していたといわれる。長い長い間、人間を悩ませ続けてきた虫歯。医学の進歩とともに、現在では虫歯はミュータンス菌などによる感染症の一種であることや、ほかにもいくつかの要因が重なって発生することがわかっている。 さらに、新たに注目されているのは「脱灰」と「再石灰化」のバランス関係。「歯にミネラルを補給して結晶化させる状態(再石灰化)」よりも「酸などによって歯からミネラルが溶かしだされてしまう状態(脱灰)」のほうに傾いた場合に、虫歯は発生しやすいと考えられている。まずは知っているようで知らなかった虫歯発生の要因からみてみよう。 「甘いものを食べるから虫歯になる」。多くの人がそう信じているが、実は虫歯の発生にもちゃんとメカニズムがある。 下の4つの重要因子がそろったときに、虫歯が発生するのだ! 1. 細菌(歯垢) 口の中に砂糖が長時間滞在していると、ミュータンス菌などの細菌がこれを食べてネバネバした不溶性グルカンを形成。グルカンは歯にこびりつくと同時にさまざまな細菌を抱き込んで歯垢(プラーク)をつくる。歯垢の中で糖分やでんぷんが分解されると酸が発生、歯の表面を溶かし始める。 2. 食べ物(糖類・特に砂糖) ミュータンス菌などの細菌は、糖分を食べて乳酸を排泄する。歯垢(プラーク)内にたまった乳酸は、歯のミネラル(カルシウムなど)を溶かしてしまう。 3. 歯質 ひとりひとり顔が違うように歯の性質も千差万別。人によっては歯の質が弱い、歯並びが悪いなど、虫歯にかかるリスクが高い場合もある。 4. 時間 歯に歯垢がついている時間が長いほど虫歯になりやすくなる。食べたり飲んだりするたびに歯の表面は酸性に傾いてしまうので、いつも何か口に入れている人はかなり危険!食事や間食は規則正しくとることが大切。 ニューブランの輪 カリフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部口腔生物学科の アーネスト・ニューブラン教授が提唱した虫歯の発生理論 あなたは虫歯になりやすい? 残念ながら、虫歯になりやすい人、なりにくい人がいるのは事実。以下の点に多く該当する人は虫歯になりやすいといわれている。 ■ミュータンス菌の数が多い 強固な歯垢を作る虫歯の主な原因菌。多い人は虫歯になりやすいと考えられる。親(特に母親)から子に感染(伝播)する ■ラクトバチス菌の数が多い 砂糖を与えると強い酸を作る菌。多い人は虫歯になりやすいと考えられる ■飲食の回数が多い 食べたり飲んだりする回数の多い人は歯垢(プラーク)が酸性に傾きやすく虫歯になりやすいと考えられる ■歯垢の蓄積量が多い 歯の表面にたまった歯垢(プラーク)が多いほど虫歯になりやすいと考えられる ■だ液の緩衝能が弱い だ液の緩衝能が弱い人は砂糖類を食べて酸性になった歯垢を中性に戻すはたらきが弱いため、虫歯になりやすいと考えられる ■だ液の量が少ない だ液の量が少ない人は歯から菌を洗い流しにくく、虫歯になりやすいと考えられる ■フッ素洗口、フッ素入り歯磨き剤を使用していない フッ素を活用しない人は虫歯になりやすいと考えられる ■虫歯の経験がある 過去に虫歯になった人は今後も虫歯になりやすい 歯のしくみ エナメル質体の中でもっとも硬い組織。水晶よりもやや硬い! 象牙質歯の中心部にあり、骨とほぼ同じ硬さ。 歯髄象牙質の内側にある部分で、いわゆる「神経」と呼ばれる部分。多数の血管や神経を含んでいる。 セメント質歯根の象牙質の一部をおおっている薄くて硬い組織。歯を顎骨に固定するのに役立っている。 歯肉(歯ぐき)歯が植わっている歯槽骨をおおい、歯の周りを取り囲む粘膜などの軟組織。 歯槽骨顎骨の中で歯が植わっている部分。歯のない所には存在しない。歯が抜けた後に、顎の骨がやせてくるのはそのため。 歯根膜歯根の表面にあるセメント質と歯槽骨を結ぶ結合組織。歯が納まっている穴(歯槽)の中で歯を囲むようにして支えている。また、歯ごたえなどの感覚を認識し、脳に信号として送るはたらきもある。 参考:「歯の不思議サイエンス」五十嵐清治監修 ダイヤモンド社刊 虫歯になると、まず一番外側のエナメル質に穴があき、次に象牙質、歯髄と順々に侵されてしまう。ズキズキする痛みとともに、最終的には歯肉から上の部分がほとんどなくなり、二次的に腐敗菌の感染を引き起こして悪臭がすることも。 虫歯になっても軽度のうちに治療をすれば、歯はきちんと機能するようになり、その後も長く使い続けることができる。早期発見、早期治療が不可欠なのだ。乳歯の場合は、永久歯に比べて虫歯の進行のスピードが速いので、要注意! 公開日:2002年5月27日
「フッ素」って聞いたことがありますか?世界中で虫歯予防に利用されている元素のことです。このフッ素、虫歯で穴があく前の状態(初期虫歯)の修復を早める作用があるのです。あなたも今日から是非フッ素を取り入れた虫歯予防を! 目次 フッ素ってなに? フッ素は虫歯予防にどう効くの? フッ素の効果 効果的なフッ素入り歯磨剤の使い方 フッ素ってなに? フッ素(元素記号はF)は約100種ある元素のうちのひとつ。自然界では単体としては存在せず、一般には微量元素といわれているが、たくさんの量が地球に存在する。海水中(濃度は約1.3ppm)や土壌中にも必ず含まれている(数百ppm)。 食品にももちろん含まれていて、私たちは日頃普通に食べたり飲んだりしている。例えば、芝えびなどには10~40ppm、お茶、紅茶の葉には100~500ppm含まれており、実際にお茶としてお湯を入れて飲む場合は、0.2~1.0ppmくらいの濃度になっている。 フッ素は虫歯予防にどう効くの? 虫歯は酸などによる歯からミネラルを溶かしだす力(脱灰力)の方が、歯にミネラルを補給して結晶化する力(再石灰化力)よりも優勢関係にあるほど発生しやすくなると言われている。実はフッ素には、虫歯で穴があく一歩手前の状態(初期虫歯)を元に戻そうとする力があるのだ。ではその初期虫歯とはどういうものだろう? 一見、健康そうな歯、でもよーく見てみると、写真のように歯と歯ぐきの境目の部分に白濁があったりする。これは歯の表面の歯垢(菌のあつまったもの)から出る酸によって、歯の内部からカルシウムなどのミネラルが抜け出して密度が低くなった状態。つまり、虫歯で穴があく一歩手前の状態である。 初期虫歯の状態の歯の断面を軟X線写真で(レントゲンみたいに)見たものがこの写真。表面は健康な部分と同じように白いが、その内部は暗く写ってしまうのだ。まさにミネラルが抜けた状態。 穴のあいた虫歯を放置しておいて元に戻ることはないが、このレントゲン写真のように、まだ歯の表面が残っている場合には再石灰化作用により修復されることもある(下図1)。フッ素のいろいろな効果のうち、ミネラルを取り込んで再結晶化する作用(再石灰化)の速度を高め、さらにミネラルが溶け出すのを防止したりする作用が期待できるのだ(下図2・3)。これらの作用はフッ素イオンが0.1から1ppmの低い濃度でも効果のあることが知られている。 フッ素の効果 1.ミネラルが溶け出して初期虫歯が形成 2.フッ素が歯の表面に吸着 3.初期虫歯部分へ、フッ素やだ液中のミネラルが取り込まれ、フッ素は再石灰化を促進 4.初期虫歯が再石灰化される 学校の健康診断結果では、CO:要観察歯としてよく診断される。いろんな言い方はあるが、「虫歯になりそうな歯」「虫歯の初期」「虫歯の一歩手前の状態の歯」などと書かれることも。 効果的なフッ素入り歯磨剤の使い方 「虫歯予防」のためのフッ素活用のルールは、「低濃度を・毎日・家庭で」が基本。フッ素入り歯磨剤を使って効果的に虫歯を予防しよう! ●必要量はブラシの植毛部分の半分以上 ●ブクブクうがいでささっと(磨いた後、なるべく多くのフッ素を口中に残すため) ●寝る直前には必ず歯を磨こう ●忙しくて時間のないお昼休みなども、さっと磨けば効果アリ! 公開日:2002年5月27日
子どもの虫歯は親の責任。「虫歯は親子で感染するの?」「夜、突然虫歯が痛み出したらどうしたらいいの?」など、素朴な疑問にお答えします。年齢別ケア方法もご紹介。大切な子どもの歯を虫歯から守ってください。 目次 年齢別ケア方法 子供の歯Q&A 年齢別ケア方法 小学校に入学するころから、乳歯が抜け始め永久歯が生えてくる。この時期の口の中は、乳歯と永久歯が入り交じりデコボコして複雑だ。特に「六歳臼歯」と呼ばれる最初の永久歯は、物を噛みくだく力が一番大きく、永久歯の歯並びや噛み合わせの基本となる重要な歯。完全に生えるまでに約1年かかるため手前の乳歯より背が低く、生えたのに気づかなかったり、歯ブラシの毛先が届きにくかったりして、虫歯になりやすい状態にある。正しい歯の磨き方を教えたり、仕上げ磨きで、お子さんの歯の健康を守ってあげよう。 乳歯には、大臼歯に相当する歯がない。第三大臼歯は生えないこともある。 ▼0~1歳:乳歯がはえ揃う前 ほ乳瓶に砂糖を含んだ飲料や酸性度の強い飲料などを入れない。 歯がはえ始めたら(生後6ヵ月頃)、食事の後には湿らせたガーゼなどで歯と歯肉をふいてあげるとよい。 お母さんに歯磨きをしてもらってから寝るという習慣をつける。 ▼2~3歳:乳歯がはえ揃う頃 子ども自身で歯磨きを始めさせる。ただし、お母さんによる仕上げ磨きを行うこと(8歳頃まで)。 ▼4~5歳:乳歯がはえ揃った後 歯磨き行動の習慣形成とフッ素入り歯磨き剤の使用(ずっと継続)。 おやつを食べる時間と場所を決める。 かかりつけの歯科医を見つける。 フッ素の塗布。 ▼6~9歳:永久歯がはえ始める頃 <第一大臼歯(六歳臼歯)と上顎切歯の予防> ハブラシ 永久歯の奥歯で一番初めに生える第一大臼歯。噛み合わせを決める大事な歯だが、虫歯にかかりやすいので特に注意。 正しいブラッシング法を教える。 学校などでのフッ素洗口。 シーラント(奥歯の溝を合成樹脂などで埋める方法)なども利用。 ▼9~11歳:永久歯に交換する頃 <上顎前歯の予防> デンタルフロス デンタルフロスの使い方を教える。 正しいブラッシング法とブラッシング圧を教える。 科学的な健康教育-歯垢の知識や間食など摂食行動の理解。 ▼12~16歳:永久歯がはえ揃った後 <第二大臼歯の予防> 歯垢・歯石や歯周病の知識など、健康について理解させる。 子供の歯Q&A Q. 乳歯の虫歯って放っておいてもいいの? A. 絶対にダメ! 乳歯が生え始める生後5~6ヵ月頃には、顎の骨の中にはすでに永久歯がスタンバイしている。「どうせ抜けるから」と乳歯の虫歯を放っておけば、永久歯の芽をだめにしたり、抜け代わる順番を狂わせ永久歯の歯並びを乱す原因になってしまう。 Q. 虫歯がお母さんから子供に感染するって本当? A. 本当。 虫歯の原因・ミュータンス菌はだ液を介して感染(正確には伝播)するため、歯ブラシやスプーンの共有は禁物。熱いものをふーふー吹いて冷ましてあげることも要注意。子供の歯を虫歯から守るには、まずパパママ自身のお口のケアが欠かせないのだ。 Q. 夜中に突然子供の虫歯が痛み始めたら? A. 夜中に子供の虫歯が痛み出したときの応急処置を知っておこう。 ただし、虫歯は予防と早期治療が原則ということをくれぐれもお忘れなく。 (1)痛い歯を見つけ、食べかすを取り除く (2)タオルや冷却シートで顔全体を冷やす(顔全体を覆うようにして冷やすほうが、一点だけを冷やすよりも効果的) (3)体が温まると痛みやすくなるので、お風呂やコタツは避ける (4)小児用の解熱・鎮痛剤を飲む これでも痛みが続いていたり、顔全体が腫れ上がっているようなときは、歯だけの問題ではないことも。思い切って救急病院に相談を! 公開日:2002年5月27日
日本人のほとんどが毎日のように歯をみがいていますが、虫歯はなくなりません。虫歯の原因を考えて、良くなるためのヒントを探してみましょう。 目次 虫歯をつくる4つの要素 虫歯をつくる4つの要素 日本人のほとんどが毎日のように歯をみがいています。しかし虫歯はなくなりません。むしろ世界的に見ても日本人の虫歯本数は多いようです。 もっとしっかり原因を見つめてみると、良くなるためのヒントが必ず見つかります。 虫歯は下にあげた4つの要素が複雑にからみあってできています。 歯 酸に対する抵抗力が一人ひとり違っているため、「虫歯になりやすい人」と「虫歯になりにくい人」がいます。生まれつきの性質は変えられませんが、改善できることもあります。表面のエナメル質は、唾液にふくまれるカルシウムやリン酸などを使って、ほんの少しずつ修復されているのです。 唾液がいつも循環するように、口を開けっぱなしにして乾かさないようにします。 カルシウムやリン酸不足にならないよう、食事・運動に気をつけます。 糖質(特に砂糖) 細菌は砂糖を原料として、ネバネバする歯垢(プラーク)を作りだします。歯垢の中に住む虫歯菌は砂糖を分解して、酸を作ります。その酸で歯の表面が溶けたのが虫歯です。 なるべく砂糖を摂らないようにします。摂る場合は賢く摂りましょう。 食べたらすぐ歯をみがきます。細菌は約5~10分で砂糖を分解しだします。 細菌 主な原因はストレプト・コッカス・ミュータンスという細菌です。人間の口には、必ずと言ってよいほど住んでいます。しかし、数を減らすことはできるのです。 歯ブラシをしっかり上手にかけます。歯みがきとは、食べカスをとるというより細菌をとるためのものと認識するといいでしょう。 細菌が集まりすぎると石のように硬い「歯石」となります。そうなってしまうと歯みがきではとれないため、必ず歯医者さんでとってもらいましょう。 時間 砂糖が、いつまでも口の中にあると、細菌は酸を作り続け、歯は溶け続けます。また細菌は夜、人間が寝ている時に一番元気になります。 だらだら食べたり・飲み続けないようにします。 寝る前の歯みがきは、特にていねいにしましょう。 結局、やはり一番大切なのは歯みがきです。しかし、せっかくみがいていても、ちゃんと歯垢(プラーク)が落とせていないのが問題です。
できれば、行きたくない歯医者ですが、虫歯は放っておいても治りません。いつか行かなくてはいけないなら、歯医者に行くタイミングはいつがいいのでしょうか?虫歯の進行とともに見てみましょう。 目次 歯医者で痛い思いをしたくない 虫歯の進行 歯医者で痛い思いをしたくない できれば、行きたくない歯医者。「どうせいつかは行くことになるから、今はまだいいや」と思いたいものですが、では歯医者に行くタイミングはいつが良いのでしょうか? 歯医者さんがツライのは、何度も痛い思いをするからです。 しかし、定期健診(半年に1回程度)で、早期に見つかれば、結局、歯医者に行く回数も、お金も、時間も、そして何より痛みも激減できます。 「いつまで行かなくて平気?」ではなく、「いつも行っておけば、何回も行かなくても平気!」なのです。 虫歯の進行 C1の虫歯 歯の表面のエナメル質に小さい穴が開いた状態です。エナメル質に知覚がないので、痛みは感じません。そのため自分では発見しにくいのですが、この時に定期健診で発見できれば、治療の痛みもありません。 C2の虫歯 穴が広がって、中の象牙質にまで進行した状態です。冷たいものや熱いものが「しみる」と感じだします。冷たいものがしみるときは虫歯の初期、温かいものがしみるときには進んでいると考えられます。 「最近、冷たいものがしみて…」という段階で、なるべく早く歯医者さんへ行っておきましょう。「嫌だなあ~」という気持ちはわかりますが、暖かいものがしみるまで放置すると、神経が腐り、顎の骨が腐る場合もあるようです。 C3の虫歯 歯の中央にある歯髄(神経)まで侵された状態です。歯髄炎を起こし、激しい痛みになります。多くの人は、この段階にならないと、なかなか歯医者に行かないものです。しかし、この段階では、治療がツライのも仕方ないこと。神経まで進んでいるのだから、治療の途中で歯医者さんに行くのをやめないようにしましょう。 C4の虫歯 歯の上部はほとんどなくなり、病巣が歯根まで進行し、歯根膜に炎症がおこり、ウミがたまることもあります。今日、明日にでも治療をするべきでしょう。
歯周病を引き起こす原因とは?実は、毎日の色々な生活習慣が歯周病の原因となっています。 目次 生活習慣が歯周病をつくる こんなことに注意しよう! 生活習慣が歯周病をつくる 歯周病はどんな原因でおこるのでしょうか? 直接の原因は、歯周ポケットに歯垢(プラーク)がたまることによりますが、それ以上に、毎日の色々な生活習慣が歯周病の原因となっています。 口の中だけでなく、全身を健康に保ち、抵抗力をつけると歯周病予防に効果があります。生活習慣病を引き起こす生活をあらためましょう。 こんなことに注意しよう! 糖尿病 糖尿病は免疫系の機能障害をおこしたり、抹消の血流を悪くするため、歯周病を併発しやすいようです。まずは糖尿病に陥らないような食事や運動、禁煙をこころがけましょう。 血液疾患 血流などの障害により免疫力の低下などが起こり、細菌が原因である歯周病になりやすいようです。口の中は細菌を除去し、積極的にキレイにしておきましょう。 妊娠中 妊娠が歯周病の直接の原因になるわけではありません。しかし、妊娠中はホルモンの変化など、さまざまな生活環境が変化しやすく、そのため二次的に歯周病になりやすいので注意が必要です。
歯を無くす原因となる歯周病は、歯垢(プラーク)が歯周ポケットに入りこんで、炎症をおこし歯肉が化膿することです。歯周ポケットの中の歯垢・歯石を取り除き、炎症をおさえ、歯周ポケットを無くすと歯周病もなくなるはずです。 目次 ポケットを無くそう! 危険な敵・歯周病を知る! ポケットを無くそう! 歯を無くす原因となる歯周病とは、歯垢(プラーク)が歯周ポケットに入りこんでいき、炎症をおこし歯肉が化膿することです。ひどくなると骨が溶けてしまいます。しかしこの、よく聞く「歯周ポケット」とはなんでしょうか? 歯周ポケットとは? 歯を支える歯槽骨や、歯と歯槽骨をつなげる繊維の歯根膜が、細菌により破壊され、歯と歯ぐきの間にすき間ができてしまったものです。 A:歯肉が炎症をおこし、腫れて出血しやすくなっています。 B:深くなってしまったポケットで歯垢や歯石がたまりやすくなっています。 C:歯槽骨まで進行すると、溶けて歯がぐらつくようになってしまい、最後には歯が抜けます。 危険な敵・歯周病を知る! ●静かに進行する病気 自覚症状がほどんどありません。逆に早めに発見・自覚すれば進行具合がチェックでき、改善もできます。 ●国民病である 他国と比べても日本の歯周病は多いようです。日本人の口の中にはそれだけ細菌が多いということです。 ●自己管理ができる 正しい知識と生活習慣で防げる病気です。
虫歯も歯周病も、直接にはこのプラーク(歯垢)が原因です。プラークの性質をきちんと理解できれば、正しいケアのポイントがつかめます。 目次 虫歯と歯周病の大きな原因 プラーク(歯垢)の嫌な得意技 プラークはナゼみがきにくいところにたまるのか? 虫歯と歯周病の大きな原因 虫歯も歯周病も、直接にはプラーク(歯垢)が原因です。歯みがき粉や歯ブラシの宣伝でも「プラーク・コントロール」と盛んにうたっています。しかし正確にその正体を知っていますか? その正体が見えると、どうすれば良いのかも見えてくるはずです。 プラークとは? 歯の表面についた白っぽいネバネバのことです。歯牙細菌苔とも言い、生きた細菌の大集団が苔のようにヘバリついています。 つまり、決して単なる食べカスではありません。このプラークをとり除くのが、歯みがきの最大の目的です。しかし歯みがきと言うと「食べカスをとるもの」と思っていませんか? その結果、食べカスだけとっても、ネバネバと引っついているプラークがとり切れていないため 「せっかく毎日、歯をみがいても虫歯や歯周病になっちゃった!」ということになるのです。 歯石とは? プラークに唾液中のカルシウムやリン酸が沈着して石灰化したものです。「石」という字の通り硬くなり、歯ブラシだけでは取り切れなくなります。さらに、表面がザラザラしているので、その上にもまたプラークがつきやすくなり、炎症がヒドくなります。 プラーク(歯垢)の嫌な得意技 ●くっつく力が強くたまりやすいです。 ●白血球の食菌・殺菌作用を低下させます。 ●組織を破壊する酵素を持っています。 ●毒素で骨を溶かす破骨細胞を活性化させます。 それによって歯や歯槽骨が溶けます。 プラークはナゼみがきにくいところにたまるのか? 細菌は、唾液が循環しやすい場所にいると、作っていく酸が拡散してしまいます。細菌は酸性(pH5.5以下)が大好きです。 いわゆる「みがきにくい」場所、奥歯の溝や周り、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、治療で詰めた物やかぶせた物の周り、差し歯や義歯のつぎ目。そこは、唾液の循環しにくいところなので、強いネバネバ力で安心して集まってくっついていられるのです。 細菌が密集することで作り出す酸の濃度は高くなり、歯が溶け虫歯になります。
多くの人のブラッシング方法が少し間違っているようです。ポイントをしっかりおさえて、最高の歯ブラシ方法で健康な歯と歯ぐきを作りましょう。 目次 ブラッシングは高等テクニック! 歯と歯ぐきは良くなるブラッシング・5つのポイント みがきにくいところのみがき方 ブラッシングは高等テクニック! 日本人の98%が毎日みがいているのに、悪くなる歯。 もちろん、私たちは頑張ってブラッシングしています。しかし実際に、多くの人のブラッシング方法が少し間違っている、雑である、正しく理解していません。歯はもともと一人一人違うため、実は「これが最良の方法!」というのも人によって違っています。つまり、あなたの歯をキレイにできるプロは、あなたしかいません。 これ以上歯を無くしたくないなら、次に挙げるポイントをしっかりおさえ、今日から自分自身のための最高の歯ブラシ方法を開発し、健康な歯と歯ぐきを作っていきましょう。 歯と歯ぐきは良くなるブラッシング・5つのポイント 次の5つが実行できれば、間違いなく歯と歯ぐきは良くなります。1つ1つは極めて簡単なことです。しかしコレを実行するのが、なかなか難しいことです。つい無意識で、いつも行っている方法に戻ってしまうからです。歯は十分意識してみがきましょう。 1. 鏡で確認しながらみがく 食器を洗う時、見ないで洗う人はいません。お化粧をする時、ヒゲをそる時、大抵の人は鏡をよく見ます。しかし歯をみがく時には、鏡で口の中を見ないのはなぜでしょう?ぜひ大きな口を開けて自分の歯の状態を見ながら、みがいてみてください。 歯は平べったい板ではありません。丸くなって歯ブラシのあたりにくいところや、くちびるにおおわれてブラシが届かないところなどを、すぐにでも発見できるはずです。そこに歯垢(プラーク)がたまっています。 2. みがきにくいと思うところからみがく 無意識にみがき出すと、どうしても自分がみがきやすいところから始め、みがきにくいところは後回しにしてしまい、そのうち歯みがきにも飽きて結局、後回しにされたところはロクにみがかれないままということもしばしばあります。しかし、そこにこそ細菌は大集団をなしています。このままでは、細菌の思うツボ!まずはそこから攻めていきましょう。 3. 毛先をきちんとあてる 特に、歯と歯ぐきの間や歯と歯の間は、ボーゼンとみがいていては、そこに毛先はあたりません。それではネバネバとくっついている歯垢は落とせません。歯ブラシの角度を色々と変え、みがきにくいところに毛先をうまくあて、歯垢をかきだすつもりでみがきましょう。 4. 軽い力でみがく 強い力でゴシゴシすれば、毛先は倒れてしまい、歯垢がとれません。さらに、歯ぐきや歯の根を傷つけてしまい、そこから歯周病にもなりかねません。そっと軽くあてる程度でちょうど良いのです。 5. 小刻みにみがく 多くの人が、ブラシを動かす距離が長すぎです。距離は5mm程度(歯1本分くらいの幅)の細かい往復運動が一番歯垢がとれやすいそうです。まさに1本1本みがくという感じです。歯1本につき10回は動かしてみがきましょう。いっぺんにみがこうとして、大きく動かしても、結局はダメです。かえって手間もかかり、効果も上がらず、時間もムダになってしまいます。 みがきにくいところのみがき方 ●歯と歯の間をみがく ブラシの横はじの毛を使い、少しだけ押し込むようにしてみがきます。みがきにくく虫歯になりやすいので、1本ずつ、ていねいにみがきましょう。隣接した部分を一気にみがこうとして、ブラシの真中を直角にあてたのでは効果が薄いようです。歯のカーブに沿って、隣接部の右・左とみがきます。 ●歯のつけ根をみがく 毛先の横はじを45度の角度であててみがきます。歯周ポケットに効き、歯周病予防には欠かせません。でも、決して力を入れすぎないことです。優しく軽く動かせば、歯肉マッサージにもなります。 ●かみ合わせの部分をみがく 本来なら、みがきやすいところですが、虫歯になる率がとても高いようです。歯のかみ合わせ部分は、思った以上に深い溝があります。そこを勢いよくゴシゴシとやってしまうと、溝に届く前に、毛先は表面を通りすぎてしまいます。直角にあてたブラシを、溝の奥まで届かせるつもりで、小刻みにみがきます。