病院と一言にいっても様々な種類・機能・役割があります。それぞれを理解しておくことが大切です。良い病院を判断するのは難しいものです。評価基準は多様にあるので、一概には言えませんが、「情報公開」「インフォームド・コンセント」「医療制度」などをポイントに病院選びを上手に行うようにしましょう。
新型コロナウイルス感染症の影響により「医療機関への定期通院がとだえがち」といった話があります。そこで、電話での診療やビデオ通話などによる診療(オンライン診療)が注目されています。従来は再診の患者さんだけでしたが、2020年4月13日以降は、初めての診療でも時限的・特例的に健康保険で電話診療やオンライン診療を受けられます。スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生に解説していただきました。 目次 受診を控えて服薬中断があると病気の悪化が懸念 医療機関や薬局に出向かなくても受診や薬の処方が可能 かかりつけ医や厚生労働省の医療機関リストで受診先を確認して手続きしよう 処方日数の制限や処方できない薬があることも知っておこう 受診を控えて服薬中断があると病気の悪化が懸念 「いまは通院をひかえぎみ」、「待合室や街中での二次感染が心配」といった話が聞かれます。しかし、受診を控えて薬を飲むことを中断してしまうと、病気がますます悪化する可能性があることを忘れてはいけません。 新型コロナウイルス感染症は持病(基礎疾患)を持つ患者さんは感染・重症化リスクが高いといわれています(関連記事:新型コロナで運動不足と肥満・メタボに注意しよう!)。 そこで、患者さんが安心して受診できる環境を整えるために、電話やビデオ通話(スマートフォン、カメラ付きのタブレットやパソコンなど)を介したオンラインで医師の診察を受ける方法が注目されています。 医療機関や薬局に出向かなくても受診や薬の処方が可能 従来、初めての診療(初回診療、初診といいます)は対面の受診が原則で、オンライン診療は通院歴3ヵ月以上など一定要件がありましたが*1、2020年4月13日から変わりました。 医師の判断のもと、初診や再診を問わず、時限的・特例的な対応として、さまざまな病気に対して電話やオンラインにより健康保険で診療を受けられるようになりました。 つまり、わざわざ医療機関まで出向かずに受診が可能になりました。薬に関しても、薬局に出向かずに自宅に送ってもらえます(自宅に配送できない薬もあるので、後ほど説明します)。 かかりつけ医や厚生労働省の医療機関リストで受診先を確認して手続きしよう 電話やオンラインで健康保険の診療を受けたいときは、まずはかかりつけ医などに相談しましょう。かかりつけ医で対応できない場合や初めて受診する場合には、以下の厚生労働省ホームページの医療機関リストから最寄りのクリニックや病院などに連絡します。 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html 最近、オンラインに関わる手続きで詐欺が横行しているようです。引っかからないためにも、まずは「かかりつけ医」、次に「厚生労働省のホームページ」などの順に医療機関を選ぶこと、スマホやパソコンでオンライン診療アプリを使うときは医療機関のホームページを確認することを心がけましょう。患者さんは、厚生労働省のサイトを確認するほか、受診先の医師に対して資格証のHPKIカード(厚生労働省で認められている電子証明書)を確認することもできます。 医療機関にとっては、受診歴がない患者さんの診療は、患者さんの症状を把握しにくいケースや、患者さんをしっかり診察するために対面診療が必要なケースがあり、オンライン診療の可否は医師の判断が必須となります。 また、受診歴がない人の初回診療では、電話だけでは本人確認ができず、薬を受けとるために他人のふりをする「なりすまし診療」や診療代未払いを被る可能性があります。 そのため、初回診療(初診)は、医師の判断が必須で電話やオンラインによる時限的・特例的に可能という制限的なニュアンスが用いられているのです。 医療機関からは、保険証やマイナンバーカード、免許証などの提示が求められることがあります。 処方日数の制限や処方できない薬があることも知っておこう 診療予約で医療機関に電話するときは保険証の情報などを医療機関に伝えます。ほかに、医療機関のホームページからオンライン診療アプリを介して手続きをするケースもあります。 診察料以外に、保険外のオンライン診療アプリの情報通信システムの利用料やサービス料、薬の配送料などがかかります。予約時に支払い内容も確認しましょう。 受診して支払い手続きが終わると薬が処方されますが、薬についてはどうなるのでしょうか。 院内処方の場合、医療機関から宅配便などにより配送されます。院外処方は、患者さんが薬局に取りに行く、あるいは薬局から配送してもらう方法があります。 薬の配送に関しては患者さんが指定した薬局に医療機関が代理で処方せん情報をFAXなどで送信してくれます。 薬を配送してもらったときに、電話などを介した薬剤師の服薬指導も受けられます。 ただし薬の処方日数に制限があることや処方できない薬があることなど、知っておきましょう。 患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とするとともに、麻薬及び向精神薬に加え、特に安全管理が必要な医薬品(いわゆる「ハイリスク薬」)として、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤等)の処方をしてはならない*。 出典:「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」 (令和2年4月10日事務連絡)(PDF) *:薬剤管理指導料の「1」の薬剤は、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、 血液凝固阻止剤(内服薬に限る。)、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、カリウム製剤(注射薬に限る。)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤又は抗HIV薬。 出典:診療報酬情報提供サービス (厚生労働省保険局運営、特定薬剤管理指導加算及び薬剤管理指導料「1」の算定対象となる薬剤の一覧に関する情報が掲載されています) 薬に関しては、電子お薬手帳を活用するのもおすすめです。 最近では電子お薬手帳の普及もあり、スマホやパソコン、タブレットで薬の情報が得られるので、複数の医療機関に通院している場合は薬の飲みあわせに関する情報や、家族で薬関連の情報を共有するのに役立ちます。 電子お薬手帳のアプリによっては、薬を取りに行くときは、スマートフォンで処方箋を撮影して画像を送るなど、薬局で待つ時間を少なくして薬を受け取ることも可能です。 通院を中断すると病気が悪化する可能性があるため、通院が困難な人はオンライン診療を活用することも考えましょう。受診を考えている人は、まずはかかりつけ医などに相談、あるいは厚生労働省の医療機関リストを参考に受診先を選びましょう。 *1:オンライン診療はこれまでは、専門の医療機関が少ないへき地・島しょ医療や、難病で専門診療が必要な患者さんへの遠隔サポート、糖尿病など生活習慣病の働き盛り世代の継続受診(再診)に有用とされていました。 2020年の新型コロナウイルス感染症の影響などにより、安心して受診できる環境を整えるために、さまざまな病気の初回診療に関しても、期間限定で電話やビデオ通話によるオンライン診療を受けられるようになりました。 公開日:2020/08/05 監修:スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
2008年9月、脳内出血を起こした出産間近の妊婦を、都内の7医療機関が受け入れ拒否。その後、妊婦が死亡した事件で、日本の医療危機があらためて浮き彫りにされました。いま、医師不足は重大な問題に発展しています。 目次 医師は本当に不足している? 原因その1・医療制度の問題 原因その2・医師の労働環境 原因その3・患者側の問題 医師は本当に不足している? 2008年9月、脳内出血を起こした出産間近の妊婦を、都内の7医療機関が受け入れ拒否。その後、妊婦が死亡した事件で、日本の医療危機があらためて浮き彫りにされました。患者の命と健康を守る医師が病院にいません…。いま、医師不足は重大な問題に発展しています。 はたして、医師は本当に不足しているのでしょうか。厚生労働省の調査によると、2006年の医師数は27万7927人。人口1000人あたりに換算すると、2.2人です。OECD加盟国平均の2.9人(2003年調査)をかなり下回っており、絶対数は少ないといえます。 じつをいうと、医師数自体は増加傾向にあります。「厚生労働省 第1表医師数の年次推移,業務の種別」によると、2006年の医療施設に従事する医師数は10年前と比べると14.4%増加しています。それにもかかわらず、医師不足は深刻化する一方です。冒頭の事件のように、地方だけでなく都会でも問題になっているのが現実です。いったい、なぜ医師不足が叫ばれるようになったのでしょうか。 原因その1・医療制度の問題 直接の引き金になったのは、2004年にスタートした「新医師臨床研修制度」です。それまでの「卒後臨床研修制度」では、臨床研修は「やるほうが望ましい」という努力規定にすぎなかったのですが、義務規定になったことで、すべての新卒者が2年以上の臨床研修を受けなければならないこととなりました。 制度改訂のひとつの背景に、医師の専門化が進みすぎたことがあります。かつての研修では、出身大学やその関連病院での単一診療科によるストレート方式による研修が多く、地域医療との接点が少なく、幅広い分野での臨床経験を積むことができませんでした。このため、新制度では、内科・外科・救急部門などさまざまな診療科を研修し、幅広い診療能力が身に付けられる総合診療方式(スーパーローテイト)が導入されたのです。 しかし、この新制度には落とし穴がありました。研修医自身が研修先を全国から自由に選べるようになったことです。その結果、研修医は、これまでの研修先であった大学病院やその関連病院に比べ、高給で迎え入れてくれる待遇のいい一般病院に集中し、研修医の大学病院離れが深刻化することになりました。さらに、大学病院での研修医が減ったことで、大学病院はこれまで地域の自治体病院などに派遣していた医師を引き揚げざるを得ない状況に陥っています。 さらに、医療法で定められた医師の配置基準の改定や診療報酬(医療保険から病院に支払われるおカネ)の改定、病院の在院日数の短縮施策などさまざまな制度の改定により、地方の病院や、ハードで医師が集まりにくい小児科、産科、麻酔科、救急外来などが、次々と縮小や閉鎖に追い込まれることとなったのです。 原因その2・医師の労働環境 もうひとつの要因は、医師の労働環境です。 月に何度も当直(仮眠をとり、急患があれば診療すること)をこなさなければならない勤務医の仕事はかなり過酷です。休みの日も呼び出しを受けたらただちに病院に駆けつけなければならないことも多く、診察の合間には事務処理もこなすなど、息つく間もない日々です。そのうえ、医療過誤に対する社会の目が厳しくなり、裁判事件が後を絶ちません。疲労困憊したあげく、病院を辞めて開業するケースが増加しています。 また、女性医師の増加もひとつの原因となっています。医師国家試験合格者に占める女性の割合は今や3割です。しかし、家事や子育てと医師の仕事との両立はあまりにハードで、このため30代を過ぎると、常勤医を辞める人が多いといいます。 原因その3・患者側の問題 患者の変化もまた、医師たちを追い詰めています。働く女性の増加で、夜間や休日に小児救急を訪れる親が急増しました。まるで24時間営業のコンビニエンスストアででもあるかのようです。おかげで、当直医は仮眠をとる暇もなく、文字通り不眠不休の診察に追われています。 また、専門医志向が高まり、大病院に軽症患者が詰めかけるようになりました。しかも、医師に暴言を吐いたり、無理な要求をつきつけたりする「モンスターペイシェント」も増えています。必死で働いても、感謝すらされません…。どんなに志の高い医師でも、これでは逃げ出したくなるのも当然かもしれません。 それでは、患者である私たちはどうすればいいのでしょうか。医師の負担を減らすためには、まず、むやみに大病院を受診しないことでしょう。総合的に診察してくれる地域の「かかりつけ医」を見つけ、日頃のちょっとした不調を診てもらいます。いよいよ専門的な治療が必要になれば、紹介状を書いてもらい、より大きな病院に行けばよいのです。 また、ふだんから健康管理に気を使い、病気を防ぐ努力も必要です。生活習慣や栄養バランスを見直すだけでなく、さまざまな病気の知識も身に付けておきましょう。 いつでも、だれでも、保険で安く診察が受けられる日本の医療。しかし、このまま医師不足が進めば、それも過去のものになってしまうかもしれません。医師不足にストップをかけるために、私たち患者もできることから始めていきましょう。 公開日:2008/12/15
医療費削減策の一環として、厚生労働省は2011年度末(2012年3月)までに長期入院患者の受け入れを行ってきた療養型施設の削減を行うことを決めた。これによって、何がどう変わるのか…。わずか5年後という、すぐ目の前にある医療の現実だ。 2011年。突然、退院させられる日が来た… それまで身の周りのことはすべてこなしていた父親だったが、この骨折を機に体調が次第に悪化。入院が長引いていた。それからしばらくたったある日、休暇を使ってお見舞いに行ったAさんに告げられたのは、ある選択を迫るもの。それは、「この病院は有料老人ホームへと転換しますので、入居するなら手続きを。そうでなければ別の施設を探してください」というものだった――。 施設探しに奔走する日々――。そして出した答えは… マイホームのローンも残り、大学受験を控えた息子を持つAさんには頼れる兄弟もおらず、父親を有料老人ホームに入居させることは経済的に厳しかった。そこで別の病院を探そうと病院内の医療連携室に相談したところ、ほかの病院でも長期入院の患者の受け入れは、医療ニーズの高い人に限られ、Aさんの父親は困難だという回答だった。次に特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設を探してみたが、施設によっては200人もの空き待ちの人がいるという。住み慣れた土地を離れたくないという父親の強い願いと迫る退院日。やりがいのある仕事、受験を控えた子どものこと…Aさんは悩みに悩んだが、結局会社を退社。家族を残し、1人実家へと戻ることにした。 Aさんは訪問診療をしている診療所や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などを回り、父親の在宅での受け入れ体制を整えた。しかし、Aさんは慣れない介護や家事に日々追われるうちに、体調を崩し、精神的にも疲れきってしまい…。 入院ベッドがなくなる日が目の前に… この話は決して他人事ではない。というのも、入院が長期化することの多い高齢者の受け皿になっている療養型施設が、医療費の高騰要因であるとして、現在38万床ある療養型病床のうち、2011年度末までに医療型療養病床23万床を15万床に、介護型療養病床15万床を全廃させることが決まったのだ。削減対象となる23万床は急性期病床や回復期リハビリテーション病床へと転換し、従来の医療施設として残るか、老人保健施設や有料老人ホームなどの介護施設への転換が求められる。 長期療養が必要な高齢者のなかでも医療ニーズの高い患者は医療型療養施設に入院することができるが、多くの患者は介護施設へ移るか、在宅での療養かの選択が迫られることになる。しかし、独居の高齢者の増加など、自宅療養・介護が困難な社会的状況下にある人も少なくないのが現状であり、地域の受け皿も整備されているとは言いがたい。すでに財政面や人手の確保が困難だという声があがっているほどだ。 今回の療養型病床削減による長期入院患者の減少は医療費の削減につながることは間違いないだろう。しかし、すべての人が適切なケアを受けることができる体制は受け皿の確保を持ってはじめて可能となるのであり、この削減案には、今後の課題が山積みなのだ。 公開日:2007年3月26日
「白衣の天使」とも呼ばれ、人命にも関わる重要な仕事「看護師」。もし、あなたが入院したり、診察に訪れた病院の担当看護師さんが外国人だとしたら…?少し想像しにくい話かもしれないが、これが現実となる日が来た。 なぜ、外国人看護師の受け入れが決まったのか 厚生労働省によれば、全国で今年度必要とされる看護職員の数131万4100名に対し、約4万1600名が不足しているといわれている。どの病院も看護師確保には苦慮しているのだ。その一方で外貨獲得を目指すフィリピンでは、アメリカやイギリスなど看護師不足に悩む国に対し、積極的に看護師を派遣しており、2004年からは日本にもその受け入れを求め、交渉が続けられていた。 時を同じくして、日本国内でも構造改革特区内の病院が、規制緩和による外国人看護師の受け入れを申請するなどの動きがあり、看護師不足対策のひとつとして、外国人看護師の受け入れの是非が問われていた。そしてついに2006年9月、対フィリピンとの経済連携協定(EPA)により、フィリピン人の看護師志願者受け入れが承諾された。 外国人看護師の受け入れ条件とは? 看護師志願者の受け入れを認めたといっても、もちろんだれもが可能なわけではない。まずフィリピンの看護師資格を持ち、3年間の実務経験を持つ人であることが条件だ。 来日後は、日本語研修を経て、日本国内の病院で就労、研修を行いながら、日本の看護師資格を取得しなければならない。資格取得までの間は年1回の更新で、3年間の在留期間が認められる。この3年の間に試験に合格し、看護師資格の取得ができれば、日本人看護師と同等以上の報酬が保障され、正式に病院での就業が可能となる。その後の在留期間は上限3年となるが、更新回数に関する制限はない。ただし、その間に看護師資格が取得できなければ、帰国となる。 2007年から実施?外国人看護師、今後はどうなる 看護師志望者の受け入れは、日本、フィリピン両国の手続きが順調に進めば、2007年はじめにも開始される。志願者第一陣の来日開始後、2年間で400名を受け入れる方針だ。しかし、看護研修、日本語の習得をはじめ、多くの技術、知識取得が必要であることに加え、日本人医師や看護師、患者とのコミュニケーションに対する不安の声があるのも事実だ。そのため支援体制整備や、就労・研修先での周囲のスタッフの協力が重要なカギとなる。 アメリカ、イギリスなどの先進国では、すでに約40%が外国人看護師だといわれている。しかし日本では、外国人看護師がどの程度定着するかはまだ未知数であり、今回の決定が看護師不足の切り札になるとは考えにくい。そのためにも国内での潜在看護師の確保や、看護師の就業環境の改善など、看護師不足の根本的な解決方法を同時に進めていく必要があるだろう。 公開日:2006年11月6日
目次 女性外来ってどんなところ? 女性と男性の体の違い 女性外来の診療プロセスとは? 女性外来 Q&A 女性外来ってどんなところ? 男と女では、体の構造は当然異なる。その違いに注目し、女性のココロと体をトータルに診る女性外来が、全国各地で増えてきている。 男性と女性ではかかりやすい病気が異なるうえ、同じ病気でも症状や薬の作用が大きく異なることがある。このことがアメリカでは10数年前から注目され、性差に基づく医療が始まっている。日本では、90年代終わり頃から女性医師たちが活動を始め、2001年5月に鹿児島大病院にできたのを皮切りに、各地の病院が女性外来の窓口を設け始めた。 専門窓口ができてみると、患者が殺到し、数ヵ月先まで予約がいっぱいになったという病院もある。「じっくり話を聞いてもらえなかった」「話をしても男性医師には症状のつらさを理解してもらえなかった」「男性医師には相談しにくかった」と訴える女性患者が大勢いるそうだ。また、女性は、仕事の他にも親の介護や思春期の子どもを抱えていたり、男性と比べて病気の背景に人生そのものが複雑に関わっていることが多い。女性外来はおのずと、女性の「ココロ」と「体」を総合的に診ることになるようだ。 女性と男性の体の違い 男性と女性でかかりやすい病気が異なるのは、女性が「産む性」であり、女性の体がエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンの影響を受けているため。 では、具体的には女性は男性とどう違うのだろうか。例えば、コレステロール値。40代未満は男性のほうが高いが、40代になると男性の値が下降を始める一方で女性の値が上昇し、男性より高くなる。そして、50~70代まで女性のほうが高い値を持続する。女性ホルモンはコレステロールから作られるため。更年期に入ってコレステロールが女性ホルモンに転換される量が減る。女性ホルモンによるコレステロール低下作用が弱まるためである。 また女性は、周期的に女性ホルモンの影響を受けることで心が不安定になりやすい。女性ホルモンの分泌が衰える更年期には、さまざまな心身のトラブルが起こりやすくなるなど、一生を通して大きく体が変わっていく。そのことが、生殖器官だけに留まらず女性と男性の違いを生み出している。 ピンクリボンフェスティバルとは? 乳がんの早期発見を啓発するための活動で、9月下旬から10月にかけて、東京と神戸で開催される。乳がんは、日本では女性の30人に1人がかかると言われる。早期発見をすれば十分治癒も望めるがんであるにもかかわらず、年々死亡者数が増えていることから始まったもの。積極的に健康診断を受けたい病気だ。 女性外来の診療プロセスとは? 女性外来は現在、北海道から鹿児島までほとんどの都道府県に各1ヵ所以上ある。「女性のための」と銘打った専門病院もあれば、総合病院に週数回外来を設けるところ、婦人科を標榜するクリニックなど、さまざまである。 女性外来の診療プロセス STEP1カウンセリングで、症状だけでなく悩みや不安もじっくり聞いてくれる STEP2症状や悩みに応じて、どの科を受診すればよいかアドバイスをもらえる STEP3専門医による診察を受け、治療を始める ※家から遠い場合は、近くで適切な病院を紹介してくれることもある 女性外来 Q&A Q. 女性外来はどんな症状のときに受診したらいいの? A. 女性外来には治療だけでなく、健康相談を受付けているところもある。生理不順、更年期障害、イライラ、だるい、腰痛、肩こりなど、どんな症状でも診てもらえるだろう。 Q. 女性外来にはどんな治療法があるの? A. 女性外来では、治療の方針も一緒に考えてくれる。ときには、漢方薬や運動療法を取り入れることも。治療に関する希望や不安があれば、じっくり相談してみよう。 Q. 女性外来の治療費はいくらぐらい? A. 基本的に保険が使えるが、医療行為を行わないカウンセリングなど一部で保険が使えず自費診療となることも。カウンセリングの費用は、1時間6,000円~8,000円など医療機関によってさまざまなので、事前に電話で確認しておくと安心。 精神的なストレスが背景にある場合、最初のカウンセリングで症状や悩みを聞いてもらえるだけで安心して症状が軽くなるケースもある。不調はあるけれど、どの病院にいけばいいか分からないといった悩みを抱えている女性は、ぜひ女性外来に行ってみよう。 公開日:2005年9月26日
毎年、春は「確定申告」のシーズンです。会社員は関係がないと思われがちですが、実は会社員でも確定申告することによって、支払った医療費の一部が戻ってくるかもしれません。年間の医療費が家族で10万円を超すと利用できる従来の医療費控除のほかに、スイッチOTC医薬品の購入金額が1万2千円を超すと利用できるセルフメディケーション税制もあります。 目次 払いすぎた税金を取り戻せる!確定申告とは? 医薬品の購入費が1万2千円以上なら「セルフメディケーション税制」 医療費控除の対象となる可能性が高いのは、こんな人 実践!控除されるお金を計算してみよう 還付を受けるためのテクニック 払いすぎた税金を取り戻せる!「確定申告」とは? 確定申告とは、前年1年間の所得額を申告して、納税額をあきらかにする手続きのことで、期間は例年2月16日~3月15日です。最寄りの税務署の窓口や郵送で申請書を提出する方法のほかに、インターネット(e-Tax)などで申告することもできます。給与所得を得ている人は一般的に、勤務先で年末調整が行われるため、副業や一定額以上の年収がある場合などを除き、確定申告をする必要はありません。ただし、医療費控除、住宅ローン控除などは年末調整では処理されないので、控除を受けるには自分で確定申告をする必要があります。確定申告をして、個人的な事情による出費金額を所得金額から差し引く「所得控除」が適用されると、払いすぎた税金が戻ってきます。 生計を同じくする家族の医療費が、前年1年間で合計10万円を超えると、従来の医療費控除を受けられます。同居をしていなくとも、仕送りなどをしている場合は、生計を同じくしている家族と見なすことができます。 医薬品の購入費が1万2千円以上なら「セルフメディケーション税制」 医療費が合計10万円に満たない場合も、健康診断を受けているなどの条件を満たし、スイッチOTC医薬品の購入金額が家族で合計1万2千円を超えると、所得控除を受けられる「セルフメディケーション税制」が利用できます。スイッチOTC医薬品とは、以前は処方薬だったものが、現在は市販薬として購入できるようになった医薬品です。パッケージに、セルフメディケーション税制の対象であると示すマークが付いている医薬品もあります。従来の医療費控除とセルフメディケーション税制を同時に利用することはできないので、申請者自身がどちらかを選ぶことになります。 控除される還付金額は、スイッチOTC医薬品の購入金額や所得により異なりますが、上限は8万8千円です。セルフメディケーション税制について、詳しくは厚生労働省のホームページなどで確認しましょう。 厚生労働省ホームページ「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について」 医療費控除の対象となる可能性が高いのは、こんな人 合計10万円を超す場合に利用できる従来の医療費控除の場合、医療費には薬局で買った薬代や通院費のほかに、歯科でかかった入れ歯代や、重大な病気が見つかった場合などは人間ドック代なども対象となります。特にまとまった金額となるのは、妊娠・出産に伴う費用でしょう。分娩費はもちろん、検診代、検査代、通院費なども医療費となるので、計算の際には忘れないようにしましょう。 以下のような人が家族にいる場合は、医療費の合計が10万円を超え、従来の医療費控除を受けられる可能性が高いと考えられます。該当するかチェックしてみましょう。 対象となる可能性が高いのはこんな人 ●昨年に出産した人、妊娠中、出産予定のある人 ●歯科矯正などで歯医者に通った人 ●病院に行く回数の多かった人 実践!控除されるお金を計算してみよう STEP1 申告できる医療費を算出してみよう ■病院で… ・入院・通院費用 ・差額ベッド代(治療に必要な場合のみ) ・通院の交通費 ・緊急時のタクシー代※通常は対象外。ただし遠隔地の病院に通った場合は別 ・人間ドック費用※検診で重大疾病が発見され、そのまま治療した場合 ・病院で出た食事代 ・家族以外の付添い人の交通費や付き添い料金 ・保健婦による入院付き添い費 ・医療機関によるデイサービスや在宅介護費用 など ■歯医者で… ・歯科技師による診療費や治療費(金歯、金冠、義歯、インプラントなど) ・歯科ローン ・発育途中の子どもの歯列矯正 など ■薬局・専門店で… ・風邪薬 ・胃腸薬 ・漢方薬・ビタミン剤・補聴器・松葉杖※いずれも医師の指示によるもののみ ・成人用おむつ※ただし、医師の「おむつ使用証明書」が必要 ■産婦人科で… ・分娩費用 ・妊娠中の検診・検査 ・通院・定期健診の交通費 ・入院中の食事代 ・異常分娩・流産の際の手術・治療費 ・中絶費用※母体保護法に基づき、医師がおこなう場合のみ ・不妊症の治療費 など ■その他 ・眼鏡代(医師の処方箋がある場合のみ) ・弱視用眼鏡代 ・海外滞在中の病気治療費 こんな費用は申告できない! ・美容整形費 ・未払いの医療費 ・予防接種代 ・見舞客の接待費 ・うがい薬代 ・血圧計代 ・スポークラブの会員費 ・診断書の作成費用 ・人間ドック(異常なしの場合) ・入院中の身の回り品購入費 ・妊娠判定薬 ・出産のための里帰り交通費 ・本人の都合で使用した差額ベッド代 ・美容のための歯列矯正 ・マイカーによる通院費(ガソリン代など) ・乱視・遠視用コンタクトレンズ代 など ・ビタミン剤・栄養ドリンク剤(自己判断によるもの) STEP2 医療費控除金額を算出しよう ■計算式 控除金額=年間支払い医療費-保険金や分娩手当などで補てんされる金額-10万円(所得金額200万円以下の場合は所得金額の5%) 還付を受けるためのテクニック ●日頃から、病院や薬局の領収書や交通費の明細、タクシーの領収書などを整理しておきましょう。 ●市販薬や物品の購入時は、治療に必要な費用であることを証明するため、できれば医師に一筆書いてもらいましょう。 ●共働き世帯の場合、所得の多い方が医療費控除の確定申告を行ったほうが、税率が高いため還付金額も高くなりやすいです。 ●これまで申告していなかった場合も、過去5年前までさかのぼって控除を受けることが可能なので、昔の領収書などがあればすべて整理して計算しましょう。 医療費の控除を受けられるせっかくの制度を利用できるように、レシートを保管したり、医療に関する記録をとるように心がけたりして、日頃から翌年の申告に備えましょう。 公開日:2017年2月6日
2008年3月3日~2008年3月30日にhealthクリックでは「健康について」「医療について」「healthクリックについて」の3つをテーマにアンケートを実施、346人の方々から回答を頂きましたので、その結果を報告いたします。 「健康に関する意識調査」「医療に関する意識調査」はこちらからご覧ください。 healthクリックについて Q. healthクリックをどのように知りましたか? healthクリックを訪問いただいた経緯は「検索エンジン」(52%)がもっとも多く、ついで「他サイトからのリンク」(38%)、「雑誌・新聞での紹介」(3%)、「クチコミ」(3%)という結果となりました。 Q. healthクリックはどのくらいの頻度で訪問いただいていますか? 訪問頻度については「月数回」(37%)、「週1回程度」(34%)、「毎日」(4%)、その他(24%)という結果に。healthクリックは原則月曜更新ですが、なかには毎日更新しているコーナーもあります(「答えてドクター・教えてナース」など)。編集部一同、みなさんのさらなる訪問を期待しています! Q. healthクリックの中で好きなコーナーを教えてください。(複数回答可) healthクリックの中で好きなコーナーを聞いたところ、「特集」(179人)、「いいものみつけた・プレゼント」(170人)の人気が高く、続いて「健康用語辞典」(112人)、「病院検索・調剤薬局検索・お薬検索」(109人)、「トピックス」(86人)という結果となりました。 その他、healthクリックに対する要望を募ったところ、多数のご意見をいただきました。ここにその一部を抜粋します。 健康について、病気について、薬について本当にわかりやすく、堅苦しくなくいろんなことを教えてくれるサイトでとても気に入っています。 初めて聞く病気でも家族の健康状態と結び付けて考えてみたり、その治療法などまで書いてあるので、ああこうすれば治る可能性があるんだと思い、早期発見、早期治療にも役立つと思います。健康についての子供向けのコーナーもあると、子供と一緒に楽しく学べていいなと思います。 前に処方された塗り薬など、これは何の薬だったか、など調べるときに便利ですね。 生活・暮らしのダイエット関連をよく見ます。読み物もたくさんあって時間がないくらいです。もう少し写真があれば視覚的に直ぐ分かり嬉しいです。これからも旬の話題性のあるコンテンツを宜しくお願いします。 いつも旬のテーマを楽しく拝見させてもらっています。健康でいるためのいろんなアプローチの提案をよろしくお願いします。 healthクリック編集部より このたびは大勢の方々にアンケートに回答いただき、ありがとうございました。 みなさんが健康や医療についてふだん感じていること、困っていること、知りたいことなどをこのアンケート結果から浮かび上がらせ、今後の企画に役立てていきたいと思います。 healthクリックがみなさんの日常生活を少しでも快適で健康的なものにできるよう、スタッフ一同、今後もコンテンツの充実に努力してまいります。 これからもhealthクリックをご愛顧いただきますよう、宜しくお願いします!
2008年3月3日~2008年3月30日にhealthクリックでは「健康について」「医療について」「healthクリックについて」の3つをテーマにアンケートを実施、346人の方々から回答を頂きましたので、その結果を報告いたします。 「健康に関する意識調査」「healthクリックに関する意識調査」はこちらからご覧ください。 かかりつけ制度について Q. かかりつけ医がいますか? かかりつけ医がいるかどうかを聞いたところ、「いる」(47%)、「いない」(51%)、「かかりつけ医の意味が分からない」(2%)という結果となりました。年代別でみると20代(27%)、30代(41%)、40代(44%)、50代(65%)、60代(71%)、70代(100%)と、加齢とともにかかりつけ医を持つ人が増えていることが分かります。性別によりその割合に大差はないものの、20代のみ「いる」と答えたのは女性のみで、男性はゼロでした。女性の場合、産科・婦人科などへの通院で若い世代からかかりつけ医を持つ人がいるのではないかと考えられます。 Q. かかりつけ薬局がありますか? かかりつけ薬局についてあるかどうかを聞いたところ、「ある」(29%)、「ない」(67%)、「かかりつけ薬局の意味が分からない」(3%)と、かかりつけ薬局を持つ人の割合はさらに低い結果となっています。 医師や薬剤師の説明への理解度について Q. 病気に関する医師の説明を理解できていますか? 病気に関する医師の説明を理解できているかを聞いたところ、「よく理解できている」(59%)、「あまり理解できていない」(29%)、「難しいと感じる」(8%)と、3人に1人が理解不足という結果となりました。 かかりつけ医がいる人の「よく理解できている」は78%で、かかりつけ医がいない人の「よく理解できている」は46%と、慣れ親しんだ医師のいる人の方が病気に関する説明への理解度が高いことが分かります。これはふだんからのコミュニケーションが、患者が質問しやすい環境をつくり、医師もその患者さんにあった理解しやすい説明や言葉選びをすることが可能となっているのではないかと推察されます。 Q. 薬に関する薬剤師の説明を理解できていますか? また、薬に関する薬剤師の説明を理解できているかを聞いたところ、「よく理解できている」(61%)、「あまり理解できていない」(28%)、「難しいと感じる」(6%)と、医師の説明と同様に3人に1人が理解不足という結果に。かかりつけ薬局がある人の「よく理解できている」は76%、かかりつけ薬局がない人の「よく理解できている」は59%と、こちらもかかりつけ薬局を持つことが患者さんの理解度を上げていることが分かります。 セカンドオピニオンについて Q. セカンド・オピニオンという言葉を知っていますか? セカンドオピニオンを知っているか聞いたところ、「言葉は知っている」(76%)「知らない」(11%)、実際に経験したことがある(12%)という結果となりました。なかでも「知らない」と回答したのはどの年代でも女性より男性に割合が高く、たとえば50代では「知らない」と答えたのが女性で7%であるのに対し、男性23%と開きが見られます。
2008年3月3日~2008年3月30日にhealthクリックでは「健康について」「医療について」「healthクリックについて」の3つをテーマにアンケートを実施、346人の方々から回答を頂きましたので、その結果を報告いたします。 「医療に関する意識調査」「healthクリックに関する意識調査」はこちらからご覧ください。 悩みや関心について Q. 健康について悩み・関心はありますか? 健康について悩みや関心があるかを聞いたところ、346人中322人が「ある」(93%)、と回答。「ない」20人(6%)、無回答4人(1%)を大きく上回り、9割以上が健康について関心の高いことが分かりました。 Q. 悩み・関心はなんですか?(複数回答可) 疾患や症状別に見ると1位「花粉症」(115人)、2位「腰痛・関節痛」(112人)が大きく他を引き離し、以下、3位「アンチエイジング」(94人)、4位「ドライアイ」(75人)、5位「頭痛」(71人)。いずれも重篤な疾患ではないものの、日常生活に支障を来しやすいことから、多くの人が悩みと感じていると考えられます。 生活習慣について Q. お酒を飲みますか? Q. たばこを吸いますか? 喫煙や飲酒の生活習慣について聞いたところ、「たばこを吸う」と回答したのは13%。男性16%、女性12%。「全国たばこ喫煙者率調査(JT調べ)」によると男性の成人平均喫煙率は45.8%、女性で13.8%であることから、healthクリックユーザーの男性は非常に健康意識が高いのかも? なお、飲酒については「飲む」と回答した人のうち「機会があれば飲む程度」(47%)、「週に1~2回」(27%)、「毎日」(25%)という結果となりました。 健康食品・サプリの利用について Q. 愛用しているサプリ・健康食品はありますか? Q. サプリ・健康食品を摂る理由は何ですか? 愛用しているサプリメントや健康食品があるかを聞いたところ、「ある」が59%と、半数以上の人が常用していることが分かりました。その目的は「美容・健康増進」が141人(41%)ともっとも多い結果となっています。2位の「病気の予防」は全体では25%ですが、20代(7%)、30代(23%)、40代(28%)、50代(50%)、60代(69%)と年代があがるにつれてその割合も高くなり、加齢とともに病気についての関心が高まっていくと考えられます。
「心の病」になった時、どんな病院の何科を受ければいいのでしょうか?神経科?精神科?精神病院?クリニック?医療機関の違いを紹介します。 目次 どんな病院の何科に行けばいいの? こんな時には、この科へ! ご存じでしたか?保険証について どんな病院の何科に行けばいいの? 心の病もこじらす前に、なるべく早く専門医に診てもらわなければ、病状は重くなってゆき、治すのも大変になります。うつ病などの場合、自殺してしまう危険もあります。 しかし神経科や精神科など、普段あまり馴染みのない人も多いことでしょう。実際に行ってみると、来ているほかの患者さんも普通の内科などと特に変わりはありませんが、なんだかよく分からないままだと不安なものです。いざという時、一体どんな病院の何科に行けばいいのかもピンとこないかもしれません。 そんな不安を解消するために、具体的な治療や医療機関などをご紹介します。 こんな時には、この科へ! 心の病の病状などによって、受診する科は以下のように主に4つに分かれています。患者さんの受診のしやすさなどを考え「内科・心療内科」などと看板を出しているところも多いようです。また、神経科と精神科はほとんど同じ意味に使われているところもありますので、初めて受診する場合は、あらかじめ電話で症状を伝え、実際に何科の専門医がいるのか確認を。 ●精神科:うつ病や統合失調症などの精神病 ●神経科:ノイローゼや自律神経失調症など神経症 ●心療内科:胃潰瘍や気管支ぜんそく、高血圧、心身症など ●神経内科:脳卒中後遺症やパーキンソン病など、純粋な神経の病気 では、どんな病院・医療機関を訪ねたらいいのでしょう?各医療機関の違い、活用方法は以下の通りです。 診療所・クリニック 身近で気楽に入りやすい医療機関。入院施設がほとんどなく、通院で治療します。診療時間も、サラリーマンが通いやすいよう、夜間・休日にも行っているところも多くあります。 病院 20床以上の入院施設を持ち、外来も入院診療も行います。入院してゆっくり休むことができるようです。 保健所 国民のさまざまな健康問題に応じるため、都道府県および政令指定都市が設置している公的機関。心の病であっても同様に応じてくれます。相談は無料なので、まずは気軽に保健所を利用するのもいいでしょう。 精神保健福祉センター 各地区保健所を支援するためのもので、地区により名称は違う場合もあります。保健所と同様の機能とともに、医療費の公費負担制度など、活用できる福祉制度を教えてもらうこともできます。こちらも相談は無料です。 心理相談機関 専門の臨床心理士やソーシャルワーカーなどによるカウンセリングや相談を行っている民間機関。時間をかけた個人面接などを行います。保険が適用されず自費となり、料金もそれぞれ異なりますので、受診前に相談費用の確認を。 ご存じでしたか?保険証について 保険証を使って診療を受けると、会社にも精神科へ行ったことが分かってしまうのでは?と危惧する人もいるかもしれません。ご安心を。診断名は会社に分からないようになっています。町の小さい診療所であっても、秘密はきちんと守られます。また総合病院などで知り合いに出会っても、具体的に何科を受けに来ているのか?などということは、人には分かりません。 公開日:1999年3月27日
国や地方自治体が患者に代わって医療費を負担 公費医療負担制度は国や地方自治体が患者に代わってその医療費を負担する制度です。 全額公費によって負担するもの、医療保険で給付されない部分を負担するもの、一部負担を対象者の負担能力に応じて費用の一部または全額を負担するもの、負担能力にかかわらず一定割合を負担するものがあります。 ここでは代表的な制度について紹介します。 生活保護法による医療扶助 医療費の支払いなどのために生活が困窮し、健康で文化的な最低限度の生活ができなくなった場合に生活保護法による医療扶助を申請することができます。 身体障害者の医療費助成 国の制度と各都道府県の単独事業としての助成制度があります。国の制度は、児童のための育成医療(18歳未満まで)と成人のための更生医療があり、両者共通のものとして進行性筋委縮症の療養給付、補装具の交付と修理が行われています。 都道府県の医療費助成制度は、それぞれの県によって対象や助成の方法、所得制限の有無などさまざまです。 乳幼児医療費助成制度 都道府県が実施している制度で、その対象年齢や助成の方法はそれぞれの県によって異なってきます。 公害健康被害保障制度 大気汚染や水質汚濁などの公害による健康被害として認定された患者の、指定疾病の医療費が公費負担になります。 指定疾患としては、気管支ぜん息、慢性気管支炎、ぜん息性気管支炎、肺気しゅおよび、これらの続発症とされています。 難病(特定疾患)の医療費補助 原因不明の難病で治療法が確立していない病気が対象になっており、対象疾患は毎年追加されています。 患者の受療、原因究明、治療方法の開発、研究促進の観点から「特定疾患治療研究事業」として医療費の補助が行われ、自己負担はありません。 エイズの健康診断 エイズのまん延を防ぐために「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」があり、都道府県知事の命令により受診した場合の健康診断の費用が公費負担になります。
治療の中心は神経ブロック療法 これまで、医療は痛みに対する治療をあまり重視してきませんでした。しかし、高齢化が進む中、痛みそのものを取り除こうという新しい治療が注目されています。これがペインクリニックです。 「ペイン」とは英語で「痛み」のこと。ペインクリニックは、大きな病院や麻酔科の中に設けられており、痛みの診断と治療を行います。 ペインクリニック治療の中心は、神経ブロック療法です。痛みは体の危険信号でもありますが、これが長く続くと体に悪影響を与えます。痛みの悪循環ができてしまうのです。 これを断ち切る方法が、神経ブロックです。神経ブロック療法は、脳の中枢神経に原因がある場合以外の多くの痛みに有効とされています。 局所麻酔薬や神経破壊薬を注入 具体的な方法は、痛みを伝える知覚神経を調節する交感神経の神経節などに局所麻酔薬や神経破壊薬などを注入します。 加熱、冷却、圧迫などの物理的刺激により神経のはたらきを抑える治療も行われます。ほかに理学療法、電気刺激法、東洋医学、心理医学療法なども補助的に用いられます。
医師の同意が必要 医師による適当な治療方法がない慢性疾患の人が、医師の同意を得て、はり・きゅう・マッサージを受けた場合は、その療養費が支給されます。 この場合の療養費の請求は、鍼灸(しんきゅう)師などが代理請求していますので、保険証と認め印を用意しておけばよく、実質的には保険診療と同じ方法で治療を受けることができます。 はり・きゅうの対象とされる病気には神経痛、リウマチ、けい腕症候群、五十肩、腰痛症などで慢性的な痛みがある疾患とされています。 あんま・マッサージ・指圧の場合は、保険医が認めた病気ということになりますが、単なる肩凝り、腰痛、疲労、倦怠などの症状は認められていません。
老人医療は無料から一部負担へ 老人保健法でいう老人医療の対象者は、医療保険加入者で70歳以上の人もしくは65歳以上で障害を持っている人と定められています。 老人医療費が無料化されたのは1973年(昭和48年)のことですが、これが老人医療費を押し上げて医療保険の保険者の間で負担格差を広げ、特に老人の加入率の多い国民健康保険の財政を圧迫しました。 そこで、財政調整と保健事業の連携を目指して「老人保健法」が83年から施行され、老人医療費についても一部負担が行われるようになりました。 98年3月現在では、外来が通院1回につき500 円(月4回まで)、入院が1日につき1100円の自己負担となっています。差額ベッド代やおむつ代などには保険は適用されません。 介護を重視した医療へ 一方、老人医療に携わる施設の多くには定額制が導入されており、看護・介護を重視した医療を行うようになってきています。さらに、在宅医療の支援機関として老人保健施設や訪問看護ステーションの整備も急ピッチで進められています。 老人保健施設とは、病院と自宅(特別養護老人ホーム)の中間施設で、看護・介護・機能訓練を中心とした医療ケアと日常サービスを提供し、老人の自立と家庭への復帰を支援することが目的とされています。
量的拡大から質的向上への転換 わが国の医療制度は戦後、量的な拡大を目指して整備されてきましたが、その目的が達成されたことから、1980年代後半より「質的な向上」を目指した施策に転換してきています。 特に高齢社会の到来とともに、戦後の医療制度の枠組みを大きく変える必要に迫られており、医療供給体制の変革が進められています。 総合病院から地域医療支援病院へ 92年(平成4年)の医療法改正で創設された特定機能病院(※1)と療養型病床群(※2)を皮切りに「医療施設の機能別合類」が行われ、98年4月からは事実上総合病院が廃止され、新たに「地域医療支援病院」が登場しました。 地域医療支援病院は、地域の診療所や中小病院を支援する大病院と位置付けられており、医師からの紹介状がなければ受診することはできません。 医療制度の「医療の質の向上」「サービスの多様化」を掲げる一方で、国では老人保健法や国民健康保険法などの制度に対しても、大幅な改革を急いでおり、21世紀のわが国の医療制度はめまぐるしい変化を迎えています。 ※1 高度の医療を提供するとともに、高度の医療に関する開発と評価および研修を行う医療機関で、大学病院、国立がんセンター、国立循環器センターが対象 ※2 長期療養にふさわしい療養環境を備えている病床群
特定機能病院は紹介制が基本 全国に約9800の病院があり、長い間、一般病院、精神病院、伝染病院、結核療養所、らい療養所と区分けされていました。 このうち約9割を占める一般病院を、患者の病状に応じて選択しやすいよう、機能に基づいて区分けし、機能に応じた診療報酬体系を適用する再整理が、平成4年の医療法改正で実施されました。 機能別分類では、一般病院を次の3種類に区分しています。 特定機能病院…高度の専門的医療を提供 一般病院…一般的治療が可能な患者を対象とする病院 療養型病床群…老人や長期入院のための専用病棟 特定機能病院は厚生大臣の承認が必要で、現在56の大学病院と国立がんセンター中央病院、国立循環器病センターが承認されています。高度医療を必要としない患者が殺到しないよう、ほかの医療機関からの紹介状を持たない外来患者は、割増の初診料 (実費自己負担) を支払う仕組みが取られています。 慢性老人病患者の施設は4本立て 療養型病床群は都道府県知事に認可により開設でき、一般病院の中の一部の病棟だけを切り離して適用を受けることができます。介護機能を高めた職員の配置基準と診療報酬体系が適用されます。 これにより、現在、長期入院が必要な老人の慢性疾患患者の受け入れ医療施設としては老人病院、療養型病床群、老人保健施設、これに福祉施設の特別養護老人ホームを加えると4本立てとなっています。
病院の機能別分類 わが国では現在、病院の機能別分類が制度として進行しています。平成4年からは特定機能病院、一般病院、療養型病床群の区分が設けられ、さらに一般病院の機能別分類が検討されています。 一方で、厚生省は医療提供の「量から質への転換」が必要だ、と指摘しています。ここで注意しなければならないのは、高度な機能を持つ病院と質の高い病院とは同じではない、ということです。 「認定」の表示が信頼の目印に ホテルや病院のようにサービス提供を業務とする業態に関して、「質」の良否をふだん利用する機会が少ない一般市民が自分の目で見極めることは非常に困難ですから、利用者に代わってそれを見分け、適正に表示して知らせる仕組みが必要です。 フランスのホテルの星印のように、個々の病院で行われる医療の質を評価して利用者に知らせるための組織が、アメリカでは1951年に医師会や病院協会などの間でつくられ、現在、全国の病院の85%がこれに参加しています。JCAHO(病院認定合同機構) の専門家による評価の結果は、「認定」「条件付き認定」「非認定」として通知され、「認定」の表示は信頼できる病院の目印ともなります。 国内でも評価機構がやっと始動 医療の質を決める要素には、施設設備や職員などの構造的側面、医療スタッフの熟練度で左右される提供過程、最終的な結果、の3つがあり、国や地域によってこれらの要素の中身が大きくことなるので、わが国では、わが国独自の評価基準が必要です。 1987年(昭和62年)、厚生省と日本医師会の委員会が「病院機能評価マニュアル」を作成し、95年7月に財団法人日本医療機能評価機構が設立されて、中立的な立場で、病院の医療の質の評価が行われる下地がやっとできたところです。今後の活動が期待されます。
プライマリ・ケア 病院とは「20床以上の入院施設を持つ医療機関」、診療所 (医院) とは「19床以下のもの」というのが医療法による定義であり、わが国には、約9800の病院と約8万4000の診療所があります。 診療所には、消化器病とか呼吸器病など特定の領域を専門とするものと、一般内科のように専門性を持たないものとがあります。後者は、主に日常的な病気の診断治療と健康相談、在宅医療、保健指導管理の役割を担い、この機能をプライマリ・ケアといいます。 8~9割までは日常的な病気 私たちが医療機関にかかる際の8~9割までは、日常的な、ありふれた病気であり、これはプライマリ・ケアがふさわしい病気です。専門的な医療が必要な残りの1~2割の場合に、時期を失しないように専門の病院を受診する必要が生じます。 病院にかかるか診療所にするか、と迷うのは、日常的な病気か専門的医療を必要とする病気か、自分で判断がつきかねる場合です。このような判断は、プライマリ・ケア本来の大事な役割の1つであり、診療所の医師が必要に応じて2次医療の病院を紹介してくれる場合には、安心して診療所に身を委ねることができます。 慢性疾患の治療は病・診の役割分担で 慢性疾患だから軽い病気だと、自分で勝手に決め込むのは問題です。糖尿病、高血圧、高脂血症をはじめ、何年、十何年か後に色々な臓器の障害が起こると気づかわれる病気が近年増加しており、これらの病気に対しては治療法が年々進歩しています。 このような病気の場合に一番大事なのは、最新の治療法のうちで自分に最適なものを選んで、治療方針を決めてもらうことです。専門病院で治療方針を決め、それに従って日常の管理と指導を身近な診療所にしてもらう、役割分担が治療の決め手となります。
インパクトが強い表層的サービス 「良い病院」の判断基準は、医療の専門家と患者の間で必ずしも一致しません。患者からみれば、評価のカギを握るのは満足度の高さです。 患者の満足度を高める要素には、「診断や治療の技術がしっかりしている」といった医療本来の本質的サービスの面と、親切とか清潔感といった表層的サービス、それに情報提供や助言・相談などの境界型サービスがあります。 表層的サービスは、病院本来の機能に不可欠な要素ではありませんが、患者にとってはインパクトが強く、むしろ本質的サービスより満足度を高める効果が大きいことが、マーケティング理論のなかで指摘されています。 病院が本格的な競争と選択の時代を迎えて、デパートなどと同様に表層的サービスを重視する傾向が見えますから、その蔭に隠れた本質的サービスを見落とさないことが大事です。 公開されない本質的サービスの評価 本質的サービスの面を客観的に評価するために、厚生労働省と日本医師会合同の研究会が「病院機能評価表」を作成しています。 これは、評価項目として、基本的事項、地域ニーズの反映、患者の満足と安心、診療の学術性、病院の管理運営の5つの面にわたり合計 100項目を含み、多角的、専門的な評価を行うものです。 第三者機関によるこのような評価の結果が公開されると、良い病院を見分ける有力な手掛かりになりますが、医師会などは結果の公開に難色を示しています。このため、患者側の判断材料としては、その病院の入院日数とか過去の症例数など、断片的な情報から見当をつけなければならないのが実情です。
よき医者とは 「よき医者とは、特効のある薬と治療法を有している者をいう。それがない場合には、持っている医者に自分の患者を依頼する者をいう」。これは、17世紀フランスの代表的モラリスト、ラ・ブリュイエールの言葉です。 現代のかかりつけ医療が担っているプライマリ・ケアでも、重要な機能の一つは、二次医療が必要なときに、時期を逃さずに、適切な専門医へとバトンタッチすることだ、とされています。医学技術がどんなに進歩しても、医療の基本は不変なのです。 基本は予後の予測能力に 病気に対し「特効のある薬と治療法」が登場したのは19世紀以後ですから、17世紀の医者ができたことは、現在でいう民間療法のような治療と、「医師が侍り、神が治したまう」という言葉の通り、病人に付き添って慰め、元気づけることぐらいだったでしょう。 そんな医師が敬われたカギは、予後を見通す能力にありました。 患者の将来の状態を予測し、どんな状態が起きたらどのように対処するかをあらかじめ伝えておくことが、治療による直接的な効果と同様、ないしはそれ以上に患者に安心を与えてくれます。それは現在でも全く同じです。 持病に精通、相性も大事 わが国の診療所の開業医は、病院に勤務していた時期に循環器病とか糖尿病とかの専門領域を持っていた方が少なくありません。これはわが国の特徴であり、また、保険証があれば、どの診療所にもいつでも自由にかかれるという点も、わが国の保険医療制度の大きなメリットですから、メリットは十分に生かしたいものです。 友だちづくりと同様に時間をかけて、自分の持病に精通した相性のいいかかりつけ医を選ぶことが、丈夫で長生きの秘訣です。
「様子をみましょう」は保険医療の悪弊 日本人の医療に対する満足度は12%で、世界の先進国で最低だ、という調査結果 (Harvard Community Health Plan,1990) がありますが、患者の不満で上位にランクされるのが、医師の「様子をみましょう」というあいまいな言葉です。 通常、患者が症状を訴えているが、診察し検査のデータをみても、これという異常は見つからないとか、可能性は幾つか考えられるが決め手がない場合に、「様子をみる」ことになります。 これは「いますぐに急変する心配はない」というニュアンスをこめた、医師の側では便利な表現ですが、こんなあいまいな応対が許されるのは、医療費患者負担が少ないわが国だけのようです。 自分の懐から診療費を支払う国では、患者は納得しません。 「自分でどこか具合が悪いと感じているのに、治療できる病気を持たない患者の扱いには、大変な精神的エネルギーを消耗する。それは、自分の診察は完璧であり、あらゆる可能性を考慮したことを、患者に納得させなければならないからだ」と、米国ハーバード大学のプライマリ・ケア専門医、M.K.リー医師が言っています。 「自信が持てない」の言い換えのことも 「様子をみましょう」を言葉通りに受け取っていいケースばかりとは限らない、と指摘する医師もいます。 たいした病気ではないだろうが、自分では自信が持てない、という気持ちのこもった言葉と受け取れないこともありません。もし、そうであれば、かかりつけ医を替える潮時と考えるのが賢明です。 どちらなのか確かめるための一つの手としては「では、どうすればいいのですか」と問い返してみることです。 知りたいことをきちんと答えてくれる医師を、かかりつけ医に持ちたいものです。
保険適用めざし経過措置 技術革新から生まれた新しい医療技術で、まだ保険の適用を受けていない治療の場合に、新技術の部分だけ、費用を患者の自己負担とし、初診料や入院費などの基本的費用は保険で負担する仕組みが、1984年に制度化されました。 保険診療では、一部に保険適用外の医療を併用した場合には、全医療費が保険の適用外とされるのが大原則で、その場合には全てが患者の自己負担となります。 しかし、大学病院などのように、厚生大臣から特定承認保険医療機関の承認を受けた病院が、高度先進医療技術の承認を受けた技術を使って診断や治療を行う場合は、特定療養費制度の一環として、新技術以外の部分に保険適用が認められます。 新しい医療技術で、疾病の解明、予防、治療に果たす役割が大きく、国民の保健衛生の向上に多大な貢献をすると考えられるものについては、実地の医療への適用が急がれる半面、安全性や有効性のデータが不十分であり、また普及以前のものであるため、利用できる範囲が地域的に限定されるなどの理由から、保険適用に慎重にならざるを得ない面があります。 高度先進医療は、保険適用への経過措置の意味合いがあり、通常は、ここで安全性・有効性を確認し、さらに精度を高めた後に、保険が適用されています。 技術と病院をセットで承認 高度先進医療が承認された技術には、保険適用の場合と同様に、技術料金 (目安) が決められます。例えば、手術後の難聴などの治療に使う人工中耳は 124万円、心筋梗塞の際などに使われる血管内視鏡検査は28万9920円です。 医療内容とそれを行う病院がセットになって承認されるので、どこでどんな医療が行われるかを確認する必要があります。 ※2006年10月1日より、特定療養費制度は保険外併用療養費制度と名称が変更になりました。
医療提供者から、治療内容などの情報を十分に患者へと伝達し、その同意を得ることをインフォームド・コンセントといいます。インフォーム・ドコンセントは、患者の権利意識の高まりを背景にした、患者の権利を尊重し医師の義務を明確にする大切な考え方です。 目次 患者の権利と医師の義務 日常診療でのインフォームド・コンセント 患者の権利と医師の義務 この新しい法理は、患者の権利を尊重し医師の義務を明確にするものです。 患者の権利意識の高まりを背景とした医療過誤訴訟の増加と、初期の心臓移植手術が開発途上の新技術の人体実験だという考え方の2つの流れのなかで、1970年代にアメリカで確立され、たちまち世界の先進諸国へと波及しました。 第2次大戦中にナチ・ドイツの医師によって行われた人体実験への反省から、医学研究の被験者の意思と自由を保護するために採択された「ニュールンベルグ綱領」の原則を引き継いでいます。 外科手術など、体に傷を加える医療行為がインフォームド・コンセントなしで行われた場合には、患者に対する故意の傷害とみなされることになりかねず、同意が治療に不可欠な要件と考えられると同時に、医師による説明や告知が重視されることになりました。 日常診療でのインフォームド・コンセント わが国でも、厚生省の「患者サービスの在り方に関する懇談会」の報告書(平成元年)と日本医師会の「生命倫理懇談会」の報告書(平成2年)が、これを普及、定着させる必要性を指摘しました。 生命倫理懇談会は、日常の診療のなかでインフォームド・コンセントが重要視される局面として、次の7項目をあげています。 病状・処方薬剤と治療内容 手術・検査 新薬の臨床試験 社会医学的処置 (予防接種や伝染病の検査など) がんの告知 リビング・ウィル その他
抗生物質に高度耐性化するMRSAは、非常にやっかいな菌です。 目次 抗生物質が効かないMRSA 特に発生率が高いICU内 抗生物質が効かないMRSA 本来病気を治す場所であるはずの病院で、逆に病気に感染してしまう。これが院内感染です。 あらゆる細菌やウイルスへの感染の危険がありますが、特に問題となっているのがMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。 これは命にかかわる黄色ブドウ球菌の中でも、抗生物質に対して強い耐性を示すので、抗生剤が効きません。しかも、メチシリンだけではなく、ペニシリン系やセフェム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系など多剤に対して、高度耐性化するという非常にやっかいな菌です。 この菌は、感染源から患者や医療従事者の手やスリッパなどを介して感染します。空気中のチリやホコリに菌が付着して空気感染を起こすこともあります。 特に発生率が高いICU内 特に、ICU(集中治療室)では、ほかの場所の40倍も発生率が高くなっています。MRSAは免疫能力の低下している術後患者や老人に感染しやすく、循環器、呼吸器、消化器などさまざまな器官で感染症を引き起こします。 MRSAに対して強い抗菌力を持つとされていたバンコマイシンに対しても、最近、小規模ながらMRSAが耐性化したという報告があります。新しい抗生物質の開発と菌の耐性化という「いたちごっこ」を、どこかで断ち切るための研究が今盛んに行われています。
1970年代、アメリカで急速に広まる 医師が患者に対して、受ける治療内容の方法や意味、効果、危険性、その後の予想や治療にかかる費用などについて、十分にかつ、分かりやすく説明をし、そのうえで治療の同意を得ることをいいます。 ここ10年ほど医療界を中心に盛んにいわれていることですが、この考え方には、もともと2つの来歴があります。 一つは、医療過誤裁判で医師に説明義務があることを認めさせるための法廷戦術上の概念であったもの。 もう一つは、人体実験における被験者の同意のとりつけの場での考え方です。この場合は、事前に実験の目的や危険性などが十分説明され、被験者が自発的に同意するというものでした。 1970年代のアメリカの医療思想は、この概念を医師=患者関係の基本に置こうと考えて急速に広まっていきました。しかし、その背景には、訴訟に対する医師の自己防衛が働いていたという事情もあります。 日本は1990年が元年 そして、この概念はアメリカから日本に輸入されたわけですが、わが国の場合は1990年(平成2年)がインフォームド・コンセント元年であったという人がいます。 これは、この概念について検討を続けてきた日本医師会「生命倫理懇談会」が、90年の年頭に「説明と同意」についての報告を公表し、その立場を明確に示したからです。 例えば、がんの告知については、わが国でも次第に告知が行われる方向に向かうとし、その際には十分に慎重な態度で臨み、前提条件が備わっている場合に限り、告知をすべきであるとしています。