現在、酒が手軽に購入できる環境があり、20歳未満で飲酒経験のある人も少なくありません。適量の飲酒は心身の緊張感をほぐしてストレスを和らげるが、飲みすぎは病気を引き起こしかねません。時には禁酒が効果的です。 目次 飲酒に関する害 アルコール依存症 休肝日をつくることからはじめる 飲酒に関する害 酒は、現在スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでの取り扱いが増え、手を伸ばせばすぐに購入できる環境があり、20歳未満で飲酒経験のある人も少なくないといえます。 そのため日本では、「未成年者飲酒禁止法」により、20歳未満の飲酒が法律で禁じられ、成人が未成年者に飲酒を勧めた場合にはその成人も罰せられます。 未成年が飲酒をする害 急性アルコール中毒になりやすい/集中力・記憶力の低下/短期間でアルコール依存症になりやすい/将来肝臓病になりやすい 適量の飲酒は心身の緊張感をほぐしてストレスを和らげたり、動脈硬化を予防する善玉コレステロールを増やす、健康増進に役立つなど、「酒は百薬の長」ともいわれます。 ですが、妊娠中の人は、胎児の流産や、先天性の異常を持って生まれてくる可能性が高くなるともいわれているため、飲酒は控えるべきです。 つまり、「酒は百薬の長」を言い訳にした飲みすぎは、病気を引き起こす「害」にもなりかねないということです。 飲酒が関係して引き起こされるといわれている代表的な疾患 アルコール依存症/高血圧/痛風/慢性肝障害/脂肪肝/肝炎/がん/肝臓病 アルコール依存症 平常時の飲酒は、脳をリラックスさせ中枢神経を抑制するといった面もありますが、飲酒が習慣化するとアルコールに対する依存が生じる場合があります。うつ病などの場合はアルコール依存のリスクを高める場合があり、アルコール依存がさらにうつ病を進行させるといった連鎖を起こす危険性があるようです。 アルコール依存症の場合、本人よりも周囲の家族に問題が襲い掛かることが多いようです。アルコール依存症は断酒をすれば症状は無くなりますが、その「断酒」をさせることが難しいです。 そこで家族は、飲酒をしていない状態のときに本人がアルコール依存症であることを自覚させ、1日も早く本人を専門医に受診させること、医師の指導の下、断酒と治療薬(断酒時の離脱症状を和らげるための睡眠薬や抗不安薬)による治療を継続することが必要となります。また、断酒をしてもすぐに飲酒をしてしまう患者が多いのですが、家族は諦めずに何度でも断酒にチャレンジさせることが必要です。そのほか、患者はストレスを感じることでアルコールに逃げる習性があるため、なるべくストレスを感じない環境づくりをすることも大切です。 休肝日をつくることからはじめる 飲酒を習慣づけ、大量の飲酒をする人の多くが、肝臓の機能に異常をきたすことが多いようです。毎日の大量の飲酒で肝臓に過剰なはたらきをさせることは、いつか肝臓のはたらきに支障をきたすことになります。これらの治療はやはり、禁酒。ただ、飲酒を習慣にしている人は突然禁酒をできない場合が多いようなので、まず「休肝日」とよばれる断酒日を作ることからはじめてみるのもよいでしょう。 また、「飲まなければやっていられない」といったネガティブな感情で飲酒をしている人は、自分なりのストレス解消方や趣味などを見つけるなど、飲酒への興味を薄くしていくことも必要です。 公開日:2009/01/19
女性の4割は専業主婦、男性の6割が単身生活者 東京都監察医務院が行政解剖した事例のなかで、1日5合以上の酒を飲み続けていたことが死亡の原因と見られるものが840件ありました。 そのうち女性は70人で、年齢が45~64歳の人が過半数を占めています。職業別では専業主婦が30人と全体の43%、飲食業に勤める人が11人という内容でした。 男性の場合も年齢は45~64歳が多く、62%が単身生活者で、職業は無職が33%となっています。 脂肪肝などで急死が74%! 解剖してみるとアルコール性脂肪肝などの病気での急死が74%、泥酔して転倒や自殺した人が20%という数字が出ています。 ※脂肪肝とは、肝細胞の中に脂肪が沈着した状態のこと。詳しくは「アルコールと脂肪肝」をご覧ください。 アルコールの量は1日30gまでなら飲み続けても比較的安全で、これが肝臓の負担限界線とされています。 それが1日60g以上を15年以上飲み続けると、肝炎などの異常発生率が80%を超えることになります。 倒れた主婦の場合、ほとんどが家にいてのキッチンドリンカーで、飲み過ぎがエスカレートした結果だといわれています。
悪酔いさせてお酒をやめさせる薬 嫌酒薬の一つであるジスルフィラムという薬は、そもそも虫下しとして開発している途中で、試しに薬を飲んだ医者がアルコールを飲んだ時にひどい悪酔いをしたことに端を発したといわれています。 アルコールの中間代謝産物であるアセトアルデヒドは、悪酔いの原因といわれています。ジスルフィラムは、アセトアルデヒドが分解するのを阻止します。ですから、アルコールと一緒に飲むと通常よりひどい悪酔いを起こすことになります。 これを利用して、お酒を止めさせようとする訳です。日本で認可されているもう一つの嫌酒薬ジアナミドも、同様のはたらきをします。 同じ作用でも危険が伴う不認可薬 また、セフェム系抗生剤は嫌酒薬と同じ作用を持っています。セフェム系抗生剤を服用中にお酒を飲むと顔面紅潮、心き亢進、めまいなどが起こります。 この薬は嫌酒薬として認められているわけではありませんから、嫌酒薬代わりに使うことは大変危険です。セフェム系抗生剤を飲んでいる時には、お酒を飲まないようにしましょう。
アルコール関連障害の総合的な医療 国立療養所久里浜病院(横須賀市)は、アルコール関連障害を持つ人のための専門病院です。この病院は酒酔い防止法(酒によって公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律)を受けて、1964年(昭和39年)に開設されました。 この病院ではアルコール関連障害を持つ人に対して、精神科、内科など総合的な医療が行われています。国立療養所久里浜病院の外にもアルコール関連障害の人のための専門の病床は、全国に約1500床程度整備されています。 また、アルコール専門外来は全国で12の病院にあります。自分の住む地域にどんな専門病院や、アルコール外来があるのかを知りたい時には、保健所や精神保健福祉センターで教えてもらえます。 まず診療に訪れること ところで、外来での治療を可能にするためには、本人がいやいやながらもアルコール外来に診療に訪れることがまず必要です。そして、自分がアルコール依存症にかかっていることを認めて、断酒を決意して通院を続ける覚悟が必要です。 ですから、本人の意思が一番大切ですが、なかなか一人では治せないものです。そこで、断酒会やAAなどの自助グループに参加するように勧めましょう。
昭和45年全日本断酒連盟として認可 昭和28年に東京で「東京断酒友の会」が発足し、東京断酒会の前身となっていきました。一方、昭和33年に高知で「高知断酒新生会」が発足しました。こうして、東京と高知で発足した断酒会は、やがて昭和38年に全国的な組織である全日本断酒連盟へと発展しました。 そして、昭和45年には社団法人全日本断酒連盟として認可されました。全日本断酒連盟は、全国を9ブロックに分け、その下に県断酒会があります。 会長職の下に役員や理事がおかれており、理事長1名、副理事長2名、常任理事数名、理事20名、監事2名によって運営されています。全日本断酒連盟の初代会長は、高知で断酒会を発足させた松村繁氏で、全国各地のアルコール依存症患者を訪問し、断酒会の組織づくりに熱意を燃やしました。 昭和54年に厚生省が酒害相談事業を開始して、断酒会の育成・指導を行う方針を打ち出してから、全国の断酒会活動はさらに充実することになりました。断酒会は日本独自の自助グループで、AA(アルコホリクス・アノニマス)と同じ目的を持ちながらも日本文化の中で異なった運営や活動形態をしています。
1980年日本でも成立 アルコール依存症の患者の配偶者のための自助グループのことです。アラノンは当事者だけの匿名断酒会であるAA(アルコホリクス・アノニマス)から、独立した全く別の組織です。 1952年(昭和27年)に米国で発足し、1980年には日本でもアラノンが成立しました。1996年の時点で、日本では100以上のグループがあるといわれています。 アラノンのミーティングは短い黙とうのあと、平和の祈りというものを行います。そして、自らの精神的回復を目指すアラノン独自の12ステップの朗読が行われ、新メンバーが紹介されます。 家族教育をシステム化 さらに、指定発言者の話の後、自由討議が行われます。この形式はAAと同じです。アラノンは家族教育をシステム化しているので、アルコール依存症の夫のため混乱している妻も入りやすいようです。そして、家族同士が本音で話し合えるといわれています。 AA家族の会としてアラノンの外に、アルコール依存症の未成年の子供のグループ(アラティーン)と、既に成人した子供のグループ(AC)があります。これらのグループはそれぞれ独自にミーティングを行っています。
メンバーとグループが主体 1935年(昭和10年)に米国で2人のアルコール依存症者により始められた最初の自助グループです。日本では昭和50年に東京都目黒区で依存症の米国人神父が、AAミーティングを開いたのが始まりです。1995年の時点で、AAは日本全国に290のグループがあり、およそ4000人のメンバーがいるといわれています。 AAは上下関係に基づかない活動を維持し、グループ、地区委員会、地域委員会、セントラルオフィスより構成されています。しかし、AAの組織はミーティングに集まったメンバーとそのグループが主体ですから、各グループへの指示や支配はありません。 AAの活動の基本理念としては、運営はほかのいかなる宗教、政党、組織からも独立していることと、匿名性を守り自分でお酒をやめたいと思っている人だけがメンバーとなれることなどがあります。 AAのミーティングでは司会者が一人いて、メンバーは自分の飲酒にまつわる体験談を一人一人話していきます。ほかのメンバーの話を批判しないことが原則になっています。
AAに関する情報提供などが主な活動 AAの全国的な活動の事務局です。昭和56年にAAの自立した運営を目的に東京の信濃町にJSOは開設されました。 AAのメンバー以外に、G.B.S(ゼネラルサービス理事会)という協力者により運営されています。 印刷物の発行や、各グループのミーティング会場などの全国的なAAに関する情報の提供や交換、グループ運営に関する助言や提案を行っています。また、AA全体の活動や運営のあり方について話し合ったりしています。 さらに、海外との交流や、ワールドサービスミーティングへの出席も行っています。 しかし、AAの組織はミーティングを開くために集まったメンバーと、そのグループが主体となっています。ですから、全国的な事務局であっても、各グループに対して指示や支配をしない方針になっています。たとえグループで問題が起こって問い合わせがあっても、解決の経験や現状を伝えるという範囲で援助しています。 出版刊行物が充実 また、出版活動も盛んに行われています。各地区AAの催しを掲載した定期刊行物や、隔月のニューズレターの外に、単行本などが充実しています。
地域対策のための公の機関 精神保健福祉センターは、精神保健法に基づいて全国の都道府県に設置されている公の機関です。精神保健福祉に関する企画立案、保健所に対する技術的な指導などを行うことになっています。 その中で、アルコール関連問題に対しては、酒害談指導事業というものが行われています。その事業内容は、適正飲酒の普及、アルコール依存症に関する相談や指導、さらに再発防止の対策まで総合的に行っています。 また、地域のアルコール専門治療施設や保健所など関連機関との調整、断酒会などの民間団体育成などで、地域におけるアルコール関連対策を取りまとめています。 まず、利用を ですから、家族の中にアルコール依存症の人がいて悩まされている場合は、まず精神保健福祉センターの酒害相談を利用することをおすすめします。自分の住む地域にどんな専門病院や、アルコール外来があるのかが分かります。また、断酒会やAA(アルコホリクス・アノニマス)、アラノンなどが、具体的にどのような活動を行っているかも教えてくれます。
血液におけるアルコールの影響 アルコールと血液凝固・線溶系の変化については、今までさまざまな研究が行われてきています。その結果はアルコールの種類、飲み方、あるいは測定法の違いによってかなりばらつきがあります。 一般的には血液凝固系である血小板機能に及ぼす影響としては、アルコールが血小板凝集を抑制するため、出血傾向があるといわれています。しかし一方では、お酒を飲むと血液の粘性が増して、脳梗塞、血栓症を起こしやすいというデータもあります。 中間代謝物質アセトアルデヒド ところで、アセトアルデヒドはアルコールの中間代謝物質で、悪酔いの原因であると考えられています。最近の研究でこのアセトアルデヒドそのものが、かなり強力な血小板凝集抑制作用を持つということが明らかにされています。 また、アルコールは線溶を亢進するといわれています。つまり、血栓を溶解するはたらきがあるということです。特に焼酎はほかのアルコール類よりもそのはたらきが大きいといわれています。従って、適量な飲酒は血栓症に対しては、理想的な予防薬といえるかもしれません。 どのくらいが適量なのかはよく分かっていませんが、飲み過ぎは体に良くないことは当然です。
ビタミン代謝に異常を来すアルコール 近ごろでは過剰栄養が問題となっていて、ビタミン不足もなくなったように思われがちです。ところが、アルコールによるビタミン不足は、現在でも大きな問題です。 健康な人ではビール中瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブルで1杯くらいなら影響はないと考えられています。しかし、たくさんのお酒を飲むとビタミン代謝にさまざまな異常が起こります。 これは、食事からのビタミン摂取不足や、腸からの吸収障害が主な原因として考えられています。また、アルコールを代謝するためにビタミンが使われるため、必要なビタミンの量も増えることも問題です。 ビタミン不足によるさまざまな障害 代表的なものを幾つか上げますと、アルコール性肝硬変では血液中のビタミンAが低下します。ビタミンA不足になると、疲れやすくなったり、眠れなかったり、食欲がなくなったりします。 そして、アルコールによるビタミンB1欠乏では脚気や、意識までおかしくなるウェルニッケ型脳炎が起こります。さらに、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12の欠乏では貧血を起こします。 なお、どのくらい飲んだらビタミン欠乏が起こるのかは、まだ分かっていません。
微量金属が変化すると病気になる 微量金属全体としてみても体重の0.02%にしかなりませんが、最近の研究で生体の維持機能に大変重要な役割をしていることが明らかになってきました。 必須微量金属には、亜鉛、鉄、銅、セレンなどがあります。アルコールは微量金属の体内動態にも変化を与えます。そして、アルコールによる体内の微量金属の変化が、病気に影響することも分かってきました。 アルコールは亜鉛が少なく、鉄が多い 常習飲酒家には低亜鉛血症がしばしばみられます。肝障害がない場合は30~60%、アルコール性肝硬変の場合には70%以上に低亜鉛血症がみられるといわれています。 アルコール性肝障害の人は、摂取カロリーの半分はアルコールで取っているといわれています。しかし、アルコールは全く亜鉛を含まないので、低亜鉛血症になると考えられています。 亜鉛欠乏が起こると皮膚症状、性せん機能障害、成長障害、免疫異常、食欲の低下、たんぱく質合成障害、下痢、抑うつ症状など色々な症状がみられます。 また、お酒を飲むと鉄が過剰になりやすいといわれています。アルコール性肝硬変では血清鉄の増加がみられ、肝臓の組織中の鉄含有量も増加しています。この鉄過剰がお酒を飲むとさらに組織障害を引き起こし、肝硬変を進行させるといわれています。 一方、銅やセレンについては研究者によってまちまちで、まだ一定の見解が得られていないようです。
多量のアルコールが男性をインポテンツに… 適量のお酒は性的興奮を高めるといわれています。ところが、アルコールをたくさん飲むと、一時的にインポテンツになってしまいます。これは勃起を起こす神経の神経反射が、アルコールによって抑制されるためと考えられています。このインポテンツは一時的なものですから、酔いがさめると元に戻ります。 また、時々アルコール依存症の人に、性欲減退やインポテンツが見られることがあります。この障害の程度はそれほどひどいものではありません。大体、お酒をやめることさえできれば回復するようです。 無月経になることがある女性の依存症 一方、アルコール依存症の女性の性欲は、低下しているといわれています。アルコール依存症の人は、同年代のアルコール依存症でない人に比べて性交頻度はかなり少ないという調査結果があります。 この原因は、アルコール依存症になった後の性感の喪失、性交痛、性交嫌悪などが考えられています。 アルコール依存症では無月経が起こることがあります。無月経が長く続くと、エステロゲンというホルモンが低下して、膣内が乾燥し性交痛が起こると考えられます。また、アルコール依存症では精神的障害が起こっていることがあり、心理的にもオーガズムが阻害されることが多いようです。
発がん率が高い常習飲酒家 アルコールが体に及ぼす影響は一般的によく知られています。一方、免疫系に及ぼす影響は、症状や検査結果に目に見えるような異常や、直接的な影響が少なかったのであまり注目されていませんでした。 ところが、常習飲酒家は発がん率が高いこと、呼吸器系感染率が高いことが最近分かっています。また、アルコール性肝障害ではC型肝炎ウイルスの感染がよく見られることなどから、アルコールが免疫系機能を弱めると考えられています。 免疫に与えた影響は、本人とその子供にも及ぶ アルコールやその代謝産物は、免疫毒とさえいわれています。また、アルコールによる作用には免疫系に直接的に影響する場合と、アルコールが特定の臓器に対して障害を起こしその影響で免疫系に異常が見られる場合があります。 二次的な影響には肝臓、すい臓、神経、消化管などの組織や臓器の障害によるものと、栄養障害やビタミン欠乏によるものがあります。なかでも、代表的なのはアルコール性肝炎やアルコール性肝硬変による免疫異常です。 また、常習飲酒家から生まれた子供は、長期間にわたり免疫系の異常が見られるといわれています。その結果、色々なウイルスに感染しやすく、また悪性腫瘍も発生しやすいようです。
なぜ禁断症状になるのか アルコールには脳の神経を抑えるはたらきがあります。アルコール依存症になると、アルコールが脳に与える影響も強くなり、脳の神経も長時間抑制されることになります。 このような状態で、お酒を飲むのをやめたり、極端に量を減らしたりすると、イライラ感や不安感が出てきたり、吐き気やおう吐、どうきや発汗、あるいは寝汗や不眠などの症状が起こってきます。 この症状は禁断症状とか退薬症状あるいは離脱症状といわれるものです。これは、今まで長時間抑制されていた脳が、急にはたらき始め過剰な活動をするためではないかと考えられます。 お酒の量を自分でコントロールできるか、できないか そして、この禁断症状を止めるために、朝からアルコールを飲んだりして、一度飲みだしたら止まらなくなります。1回に飲む量が少なくても、1日に何回も飲むようになると病的な飲酒パターンとなり、アルコール依存症と見なされることになります。 ですから、毎日お酒を飲むことが習慣化されていても、お酒の量のコントロールが自分で十分にできるところが、本人は常習飲酒の延長線上にいると確信していて、自分がアルコール依存症であるとは、なかなか認めません。
1滴のお酒が断酒を揺るがす アルコール依存症であった人が、長期に断酒に成功しているのは、アルコール外来に通院している人の1/3~1/4くらいのようです。再びお酒を飲んでしまう人の方が多くなっています。 再飲酒の予防には、治療後の注意深いアフターケアが必要といわれていますが、多くの人が十分なケアを受けていないのが現状のようです。治療により依存症が治ったとはいえ、アルコール依存症だった人はもともと飲みたいという欲求が異常に強かったわけです。 ですから、1滴でも飲むとまた元に戻ってしまうケースが多く見られます。 治療後再発して飲み続けると危険 米国の調査結果によると、長期に断酒が成功した人は一般の人と死亡率は変わらないようです。しかし、治療後再発してお酒を飲み続けると、死亡率は一般の人の約5倍高くなるようです。 最近はアルコール専門の病院や外来施設、あるいは断酒会やAA(アルコホリクス・アノニマス)などの自助グループが増えてきました。ですから、昔のように、アルコール依存症が重症になって精神病院に入院するケースは少なくなってきました。 早期治療による効果のおかげなのですが、一方で古参の断酒会員は、最近の若いメンバーは気軽にお酒を止めるが、地獄の苦しみを知らないので、また気軽にお酒を飲む傾向があるようだと指摘しています。
スウェーデンでのアルコール実験 北欧諸国では、一人当たりのアルコール消費量と暴力犯罪には関係があるといわれています。 また、スウェーデンではビールのアルコール濃度を強くして試験的に販売したことがあります。この販売期間中に暴力犯罪が増えたために、販売が中止されるということがありました。 日本でも昭和35年(1960年)までは、アルコールの消費量が増えると暴力犯罪も増加するという関係がありました。しかし、最近ではこのような傾向は見られず、飲酒量が増えても暴力犯罪は低下しているようです。 めいてい状態が犯罪を引き起こす ところが、アルコールを飲み過ぎためいてい状態は、犯罪に大きく影響するようです。特に、暴力や性犯罪との結びつきが強いようです。 日本の行刑年報によると、犯行時にお酒を飲んでいる割合が高い犯罪は、傷害、公務執行妨害、放火、殺人、わいせつ、かんいんということです。 めいてい状態の犯罪は、従来男性が多いといわれてきました。しかし、最近では日本の女性もお酒を飲む人が多くなってきました。さらに、お酒を飲み始める年齢が低くなっています。このようなことが、今後のめいてい状態での犯罪の統計に影響を与えることでしょう。 ちなみに、米国の大学生の犯罪逮捕者の過半数が、めいてい状態であるといわれています。
夫婦関係を悪循環にさせる アルコール依存症の夫は「女房があんなふうだから、つい腹がたって酒を飲んでしまう」と、言い訳をすることが多いといわれています。 夫がアルコール依存症になる原因には、妻もかかわっているという説もあります。それはアルコール依存症の妻は、ヒステリーな性格が多く、夫に依存的でありながら厳格であり、支配的でもあり、侮べつ的な態度を取るというものです。 しかし、一般的には夫の酒乱が原因で妻が情緒不安定になって、夫婦関係が悪循環に陥ってしまうことが多いようです。 妻は夫のお酒による失敗を恐れるあまりに、夫がお酒を飲むことを責めたり叱ったりし続けます。すると、夫は逃避するためにさらにお酒を飲み続けます。そのことが、妻の不安やかっとうを増強させていくと考えられます。 評価することが断酒の重要課題 また、治療にも夫婦関係が大きくかかわっています。妻は夫の欠点を指摘するのではなく、夫の長所を認めていくようにするべきといわれています。 夫が断酒する気持ちになったことを褒めたり評価することが、断酒する決意を強くするようです。そして、お酒を飲んで起こした問題を自分自身が受け取めることにより、治療が進んでいくと考えられます。 しかしながら、アルコール依存症の人の離婚率は高く、特に最近では離婚せずに耐える妻は少なくなってきました。
毎日3合以上のお酒を続けるとアルコール性肝障害になる? アルコール性肝障害を診断するためには、その肝障害の原因がウイルスや薬、あるいは自己免疫性によるものでないことを確かめることが必要です。 また、お酒を飲み始めた年齢、期間、飲酒量、最後にお酒を飲んだ日など飲酒歴というものが重要です。ですから、本人だけでなく家族も飲酒歴についていろいろ尋ねられます。さらに、お酒を止めた場合の症状や、検査の結果も診断には必要とされます。 アルコール性肝障害の基準では、常習飲酒は毎日3合以上のお酒を5年以上飲み続けていることです。 γ-GTPは早期発見のキーワード そして、血液検査の肝機能検査の中のGOT、GPTやγ-GTPも基準にあります。 特にγ-GTPはアルコールを飲むと、GOT、GPTよりも先に血液中に出現するため、アルコール性肝障害の早期診断ができるため、よく使われています。そして、γ-GTPは禁酒により減少し、再びお酒を飲み始めると再上昇することから、禁酒、飲酒のよいマーカーとなっています。 このように、単に大酒家の肝障害だからアルコール性肝障害とするのではなく、基準を満たす場合にアルコール性肝障害と診断されます。
大量飲酒は肝硬変や肝がんにつながる 大量飲酒を続けていると、まず肝細胞の中に脂肪が沈着する脂肪肝が起こります。脂肪肝はアルコール性肝障害の注意信号といわれています。この段階ではお酒を控えるだけで、すぐに正常に戻すことかできます。 それでも飲み続けると、食欲不振、吐き気、黄だん、発熱などの症状がみられるアルコール性肝炎になってしまいます。また、アルコール性肝障害の人は肝炎のウイルスを持っていることが多いことが分かっています。特にウイルス性C型肝炎が絡んでくると、アルコール性肝炎だけの時よりも重症化してしまいます。 そして、免疫系の機能が低下しているので、肝硬変や肝がんが発症するのも早くなるといわれています。 肝硬変が静脈りゅう、そして死に至らせる 肝硬変になると血液の流れにも悪影響が出ます。肝臓には門脈という静脈の血液の重要な太い通路があります。ところが、肝臓が血液を通さなくなると、行き先がなくなった血液は、胃や食道の細い静脈を無理やり押し広げて通ろうとします。そのため、食道に静脈りゅうができるのです。 そして、この静脈りゅうが破裂したり、有害物質を解毒できなくなったため肝性昏睡を起こしたりすると、死に至ることがよくあります。さらに、肝硬変は肝がんに移行するともいわれています。
中枢神経に障害が起こると妄想に取りつかれる アルコールによって中枢神経に障害が起こると、さまざまな症状が出てきます。その代表的なものとして、アルコール・パラノイアと、アルコール性認知症の一種であるウェルニッケ・コルサコフ脳症があげられます。 幻覚など急性期に表われる症状に対して、慢性化して妄想状態を示すようになったものをアルコール・パラノイアといいます。この妄想の内容は、どういう訳かしっと妄想が多いので、酒客しっと妄想ともいわれています。 ビタミンB1は認知症を治す アルコールを長く飲み続けると脳細胞の委縮が起こります。そのため、色々な程度の認知症が起こってきます。なかでもコルサコフ脳症はよく見られます。 コルサコフ脳症はウェルニッケ脳症後に生じることが多いので、ウェルニッケ・コルサコフ脳症といわれることが多いようです。 ウェルニッケ脳症は急性の経過で発症する意識障害、まぶたのまひ、起立歩行障害などか見られます。一方、コルサコフ脳症では記憶力が極端に悪くなり、時間や空間への認識がなくなり、これに作り話も加わります。 つまり、まず数時間、数日、数週間前のでき事が思い出せないようになります。この脳症にはビタミンB1欠乏も原因として考えられています。ですから、アルコールを控えてビタミンB1の注射により回復するといわれています。
発がん物質としてのアルコール あまり知られていませんが、アルコールにも発がん性があります。1988年にWHOの国際がん研究委員会は、膨大な疫学研究をまとめました。そして、口こう内、いん頭こう頭、食道、肝臓は飲酒で発がんし「アルコールは人体に発がん性を有する」と結論を出しました。 ところで、お酒は濃度が高い方ほど発がんの危険性が高いようです。このことから、アルコールは粘膜に直接的に影響して、発がんに関係していることが考えられます。また、濃度が高いお酒は粘膜の炎症を起こしやすいので、傷ついた粘膜から発がん物質が入りやすいのではないかということも考えられています。 そのほかにも、お酒をよく飲む人は、肝機能障害を起こしていることが多く、食べ物などに含まれているいろいろな発がん物質を肝臓で無毒化できないこと。お酒によって免疫反応が弱まることなども、飲酒家の発がんに関係していると考えられています。 さらに、アルコールの中間代謝物質であるアセトアルデヒドは、動物実験において発がん性が確認されています。
アルコールを飲み続けた後は、麻酔が効きにくい 体内に入った麻酔は肝臓で代謝されます。その時には、ミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)という酵素がはたらきます。ところが、MEOSはアルコールの代謝も行います。そして、ほかの薬剤や毒物よりもアルコールをまず最初に代謝する仕組みになっています。 お酒を飲み続けるとお酒の代謝にMEOSはどんどん使われますから、MEOSの活性は強くなっていきます。MEOSが強くなると、アルコールだけでなく薬剤などに対する代謝能力も高まります。 そして、通常の量の麻酔を投与しても、すぐに分解されてしまうのです。ですから、アルコールを飲み続けた後では、麻酔が効きにくくなってしまいます。 アルコールは麻酔にならない ところで、アルコールを全身麻酔として使おうとして、外科の手術ができるように痛みがなくなるまでアルコールの血中濃度を上げると、急性アルコール中毒になってしまいます。そして、すぐに呼吸が抑制されて生命が危険にさらされてしまいます。ですから、アルコールを飲ませて全身麻酔をかけることは無理なのです。
患者自身が分析する行動療法 行動療法とは学習理論に基づいた治療法のことを言います。患者はアルコール依存症における飲酒行動という不適応行動を、学習して修得してしまったと考えます。 その不適応行動をさせているのは何かということを、患者自身が学習して分析、検討します。そして、その行動を学習して修正していくというものです。ですから、行動療法は必ずしも病気の原因を取り除くことや、処理を目的とする訳ではありません。 治療を成功させるにはその意欲が大切 治療はまず自分がアルコール依存症であり、断酒が必要であることを認識することから始まります。 そして、離脱期の精神症状がなくなるまで、担当医と一緒にアルコール依存症などについて勉強します。そして、精神症状がなくなったら行動療法が始まります。 行動療法を始めるに当たり、自分と配偶者などの家族で最終的な目的である断酒に達成するための具体的な治療方針を決めます。それに基づき毎日行動することになります。 また、治療初期には抗酒薬を使って、アルコールを飲むと苦しくなることも体験して学習していきます。さらに、行動チェックリストを作り、毎日自分の行動を自分自身でチェックします。 この行動療法が成功するためには、アルコール依存症の患者自身の治療意欲がおう盛であることが大切です。社会復帰に対する意気込みが、治療経過に良い影響を与えるようです。
依存症はケース・バイ・ケース 動物実験では大量のアルコールを与えると、すべてアルコール依存症になります。ところが、人間の場合、いくらアルコールを飲んでもアルコール依存症にならない人がいます。反対に少しの量のお酒でも、依存症になってしまう人もいます。 アルコール依存症の人は現実の社会に対応できず、お酒を飲むことによって幼児期に戻って、現実から逃避をしていると精神分析されています。ですから、アルコール依存症になりやすい人は、自我が未発達で甘えん坊、依存心が強く、情緒的にも不安定な依存的人格の人が多いという説もあります。 しかし、アルコール依存症の人がお酒におぼれる理由は、人によって違いますから、すべての人に当てはまる訳ではありません。 唯一の原因は人格障害 また、色々な心理テストによって、一定の性格の傾向を検討した研究も多く行われていますが、アルコール依存症になりやすい依存的性格として、特筆されるものはないようです。 一方、人格障害はアルコール依存症になる原因にかかわっているといわれています。特に反社会性人格障害はアルコール依存症と関係が深いようです。
生育期の家庭環境 アルコール依存症に影響のある環境には、家庭環境、社会的・文化的環境、職場環境の3つがあります。 家庭環境では、特に生育期の環境が大きく関係しているといわれています。具体的には、両親の人格や養育態度、家族構成が問題となります。アルコール依存症の人の約70%が、幼児期に愛情の欠けた両親によって育てられたという調査報告もあります。 イスラム教徒に依存症がいない理由 また、社会的・文化的環境では、飲酒習慣がかなり影響しているようです。例えば、イスラム教徒はお酒を飲みませんから、当然、アルコール依存症の人もいません。 ところが、フランスを中心とするラテン系民族では、お酒を飲むことが日常生活習慣となっています。ですから、アルコール消費量とともにアルコール依存症の人の数も多いようです。 お酒が身近な職場、厳しい肉体労働、緊張は危険 職場環境としては飲食店経営者と従業員、調理師など、直接お酒を扱う機会の多い職業がアルコール依存発症と関連してくると考えられています。 また、厳しい環境での作業や、大変な肉体疲労を伴う労働が要求されるような職業、さらに精神的緊張がいつも要求されることが多い職業も、アルコール依存症になる危険性があるといわれています。
WHOの判断と、日本の対応 WHOが1975年に「アルコール関連問題」という用語を使用して、お酒によるさまざまな問題に取り組み始めました。そして、お酒によって起こる問題をアルコール依存症などの精神的な病気や、肝障害などの体の病気に限らず、大きな社会問題として取り上げるべきであるという考え方を示しました。 厚生労働省は、こうしたWHOの考え方に対応して、問題飲酒者やアルコール依存症の人の相談に乗ったり、指導できるような医療体制を整備してきました。 専門病院として国立療養所久里浜病院を造り、そのほかにも入院施設を造るために補助金制度が設けられました。 補助金によるアルコール専門病床は、全国に約1500床程度整備されています。さらに、医療従事者がアルコール関連障害に対する知識を深めるための教育研修も行っています。 依存症を未然に防ぐための適正飲酒 一方、一般の人に対しても適正飲酒を普及させるために、広報活動を行っています。これは保健所と、1980年に設立された社団法人アルコール健康医学協会が、中心となって活動しています。 保健所では精神保健相談事業を通じて相談を行ったり、保健婦や精神保健福祉相談員などによる訪問相談指導も行っています。 アルコール健康医学協会では教材を作り、学校で未成年者の飲酒に取り組んだり、お酒を扱う業者に適正飲酒のための知識を紹介しています。
食事を取らないアルコール依存症の人 アルコールをたくさん飲むと、さまざまな栄養障害が起こります。小腸では胃から送られてきた栄養素を体内に吸収します。ところが、アルコールによって小腸の粘膜が荒れていたりすると、十分な栄養素が吸収されなくなります。 ところで、アルコール依存症の人ではしばしば栄養障害がみられます。これは、アルコールばかり飲んでいて食事を取らないためと考えられます。十分な栄養素を取っていないのに、アルコールは代謝しなければなりません。ですから、エネルギー不足やビタミン不足になってしまいます。 栄養障害と肝障害の関係 また、アルコールによって肝障害が起こっていることも、原因であるといえます。肝臓はたくさんの重要なはたらきをしています。胃腸から吸収された食べ物から、たんぱく質、脂肪、糖質など栄養素の合成を行っています。この外にも、肝臓は胆汁の生産も行っています。 ですから、肝臓を悪くすると当然栄養障害が起こります。そして、アルコールの慢性摂取がもたらす栄養障害は、さらに肝障害を悪化させる可能性があります。
嫌酒薬を服用すると 現在日本でアルコール依存症のリハビリテーション中に使える薬は限定されています。嫌酒薬といわれ、一般名でシアナミド、ジスルフィラムという薬があるだけです。 この嫌酒薬はお酒が嫌いになる薬ではなく、お酒を飲みたくなるという気持ちもなくなりません。ただ、嫌酒薬を使用している時にお酒を飲むと、中間代謝物質であるアセトアルデヒドが体内に長時間滞在することになります。そして、顔が赤くなったり、頭痛、めまい、吐き気、呼吸困難、発汗、意識不明などの悪酔いの状態になってしまうので、一時的にお酒を飲まなくなるというものです。 治療には限界がある ですから、薬をやめて効果が切れると、すぐにお酒が飲める体に戻ります。それに、アルコール依存症の人は初めはきちんと嫌酒薬を飲んでいても、しばらくすると色々な理由を付けて薬を飲まなくなってしまいます。 アルコール依存症はもともと心の病気ともいえますから、物理的にお酒を飲めなくする嫌酒薬だけで、治療することには限界があります。あくまで補助手段にしかならないのです。 この薬を使う時の注意点として、お酒を一緒に飲むと呼吸困難や意識不明、てんかん発作などを起こして、まれに死亡することがあります。 これは、お酒だけでなく香水やアフターシェーブローションなど、アルコールを使っている薬品や食品も使用してはいけません。ですから、患者に内証で家族が薬を飲ませることは、絶対あってはいけないことです。
妊娠中の飲酒が要因 妊娠中にお酒を飲むと、胎盤を通って直接胎児にまでアルコールが運ばれます。ですから、時には胎児性アルコール症候群(FAS)を引き起こすことがあります。 欧米では1万人に3~4人の割合でFASが起きるといわれていますが、日本では1万人に1人以下です。ただし、アルコールを大量に継続して飲んでいる人では、その割合はかなり高くなります。 症状は発育や知能の障害 FASの赤ちゃんに見られる障害としては、発育障害、知能障害、顔容異常などがあります。一般的には発育障害や知能障害は、学齢期に達しても回復しにくいといわれ、行動上も、情動不安定、落ち着きがなく、注意力散漫などが見られます。 どのくらいお酒を飲むとFASが起こるのか、どのくらいのお酒ならば飲んでいいのかということは、今のところ分かっていません。 しかし、妊娠中に安全なお酒の量はないと考えておくべきでしょう。さらに,妊娠中だけでなく母乳によって、赤ちゃんにアルコールの影響が出ないわけではありません。ですから妊娠から授乳期間中はお酒を控えるべきといえます。
薬よりアルコールと優先的に代謝 アルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)によって代謝される経路の外に、ミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)という酵素によっても代謝されます。このMEOSは、アルコールを代謝するための専門の酵素ではなく、薬やそのほかの毒物も代謝します。 ところが、体内にアルコールが存在すると、アルコールを第一の毒物として考えるようで、アルコールを優先的に代謝してしまいます。ですから、薬をアルコールと一緒に飲むと、薬の代謝は後回しになるので、薬が効き過ぎることになってしまいます。 飲酒中は代謝能力が高い また、お酒を飲み続けていると、酵素がずっと出ていることになりますから、代謝能力が非常に高くなっています。ですから、通常の量の薬を飲んでもすぐに分解されてしまって、薬が効きにくくなります。 一方、最近市販されるようになった胃かいようの治療薬であるH2ブロッカーという薬(ラニチジンやシメチジンなど)は、ADHを使うアルコール代謝を遅らせるといわれています。
ノルウェーでは一つの県に一つは医療施設がある アルコール問題はその国にとって重大になる可能性があるので、どの国でも真剣に取り組んでいます。アルコールへの対応が進んでいる国では、一般医療システムとは別にアルコール問題に対処する施設があります。 その代表的な国がノルウェーで、19の県がありますが、その一つ一つに少なくとも1施設あります。治療方法も患者によってそれぞれ変えています。オーストラリアやイギリスでも、アルコールで問題を抱える人に対してきめ細やかな対処をしています。 精神病院の一般病棟のケースも多い ところが、ケニアのように精神病院の一般病棟が、アルコール問題の治療の場となっている国も多いようです。また、メキシコなどのように罪悪感の問題として、カトリックの牧師が教会でお説教をするだけという所も見られるようです。 また、アメリカでは1980年代の半ばに依存症の入院治療が急速に伸びて、医療コストに重大な影響をもたらしました。そのため、入院や外来治療期間の短縮化が進む傾向にあります。なお、最近ではアルコール問題を早い段階で発見し、早期治療をしようという考え方が多くの国で取り入れられています。
見学者も参加できる 酒害者とその家族のソーシャルクラブ的な自助組織のことです。主な活動は定期的に開かれる例会活動と、新入会者に対する酒害相談活動です。 例会活動は専門の治療者がいない酒害者だけの等質集団であるため、本音で討論ができる、治療者への依存性が生じないなどの利点があります。AA(アルコホリクス・アノニマス)という会をモデルに発足しており、集会の形式はAAと似ています。 しかし、AAは酒害者だけの参加ですが、断酒会では見学者も参加できるオープン形式です。会の進行は大体、 (1)司会者による開会の宣言 (2)祈念黙とう「断酒の誓い」 (3)「心の誓い」(起立斉唱) (4)「家族の誓い」 (5)新入会員の紹介、会員の酒歴の告白、自由討論 (6)連鎖握手 の順で行われています。 会場は保健所の講堂や公会堂など公共機関などで、多い所では50~60人の参加者があります。 ボランティア活動の一つ また、酒害相談活動は、集会に参加することで酒をやめられた幸福を同じ酒害で悩む新人の相談に乗ることで分かち与えていこうというボランティア活動です。 なお、わが国の断酒会では、宗教を持ち込まないという取り決めがあります。
自覚症状のない脂肪肝 脂肪肝はアルコール性肝障害の第一段階です。脂肪肝は肝細胞の中に脂肪が沈着した状態です。ところが、この脂肪肝になっても自覚症状はほとんどありません。 脂肪肝の目安としては、血液検査の肝機能検査の中のGOTやγ-GTPの上昇が参考になりますが、超音波検査をすればよく分かります。 脂肪肝の原因 大量にアルコールを飲むと肝臓のはたらきに障害が生じ、脂肪の消費が間に合わなくなってしまいます。その結果、肝臓に脂肪がだぶついてそのまま居座ってしまうことが、アルコール性脂肪肝の原因と考えられます。 さらに、お酒を飲むときに一緒に食べる高たんぱく、高脂肪の食べ物も、脂肪肝への道を進めていると考えられます。一方、アルコールばかり飲んでいて食べ物を食べずに、栄養障害を起こし低たんぱく状態であることも、脂肪肝を引き起こす可能性があると考えられています。 一般には、アルコール性脂肪肝は、お酒をやめると回復するようです。ただし、食事などにも気を付ける必要があります。
重症化するC型肝炎 今までアルコール性肝障害と考えられていた人の中に、肝炎のウイルスを持っている人がたくさんいることが分かっています。ウイルス性肝炎にはA型、B型、C型がありますが、C型肝炎が最も頻度が高くみられます。 一般的にはC型肝炎にかかっている人は約2%程度といわれています。ところが、アルコールが原因で肝疾患を起こした人では約40%がC型肝炎にかかっています。 C型肝炎が絡んでくると、アルコール性肝炎だけのときよりも、肝障害はかなり重症化します。そして、早い時期に肝硬変や肝がんが発症してしまいます。これは免疫系の機能が低下しているためと考えられます。 肝障害を促進させるキャリアの飲酒 ところで、肝炎ウイルスを持っているが、まだ肝炎を発症していない人をキャリアといいます。キャリアがたくさんのアルコールを飲むと、肝障害を早めるという説もあるようです。 また、最近ではウイルス性肝炎の治療にインターフェロンという薬が使われていますがアルコールはインターフェロンの治療効果にも悪影響を与えると考えられています。
日本の大量飲酒者は約234万人 たくさんお酒を飲む人を大酒家といいますが、日本では統計的に大体毎日純アルコール量で、150ml以上飲んでいる人を「大量飲酒者」といっています。 この量は、それぞれのお酒に換算すると、日本酒約5合半、ビール大瓶約6本、ウイスキーではダブルで約6杯以上ということになります。WHOの計算方式によると、平成5年の統計から日本の大量飲酒者は約234万人と推定されます。 アルコール依存症による問題行動 アルコール依存症は段階的に進んでいきます。初めてお酒を飲む初飲期から、習慣性飲酒期となり、さらに大量飲酒期を経てアルコール依存症になります。ですから、厚生労働省はこの大量飲酒者をアルコール依存症に近い存在とみなしています。 大量飲酒者は、警察に保護されるなどの社会的問題行動、無断欠勤などの職場的問題行動、家族解体につながる家庭的問題行動を起こすことが多くなっているといわれています。 また、大量飲酒の段階からアルコール依存症になるまでの期間は意外に早く、なかなか止められないようです。大量飲酒者でも問題行動が最近増えてきたら、早めに専門の医師を受診した方が良いでしょう。
酒量のコントロールができる人 常習飲酒家とは、毎日お酒を飲むことが習慣化されているけれども、お酒の量のコントロールが自分で十分にできる人です。 初飲酒から始まる飲酒パターンは、宴会や会合など機会があれば飲酒するという機会飲酒、あるいは社交飲酒から、一部は常習飲酒に移っていきます。適量の常習飲酒は正常な飲酒状態といえますが、1回に飲む量が少なくても、1日に何回も飲むようになると問題飲酒となります。 常習飲酒家の問題点 常習飲酒が始まった時点から、アルコール精神依存が起こり始め、アルコール耐性も徐々に上昇していきます。つまり、毎晩お酒を飲み続けると、少なくともその時間になるとお酒が飲みたくなり、その量もだんだん増えてきてしまうということです。ですから、問題飲酒に進行しないように注意しなければなりません。 また、常習飲酒家の場合、毎日お酒を飲んでいますから、胃の粘膜障害がかなりみられます。すると、胃で行われるはずのアルコール代謝は、ほとんど行われなくなります。ですから、常習飲酒家はもともとアルコールを代謝する酵素の能力があるなしにかかわらず、飲んだ量に応じて肝臓への負担が大きくなってしまいます。
アルコールによる胃粘膜障害 お酒を飲んだ後に時々、気持ちが悪くなったり、吐いたり、胃が痛くなったします。ひどいときには吐血や下血がみられることもあります。そのため、古くから飲酒について研究されてきました。そして、アルコールによって急性の胃粘膜障害が起こることが明らかになっています。 しかし、アルコールによる胃粘膜障害は基本的には一過性です。ですから、原因であるアルコールがなくなれば速やかに回復します。 ただし、痛み止めや熱を下げるなどのために使われる非ステロイド性抗炎症剤という薬を飲んでいる時は、アルコールによって胃粘膜障害が、さらに悪くなる危険があるため注意が必要です。また、胃粘膜障害があると、胃で行われるはずのアルコール代謝がほとんど行われなくなり、肝臓に負担を掛けることになってしまいます。 アルコールは胃・十二指腸潰瘍ができるのにも影響するといわれていましたが、多くの研究が行われたところ関連性は少ないのではないかと考えられています。 吐き気による障害 お酒を飲み過ぎた後の吐き気によって、マロリー・ワイス症候群という病気が、まれに起こることがあります。吐き気などによって急に腹圧が上がった時に、胃の入り口に裂け目ができて血を吐く病気です。普通は自然に血は止まり1週間程度で回復しますが、出血が多いときは内視鏡を使って血を止めたり、手術をしたりします。
生活習慣病を引き起こす高脂血症 健康診断や人間ドックで、高脂血症といわれる人が増えています。高脂血症自体は特別な症状はありませんが、放っておくと動脈硬化など生活習慣病を引き起こす原因となります。高脂血症の中にもコレステロール値が高い人、中性脂肪(トリグリセライド)値が高い人、そして両方高い人もいます。 高脂血症の原因は色々あり、食事内容もその一つです。そして、アルコールも影響を与えると考えられています。アルコールをたくさん飲み過ぎると、肝臓で遊離脂肪酸といわれる物質の合成が増えたり、体の脂肪細胞から出てくる遊離脂肪酸が増えたりします。 その結果、トリグリセライドの合成も盛んになるといわれています。また、お酒と一緒に食べるつまみにより、脂質の取り過ぎや、カロリーオーバーも問題となります。 当然アルコールは控え目に 一方、適量のアルコールは善玉のHDLコレステロールを上昇するという報告もあります。しかし、適量といっても個人差がありますし、これは健康な人の場合ですから、高脂血症の人には当てはまらないでしょう。高脂血症の治療はまず食事療法からです。栄養のバランスや総カロリーを考えて、アルコールも控えましょう。
中年男性の急死者の約35%が大酒家 大酒家はさまざまな病気や事故で、早死にすることはよく知られています。そして、孤独な死に方をすることが多く、発見された時にはすでに死んでいることもよくあることです。 中年男性の急死者の約35%が大酒家であるという調査結果もあります。大酒家の突然死では、消化管出血、虚血性心疾患、肺炎、脳出血など、直接的な死因を解剖しても特定できないことがよくあります。そして、普通の人では死ぬことはないような脂肪肝程度の病気しか見つからないようなこともあります。 大酒家で突然死してしまった人の多くは、死亡する前日、あるいは直前まで大量のお酒を飲み続けていたようです。その上、ほとんどの人が食事も取らずに、繰り返し吐きながら飲み続けていたようです。 低体温などのショック状態から急死 こういう状態で飲み続けていますと、意識障害を伴ってしばしば低体温、低血糖、代謝性アシドーシス、肝機能障害、胃腸障害などを起こします。そして、ショック状態から急死してしまうのではないかと考えられています。
ほろ酔い初期から一気に泥酔期に 急性アルコール中毒とは、お酒を飲んだ時に起こる一時的な異常めいていや、泥酔による中毒死などのことをいいます。 普通にアルコールを飲むと徐々に血中アルコール濃度が上がるので、「ほろ酔い期」「めいてい期」「泥酔期」と酔いの症状も変わっていきます。 ところが、大量のアルコールを急激に飲むと、血中アルコール濃度が急激に高くなりますから、「ほろ酔い期」「めいてい期」を飛ばして、一気に「泥酔期」や「こん睡期」まで進んでしまいます。 飲酒後1、2時間で危険な状態 そして、時には呼吸困難など危険な状態にもなったりします。 血中アルコール濃度が0.4%以上になると、飲酒後1、2時間でその半数が死亡するといわれています。がぶ飲みや一気飲みは急性アルコール中毒になる危険性が大変高くなりますから、お酒は自分の適量を自分のペースで飲むことが大切です。 そばにいる人が急性アルコール中毒を起こした場合、まず救急車を呼ぶことが大切です。救急車が来るまでに吐いてしまったら、吐いた物がのどにつかえないように、顔を横に向け、口の中をタオルでふいておくようにします。
飲酒パターンが病的 アルコール依存症とはすでに心理的、身体的依存に陥っている病気です。つまり、何をしてでもお酒を飲みたいという強烈な欲求と、お酒を断つと激しい禁断症状が出るような状態なのです。 具体的にいうと、飲酒パターンが病的なことが特徴です。宴会など機会がある時だけ飲む「機会飲酒」や、晩酌や寝酒など習慣的に飲酒する「習慣性飲酒」の場合は、飲む量が適量であれば正常な飲酒といえます。 ところが、自分で自分の飲酒をコントロールできなくなり、飲みだしたら止まらなくなったら病的な飲酒です。たとえ、1回に飲む量が少なくても、1日に一人で日常行動の合間に何回も飲むようになると、アルコール依存症と見なされます。 連続飲酒は終末状態 さらに、飲む量が増えて一人で飲んで寝て、起きてまた飲む「連続飲酒」は、アルコール依存症の終末状態といえます。 また、アルコール依存症を判断するのに、どれくらい飲めるかのという「耐性」を調べる方法もあります。例えば、血中アルコール濃度が0.15%でも酔わないかどうかを見ますが、これは体重60kgの人が30~60分でビール大瓶3本飲んでも酔わないかどうかに相当します。 そのほか、アルコール依存症の診断にはいろいろな自己診断法があります。
時間の経過によって症状が変わる アルコール離脱症候群とは、長い間お酒を大量を飲んでいた人が、急に禁酒することによって起こるアルコール身体的依存の症状のことです。アルコールを飲まなくなってから、だいたい7日間以内に一過性の症状が出てきます。 まず、お酒を止めてから7~24時間くらいすると初期症状として、手や舌の大きな震えや、吐き気、発汗、発熱など自律神経症状が見られます。次に、不安、焦燥感、不眠などの症状が起こってきます。さらに、48~72時間くらい経過すると意識障害を中心に幻視、幻聴、錯覚なども見られるようになります。 原因は不明 どうしてアルコール離脱症状が起こるかについては、まだよく分かっていません。しかし、アルコールは脳内の神経伝達物質の量や、その代謝酵素のはたらきに多くの変化を与えることが分かっています。 ですから、血中アルコール濃度が急激に下がったために、神経伝達物質を通じて、視床下部や中脳などを中心に広い範囲にわたり影響を受けた結果、症状が現れるのではないかと考えられています。
肝臓障害が最も多い 若いころは大酒を飲んだ翌日も元気だった酒家も、体力に限界を感じ始める年齢になってくると、肝臓のはたらきが弱ってきて、翌日にお酒が残るようになってきます。それでも、そのまま量を減らさずにお酒を飲み続けると、内臓が痛んできて色々な生活習慣病を起こすことになります。 アルコール依存症の合併症として、約8割の人に何らかの臓器障害が認められるといわれていますが、その中でも肝臓障害が最も多く見られます。肝臓障害は、脂肪肝から始まり、アルコール性肝炎、肝硬変、そして、肝臓がんになることもあります。また、アルコールが通過していく消化器系にも障害がよく起こります。 高血圧や糖尿病も悪化 そのほかにも、アルコールはすい臓やいん頭や脳や心臓にも障害を与えます。 さらに、高血圧や糖尿病を悪化させたり、末しょう神経炎などを起こすことも知られています。臓器の異常は自分ではなかなか気が付きにくく、気が付いた時にはかなり悪化してしまっていることもよくあり、最終的に死に至ることもまれではありません。
大酒家は肝臓にかなりの負担 アルコールの消費量が増加するに伴い、肝障害を起こしている人も多くなっています。 しかし、少量のお酒が肝臓に悪い影響を与えるわけではありません。その日飲んだアルコールをその日のうちに処理できないような量(ビールなら5本、ウイスキーでボトル半分、日本酒では5合以上)を毎日飲み続けている大酒家は、いつも肝臓にかなりの負担をかけ続けていることになります。 このような飲酒を続けていると、まず肝臓の細胞の中に脂肪がたまる「脂肪肝」が起こります。そして、次に食欲不振、吐き気、黄だん、発熱などを伴う「アルコール性肝炎」になります。それでもさらに飲み続けると、肝臓が縮んでカチカチに硬くなり使いものにならなくなる「肝硬変」になってしまいます。 肝臓障害は自覚症状がない 脂肪肝になった人が大量飲酒を続けると、その約2/3は肝硬変になってしまうというデータもあります。また、肝臓がんになってしまう人もいるようです。 肝臓はほかの内臓疾患よりも自覚症状がなく、知らないうちにどんどん病気が進行してしまいますので、定期的な健康診断が特に必要です。
日本人の慢性すい炎の半分以上はアルコール性 お酒は食べながら飲みましょうといわれますが、いつも脂っぽい高カロリーの物を食べていると、慢性すい炎になりやすくなります。すい臓は脂肪やたんぱく質を消化させるためのすい液を出しています。脂っぽい食べ物をたくさん食べると、すい臓に負担がかかってしまいます。 わが国の慢性すい炎の半分以上がアルコール性であるといわれています。そして、男性に多いようです。アルコール性すい炎は普通のすい炎よりも、すい石という石を持っているものが多いといわれています。 急性すい炎を起こすとショック死する人も 慢性すい炎ですい臓に石があると、化のうして急性すい炎を起こすことがあります。すると、たんぱく質を消化するすい液がおなかの中に漏れることになり、激痛に襲われます。なかには激痛により、ショック死する人さえいるのです。 さらに、小腸内にはすい液が出ないので、脂肪が消化されずギラギラした脂肪便が出ることになります。その上、アルコール性慢性すい炎の特徴として、糖尿病合併することが多いと言われています。 また、アルコール性すい炎の病態や治療後の経過は、アルコール性でないものより悪いようです。 アルコール性すい炎では一般的な治療に加え、いかに禁酒させるかが重要なポイントになります。
お酒ばかり飲む人はビタミン不足 体の中のアルコールを分解して排せつするためには、たくさんのビタミンが必要です。なかでもビタミンB1、B2、B6、ニコチン酸、パントテン酸、ビタミンB12などビタミンB群がとても大切です。 ところが、食べ物を取らずお酒ばかり飲んでいるような人は、栄養障害を起こしやすく、ビタミンも不足がちになります。そして、ビタミン欠乏による末しょう神経炎が起こることもあります。 末しょう神経炎の症状は、両足のビリビリ、ジンジンなどといった異常感覚や、痛み、しびれなどから始まります。この痛みはかなりひどく、眠れないほどです。病気が進行すると歩行障害が出てきたり、手のしびれも出てきます。そして、車いすが必要となる人もあります。 痛みは後まで残る 治療としては、やはりお酒を止めることが大切です。そして、適正な食事を取り、ビタミンB群の薬を飲むことを勧めます。軽症や中等症では治療によって徐々に回復していきますが、異常感覚や痛みは後まで残ることが多いようです。
栄養状態が良くても大酒家は心不全を起こす アルコール依存症の人が、飲酒中や飲酒後に急死することがよくあります。これは、アルコール依存症の禁断症状が見られる時期には、血栓ができやすくなるため、心筋梗塞を起こしたのではないかと考えられています。 また、お酒をたくさん飲み過ぎて、ビタミンB1不足により、脚気衝心といわれる心不全が起こったとも考えられます。ところが、栄養状態が良くても、大酒家は心不全を起こすことがあります。拡張型心筋症に似た状態を示す「アルコール性心筋症」があることも分かってきました。 この原因は、アルコールやアルコールの代謝物が直接心臓に作用すると考えられています。30~50歳代に多く、一般的にアルコールを10年以上飲んでいる人に見られます。初期症状としては、動きや息切れなどですが、進行すると呼吸困難を起こし急死してしまうことがあります。 適量は冠動脈疾患の危険性を減らす説もある ところが、適量のアルコールは心臓の栄養血管である冠動脈疾患の危険性を減らすという説もあります。これは、善玉のHDLコレステロールがアルコールによって増えるからと考えられています。 しかし、もともとお酒に弱い日本人に当てはまるかどうか分からない点もあります。一方、お酒をたくさん飲むと明らかに病気がなくても、不整脈が生じることもあります。このようにアルコールはかなり心臓に対して作用することが分かってきています。 ■関連記事 働き盛りのあなたを襲う「突然死」はある日突然訪れる!?突然死を予防するには 重症心不全への再生治療の実際
約3割が糖尿病を併発 アルコールによる慢性すい炎では、約3割も糖尿病を併発すると言われています。すい臓は血糖値を下げるホルモンであるインシュリンを作っているので、すい臓のはたらきが悪くなると糖尿病になるのです。 また、慢性すい炎を起こしていなくても、アルコールによって肝障害を起こしていたり肥満であったりすると、糖代謝に異常が起こり糖尿病を起こしやすくなります。糖尿病は全身の血管を詰まりやすくするので、心筋梗塞や脳梗塞を起こしたりします。 そして、眼底の血管を詰まらせると網膜変性症になります。さらに、腎臓の血管が詰まると人工透析を受けなければならなくなるなど、とても怖い病気です。 糖尿病の人で、カロリー制限をして食事療法をしている場合には、お酒を飲むと、食事療法にも影響が出ますので基本的には控えた方がいいでしょう。 医師の指導でお酒の許可も ただし、食事療法だけを行っている人は、医師の指導のもとに適量のお酒は許可されることがあります。その量はビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブルで1杯のいずれか一つだけとされています。 ところが、インシュリンによる治療をしている人は、危険な低血糖発作とめいていとの区別がつかず、手当てが遅れてしまうことがあるので厳禁です。
少量でも高血圧の割合が高い 酒を飲むと血圧が上がることは、以前から知られていました。さらに、アルコールは高血圧だけでなく循環器疾患やその危険因子に対しても、いろいろな影響を与えることが分かってきました。 福岡県久山町で40歳以上の一般住民を対象にした調査を行いました。すると、日本酒1合未満の少量飲酒者でも全くお酒を飲まない人に比べると、高血圧の割合が高いことが分かりました。その上、正常血圧の人でも10年間のうち、少しでもお酒を飲み続けている人は飲んでいない人よりも、高血圧になりやすいことも分かりました。 ですから、日本人の場合、1日1合未満の少量のお酒でも、血圧が上昇する可能性が高いようです。どうして、アルコールが血圧を上げるかについては、いろいろ研究されていますが、まだよく分かっていません。 適量のお酒は動脈硬化の予 一方、適量のお酒は動脈防硬化の予防にはたらくと考えられています。アメリカでは高血圧治療をしていても、日本酒1合に相当するくらいのアルコールならば飲んでもいいといわれています。しかし、アルコールに関しては人種差も大きく、日本人の高血圧の人に対するアルコールの制限は、厳しく行う必要があるようです。
スクリーニングテスト アルコール依存症はお酒の飲み方を間違えると、誰でもなる可能性があります。そして、アルコール依存症は適切な治療を受ければ必ず治ります。ですから、何らかの健康障害をすでに起こしているか、近い将来に起こす可能性がある人を問題飲酒として、早期に発見することが大切になります。 そのためにアルコール依存症を見つけるためのスクリーニングテストがよく利用されます。なかでも問題飲酒を見つけるのには、CAGEとAUDITというテストがよく使われています。CAGEは欧米で考えられたテストですが、日本語に訳されたもののあります。簡単な4つの質問からなり、回答は「はい」「いいえ」の二者択一です。AUDITはWHOの6カ国の共同研究の結果でき上がったテストです。10項目の質問からなり、現在の問題飲酒だけでなく、将来アルコール問題を引き起こす危険因子についても分かるようになっています。 日本における問題 ところが、まだまだ日本ではアルコール関連問題の早期発見、早期治療は十分には行われていません。今後、地域の健康診断や人間ドック、病院各科の外来でスクリーニングテストの効果的な活用が期待されます。
ビタミンB1欠乏で起こるウェルニッケ脳症 ビタミンB1欠乏症には、東洋に多い脚気と、西洋に多いウェルニッケ脳症があります。 このうちウェルニッケ脳症は中枢神経疾患で、眼球運動麻痺、歩行運動失調、意識障害を伴いますが、慢性化するとコルサコフ症という精神疾患に移行します。 そこで、ウェルニッケ脳症とコルサコフ症を一括して「ウェルニッケ‐コルサコフ症候群」と呼んでいます。ウェルニッケ‐コルサコフ症候群は、アルコールの摂取量の多い人に多発し、アルコール依存症との関連が注目されています。アルコールばかり飲んで他の栄養素を取らないため、ビタミンB1欠乏症として、これらの症状が現れてくるのです。 ナイアシン欠乏で起こるペラグラ ナイアシン欠乏症として知られているペラグラは、食欲不振や全身けん怠感などを招きます。皮膚症状としては、顔や腕などに紅はんが生じ、かゆみや熱感を伴った水泡やびらんが見られます。下痢、知覚異常、まひ、痴ほうもきたします。 ペラグラ患者はたんぱく質、カロリー、ビタミンB群なども併せて欠乏していますが、これはアルコール依存症に伴うケースがほとんどです。
適度な飲酒は善玉コレステロールの値を高く保つはたらきがあります。しかし摂取が過ぎると、アルコールは、肝臓に中性脂肪を過剰に蓄積し、脂肪肝の原因となります。さらにお酒と相性の良い脂っこいものは脂肪の摂取を上乗せしていることになるので注意が必要です。 目次 摂取したアルコールは、肝臓で中性脂肪に 脂っこいおつまみも脂肪肝の原因 摂取したアルコールは、肝臓で中性脂肪に 適度な飲酒(ビールなら1日につき中瓶2本以内)であれば、アルコールは善玉であるHDLコレステロールの値を高く保つはたらきがあります。 しかし摂取が過ぎると、アルコールは、肝臓に中性脂肪を過剰に蓄積し、脂肪肝の原因となります。 アルコールを飲むと肝臓で中性脂肪が合成されます。中性脂肪合成のピークはアルコールを飲んで12時間後です。 合成された中性脂肪は肝臓から体の各部の末梢組織へ運ばれますが、肝臓から運び去られるまでには、さらにその後12時間掛かります。 毎日毎日、アルコールを摂取していると次々に新たな中性脂肪が合成されることになり、肝臓の中性脂肪処理能力を超えてしまうため、脂肪肝をもたらすのです。 脂っこいおつまみも脂肪肝の原因 また、飲酒する時は、アルコールと一緒に脂っこいおつまみなどを取りがちです。 アルコールが高カロリーの上、おつまみで余分なコレステロールや脂肪を摂取していることになり、これも脂肪肝の原因となります。 脂肪肝があると体がだるくなり、ときには肝硬変を招くこともあります。