ますます高齢化が進む日本。総務庁の人口統計によれば、2002年10月現在、65歳以上の人口は2,363万人に達している。総人口の18.5%と、およそ2割を占める計算だ。こうした事情を背景に、介護問題は国民的課題として深刻さを増しつつある。そこで2000年4月、あらたにスタートを切ったのが介護保険制度だ。しかし、制度のシステムはかなり複雑なもの。施行されてはや3年が経ったものの、どんな仕組なのかよくわからない…、という人も少なくないのではないだろうか? 目次 介護保険制度 基本の「き」 介護保険の上手な活用法を知ろう! 介護保険制度 基本の「き」 誰が受けられるの? 介護保険制度が適用されるのは、65歳以上の「1号被保険者」と、40歳~64歳の「2号被保険者」。ただし、1号保険者には、全員に被保険者証が交付されるが、2号保険者では、被保険者証交付は申請した人にのみ行われる。 保険料はいくらくらい? 被保険者は、介護保険制度を利用するしないにかかわらず、全員が保険料を支払わなくてはならない。料金は市区町村別に決められており、まちまちだ。さらに1号被保険者では、所得に応じて負担額が変わる。2号被保険者の場合も、加入している健康保険によって料金は違っている。ちなみに2003年度の1号被保険者の保険料は、全国平均で月額3,293円である(読売新聞2003年5月27日による)。また、実際にサービスを受けた際に自分で払う金額は、料金の1割である。 どんなサービスを受けられるの? 在宅介護では… 訪問介護(ホームヘルプサービス) 訪問入浴 訪問看護・訪問医療 訪問・通所によるリハビリテーション 日帰り介護(デイサービス) 短期入所(ショートステイ) 福祉用具の貸与・購入費の支給 住宅改修費の支給 施設介護では… 特別養護老人ホーム(終生入居が可能) 老人保健施設(家庭復帰のためのリハビリテーションを目的とする) グループホーム(痴呆により要介護状態にあるお年寄りが少人数で暮らせる) 有料老人ホーム 介護療養型医療施設 どうすれば受けられるの? STEP1 市区町村の介護保険窓口に要介護認定を申請する STEP2 後日、調査員による家庭訪問調査がおこなわれる。心身の状態、最近受けた医療内容などさまざまな質問をされる。 STEP3 この調査結果をもとに、専用のコンピュータソフトで要介護レベルが割り出される。これが1次審査だ。 STEP4 2次審査では各自治体の介護認定審査会によって、1次審査の判定を検討される。このとき、本人や家族は、参考資料としてかかりつけ医の意見書も提出しなくてはならない。 判定レベルは、「要支援」「要介護度1~5」の計6段階に分かれている。要介護度が高い人ほど、サービス利用料の支援費は高くなる。反対に、「要支援」に達しなかった人は、介護保険の適用を受けることができない。 要介護度が決まると、いよいよ利用するサービスの内容を選ぶ。このサービスの計画「ケアプラン」を作成するのは、ケアマネージャーという専門家。在宅で介護するのか、施設入所するのかを決め、それにかかわるさまざまなサービスを盛り込んでゆくのである。 要介護度とは… 要支援社会的支援を要する 日常生活の能力は基本的にあるが、身の回りのことで、一部に何らかの介助が必要。 在宅サービスのみ利用可能 要介護度1部分的介護を要する 身の回りのことに何らかの介助が必要。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えが必要。 移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。 在宅サービス・施設サービスが利用可能 要介護度2軽度の介護 身の回りのことに何らかの介助が必要。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えが必要。 移動の動作に何らかの支えが必要・排泄や食事に何らかの介助を必要とすることがある。 要介護度3中等度の介護を要する 身の回りのことが自分ひとりでできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。 移動の動作が自分ひとりでできないことがある。 排泄や食事が自分ひとりでできない。 要介護度4重度の介護を要する 身の回りのことがほとんどできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。 移動の動作が自分ひとりでできない・排泄がほとんどできない。 要介護度5最重度の介護を要する 身の回りのことがほとんどできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。 移動の動作がほとんどできない・排泄や食事がほとんどできない。 介護保険の上手な活用法を知ろう! ●決め手はケアマネージャー 介護保険制度をいかに効率よく活用できるかは、おもにケアマネージャーの手腕にかかっているといってもいいだろう。地域の家族会、介護に関するNPO(非営利組織)に情報をもらうなどして、実力ある、公正なケアマネージャーを探そう。 ●認定の不服申請方法 要介護認定に不服がある場合も、 異議の申し立ては可能だ。ただし、認定結果が知らされてから60日以内におこなわなくてはならない。裁決までにさらに時間がかかることを考えると、不服申請は早めにしたほうがよい。 ●横出し・上乗せ 国で決められた介護保険制度の決まり以外に、市区町村によっては独自の「オマケ」を設けている。プラスアルファのサービスを付け足す「上乗せ」と、基準を緩める「横出し」だ。どんなサービスがあるかは、それぞれの自治体の窓口に確認しよう。 いざという時にあわてないよう、あらかじめ長期的な計画を立てておきたいもの。家族だけではなく、周囲の協力者や頼れるサービス機関をおさえたうえで、かしこく介護保険制度を活用しよう。 公開日:2003年11月17日
日本においては誰もが加入している医療保険のおかげで、国民は医療費の一部のみを負担するだけでよく、残りは国から支払われています。負担する上限額は、年齢や収入ごとに定められてますので、ここで確認してみましょう。 目次 自分が支払う医療費は、かかった金額のほんの一部!? 医療費が高額になったときのための「高額療養費制度」 なぜ必要?民間の医療保険&がん保険 自分が支払う医療費は、かかった金額のほんの一部!? ケガや病気の治療のために病院を受診すると、多くの場合、会計窓口で保険証を提示してから支払いをする。このときに支払っているのは、実はかかった金額の一部に過ぎない。日本では、誰もが公的な医療保険に加入することになっている。そのおかげで、国民は医療費の一部のみを負担するだけでよく、残りは国から支払われている。負担する割合は、年齢によって定められている。 一部負担金の割合 年齢 負担割合 小学校入学前2割 小学校入学以後~70歳未満3割 70歳以上75歳未満1割(※)(現役並み所得者は3割) ※現役並み所得者を除く70歳以上75歳未満の負担は、制度上は2割だが、軽減特例措置により1割に据え置かれている。 医療費が高額になったときのための「高額療養費制度」 公的医療保険のおかげで一部負担ですむとはいえ、大きな病気をしたときは、支払う金額も当然大きくなってしまう。そのような場合の救済策として、「高額療養費制度」が設けられている。これは、ひとつの病院ごとに1ヵ月の医療費の自己負担の限度額を設けたもの。この限度額を超えた分については、加入している公的医療保険から払い戻しを受けることができる。ただし、入院時の差額ベッド代や食費などは対象外となる。負担する上限額は、年齢や収入ごとに定められている。 高額療養費制度 69歳以下の場合 所得区分 1ヵ月の負担の上限額 通常の場合 多数回※該当の場合 上位所得者(月収53万円以上の方など)150,000円+(医療費-500,000円)×1%83,400円 一般80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円 低所得者(住民税非課税の方)35,400円24,600円 ※直近12ヵ月の間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、自己負担限度額がさらに下がる。 70歳以上の場合 所得区分 1ヵ月の負担の上限額 通常の場合 多数回※該当の場合 外来(個人ごと) 外来+入院または入院のみ 現役並み所得者(月収28万円以上などの窓口負担3割の方) 44,400円80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円 一般 12,000円44,400円- 低所得者(住民税非課税の方) II(I以外の方) 8,000円24,600円- I(年金収入のみの方の場合、年金受給額80万円以下など、総所得金額がゼロの方) 15,000円- ※直近12ヵ月の間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、自己負担限度額がさらに下がる。 なぜ必要?民間の医療保険&がん保険 公的な医療保険に加入していても、民間の医療保険やがん保険が必要となることも、ときにはあるだろう。民間の医療保険やがん保険によってカバーされる範囲を、簡単に整理してみよう。 ●自己負担分をカバーする 民間の医療保険が必要な、基本にして最大の理由が、これだと言える。いくら一部とはいえ、自己負担分は存在する。また、治療のための費用でも、食事療養費や差額ベッド代などは、公的な医療保険ではカバーできない。 ●医療費以外の出費をカバーする 病気になって入院となれば、病院などに支払う医療費のほかにもさまざまな出費が必要となる。例えば入院のため に買いそろえたタオルや洗面道具、家族が見舞いに行くための交通費…。また、子供のいる家庭の主婦が入院した場合などは、ベビーシッター代、家族の食費、クリーニング代などの経費がかさむこともある。 ●減収分をカバーする サラリーマンが加入する公的医療保険の健康保険には「傷病手当金」があり、最長1年6ヵ月は給与の約3分の2が支給される制度がある。このため世帯主が病気になったとしても「明日から困る」ということはないが、それでも3分の1の収入減は家計に大きく響く。自営業者の場合はこうした補償制度がないので、より深刻だと言わざるを得ない。しかも、相手は病気。1ヵ月で治る見通しだったとしても、長引くことがあり得る。体調によっては 退院後すぐに仕事へ復帰できるとも限らない。 ●高度先進医療をカバーする-がん保険 がんは治せる確率が高くなっているとはいえ、いまだ日本人の死因のトップにある。先進の高度な治療が行われることもあるが、その場合は公的な医療保険の適用外となり、いわゆる「自由診療」として全額自己負担となる。がん保険は、がんと診断されたり、入院したりした時点でまとまった一時金が出るため、こうした高額の先進医療を受けやすくなる。とはいえ、これはあくまでも予備の保険。がんも含め、すべての病気やケガを保障する医療保険に入った上で、さらにがんに対しての不安が大きい場合や、家族ががんで亡くなっているなど、がんのリスクが高いと感じている人が入るケースが多い。 民間の医療保険やがん保険は、貯蓄などで医療費をカバーできるのであれば必要ない。しかし、そうではない多くの人にとって、病気の本人も家族も安心して療養に努めるための、大きな助けとなるだろう(2014年2月現在)。 公開日:2014年2月
あなたは医療保険やがん保険に加入していますか?それは必要なものですか?医療保険やがん保険の必要性と、どんな保険にどのくらい入るのがいいか…。あなたと、あなたのライフスタイルに合わせた保険の選び方、家計バランスから見た見直しのポイントなどをご紹介します。 目次 STEP1/ほんとうに保険が必要なの? STEP2/医療保険はどう選ぶ? STEP3/がん保険はどう選ぶ? 特定の病気に備える保険は、がん保険以外にも! 保険を見直すコツとポイント STEP1/ほんとうに保険が必要なの? はたして、今のあなたにとって、医療保険やがん保険は本当に必要なのだろうか? 院した場合に必要と思われる資金の月額 出典:平成12年度「生命保険に関する全国実態調査」生命保険文化センター これについては、個人の懐事情と考え方で決まるというほかはない。十分な貯蓄があり、たとえ世帯主が長期入院したとしても家計的にやっていけると考えるのであれば、医療保険などは不要だ。 だが、病気によってさまざまとはいえ、入院日数の平均は約40日。世帯主が入院した場合に必要と思われる健康保険診療の範囲外の資金は、ひと月に平均31.7万円。なかなか貯蓄などではまかないきれない家庭のほうが多いのではないだろうか。 ただ、医療保険やがん保険に入ったからといって、貯蓄をおろそかにしていいわけではもちろんない。医療に対しては、保険と貯蓄の両輪で備えることが重要である。 平均在院日数 平成11年9月1日~30日(単位:日) 傷病分類 15~34歳 35~64歳 65歳以上 胃がん 37.638.743.5 大腸がん 24.431.243.8 肝臓がん 42.134.232.7 気管・気管支・肺がん 30.340.646.7 糖尿病 20.932.462.2 高血圧性疾患 20.023.977.8 心疾患(高血圧性のものを除く) 15.915.140.0 脳血管疾患 43.468.5124.7 注:退院患者平均在院日数は、主傷病についてみた場合 出典:平成11年「患者調査の概況」厚生労働省 STEP2/医療保険はどう選ぶ? さて、医療保険は必要なものと考えた場合、どのくらいの医療費を用意すればいいのか。その目安となるものをご紹介しよう。 「必要な医療保障の目安」は、家族の状況や構成を考慮したもの。医療保険は、入院したら1日いくら出るかが保障の目安となるため、日額で計算されている。このうち、自営業者やひとり親家庭が高めなのは、減収分をカバーすることや子供にかかる経費が増えることを想定しているためだ。 また、保険といえば、種類が多くて「面倒」「難しい」「複雑怪奇」の代名詞のように言われるもの。一体、自分に必要な保険が選べるのか不安でもあるだろう。簡単なチェック項目を用意したので、見てほしい。 必要な医療保障の目安 職業 性別 医療保障(日額) シングル男・女5,000円程度 DINKS 男5,000円程度 女5,000円程度 子有り家庭 会社員・公務員 男5,000~1万円 女5,000~1万円 自由・自営業 男1万円程度 女5,000~1万円 専業主婦女5,000~1万円 ひとり親男・女1万円程度 出典:「家庭の財政学」NTTイフライフプラン研究会 ファイナンシャルプランナー 豊田眞弓 自分に必要な保険をチェック! Check● 必要な入院日額をいくらにするか 「必要な医療保障の目安」の表を参考に、自分に必要な日額を決めよう。貯蓄が少ないと感じているなら、やや高めに設定すると安心だ。 Check● 入院保障は何日目から何日後までつけるか 現在の医療保険の主流は、1泊2日の入院から保障される2日型と、5日型。2日型のほうがトクなようだが、1日分の給付金では、病院に支払う診断書代などで消えることもままある。十分に検討しよう。また、給付日数も要チェックポイント。最長1,000日、無制限などがある。もちろん長いほど支払う保険料が高くなるので、自分なりのコストと保障のバランスを考えよう。 Check● 定期型か終身型か いつ病気になるかわからないため、医療保険は終身型が基本となり、生涯コストも定期型より安くなる。だが、現在のコストを抑えたい、または将来的には医療費は貯蓄でまかなうといった考え方なら定期型がベターだろう。 Check● 特約はつけるか 医療保険には、シンプルに入院や手術の費用をカバーするものもあるが、多くは特約としてがん保障や介護保障が用意されている。これは医療費でどこまでカバーするか、が検討のカギになる。つければコストがアップするため、これもコストと保障のバランスを考える必要がある。 Check● どの保険会社にするか 解約返戻金をなくして支払い保険料を低く抑えているところ、一定期間に病気をしなかった場合には保険料が下がるところ…。保険会社によって、さまざまな特徴がある。それぞれの特徴も検討しよう。 STEP3/がん保険はどう選ぶ? がん保険とは、文字通り、「がん」という特定の病気について手厚く、さまざまな角度から保障が考えられているもの。これに加入するかどうかは、がんに対するリスクを自分がどの程度感じているかで決まるだろう。家系的にがんの心配があるのなら、入っておいたほうが安心ではある。 主ながん保険の特徴 Check● 最初にまとまった一時金が出る がんと診断されたとき、入院したときと保険会社によって多少の違いはあるが、がんとわかった早い段階で一時金が出るため、希望によって健康保険の対象外となる先進医療や民間医療などの自由診療を受ける余裕を持つことができる。 Check● 入退院を繰り返しても給付金が支払われる 支払い限度日数が設けられていない(つまり無制限の)ため、がんで入院した場合は常に入院日数分の給付金が受け取れる。長期入院や、入退院を繰り返すときにも安心だ。 Check● 実損てん補タイプが登場 がん保険も、他の保険と同様に、がんと診断されたときにいくら、入院給付金はいくら、と契約時に決まっている定額払いがこれまでの主流。だが、2001年に実損てん補タイプが登場。これは自由診療を前提としたもので、医療費のほぼ全額をまかなうことができる。 Check● 保険会社によって種類はさまざま がん保険は、保険会社によって一時金の額はもちろん、通院給付金があるものないもの、がんが再発したときは何度でも診断給付金が受け取れるものと1回だけのものなど、実に種類が多い。それぞれの特徴をよく見極めて選ぼう。 Check● 注意!加入時の条件と待ち期間 がん保険の対象は、初めてがんにかかった人。つまり、がんと診断されたことがある人は入れないのだ。もちろん本人が告知されておらず、知らずに加入した場合でも対象外となるので要注意だ。また、がん保険には、3ヵ月の待機期間が設けられているのが一般的。この期間にがんが発見されると保険は無効となる。 特定の病気に備える保険は、がん保険以外にも! 特定疾病保障保険というのをご存知だろうか。これは、がんや急性心筋梗塞、脳卒中によって、所定の状態になったときに受け取れる保険。主に、医療保険の特約として「三大疾病特約」などとしてオプション的に付加するものと考えられているが、主契約にすることもできる。もちろんほかの保険と同様、定期保険にすることも終身型にすることもできる。特定の病気へのリスクが高いと考える場合は、こうした保険でカバーする方法もあるのだ。 保険を見直すコツとポイント 将来の病気やケガの心配をはじめるとキリがなく、保障はいくらでも厚くしたくなるのが人情というものだろう。だが、必要性の少ない保険に入って「保険ビンボー」になってしまっては本末転倒というもの。 必要な保障は、家計のバランスからも見直してみよう。例えば独身で一人暮らしなら、月収に占める保険料の割合は5%、親と同居しているなら3%が目安といった具合だ。また、子供のいる家庭では、子供の成長に合わせても見直しの必要が出てくる。小さいうちは保障も厚めにしたいが、大学生ともなれば8%程度に抑えてもいい。 大切なのは、自分のライフスタイルに合っているかどうか。また、定期的に見直しをしていくこともお忘れなく。 保険料の適正割合 子供のいないサラリーマン家庭(妻は専業主婦かパート)月収の5% 子供のいない共働きサラリーマン家庭月収の8% 小学生以下の子供がいるサラリーマン家庭/住居費がかからないサラリーマン家庭月収の10% 自営業の家庭月収の12% ※保険料とは、家族全員の生命保険料と損害保険料の合計額。こども保険や養老保険などの貯蓄目的の保険料は含めない。 出典:「ライフスタイル別 家計の方程式」畠中雅子著 生活人新書 公開日:2002年12月16日
がんにかかったらどのような治療が行われるのでしょうか。治療費はどのくらいかかるのでしょうか。がんの治療現場をのぞいてみましょう。 目次 がんの部位別平均入院日数 がんの主な治療方法 治療費はどのくらいかかる? がんの部位別平均入院日数 次の表は、がんの部位別の平均入院日数です。がんの治療のためには大体1~2ヵ月は入院が必要なようです。また、回数も1回ではすまないのが現状です。 がん 2005年 2002年 1999年 1996年 胃がん 34.6日39.3日41.8日47.1日 結腸がん 27.8日32.0日37.2日37.1日 直腸がん 33.6日38.4日42.2日45.6日 肝臓がん 26.9日30.4日33.2日38.4日 肺がん 34.1日39.7日44.8日50.1日 乳がん 17.0日27.8日30.0日36.1日 子宮がん 21.6日31.4日34.9日42.2日 悪性リンパ腫 37.5日52.4日63.5日72.4日 白血病 57.9日64.2日63.5日68.9日 出典:「患者調査」厚生労働省 がんの主な治療方法 健康診断などでがんが発見されたら、どのくらい進行しているのか「病期の判定」を行なうとともに、がんの組織型(がんがどの細胞にできているのか)を調べます。例えば、同じ胃がんでも、粘膜にできているがんと、筋肉部分にできているがんでは治療法が異なるからです。 このような検査を行った後、治療方法が検討されます。以下、主な治療方法を簡単に紹介します。 ■外科療法 がんの発生した部位から転移したところまでをまとめて切り取る治療法です。いわゆる手術です。現在は、転移したところまでごっそり切り取る「拡大手術」と、切り取る範囲をできるだけ最小限におさえる「縮小手術」の技術が発達してきています。 ■内視鏡療法 長い管の先に特殊なカメラをつけた内視鏡は、消化管内などの病巣の検査のほか、先に細いワイヤーを輪にしたものをとりつけて、がんに侵されたところを切りとるなど、治療にも活用されています。ただし、内視鏡を用いて治療できる部位などは限定されています。 ■レーザー療法 高出力レーザーを使って腫瘍を焼き切る方法と、低出力レーザーを使う光線力学的治療法があります。周りの正常な部分への影響を最小限におさえつつ、がんを焼き切ることができます。 ■放射線療法 がんに侵されたところに放射線をあてると増殖をおさえることができます。早期のがん(喉頭がん、乳がんなど)であれば患部を切除しないで治すことができます。また、末期がん患者の苦痛を和らげるのに用いられることもあります。 ■化学療法 いわゆる抗がん剤を使って、がん細胞を破壊する治療法です。静脈に注射をしたりすることで、抗がん剤が血液中を通り全身に運ばれるため、白血病などのがんに使用されます。また、手術療法や放射線療法の前後に使用されることもあります。 これらの治療法のほかにも、ホルモン療法、温熱療法、免疫療法など、さまざまな方法が考案されています。また、上で述べた治療についても、いくつかを組み合せて行うケースが多いようです。 このようにがんの治療技術は格段に向上してはいますが、それぞれ合併症や副作用などの危険性を伴うケースも多いようです。この点についても、医師の説明をよく聞いて納得した上で治療に臨む必要があります。 治療費はどのくらいかかる? がん治療にかかる費用は、がんの部位や病期、治療方法で異なるため、一概には言えないのが現状です。ここでは、一般的にどのような費用がかかるのかまとめました。 健康保険の対象となる治療については、本人の負担は医療費の3割となります。なお、自己負担額は1ヵ月あたり80,100円+(総医療費-267,000円)×1%が上限であり、それを超過した分の金額は健康保険から払い戻されます。ですが、例えば10月半ばから11月まで治療にかかった場合、10月、11月の治療費が80,100円を超えないと払い戻しはありません。また、手続きに3~4ヵ月かかるため、一時期医療費を負担しなくてはなりません。 なお、平成29年8月から、70歳以上の方の上限額が変更となります(高額療養費制度を利用される皆さまへ:厚生労働省)。 先進医療とは、要件を満たして承認されたもので、これらの医療は特定の承認を受けた病院で行われます。ただし、一般的な治療にも共通する検査、投薬、入院料などは健康保険の給付が受けられますが、「先進医療に係る費用」は患者が全額自己負担になります。 このほか、健康保険の対象外である抗がん剤などを利用する場合、実費分を自己負担することになります。 ■関連記事 がん10年生存率は56.3%、80%以上は前立腺、甲状腺、乳房、子宮体など 国立がん研究センター/全国がんセンター協議会 がん告知で「びっくり退職」はちょっと待った!サバイバー伝授!がんとお金(2) 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 更新日:2020/09/25
平成12年4月からスタートした介護保険。介護保険は、高騰する老人医療費を抑制し、寝たきりなどの在宅老人のケアを公的に助けることが目的。制度について知っておこう! 目次 介護保険とは 介護保険でこうなる! まだまだ不透明な介護保険 介護保険とは 寝たきりや認知症で介護が必要(要介護状態)になったり、常時ではないが日常生活を助けてもらう必要(要支援状態)ができたとき、この介護保険からサービスが受けられる。サービス(保険でもお金が支給されないので、医療保険のような感じ)が受けられる人は細かい規定はあるが、おおざっぱに言えば40歳以上の人。 65歳以上の人で年金が一定額以上の場合には、保険金はそこから天引きされる。 また40歳から65歳未満の人は加入している医療保険によって額が決められ、医療保険料と一緒に払うことになる。 現実に「おじいさんが寝込んだ!ヘルプ!」となったら、市町村に要介護認定を申請する。ケアマネージャーが家族や本人と話し合い、日常生活状況を調査、医師の意見書と共に提出それが市町村で認定され程度が判断(金額の算出)される。ケアマネジャーは今度は実際にサービス(介護やら、器具の貸し出し、住宅の改造など)の種類やスケジュールを家族や本人と相談し、計画、実際にサービスが受けられよう手配する。算定された金額の1割は自己負担になる。 介護保険でこうなる! Aさん一家の場合 ではここで、Aさん一家を例にとって、介護保険の費用・サービスをみてみよう。Aさん一家の家族構成は図のとおり。父78歳は、認知症・寝たきりで要介護度5(過酷な介護)に認定される。 母72歳は、心臓、足腰が弱いが身の回りのことは自分でできる。杖は必要。要介護度0。 【父】 主なサービス内容介護保険の場合(自己負担額) 1日4回の1時間の介護や排泄援助×3週約46,000円(約4,600円) 週1回の入浴介護×3週約17,000円(約1,700円) 週1回の巡回入浴×3週約39,000円(約3,900円) 週1回の訪問看護×3週約15,000円(約1,500円) 月の内1週間のショートステイ約45,000円(約4,500円) レンタル代(ベッド、エアマット、車椅子、紙オムツ、尿取りパッド)約23,000円(約2,300円) その他サービスを含めた合計金額/月約23万~29万円(23,000~29,000円) 【母】 主なサービス内容介護保険の場合(自己負担額) 週1回の訪問リハビリ約20,000円(約2,000円) デイサービス約27,000円(約2,700円) 杖の支給または貸し出し約4,000円(約400円) ベッド貸し出し約8,000円(約800円) 浴室滑りどめマット約1,900円(約190円) その他サービスを含めた合計金額/月約6万円(約6,000円) ※1998年現在 まだまだ不透明な介護保険 ●心臓など疾患は、病気であるため医療保険で処置される分野。このAさんのお母さんのように、今現在、際だって生活に支障がない場合は、介護の分野に入らない。 ●住宅改造や、杖の貸し出しなど、1回で終わるものについて、どのような形でお金が算出されたり、自己負担がかかってくるかはまだはっきりしていない。 ●老人医療や保健関係者に聞くと、まだ完全にできあがっていない制度なので、各サービスの値段の設定や、地域間の各種の格差の解消は問題として残るようだ。
新しいシステム、定額制 わが国の医療費支払いシステムは、保険料を払いさえすればだれでも等しく医療が受けられる国民皆保険体制のもと、出来高払い制(投薬、注射、検査など診療行為ごとに定められた点数を積み上げて医療費を算定する方法)をベースに成り立っています。 ところが、毎年1兆円ずつ増え続ける医療費に対応するために出来高払い制は、その姿を大きく変えつつあります。 出来高払い制に変わって定額制(個々の診療行為ごとに医療費を定めないで、この病気はまとめていくらという定額払いの方法)が老人医療や小児医療で積極的に取り入れられています。定額制には、過剰な投薬や検査などの医療行為が抑制されるメリットがある半面、病医院側が多くの収益を得るために手抜きをすることもできますから、患者サービスの質が低下していく傾向も指摘されています。 患者の負担も増加傾向 一方、患者の一部負担金額も増えています。1997年(平成9年)9月には健康保険の自己負担率が1割から2割にアップしました。入院費用に関しても、すでに差額ベッド代や食事代が実費になっています。このような傾向は、今後ますます強まっていくといわれています。
定年退職者を救済 健康保険の被保険者が定年退職した場合、多くは国民健康保険の被保険者になります。しかし今まで所属していた被用者保険に比べて給付率が低いため、自己負担が増えることになります。そのうえ、老齢により医療の必要性は増してしまいます。これらの矛盾を解決するために1984年(昭和59年)に創設された制度です。 退職者のうち厚生年金、農林漁業団体職員共済など年金制度の老齢(退職)年金受給者または通算老齢(退職)受給者のうち加入期間が20年以上ある人または40歳以降10年以上の被保険者期間がある人、およびその家族は、国民保険制度の退職者保険制度の適用を受けることができます。 退職被保険者に該当したときは、年金証書が到着した日の翌日から14日以内に年金証書を添付して市町村に届け出ます。届け出の際には、家族についても健康保険に準じて届け出ます。 国民健康保険より高い給付率 この制度の適用を受けると、保険の給付率が本人ならば入院・通院ともに8割、家族は入院8割、通院7割と、一般の国民健康保険の入院・通院の給付率より高くなります。ただし、年金受給の開始年齢に達していない人、老人保健の対象者は、退職者医療制度の適用は受けられません。
利用者本位の仕組みづくり 寝たきりや痴ほうの高齢者が急速に増え、介護の長期化や介護者の高齢化が進む一方、高齢世帯の増加や女性の社会進出により、家庭の介護機能は低下しつつあります。 また、老人介護に関する現行の制度では、老人福祉と老人医療が分立しており、 総合的なサービスが受けられない 利用者が自由にサービスの選択を行えない 医療サービスが非効率に利用されている といった現状にあります。 そのため国では「介護保険制度」を創設しました。この制度のもと現在の老人福祉と老人医療の制度を再編成し「利用者本位の仕組み」が作られようとしています。 環境の整備の遅れの外、制度の矛盾点も多い 「介護保険制度」は、2000年から在宅に関する給付と施設に関する給付が同時に実施されており、被保険者は40歳以上とされています。 要介護状態もしくは要介護状態になる恐れがある被保険者に対して保険給付が行われる場合は、まず、その人がどの程度の要介護状態にあるのか、どれくらいの介護が必要なのかを確認するための要介護認定(心身の状況調査やかかりつけ医の意見をもとに市町村の介護認定審査会が判断)が行われます。 そして、保険給付の内容に基づいてケアマネジャーと呼ばれる専門家が介護サービス計画を策定して、利用者のサービス選択と利用を支援する仕組みになっています。 2000年に向かって関係者の間では急ピッチで準備が進められていますが、その一方で施設および在宅サービスの未整備やマンパワーの不足、制度自体の矛盾点などが指摘されており、介護保険の施行について危ぶむ声も多く上がっています。
控除の最高額は200万円 税金の医療費控除は本人または本人と一緒に生活している配偶者や親族のための医療費を支払った時に控除されます。また、財産を相続した人が、亡くなった人の医療費を負担する場合も控除されます。 控除できる額は、医療費から10万円(総所得額が200万円未満の場合は、その5%相当額)を差し引いた額となっています。ただし、控除の最高額は200万円です。 申告の仕方は、税務署に「医療費控除の申告書」と電話で申し出れば、すぐに送ってくれます。これに記入して控除を受ける医療費の明細書と領収証を添えて郵送すれば、還付金が自分の郵便局や銀行口座に振り込まれてきます。 領収書は添付・提示することが要件になっていますが、ない場合は医療を受けた人の氏名、支払い年月日、支払い先、支払い金額が分かる書類があれば認められます。 なお、申告の年に実際に支払った金額であることが必要で、未払いのものや年が明けてから支払った医療費は控除対象にはなりません。 医療費控除の対象となる主な項目 診療費または治療費 医療施設、老人保健施設の入院・入所費 あんま・マッサージなどの施術費 付添い看護料、訪問看護料、訪問リハビリ料 分べん介助料 通院費、医師等の送迎費 入院の部屋代、食事代 義手、義足、入れ歯などの購入費 おむつの費用 温泉利用型健康増進施設の利用料金(医師の指示によるもの)等
保険診療分の患者負担額が一定額を超えた時 健康保険で診療を受けた時の保険診療分の患者負担が、一定の額を超えた時に「高額療養費」が支給されます。 これは、同一医療機関で1ヵ月(1日~月末)に健康保険本人および家族が支払った一部負担金が3万円(非課税世帯は2万1000円)以上のものだけを合算して合計が6万3000円(非課税世帯は3万5400円)を超えた時に、それを超えた分が還付される制度です。2ヵ月にまたがる場合には各月ごとに計算します。 また、この制度を過去12ヵ月間に3回以上受けている場合は、4回目から3万7200円(非課税世帯は2万4600円)を超えた分が戻ってきます。 差額ベッド代や食事代は対象外 高額療養費は、病院、診療所、老人保健施設、訪問看護ステーションの窓口で支払った保険の一部負担金が対象になります。従って、室料差額代や食事代は対象になりません。 さらに同じ病院であっても歯科と医科、医科でも診療科が違う場合は合算できませんし、外来と入院も合算できません。 この制度を受けたい場合には、支給申請書を社会保険事務所、健康保険組合または国民健康保険課に提出します。 なお、高額療養費が戻ってくるまでの間、医療費相当分を借りることができる「高額療養費貸付制度」(無利息)があります。社会保険事務所などに備えてある「高額療養費貸付金貸付申込書」を提出して手続きを行います。
保険適用めざし経過措置 技術革新から生まれた新しい医療技術で、まだ保険の適用を受けていない治療の場合に、新技術の部分だけ、費用を患者の自己負担とし、初診料や入院費などの基本的費用は保険で負担する仕組みが、1984年に制度化されました。 保険診療では、一部に保険適用外の医療を併用した場合には、全医療費が保険の適用外とされるのが大原則で、その場合には全てが患者の自己負担となります。 しかし、大学病院などのように、厚生大臣から特定承認保険医療機関の承認を受けた病院が、高度先進医療技術の承認を受けた技術を使って診断や治療を行う場合は、特定療養費制度の一環として、新技術以外の部分に保険適用が認められます。 新しい医療技術で、疾病の解明、予防、治療に果たす役割が大きく、国民の保健衛生の向上に多大な貢献をすると考えられるものについては、実地の医療への適用が急がれる半面、安全性や有効性のデータが不十分であり、また普及以前のものであるため、利用できる範囲が地域的に限定されるなどの理由から、保険適用に慎重にならざるを得ない面があります。 高度先進医療は、保険適用への経過措置の意味合いがあり、通常は、ここで安全性・有効性を確認し、さらに精度を高めた後に、保険が適用されています。 技術と病院をセットで承認 高度先進医療が承認された技術には、保険適用の場合と同様に、技術料金 (目安) が決められます。例えば、手術後の難聴などの治療に使う人工中耳は 124万円、心筋梗塞の際などに使われる血管内視鏡検査は28万9920円です。 医療内容とそれを行う病院がセットになって承認されるので、どこでどんな医療が行われるかを確認する必要があります。 ※2006年10月1日より、特定療養費制度は保険外併用療養費制度と名称が変更になりました。
人間ドックの3つの利点 船がドックに入るように、短期間入院して前進の精密検査を行い、疾病の早期診断、健康管理を行うことを人間ドックといい、日本病院会によると、毎年約180万人が人間ドックを受診しています。 人間ドックには、病気の早期発見、健康であることの確認、検査データが残り経時的な変化をチェックできる、という3つの利点があると言われてきました。 しかし、最近、民間企業の健康保険組合などから、その効果に対して疑問が出始めました。 健常者が2割切る 人間ドックをめぐっていま一番注目されていることの1つは、健常者 (どの検査項目にも異常がないか、軽度の異常がみとめられても日常生活に支障がないとされる人) の比率が4年間に3分の2に低下し、受診者全体の2割を切ったこと。もう1つは「要再精検」の率が検査機関の間で20~40%とバラツキが大きいことです。 健常者の減少は、健康状態の悪化と連動しており、とりわけ肝機能異常と高コレステロール血症の増加が顕著にみられます。 不健康人間の激増傾向は、人間ドックを受診しても、その後の健康状態の改善にあまり役立っていないことを示唆しています。 また、要再精検率の高さは、人間ドックへの信頼を損ねて、健康管理に逆効果を招く可能性も考えられます。 要再精検率の高さも問題 人間ドックの受診料は、主力の総合健診 (日帰りドック) で10万円弱。これは健康保険の適用外ですが、多くの民間企業の健保組合では、これまで保健事業として受診料を補助して、被保険者の利用を進めてきました。しかし、健康保険組合連合会では、今後、要再精検率の高い機関を補助の対象から除外するとともに、人間ドックの費用/効果の点も見直す必要がある、としています。