統合失調症になると、幻覚や幻聴、妄想にとらわれたり、身なりを気にしなくなるほど意欲が減退するなど、さまざまな症状があらわれます。治療には抗精神病薬などを用いながら、あわせて日常生活機能の回復をめざす心理社会的療法が行われます。 目次 精神分裂病から統合失調症へ 統合失調症の症状とは? 早めの治療開始で、社会生活復帰へ 精神分裂病から統合失調症へ 「統合失調症」―あまり聞きなれないかもしれませんが、人口のおよそ1%に発症するとされている病気です。100人に1人の割合だから、決して特殊な病気ではありません。以前は「精神分裂病」という病名で呼ばれていましたが、その病名がどことなく危険で異質なイメージを持たれがちなため、平成14年、日本精神神経学会により「統合失調症」という病名にあらためられました。 なぜこの病気を発症するのかについてはまだ解明されていない部分も多いのですが、これまでの研究で、脳の中にある神経伝達物質であるドーパミンという物質の異常が関係しているのではないかと考えられています。また、人生の中で大きなストレスを受けることも発症のきっかけとなる場合があるといいます。思春期から40歳までの比較的若い年代で発症するのも、この病気の特徴です。 統合失調症の症状とは? 統合失調症になると、見えないはずのものが見える幻覚、聞こえないはずの音や声が聞こえる幻聴、現実にはありえない妄想にとらわれたり、身なりを気にしなくなるほど意欲が減退するなど、さまざまな症状があらわれます。 たとえば、他人には荒唐無稽なように受け取れますが、患者さん自身は「秘密組織に狙われている」と真剣におびえたり、「会社の同僚が全員自分の悪口を言っている」という幻聴が聞こえたりして、自分自身の感覚が頭の中で正しく理解できなくなってしまいます。 これらはすべて病気が原因であらわれる症状なのですが、統合失調症の患者さんの特徴として、「病識の欠如」つまり自分自身が異常な状態であることを認識できないため、周囲とのコミュニケーションがうまくはかれず、社会生活を送ることが難しくなっていきます。 早めの治療開始で、社会生活復帰へ 統合失調症の原因は脳の神経伝達物質の異常にあることが示唆されているため、治療の基本は薬物療法となります。抗精神病薬などを用いながら、あわせて、グループ形式でのロールプレイングにより対人コミュニケーションを学ぶトレーニングや、園芸や料理、木工などの作業を通じて達成感や充実感を得て、日常生活機能の回復をめざす心理社会的療法が行なわれます。症状が落ち着いたからと勝手に服薬を中断すると、1~2年以内に80~90%が再発するため、根気良く服薬を続ける必要があります。 もし家族や友人、知人に統合失調症の症状があらわれたら、なるべく早く精神科医に相談するのが重要です。この病気は早めに治療を開始する方が回復も早く、症状も軽くて済むため、通常の社会生活へ復帰するための近道となることが期待できるでしょう。 ■関連記事 うつ病をFacebookから診断できる? 西川伸一先生ブログ・論文ウォッチから 疲れやストレスを感じたら体内時計をリセット!うつ病学会が自己管理のコツを紹介 うつ病に良い栄養は葉酸や鉄分 うつ病、統合失調症など精神疾患が生活習慣改善により予防できるケースも うつ病は過敏性腸症候群や善玉菌が関係あり 公開日:2008/08/25
理性では「まったく意味がない」とわかっているにもかかわらず、不安や恐怖にとりつかれてしまう心の病、強迫性障害。「体や衣服が汚れるのでは」「他人に危害を与えるのでは」など、根拠のない不安から、何度も手を洗うなどの行為を繰り返したりする。そんな強迫性障害の特徴や治療法などを紹介。 目次 不安でならない強迫性障害、どんな病気? 詳しい原因はよくわかっていない 強迫性障害は気長に焦らず克服しよう 不安でならない強迫性障害、どんな病気? 誰でも火の元や戸締りなどが気になることはあるもの。しかし、何度も確認しているにもかかわらず、きちんと確認したかどうかが不安でならない――強迫性障害は、理性では「バカバカしい」「まったく意味がない」とわかっているにもかかわらず、不安や恐怖にとりつかれてしまう心の病だ。かつては、強迫神経症と呼んでいた。現在、この病気で悩んでいる人は人口の約2%といわれ、決して、めずらしい病気ではない。 単なる不安を通り越し、以下のようなことがあるようなら、一度、専門医を受診してみて欲しい。 ●本人がひどく苦痛に感じており、なんとか考えないようにしようとしている ●不安や、不安を解消する行為のため、1日1時間以上を浪費し、生活に支障をきたしている また、背景にうつ病や統合失調症が隠れていることもある。「気分が落ち込み、自殺願望がある」「誰かの『○○しろ』、という声が聞こえる」などの症状があるときはさらに注意が必要だ。 抱いている不安は人によってさまざま 自分や他人を傷つけてしまうかもしれない 暴力的な考えや場面が頭に浮かんで離れない 知らない間に犯罪を犯しているかもしれない 電車に飛び込んでしまうかもしれない 尿や便が体や衣服についているのではないか 有害廃棄物や放射能に汚染されるのではないか 自分が汚いものをまき散らして他人に害を与えるのではないか 鍵をかけていないのではないか 火の元を始末していないのではないか 大切なものをなくしてしまうのではないか 縁起の悪い方角に行くのが怖くてたまらない 詳しい原因はよくわかっていない 詳しい原因はよくわかっていないが、強迫性障害にかかる人には、ある程度、性格上の特徴があるといわれる。 性格上の特徴 完璧主義で几帳面 白黒はっきりつけたがる 欲求不満や葛藤に悩みやすい 心配性だ 良心的だ 不安や緊張が強い さらに、不安(強迫観念)から逃れるため、自分でもバカバカしいと思う行為(強迫行為)を繰り返さずにはいられないケースも多い。 ■A夫さんの場合 A夫さん(21歳)は大学3年生。性格は大人しく几帳面で、成績は優秀だった。ところが、テレビで原子力発電所の事故のニュースを知ってからというもの、放射能に汚染されるのでは、という恐怖にとりつかれてしまった。大学へはマスクをして通い、1日何度も手を洗わずにはいられない。ちょうどつきあっていた彼女とも、出身地が原発に近い町だったことから別れてしまった。自分でもおかしな考えにとりつかれているとは思うが、どうすることもできない。最近は、人が大勢集まる電車などに乗るのも怖くなってきた。 ■B子さんの場合 B子さん(32歳)は最近、念願の女の子を産んだばかり。可愛がって育てており、周囲からも理想的な母親だといわれている。ところがあるときから、もしかしたら子どもを虐待してしまうのでは、という不安に苛まれるようになった。そこで、我が子をいじめたりしないように、子ども部屋に入る前に必ず108回、足踏みをしている。意味のない行為だとは思っていても、やめることができない。 強迫性障害は気長に焦らず克服しよう 中心となるのは薬物治療 以前から使われている抗うつ剤や、副作用の少ないSSRIという新しいタイプの抗うつ剤が一般的だ。このほか、向精神薬を用いることもある。 行動療法にもトライを リラックス体験をしながら、あえて緊張を強いられる場面に徐々に慣れるような訓練をおこない、緊張を克服する、自信を持つようにする方法。 自助グループもおすすめ 患者同士が集まって助け合いながら治癒をめざす自助グループもある。「悩んでいるのは自分だけではない」ということがわかるだけでも楽になる。自分の症状を気にせず、日常生活に意識を向けるようにする「森田療法」の会などが代表的。 治療には、焦らず気長に取り組みたいもの。悲観しないで、プラス思考で過ごすのが一番の薬だ。「また不安になるのではないか」「やりたくないことを繰り返してしまうのでは」という不安が、かえって症状を誘発してしまう。自分の好きなことを楽しむようにし、あまり病気のことを考えないようにしよう。 ■関連記事 うつ病をFacebookから診断できる? 西川伸一先生ブログ・論文ウォッチから 疲れやストレスを感じたら体内時計をリセット!うつ病学会が自己管理のコツを紹介 うつ病に良い栄養は葉酸や鉄分 うつ病、統合失調症など精神疾患が生活習慣改善により予防できるケースも うつ病は過敏性腸症候群や善玉菌が関係あり 公開日:2004年2月2日
ストレスに対する適応能力の差が、心身への影響の差となって現れます。では、ストレスに対する適応能力が欠けやすいのはどのような人なのでしょうか。ストレスが溜まっていると感じたときのストレス解消法もご紹介します。 目次 ストレスは千差万別 ストレスに負けない心をつくる ストレス解消法 ストレスは千差万別 日常で経験するストレスは大別すると、外部的ストレッサーと内部的ストレッサーに分けることができる。 ストレスの種類 外部的ストレッサー 物理的刺激 (天候、放射線、やけど、凍傷、けが、騒音、振動など) 化学的刺激 (酸素の欠乏・過剰、薬害および有害物質など) 内部的ストレッサー 心労的刺激 (対人関係、社会生活などの困難によって生ずる、情緒的・精神的刺激。怒り、あせり、不安、恐れ、憎しみ、緊張など) 身労的刺激 (転勤、深夜残業、徹夜、不規則な食事など生体のリズムの乱れから生じるひずみ) これらのひずみは、現代社会では避けることができないものばかり。実際、20歳以上の3,000人を対象に精神疲労やストレスの実感を調査したところ、全体の55%の人がストレス状態を感じているよう。 ただ、これだけの人がストレスを感じていても、ほとんどストレスを感じていない人もいる。同じストレスを受けても、ストレスと感じる人もいれば感じない人もいるのだ。 つまり、ストレスそのものが悪いわけではなく、ストレスに対する適応能力の差が、心身への影響の差となって現れるのだ、と言われている。 あなたの適応能力はさて、どう? ストレスに負けない心をつくる ストレスに対する適応能力が欠けやすい人は主に次のような性格に多いと言われている。 ●まじめで几帳面な性格 ストレスに負けやすいタイプで最も多いのがこのタイプ。まじめで几帳面な人は、何事にも完璧を求めてしまい適当なところで妥協することがない。責任感や正義感は強いが、かえって精神的に緊張することが多く、ストレスを感じることも多い。 ●内向的でおとなしい性格 このタイプは、いやなことはいやと言えず、自分の意志とは違う方向に事が進んでしまい、あとで後悔したり悩んだりしてしまう。その状態がだんだん蓄積してストレスが溜まる。 ●頑固で厳しい性格 このタイプは、どんなことでも他人のミスが許せず、頭ごなしに否定してしまう。つねにカッカとすることが多く、その怒りがストレッサーとなってストレス状態を引き起こす。 ●心配性な性格 つねになにか不安に思っていたり、取り越し苦労の多い人は、心の休まる暇がなく、その不安がストレッサーとなる。 自分の性格は簡単に変えられるものではない。が、ストレスは心身ともに悪影響を与えるもと。 急に性格を変えるのは難しくても、考え方を少し変えるなどして、心や体をストレスから癒すようにしよう。 ストレス解消法 さて、ストレスが溜まっていると感じたとき、どのように解消しているだろうか。 自分なりの趣味や解消法があればそれでいいのだが、解消法が見つからない人や、時間がなくてなかなかできない、なんて嘆いている人に、ちょっとした解消法をご紹介。 ストレス解消法 ●ゆっくり深呼吸 簡単にできて時間もかからず安上がりな方法。しかもいつでもどこでもできるのがメリット。なのに、人は忙しくなると深呼吸すら忘れてしまうのだ。 まず、息をお腹で吸い込む。お腹がぐっと膨らんだら、しばらく息を止めてフーッと吐き出す。次にゆっくり吸い込んだら、自然に吐き出す。これを繰り返すとリラックス効果が現れる。 ●大声で叫ぶ ストレスは、内側に溜めてしまうと溜まる一方。そこで、 口を大きく開け大声で叫んで みよう。心で思っているだけでは怒りは解けないが、声に出してみると意外とスッキリする。 ただし、誰かがいるとびっくりされてしまうので、誰もいない所でするか、またはクッションなどを口に当てて怒鳴ってみよう。ついでにクッションを蹴るなり叩くなりするとさらに効果アリ。 ●大笑いする 笑いには思わぬ健康効果がある。けれど、大笑いしたのはさて、いつのことだったかな?なんてことになってはいない?そこで、 定期的に大笑い してみよう。お笑い番組を見たり、落語を聞いたりするのもよし。友人と面白話をしあうのもよし。なんにも面白いものがなくて笑えないというのなら、とりあえず大声を出して笑ってみよう。だんだん、おかしくなってきて心から笑えるようになる。 公開日:2002年1月15日
ひとの心や生活、生い立ちがさまざまであるのと同様、「心の病」の在り方も、決して一様ではありません。そのなかでも共通点を見つけ分類すると、「心の病」には、神経症・双極性障害・統合失調症の代表的な3つがあります。 目次 神経症 双極性障害 統合失調症 神経症 頭痛など体の異常、不安・抑うつなど精神の異常を訴えますが、身体医学的な検査では異常が認められず、心が原因で発現すると考えられるものです。 似たものに「心身症」があります。こちらは原因が心にあることは同じですが、実際に体の疾患が現われるところが違います。ノイローゼ、パニック障害、自律神経失調、ヒステリーなども神経症のひとつ。治療法としては薬物療法、精神療法、認知行動療法などが挙げられます。 双極性障害 双極性障害は、気分が高揚し、活動が増える「躁状態」と、落ち込んで、やる気が失せてしまう「うつ状態」という対極にある状態が繰り返し現れる(気分の波)精神疾患です。うつ病が、うつ状態のみがみられる「単極性」であるのに対して、うつ状態と躁状態の両方があることから「双極性」と名付けられました。かつては「躁うつ病」と呼ばれていた病気です。 双極性障害に特徴付けられる躁状態では、普段とは人が変わったように「気分が昂ぶる」「おしゃべり」「やたらと社交的になる」「眠らないでも平気で動き回る」といった気分・行動の変化が認められ、それが昂じると仕事や人間関係に支障をきたしてしまうこともあります。 双極性障害は治療が難しく、長引きやすい病気と言われています。治療は家族の協力の下、正しい治療を継続することが大切です。 双極性障害とはどんな病気?発症するきっかけは? 統合失調症 統合失調症になると、見えないはずのものが見える幻覚、聞こえないはずの音や声が聞こえる幻聴、現実にはありえない妄想にとらわれたり、身なりを気にしなくなるほど意欲が減退するなど、さまざまな症状があらわれます。なぜこの病気を発症するのかについてはまだ解明されていない部分も多いですが、これまでの研究で、脳の中にある神経伝達物質であるドーパミンという物質の異常が関係しているのではないかと考えられています。 以前は「精神分裂病」という病名で呼ばれていたが、その病名がどことなく危険で異質なイメージを持たれがちなため、「統合失調症」という病名にあらためられました。 いない人の声が聞こえる~統合失調症という病気 公開日:1999年3月27日
近年「心の病」の治療では、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。 目次 今どきの「心の病」の治し方 心と体は分けられない 主な向精神薬と、その用法・目的 今どきの「心の病」の治し方 近年「心の病」は、単に本人の性格や生い立ちだけの問題としてとらえることはほとんどなくなりました。それとともに体(脳など)にはたらきかける治療、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。現在、主に行われている治療方法は以下の通りです。 精神療法 精神分析や行動療法など。主に信頼関係に基づいて「話をする」ということで治療を行います。 自らが不安感をコントロールしていく認知療法なども、最近特に注目されています。 薬物療法 ここ数十年で飛躍的な発展をとげた療法で、現在の精神医療には欠かせません。 専門医が、ドーパミンなど脳内神経伝達物質の活動や解剖学的変化について、想像をはたらかせ薬を処方します。 作業療法 ダンスやお芝居、音楽、美術など、さまざまな活動を通して、社会復帰へのリハビリを行います。 また病状を将来に向け安定させ、再発を予防します。 心と体は分けられない ところでなぜ、薬で「心」を治すことができるのでしょうか? 心も「脳」という体の一部のはたらきであることを前提として、脳生物学が発展し、向精神薬の種類は増加、そのメカニズムの解明も進みました。 うつ病患者の不安感が脳内物質のはたらきであるなら、それを薬でやわらげ、最悪の事態も避けることができます。 しかし、薬は基本的に対症療法となります。増大する不安感を抑えることはできても、不安に感じる原因そのものは取り除けません。そういった意味で、不安の原因を自ら見つめ直したり、上手に不安感を回避する方法を身につけたりする精神療法が大切となります。 しかしさらに考えると、確かに心は体の一部で、誰でも体調の悪い時には不安になるし、病気になれば落ち込みます。心の病が生活習慣病のひとつと言われるようになったのは、生活習慣の乱れの蓄積が体にも心にも病をもたらすからです。 病気になってしまった場合、不安感や焦り、無気力に取りつかれたままでは前に進めません。ときには薬という防具を身につけ、新たな生活習慣を獲得していきましょう。 主な向精神薬と、その用法・目的 心の病に処方する「向精神薬」は、機能異常(ズレ)の症状を改善・正常化するために使われるものです。 抗不安薬 ベンゾジアゼピン系 主に神経症的症状の治療に用いられる。不安、緊張、抑うつ、焦燥、睡眠障害など。うつ病の抗うつ剤と併用されることも多い。 抗精神病薬 フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンザミド系など 主に精神分裂病的症状の治療に用いる。薬剤によって、鎮静効果、幻覚・妄想の改善。投与量によって、自発性を高める、引きこもりを改善する作用を有するものがある。 抗うつ薬 イミプラミン系など 意欲を高め、気分を明るくし、不安を軽減する効果がある。脳内伝達物質のノルエピネフリンやセロトニンのはたらきを高める。 抗躁薬 炭酸リチウム 高揚した気分や興奮、それにともなう誇大妄想などの症状を安定化する。抗てんかん剤にも同様の効果があるため、そちらが使われることもある。 睡眠薬 ベンゾジアゼピン系など 単独で使用する他、睡眠障害をともなっている元の病気や状態により、抗うつ薬や抗精神病薬と同時に使用することもある。 公開日:1999年3月27日
ストレスは、とかく悪者として扱われがちですが、ストレスはなくても困るようです。「人生のスパイス」と表現されることさえあります。そもそもストレスって、一体何なのでしょうか。 目次 「ストレスがまったくない人」は存在する? 「ストレス」とは、一体何? ストレスゼロだと人間はどうなるか? 「ストレスがまったくない人」は存在する? 現代社会はストレス社会といわれます。調査によれば、全体の55%の人が「精神的疲労やストレスを感じている」とも。とくに多いのが20代後半の女性で、70%超だそうです。 では、残りの人はストレスがまったくないのかというと、そういうわけでもありません。あまりにも忙しすぎて、自分がくたびれていることに、気づいていないだけかもしれないのです。「あーストレスたまる」「肩こった」と弱音を吐いてばかりいる人のほうが、適当に休みをとったりペースダウンしたりするので、あまり大きな病気にはならないかもしれません。むしろ「ストレスなんてたまっていないよ。元気元気!」という人のほうが、頑張りすぎて、ある日突然大きな病気としてあらわれる危険性を秘めています。 自分のストレスに早く気づいて、それを少しでも解消することが大切です。 「ストレス」とは、一体何? ストレスとは、医学的にいうと「なんらかの刺激が体に加えられた結果、体が示したゆがみや変調」のこと。そして、その原因となる刺激のことを「ストレッサー」といいます。 ゴムボールを指で押すと、ボールはゆがんだ状態になります。これが「ストレス」です。そして、押している指が「ストレッサー」ということになります。指を離せば、ボールは元の丸い形に戻ります。しかし、いつもいつも抑えつけていたら、ゆがんだままとなります。体も同じことです。 ストレッサーは、大きくは4つに分けられます。 ●物理的ストレッサー 高温や低音による刺激、放射線や騒音による刺激など。 ●化学的ストレッサー 酸素の欠乏・過剰、薬害、栄養不足など。 ●生物的ストレッサー 病原菌の侵入など。 ●精神的ストレッサー 人間関係トラブル、精神的な苦痛、怒り・不安・憎しみ・緊張など。 このうち、「ストレスがたまっている」と感じる人を悩ませている原因のほとんどは、最後の精神的ストレッサーです。しかも、これは複雑で、解決も困難です。 ストレスゼロだと人間はどうなるか? アメリカの心理学者が、ある面白い実験をおこないました。 ストレス(刺激)がまったくない部屋で過ごすと、人間はどうなるかを調べたのです。結果は、以下の通りでした。 ●体温調節機能の低下 気温の変化に合わせ、汗を出したり鳥肌を立てたりして体温を調節するはたらきが、にぶくなります。 ●暗示にかかりやすくなる 何か指示されると、間違った指示であろうとそれに従い、「もう立っていられない」と言われると、言葉通りに足の力が抜けてしまいます。 ●幻覚・妄想 刺激(ストレス)から隔離してマインドコントロールし、社会的に問題になった例も多いようです。 つまり、体と心のバランスを保つためには、適度なストレスが必要です。