日本酒には体を温めるほか、多くの栄養成分が摂取できたり、生活習慣病などの予防にもつながったりとほかのお酒にない健康効果を期待できます。日本酒の効用や上手なつき合い方を紹介します。 目次 お酒は製法で3種類に分けられる 日本酒は栄養価が最も高い!? 体を温める効果はダントツ 生活習慣病予防にもつながる日本酒 誤解の多い日本酒もつき合い方の問題 決め手は原料と製法 お酒は製法で3種類に分けられる 温かい鍋物などがおいしい季節になってきました。となれば、まずは熱燗で一杯といきたいところ。飲めばお酒が体にしみわたっていくような…。実はこんな気分には、ちゃんと根拠があります。日本酒には、体を温めるのはもちろん、ほかのお酒にはないさまざまな健康効果まで期待できるのです。その秘密は原料と製法にあるようです。 お酒は、製法によって醸造酒、蒸留酒、混成酒の3種類に分けられます。簡単に言えば、醸造酒は原料を発酵させたもの。蒸留酒はその発酵液の蒸気が酒になります。混成酒はいろいろな酒を混ぜたり、果実などを加えたものです。 醸造酒日本酒、ワイン、ビールなど 蒸留酒焼酎、ウィスキー、ブランデーなど 混成酒リキュール、梅酒など 日本酒は栄養価が最も高い!? お酒は嗜好品なので、基本的に好きなものを飲めばよいのですが、健康効果を期待するなら醸造酒である日本酒がおすすめです。醸造酒には原料や発酵で生じる栄養成分がそのまま含まれているから。さらに、米と米麹を発酵させて造った日本酒はとりわけその栄養成分が多く、なんと700種類も含まれているという説もあります。アミノ酸、ビタミン、肝臓によいペプチドといった新陳代謝を高めるものや、体に必要な微量栄養素であるミネラルも豊富です。特にアミノ酸はワインの10~20倍もあるといいます。 種類 造り方 成分 アルコール度数 醸造酒 米、麦、ブドウ、サツマイモなどデンプンや糖分を含む原料を発酵させた発酵液を絞って造ります原料に含まれていた成分に加え、発酵過程の変化で生まれた多様な成分が溶け込んでいます低い 蒸留酒 原料を発酵させた発酵液に熱を加え、蒸発した湯気を冷やして造ります微量成分が多く存在しますが、蒸発しない糖分、アミノ酸、脂肪、ミネラルは含まれません高い 「ちょっといい気分」には理由がある 体を温める効果はダントツ お酒のアルコール分は、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解されますが、このアセトアルデヒドには血管を拡張させる作用があります。お酒を飲んでしばらく経つと体が熱くなるのは、そのせいです。日本酒には、このほかアデノシンという核酸の一種がほかのお酒と比べて圧倒的に多いようです。このアデノシンには血管の収縮を阻害させる作用があるため、ほかのお酒より長く体が温まった状態が続きます。 血管が開いて体が温まるということは、血行がよくなるということ。冷えや肩こり、腰痛、肌の分泌がよくなる美容効果や老化防止も期待できそうです。 生活習慣病予防にもつながる日本酒 日本酒は生活習慣病などの予防にもつながると言われています。糖尿病、がん、心臓疾患、アレルギー抑制、ストレス解消、うつ病…。そして、特に注目されているのが動脈硬化予防です。動脈硬化は血中のコレステロール値が高くなることで促進されますが、このとき問題になるのが悪玉コレステロールです。 だからと言って悪玉コレステロールがひたすら悪者というわけではありません。最近の研究では、悪玉コレステロールそのものが悪いわけではないことがわかってきています。悪玉コレステロールを摂り過ぎると血中に長く留まることになります。すると、活性酸素の影響を受けて酸化変性を起こし、動脈硬化を引き起こすのです。日本酒など醸造酒に含まれる抗酸化物は、悪玉コレステロールの酸化変性を抑制してくれます。そして日本酒には、血栓を溶かす作用もあり、生活習慣病予防には心強い味方と言えそうです。 誤解の多い日本酒もつき合い方の問題 さまざまな健康効果を紹介しましたが、日本酒もアルコール飲料のひとつであることに違いはなく、飲み過ぎは禁物です。個人差はありますが、人間の体が一晩(8時間)に分解できるアルコール成分は35~36mm程度です。この量が日本酒だと約2合が目安となります。日本酒が二日酔いしやすいと言われるのは、焼酎など蒸留酒は水などで割って飲むことが多いのに対し、ストレートで飲むことが多いからでしょう。 また、日本酒は肥満や糖尿病の原因になると誤解されることがあります。しかし、これもアルコールが食欲を麻痺させるために、つい食べ過ぎてしまうことが原因です。食中酒として飲まれることが多いため、日本酒は、肥満の原因と思われてしまうのです。お酒を飲むときほど食べ過ぎに気をつけること。上手な食べ方としては、最初にアルコールの吸収をゆっくりさせる油料理を少量摂り、後はさっぱりしたたんぱく質食品、野菜を摂るように心がけましょう。特に、たんぱく質、ビタミンA、D、E、Kを含む食品をいっしょに摂るとよいと言われています。 日本酒といえば和食を連想することが多いが、実は洋食との相性もよいようです。なかでもチーズとの相性はバツグンだとか。健康や美容のためだけではなく、さまざまな料理に日本酒を合わせてみましょう。意外なハーモニーを発見でき、飲む楽しみが増えるかもしれません。ただし、くれぐれも飲み過ぎにはご注意ください。 取材協力/資料提供:日本酒造組合中央会 公開日:2003年10月14日
めでたい行事が続き、贅沢なご馳走がずらりと並ぶ、お正月。実は、このご馳走の中にも、先人たちの健康への知恵がいっぱいです。今回は、お正月の飲み物、食べ物に秘められた健康の知恵をご紹介します。 目次 風邪の予防にも効果!?お屠蘇(とそ) 元日の朝一番にくむ水、若水(わかみず) 大切な供物であり、栄養剤!お酒 試してみよう!「大福茶」&「梅実酒」 風邪の予防にも効果!?お屠蘇(とそ) 元日の朝に、家族そろって東の方角を向き、年少者から年長者へと順に盃を回します。これがお屠蘇をいただく作法なのだそうです。 このお屠蘇の由来には諸説あり、仙人が考案したといった説もありますが、現在最も有力とされているのは、中国の名医が一年の邪気を払うために作り、配ったのがはじまりというものです。「屠」はほふる、「蘇」は悪鬼の意味で、「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生させる」という意味を持ちます。また、昔は、屠蘇を入れた赤い袋を大晦日の夜に井戸の内側に吊しておき、元日の朝に取り出して酒もしくはみりんに漬け込んで飲んだら、最後はまた井戸に袋の中身を投げ入れる習慣だったそうです。 さて、問題の中身ですが、成分はもちろん漢方薬。処方によって8種類のものあり、10種類のものありとさまざまですが、現在主流となっているのは以下の5種類が調合されたものです。 白朮(びゃくじゅつ) キク科のオケラまたはオオバナオケラの根 利尿・健胃・鎮静作用 山椒(サンショウ) サンショウの実 健胃・抗菌作用 桔梗(キキョウ) キキョウの根 鎮咳去啖・鎮静・鎮痛作用 肉桂(ニッケイ) ニッケイの樹皮、シナモン 健胃・発汗・解熱・鎮静作用 防風(ボウフウ) セリ科ボウフウの根 発汗・解熱・抗炎症作用 胃腸のはたらきを整え、のどや気管支を守るものが主です。風邪の予防にも効果が期待できるとされます。今では薬局などで手軽に手に入るので、今度の正月には、ぜひ飲んでおきましょう。 元日の朝一番にくむ水、若水(わかみず) 元日の朝一番にくむ水が、いわゆる「若水」。平安時代には、立春の日に宮中の主水司(もいとのりのつかさ)から天皇に水が献上され、年中の邪気を払い、若返りを祈ったとされ、これがお正月の「若水」の行事になったといわれます。 一般的な若水の使われ方は、手や口、顔を清める、若水でお茶をたてて飲む、沐浴をするとさまざまです。ただ、この行事の根底には、水は老化を防ぎ、健康を保つために重要なものであるといった、水の効用を再確認する意味があったといわれています。 確かに、人間の体は約60%が水分。この水分量が40~50%に低下しただけで生命を維持するのが不可能になるのですから、人間にとって水は非常に重要なものです。また、水分は体内の老廃物を排出するためにも不可欠な存在。うまく排出できないと、体内に老廃物がたまって病気にもなりかねません。私たちも今一度、上手に水分補給することを考えたいものです。 大切な供物であり、栄養剤!お酒 めでたい席、特にお正月に供されるアルコールといえば、やはり「日本酒」でしょう。日本酒の歴史は、稲作がはじまった弥生時代にはじまるとされますが、この当時のお酒は、いわゆる「どぶろく」。その後、米麹が発見され、現代のような日本酒が作られるようになったのは奈良時代あたりからだそうです。 もちろん「御神酒(おみき)」といった言葉があるように、お酒は神々への大切な供物とされ、一般には栄養剤としても飲まれていました。この日本酒にも、効能は多いようです。 ただし、こうした日本酒の効果も、飲み過ぎれば何の意味もありません。また、美肌効果などは、飲むばかりではなく、化粧水にして肌につけたり、酒風呂に入ることでも得られます。飲み過ぎの弊害が大きく取り上げられる昨今、さまざまな効能のある飲み物だからこそ、適量を守り、その効果だけを享受するように努めるようにしましょう。 美肌効果 日本酒に含まれる「麹酸」には、シミやホクロの原因となるメラニン色素の生成を抑えるはたらきがあります。 老化防止 日本酒の「麹酸」は抗酸化物質の一種。このため、老化の原因とされる活性酸素の発生を抑制し、細胞の活性化を促す効果があります。 冷え性の予防 アルコール類は血行を促進するはたらきがありますが、なかでも日本酒は、ほかのアルコールを飲んだときより体温が約2℃高い状態が長く続く。つまり、皮膚の表面の血液の循環が良くなります。 試してみよう!「大福茶」&「梅実酒」 今度のお正月には、ちょっと趣向を凝らして、次のような飲み物を試してみましょう。味よくめでたく、良いお正月が迎えられそうです。 大福茶 作り方は簡単!湯飲みに昆布と梅干しを入れ、若水でいれた熱いお茶をそそぐだけ。黒豆や山椒を入れる場合もあります。これは、平安時代に疫病で悩まされていた天皇がこのお茶を飲んで治ったのがはじまりとされる縁起のいいお茶です。 梅実酒 梅干しを軽く火であぶり、盃に入れて日本酒をそそぎ、5~6分そのままにして梅の味や香りが酒に移ったところで飲みましょう。これも梅や桜、菊などの花びらを酒に浮かべて飲む平安時代の風習からきたもの。疲れた体にも効きそうです。 公開日:2002年12月24日
お酒は、「万病のもと」でしょうか?それとも「百薬の長」でしょうか?適量であれば、体にとって良い点もあるようです。しかし、限度を超えてしまうと命を落とすことも…。お酒の良い点、悪い点をご紹介します。 目次 お酒って体にいい?お酒の良い点 危険がたくさん!お酒の悪い点 お酒って体にいい?お酒の良い点 大好きな人にはたまらないお酒。お酒は健康の大敵なんていわれるけど、量次第で良いこともたくさんある。特に女性に人気の赤ワインもそのひとつだ。 ここでは、お酒の良い点をいくつか紹介しよう。 赤ワインで動脈硬化を防止! 赤ワインには、ポリフェノールと呼ばれるブドウの皮と種に多く含まれる天然物質の色素や成分が多く含まれている。動脈硬化は、血液中に余分なコレステロールが増え過ぎ、血管に溜まった結果、起こる病気だが、ポリフェノールには、この動脈硬化を予防するはたらきがある。 白ワインで食中毒防止! 白ワインは有機酸を多く含み、酸性度が高いため殺菌力が強い。実際、食中毒の原因でもあるサルモネラ菌を白ワインに付けたところ、10分後には47万個あったサルモネラ菌が60個に減ったという。ほかのアルコールや赤ワイン、酢などに比べても効果は絶大だ。 ビールには美肌効果が! ビールに含まれる麦芽には、美肌効果があるビタミンB2が含まれている。このほかにも、ビタミンB群をはじめとして、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウムなど、豊富なミネラル類がバランスよく含まれている。また、女性ホルモンの乱れから起こる更年期障害による肩こりなどにも、微量ながら効果あり。 なんといってもストレス解消! お酒を飲む理由はなんといってもコレではないだろうか。アルコールは大脳の中の理性をつかさどる前頭葉に軽い麻痺を起こさせるため、嫌なことをパーっと忘れて楽しくなれるのだ。ただし、飲み過ぎると運動機能をつかさどる小脳にまで麻痺が進み、歩くことはおろか意識までもうろうとしてしまうため要注意! 危険がたくさん!お酒の悪い点 いいことづくめのお酒のようだが、適量を超えればもちろん万病のもと。命を落とすことだってある! 脂肪肝 1日5合以上の飲酒を1週間ぐらい続けていると必ず起こるといわれる。肝臓の細胞内の脂肪量が増えた状態をいう。初期はとくに症状はないが、ひどくなると腫れてくる。自分のお腹(右側の肋骨の一番下あたり)を押してみて、硬くなっていたら脂肪肝の恐れあり。 ●アルコール性肝炎 脂肪肝の状態でさらに過度に飲みつづけると、食欲減退、吐き気、倦怠感、腹痛、発熱、黄だん、肝臓が腫れて重苦しいなどの症状が出る。これは、肝細胞の一部が破壊されてしまったため、肝臓が炎症を起こしているのだ。この肝炎を繰り返していると、肝硬変につながることになる。 ●肝繊維症 肝臓の中に、目に見えない糸のようなものがたくさんできて、肝臓が硬くなる病気。このため、肝臓の血液の流れが悪くなり、細胞自体が傷ついてしまうわけだ。自覚症状はアルコール性肝炎と同じだが、倦怠感や発熱、黄だんなどの症状はないようだ。 肝硬変 肝臓に何度も炎症が起こると、胃腸から肝臓に入ってくる血液の流れが悪くなり、肝臓を通り抜けられずに肝臓や脾臓にパンパンになるくらいに溜まってしまう。そして、ほかの通り道を求めて、普段は通らない食道の血管を迂回しようとする。これが、「食道静脈瘤(りゅう)」といわれるもの。食べ物が食道を通った摩擦で破裂し、大出血を起こしてしまうことがあり、死につながりうる症状である。 高血圧 飲酒は動脈硬化などにつながりやすい高血圧の原因にもなるようだ。統計的な研究をもとにすると、1日2合以上飲んでいると血圧が高くなるという説もある。高血圧は生活習慣病のなかでも最も多い疾患で、放っておくと脳血管障害、虚血性心疾患などの死亡率の高い病気を引き起こすことになる。 アルコール依存症 過度の飲酒が体に害を与え、社会や家族にも迷惑をかけていると知りながら飲む、いわば心の障害。現在、230万人以上の患者がいるといわれ、かなり深刻な問題になってきている。お酒がなければ気分がすぐれず焦燥感に陥る精神依存の場合や、お酒が入っている時は一見正常に見えるのに、アルコールが体内から消えていくと落ちつかなく、吐き気や手の震えを感じるなど身体依存の場合がある。 公開日:2001年12月3日
大好きな人にはたまらないお酒。たばこやお酒は健康の大敵、なんていわれるけど、お酒は量次第でいいこともたくさんあります。ここでは、お酒の良い点、そして気を付けるべき点を紹介します。 目次 お酒は「百薬の長」!お酒の良い点 でも危険がたくさん!お酒は「万病のもと」 お酒は「百薬の長」!お酒の良い点 赤ワインで動脈硬化を防止! 赤ワインには、ポリフェノールと呼ばれるブドウの皮と種に多く含まれる天然物質の色素や成分が多く含まれています。動脈硬化は、血液中に余分なコレステロールが増えすぎ、血管に溜まった結果、起こる病気ですが、ポリフェノールには、この動脈硬化を予防するはたらきがあります。 白ワインで食中毒防止! 白ワインは有機酸を多く含み、酸性度が高いため殺菌力が強いです。実際、食中毒の原因でもあるサルモネラ菌を白ワインにつけたところ、10分後には47万個あったサルモネラ菌が60個に減ったといいます。ほかのアルコールや赤ワイン、酢などに比べても効果は絶大です。 ビールには美肌効果が! ビールに含まれる麦芽には、美肌効果があるビタミンB2が含まれています。このほかにも、ビタミンB群をはじめとして、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウムなど、豊富なミネラル類がバランスよく含まれています。 また、女性ホルモンの乱れから起こる症状のひとつである更年期障害による肩こりなどにも微量ながら効果があるようです。 なんといってもストレス解消! お酒を飲む理由はなんといってもコレではないでしょうか。アルコールは大脳の中の理性をつかさどる前頭葉に軽い麻痺を起こさせるため、嫌なことをパーっと忘れて楽しくなれるのです。ただし、飲みすぎると運動機能をつかさどる小脳にまで麻痺が進み、歩くことはおろか意識までもうろうとしてしまうため要注意です。 でも危険がたくさん!お酒は「万病のもと」 いいことづくめのお酒のようですが、適量をこえればもちろん「万病のもと」になります。命を落とすことだってあるので、適量を守って楽しみましょう。 脂肪肝 1日5合以上の飲酒を1週間ぐらい続けていると起こるといわれます。肝臓の細胞内の脂肪量が増えた状態をいいます。初期はとくに症状はありませんが、ひどくなると腫れてきます。自分のお腹(右側の肋骨の一番下あたり)を押してみて、硬くなっていたら脂肪肝の恐れがあります。 ●アルコール性肝炎 脂肪肝の状態でさらに過度に飲みつづけると、食欲減退、吐き気、倦怠感、腹痛、発熱、黄疸(おうだん)、肝臓が腫れて重苦しいなどの症状が出ます。これは、肝細胞の一部が破壊されてしまったため、肝臓が炎症を起こしているということ。この肝炎を繰り返していると、肝硬変につながることになります。 ●肝繊維症 肝臓の中に、目に見えない糸のようなものがたくさんできて、肝臓が硬くなる病気です。このため、肝臓の血液の流れが悪くなり、細胞自体が傷ついてしまうことになります。自覚症状はアルコール性肝炎と同じですが、倦怠感や発熱、黄疸などの症状はないようです。 肝硬変 肝臓に何度も炎症が起こると、胃腸から肝臓に入ってくる血液の流れが悪くなり、肝臓を通り抜けられずに肝臓や脾臓にパンパンになるくらいに溜まってしまいます。そして、ほかの通り道を求めて、普段は通らない食道の血管を迂回しようとします。これが、「食道静脈瘤(りゅう)」といわれるものです。食べ物が食道を通った摩擦で破裂し、大出血を起こしてしまうことがあり、死につながりうる症状です。 高血圧 飲酒は動脈硬化などにつながりやすい高血圧の原因にもなるようです。統計的な研究をもとにすると、1日2合以上飲んでいると血圧が高くなるという説もあります。高血圧は生活習慣病のなかでも多い疾患で、放っておくと脳血管障害、虚血性心疾患などの死亡率の高い病気を引き起こすことになります。 アルコール依存症 過度の飲酒が身体に害を与え、社会や家族にも迷惑をかけていると知りながら飲む、いわば心の障害です。現在、230万人以上の患者がいるといわれ、かなり深刻な問題になってきています。お酒がなければ気分がすぐれず焦燥感に陥る精神依存の場合や、お酒が入っている時は一見正常に見えるのに、アルコールが体内から消えていくと落ちつかなく、吐き気や手の震えを感じるなど身体依存の場合があります。
お酒には健康にとってのメリットがいくつもあります。アルコール別に体にいい理由をまとめました。また焼酎の健康パワーについても紹介します。 目次 アルコール別・体にいい理由 Jカーブが示す「ほどほど飲めば長生きできる」 今なぜ?焼酎ブーム アルコール別・体にいい理由 個人の健康状態にもよるものの、「百薬の長」という呼び名のとおり、お酒には健康にとってのメリットがいくつもあるといわれています。 さて、今宵飲むのはどんなお酒?次の表で健康パワーをチェックしましょう。 醸造酒 …微生物によるアルコール発酵でできたお酒 お酒の種類 お役立ち成分 期待される効果 ワイン カテキンやタンニンなどのさまざまなポリフェノール類 抗酸化作用、抗動脈硬化作用、がん細胞増殖の抑制、血中コレステロールの低減など ビール ビタミンB1・B2、パントテン酸、葉酸など 整腸作用、利尿作用、善玉コレステロールの増加など 日本酒 糖分、アミノ酸、ビタミン類など 毛細血管の拡張、抗がん作用など 蒸留酒 …醸造酒をさらに蒸留器で処理して濃縮したお酒 お酒の種類 お役立ち成分 期待される効果 ウイスキー 熟成中、樽材から溶け出したエラグ酸(ポリフェノールの一種) 胃粘膜の保護、がん細胞増殖の抑制、血中コレステロールの低減、肝機能強化、糖尿病の合併症の予防効果など 焼酎 本格焼酎の香り成分 血栓溶解効果 混成酒 …醸造酒や蒸留酒に、植物の根や果実などの香味を移したり、糖分を加えたもの お酒の種類 お役立ち成分 期待される効果 リキュール 各種リキュールに含まれる植物の有効成分 例) 梅酒:クエン酸による疲労回復効果 カンパリ:コリアンダーによる整胃効果 Jカーブが示す「ほどほど飲めば長生きできる」 「まったく飲まない人や大量飲酒する人に比べて、適度な飲酒者の死亡率は総じて低い」という、お酒好きにはちょっと嬉しいデータもあります。1日に日本酒換算で1~2合程度の飲酒をする人が、心疾患や事件・事故などの死亡リスクが一番少ないというのです。ただし、それ以上の量を飲むと、一気に死亡率が跳ね上がってしまうからご用心。 この現象は、グラフに表したときの形から「Jカーブ」と呼ばれています。くれぐれも「百薬の長」という言葉に甘えないようにしましょう。 今なぜ?焼酎ブーム 酒は世につれ、世は酒につれ…。お酒の流行は、世相を映す鏡でもあります。 戦後、贅沢品だった飲酒の民主化がすすみ、1960~70年代には豊かさの象徴としてウイスキーが好まれました。70~80年代のチューハイブームを経て、バブル期から90年代には高級志向と健康ブームにのって赤ワインの消費量がアップ。その一方で各社がシェアを奪い合う、熾烈な「ビール戦争」も繰り広げられました。そして21世紀、焼酎も人気になりました。 焼酎は製法により、甲類(高純度に精製)と本格焼酎(アルコール以外の成分が多く含まれ、乙類とも呼ばれる)に分けられます。沖縄の琉球泡盛も、本格焼酎の仲間です。 血栓溶解作用についても注目を集めている焼酎、これまで敬遠していた人も一度試してみてはいかがでしょうか。 1. 後に残らない! 「アルコール成分がエタノールの1種類なので、代謝しやすい(甲類)」、「代謝の邪魔になる成分が含まれていない」「早く酔いを知覚するので、飲む量を自然とセーブする」など各説があります。 2. 血栓溶解作用の研究が進んでいる 本格焼酎の香り成分には、血栓を溶かす作用があるという研究報告があります。 3. 価格がお手ごろ なかには高価な「幻の焼酎」もあるが、全体的に焼酎は価格がお手ごろです。節約したい方にはおすすめのお酒といえるでしょう。 4. 種類が豊富 焼酎の原材料は、麦、芋、米、ソバ、黒糖、ゴマ、栗、ニンジン、カボチャ、わかめ、海苔など、およそ50種の素材が認められています。割って飲んだり、何かを足したり、工夫次第でいろいろな味を楽しめます。
肝臓のアルコール分解能力は体重によって変わります。体重が重いほどアルコール分解能力が高く、体重が軽いほど分解能力は低いので適量は少なめ。適正飲酒量を計算してみましょう。 目次 「適量」を決めるのは、血中アルコール濃度! 「お酒の単位」とは?適量は「2単位」まで もうちょっとカスタマイズするなら?適正飲酒量を計算してみよう! 「適量」を決めるのは、血中アルコール濃度! 「お酒を飲むなら、適量を守りましょう」……何度も聞いた言葉ですが、この「適量」というのが大問題です。「二日酔いにならない程度かな」「記憶を失う直前でしょ?」など、人によって解釈もさまざまですが、適量の決め手となるのは血中アルコール濃度となります。 体内に入ったアルコールは約20%が胃で、残りの80%が小腸で吸収され、血流に乗って全身を巡る途中、肝臓で分解されます。どんどん分解されれば酩酊せずにすむのですが、肝臓のアルコール処理能力は限界があり、処理しきれなかった分のアルコールは血液中に残り、再び体内を循環します。 血液中にどれだけアルコールが残っているかで酔いの状態が違ってきますが、血流がよくなり、リラックスしたり、陽気になる「ほろ酔い状態」のときには、血中アルコール濃度が0.05%~0.1%。これ以上濃度が高くなると、ふらついたり、吐き気をもよおしたりと酩酊状態に陥ってしまいます。 というわけで、お酒の「適量」とは血中濃度が0.1%までに抑えられる分量をいいます。 「お酒の単位」とは?適量は「2単位」まで 「血中アルコール濃度0.1%」といっても、実際どれくらいの量に該当するのか、ピンと来る人は少ないでしょう。そこで便利なのが、「お酒の単位」という考え方です。 日本酒1合、ビール中びん1本、ワイン1/4本、ウイスキーの水割り(シングル)2杯に含まれるアルコールの量は、だいたい20g前後となります。体重60kgの人が30分以内に飲んだ場合、約3~4時間で分解される量に相当しますが、これを「酒1単位」としています。医学的には「1日2単位まで」というのが定説です。例えば、ビール中びん1本(500ml)とワイン1/4本(180ml)飲んだら、合計2単位になります。 大好きなお酒と末永く付き合うためにも、まずは「酒1単位」を丸暗記しましょう。 酒1単位 ビールアルコール度数5%中びん1本(500ml) 日本酒アルコール度数15%1合(180ml) ワインアルコール度数14%1/4本(180ml) ウイスキー水割りアルコール度数14%シングル2杯、ダブル1杯(60ml) 焼酎お湯割りアルコール度数25%0.6合(110ml) アルコール量の計算式 お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8 例)ビール中びん1本 500×[5÷100]×0.8=20 もうちょっとカスタマイズするなら…適正飲酒量を計算してみよう! 肝臓のアルコール分解能力は体重によって変わってきます。つまり、体重が重いほどアルコール分解能力が高く、体重が軽い場合や、お酒に弱い人、高齢者は「酒2単位」よりも適量が少なめということになります。 自分の体重にあわせて適量をカスタマイズするなら、下記の計算式で適正飲酒量を求めてみましょう。 適正飲酒量を計算してみよう! あなたの体重 kg アルコール度数 % ml 例えば体重50kgの人の場合、ビール(アルコール度数5%とする)の適量は【0.1×833×50】÷5=833mlとなり、ビール中びん1本と1/2本程度の量に該当します。 適正飲酒量について紹介してきましたが、ここでは「適量」=「血中濃度が0.1%までに抑えられる分量」としています。ですが、よく知られている通り肝臓でアルコールを分解する酵素が生まれつきうまくはたらかない体質の人もいます。体調によっては、飲酒を控えたほうがよい日もあります。適正飲酒量はあくまで目安。お酒に強くても飲みすぎないようにすることが肝心ですし、もちろん無理にお酒を勧めることもやめましょう。 飲む前に読む・二日酔い防止術 公開日:2004/12/06更新日:2018/05/14
アルコールを順調に代謝するためには、丈夫な胃と肝臓が必要です。ツラい二日酔いを防ぐために、胃と肝臓をアルコールから守る成分・食材を知って、飲みに備えましょう。 目次 お酒を飲む前に食べる お酒を飲みながら食べる 飲んだ後に食べる アルコールを順調に代謝するためには、丈夫な胃と肝臓が必要です。まず胃と肝臓をアルコールから守る成分を食べて、「飲み」に備えましょう。また、日頃からこうした成分をサプリメントで補っておくのもおすすめです。 成分 食材 はたらき クルクミン ウコン 胆汁の分泌を促進し、肝臓全体の解毒作用を高めるといわれています。普段から摂取し肝機能を強化するのがおすすめ。 セサミン ゴマ 活性酸素を取り除き、肝機能を高めてアルコール代謝を促すといわれています。アルコールを飲む前にサプリメントなどで補いましょう。 シリマリン マリアアザミ 肝臓の細胞を修復し、保護する作用があるといわれています。アルコール性の肝炎などに有効という説もあります。 脂肪 ヨーグルト、牛乳など 乳製品に含まれる脂肪が胃に膜を張って、アルコールの吸収を穏やかにしてくれます。お酒を飲む30分~1時間前に摂取しておきましょう。 サプリメントを利用するなら:アルコール好きにささげるサプリ 乾杯の後、飲む方にばかり一生懸命になってはいけません。「飲みながら食べる」ことが、二日酔い防止術の鉄則です。アルコール代謝を助ける成分をおつまみなどで補いましょう。 成分 食材 はたらき 動物性・植物性たんぱく質 肉、魚、チーズ、豆腐、枝豆など 肝臓がアルコールを代謝する際に必要な成分。焼き鳥や刺身、枝豆が酒の肴の定番だったり、ワインとチーズのセットも理にかなっています。 ビタミンB1 ネギ、ニラ、にんにくなど 肝臓のアルコール代謝に必要な成分。ネギやニラ、にんにくに含まれるB1はアリシンという物質との複合体で存在し、体内に長くとどまることができます。 ビタミンC イモ類、小松菜、ブロッコリー、ピーマンなど アルコール代謝に不可欠であると同時に、アルコールによって腸管からの吸収が阻害されてしまうビタミンC。食事でしっかり補いたいものです。 ビタミンE ナッツ類 アルコール代謝を促進するはたらきがあります。ただし、高カロリーなので、くれぐれも食べ過ぎないようにしましょう。 すでに二日酔い状態の場合は、アルコールの代謝を促進することと、アルコール分解の途中で生じたアセトアルデヒドの分解を促すことを心がけましょう。まずは水分を摂取し、食欲が出てきたら栄養補給をしましょう。 成分 食材 はたらき 水分 スポーツドリンク、ミネラルウォーターなど まずはアルコール代謝で消費された水分の補給をします。スポーツドリンクなら、不足しているビタミンやミネラルも一緒に補うことができますが、普通の水でももちろんOKです。 果糖 オレンジジュース オレンジに含まれる果糖はアルコールの分解を早め、ビタミンCはアセトアルデヒドの分解を促進してくれます。 タンニン、カタラーゼ 柿 タンニンは胃の粘膜を収縮させ、アルコールの吸収を穏やかにします。カタラーゼなどの酵素はアルコールの代謝を活発にさせる作用があります。さらにビタミンCも豊富です。 タウリン シジミの味噌汁 シジミに含まれているタウリンが肝臓の解毒作用を促し、アセトアルデヒドの分解も促進します。また、メチオニンというアミノ酸やビタミンB12、グリコーゲンには肝機能を高める作用があります。 クエン酸 梅干 各栄養素がアルコール分解に使われ、体の細胞は一時的にエネルギー不足になってしまいます。そんなときはクエン酸をとり、エネルギーを生み出す回路(クエン酸回路)を活発にはたらかせましょう。 カフェイン コーヒー カフェインの覚醒作用により、頭がシャキッとします。またアセトアルデヒドの代謝を促進したり、利尿作用によって老廃物を体内から追い出したりする作用もあります。 サプリメントを利用するなら:アルコール好きにささげるサプリ さて、ある程度酔いがさめ、元気が回復してきたら、ぬるめのお風呂に入ったり、ウォーキングなどの軽い運動を行いましょう。血流がよくなり、アルコール分解がさらに早まります。ただし、飲酒直後は絶対にNGです。肝臓への血流が減って機能が低下するばかりか、心臓に負担がかかり、命を落としかねません。 また、迎え酒も×。アルコールで脳を麻痺させ、一時的に血糖値を上げて頭痛や吐き気を抑える効果はあるものの結局はさらにひどい二日酔い状態を招くことになります。迎え酒が習慣化すれば、アルコール依存症にも近づいてしまいます。
酒・たばこは健康の大敵と言われていますが、お酒は量次第です。適量を守って飲めば、健康にいいことがいっぱい。「百薬の長」というのにも根拠があるようです。どんなお酒が体のどこにいいのかご紹介します。 目次 赤ワインは、がんや動脈硬化を予防する 白ワインは、食中毒を防ぐ ワインに負けない!ビールは女性の強い味方 やっぱりこれ!ストレス解消 適量を守らないと毒薬になる 赤ワインは、がんや動脈硬化を予防する 赤ワインに含まれるポリフェノール。これは、生活習慣病のひとつである動脈硬化を予防することがわかってきました。そんなポリフェノールのはたらきを簡単にまとめました。 動脈硬化発病のしくみ ●悪玉コレステロール(LDL) 血液中にはLDLという物質が存在し、肝臓から体の各組識にコレステロールを運ぶはたらきをしている。これが増えてしまうと余分なコレステロールを体中に運ぶことになり、動脈硬化を促進してしまう。俗に悪玉コレステロールと言われるゆえんだ。LDLは、動物性脂肪(肉類)とコレステロール(卵類、脂肪の多い魚類、乳製品などに多く含まれる)を取りすぎると増加する。 +活性酸素 排気ガス・喫煙・ストレス・紫外線などによって体内に生じるといわれている。これが悪玉コレステロール(LDL)とくっつくことによって、コレステロールを酸化させる。 ⇒動脈硬化 動脈硬化を促進させる超悪玉コレステロールを増加させる。 ポリフェノールのはたらき 赤ワインに含まれるポリフェノールは、体内で活性酸素と悪玉コレステロールが出会う前に、双方の活動を防ぐはたらきがある。これがポリフェノールの酸化防止作用だ。 ポリフェノールって何? ポリフェノールとは、ブドウの皮と種に多く含まれる天然物質の色素や成分などの総称で、赤ワインには10種類以上入っています。ポリフェノール、タンニン、カテキン、フラボノイド、アントシアニンなどです。どこかで聞いたことはありませんか?そう、タンニンとカテキンは緑茶にも含まれているのです。 ただし、赤ワインに含まれるポリフェノールの量は緑茶の4倍となります。赤ワインが注目されるワケです。また、ポリフェノールは熱を加えることによって減ることはないので、赤ワイン料理からも摂取することができます。 白ワインは、食中毒を防ぐ 白ワインに強力な殺菌効果があることをご存知でしょうか。白ワインに大腸菌をつけるという実験では、初め24万個あった大腸菌が、10分後に11万個、20分後には200個、そして30分後には20個以下に減るという結果が出ました。アルコール、赤ワイン、酢などに比べ ても効果は絶大です。 食中毒の原因、サルモネラ菌でも、10分後には47万個が60個に減ったといいます。白ワインは有機酸を多く含み酸性度が高いため殺菌力が強いのです。 ワインに負けない!ビールは女性の強い味方 最近はワインが女性の人気を集めていますが、ビールにだって女性の体の悩みを解決する効用がいっぱいあるのです。 ビールの効用 美肌効果 ビールに含まれる麦芽には、美肌効果があるビタミンB2が含まれています。このほかにも、ビタミンB群を初めとして、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウムなど、豊富なミネラル類がバランス良く含まれています。どの成分の含有量もほかのお酒と比べると圧倒的に多いようです。 また、ビール酵母に含まれる核酸という栄養素は、細胞を作る原料になるもの。人間の皮膚細胞の新陳代謝を助けるはたらきがあります。 更年期障害による肩こりなど 女性ホルモンのバランスの乱れから起きる症状のひとつである更年期障害による肩こり。ビールに含まれるホップには、女性ホルモンに似た作用をする物質が含まれています。微量ですが、不足しがちなホルモンを補うはたらきがあるようです。 やっぱりこれ!ストレス解消 お酒に含まれるアルコールは、最初、大脳の中の理性をつかさどる前頭葉に軽い麻痺を起こさせます。これによって、嫌なことはパーッと忘れて明るく楽しくなれます。そのまま飲み続けると、理性の麻痺は頭頂葉というところまで広がり、自制心が薄れハイになってきます。 このように、理性を麻痺させることによって、精神面での、ストレスのレベルを下げるはたらきは大きいようです。人によっては、緊張感、不安感を和らげてくれます。また、食欲を増進させてくれる効果もあります。 ただし、短時間に適量以上飲んでしまうと、運動機能をつかさどる小脳まで麻痺が進み、歩くことはおろか、意識までもうろうとしてしまう。こうなるとストレス解消どころじゃなくなってしまうわけ。ストレス解消も、適量で飲んでこそです。 適量を守らないと毒薬になる お酒には、ここで紹介したようなさまざまな効用があります。ただし、あくまでも「適量を守ってこそ」。適量を超える飲酒が続くと、図のような生活習慣病を招く恐れがあるのです。
お酒は、適量以内なら「百薬の長」、適量を超えて飲み続けると「万病のもと」。では 、適量はどのくらいなのでしょうか?適量を超えて飲み続けるとどんな「万病」を招くのでしょうか? 目次 一番たくさん飲めるのは、アルコール分が少ないビール 飲みすぎるとこうなる!酒は「万病のもと」 一番たくさん飲めるのは、アルコール分が少ないビール 厚生労働省がすすめているお酒の飲み方は、「日本酒の場合、1日1合まで。1週間に最低2日はお酒を飲まない日(休肝日)を作る」というものです。これをほかのお酒にあてはめると次の表のような量になります。アルコールの含有量が少ないビールが量としては1番多く飲めますが、量が多い分カロリーも多いため、体重が気になる人は要注意です。 1日に飲むお酒の量の目安 日本酒(15.9%) 1合=180g 197kcal ビール(4.5%) 大ビン1本=約650g 247kcal ワイン(12%) ワイングラス1~2杯=約240g 約150kcal ウイスキー(43%) ダブル2杯=約60g 約150kcal ところで、忘年会などの宴席で1合までというのは寂し過ぎるという方もいるかもしれません。そんな人は、その分休肝日を多くして調整しましょう。ただし、自分に飲み過ぎを許すのは、このシーズンのような特別な時期だけにすること。また、特別の宴席だといって、足が立たなくなるまで飲んでしまうのも禁物です。 お酒の適量はどのくらい?適正飲酒量を計算してみよう 飲みすぎるとこうなる!酒は「万病のもと」 脂肪肝 右側の肋骨の一番下の縁を押してみて、硬くなっていたら脂肪肝の恐れあり 1日5合以上の飲酒を1週間ぐらい続けていると起こるといわれており、肝臓の細胞内の脂肪量が増えた状態をいいます。酒と一緒に食べる脂っこいつまみが原因のひとつとも言われています。 ただし、この時点では特に症状はなく、お酒をやめれば数週間で元に戻るようです。ひどくなると腫れてきて、超音波検査でも判断できますし、肝臓が大きくなって腫れているようなら、お腹に触っただけでもわかるようになります。 ●アルコール性肝炎 脂肪肝の状態では自覚症状はほとんどありません。しかし、そのまま過度に飲み続けると、食欲減退、吐き気、倦怠感、腹痛、発熱、黄だん、肝臓が腫れて重苦しいなどの症状が出てきます。体がだるく、飽きっぽくなるのも症状のひとつです。 これは、肝細胞の一部が破壊されてしまったため。目には見えないものの、肝臓が炎症を起こしているのです。炎症がおさまれば自覚症状もなくなりますが、肝臓は大きなダメージを受けています。 体の表面に傷を負ったときに、傷あとが残るのと同じように、肝臓に炎症の後が硬くなった状態で残ります。何度も肝炎を起こして傷あとが増えると(繊維化という)、肝硬変につながります。 ●肝繊維症 肝臓のなかに、目に見えない糸のようなものがたくさんできて、肝臓が硬くなる病気です。このため、肝臓の血液の流れが悪くなり、細胞自体が傷ついてしまいます。自覚症状はアルコール性肝炎と同じですが、倦怠感や発熱、黄だんなどの症状はないようです。 肝硬変 アルコール性肝炎や肝繊維症が原因で起こる肝臓の繊維化が進むと、肝臓全体が繊維でブツブツに仕切られたような状態になります。こうなると、胃腸から肝臓に入ってくる血液が肝臓を通り抜けられずに、胃腸や脾臓にパンパンになるくらいにたまってしまいます。そして、ほかの通り道を求めて、普段は通らない食道の血管を迂回しようとします。これが「食道静脈瘤(りゅう)」と言われるものです。食道の血管もパンパンにはっているから、食べ物が食道を通った摩擦で破裂し、大出血を起こしてしまうことがあります。死につながりうる症状です。 このほか、体に有害なものを処分するという肝臓の役割が失われるため、脂肪の成分の脂肪酸、アンモニア、特殊なアミノ酸など、不要なものが体中にたまるようになります。これが脳内に作用すると、もうろうとした状態から、昏睡状態に陥り、死につながってしまうのです。 ●肝臓以外の消化器系の病気 はっきりした因果関係はわからないものの、強い酒を多く飲んでいる人に食道がんが多いのは事実のようです。また、大腸がんや膵臓(すいぞう)がんの原因が飲酒にあるという説もあります。また、急性膵炎などを起こすこともあります。 高血圧 飲酒は、動脈硬化などの原因になる高血圧の原因にもなるようだ。統計的な研究をもとに、1日2合以上飲んでいると血圧が高くなるという説もある。特に心臓に問題のある人には、お酒は危ないといわれているようだ。 急激な飲みすぎも死を招く お酒を飲むとハイになるのは、脳の理性をつかさどる部分がアルコールによって麻痺するためです。そのまま飲み続けると、運動をつかさどる部分も麻痺、足元がおぼつかなくなったり、吐き気がしたりします。 この状態がまず危険です。泥酔状態で嘔吐したものがのどにつまって窒息!というケースがあります。それでもまだ飲み続けると、昏睡状態、呼吸停止…。という事態に陥る可能性があります。
酒は百薬の長 古くから「酒は百薬の長」といわれるように、お酒にはさまざまな薬理効果があり、上手に飲めば健康増進にも役立ちます。その一つとして、お酒は「飲む風呂」といわれるほど、血液の循環を良くします。 また、アルコールは、血管に付いている脂を取るはたらきがあるといわれる善玉のHDLコレステロールを増やすことが分かっています。 HDLコレステロールが増えれば、血管壁がきれいになり、動脈硬化を予防することもできます。 さらに、血液の固まりを溶解させるウロキナーゼという物質を増加させるはたらきと、血栓を作るトロンボキサンAという物質を抑えるはたらきを持ち、両面攻撃で血栓を防ぐ効果があります。そして、食欲増進剤としての効果もあります。 そのうえ、精神安定剤や抗うつ剤や睡眠剤および利尿剤のはたらきもします。 過ぎたるは及ばざるがごとし このように一つの薬で幾つものはたらきをするものは、お酒以外に見当たりません。ただし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、飲み過ぎは健康を害するもとになってしまいます。
適量の飲酒は心臓血管疾患のリスクが低い 米国保健科学協議会(ACSH)が、各国の医療関係者が発表した研究報告をまとめて分析しました。すると、1日に日本酒に換算して1、2合程度のお酒を飲む人が、最も心臓血管疾患のリスクが低いという結果が出ました。これには人種や性別、地域条件を越えた共通性が見られます。 そして、病気だけでなく事故や事件を含めたあらゆる原因による死亡率(全死亡率)と1日の飲酒量をグラフにするとJ型のカーブになります。このことから「Jカーブ効果」といわれます。 日本人の適量は少ない ところが、日本人の場合、約半数はアセトアルデヒド脱水素酵素が遺伝的に欠損しているため、アルコールに弱いといわれています。ですから、外国人と同じ量のアルコールでは、日本人にとっては反対に害になる可能性があります。 そのため、日本人にとって心臓血管疾患のリスクが低くなるお酒の適量は、外国人よりも少ない量と考える方が良いでしょう。さらに、アルコールの許容量は個人差がありますし、アルコール依存症や薬物乱用者など、適量という概念が当てはまらない人もいます。 なお、このJカーブ効果はもともと飲まない人に飲酒を進めるものではなく、大量飲酒の人に適量を勧めるものです。
アルコールは善玉を増やし悪玉を減らす アルコールは、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを増やすはたらきがあるという学説があります。 さらに、アルコールは悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを減らすはたらきもあるとされています。動物性脂肪や卵などのLDLコレステロールが多い食事を取っていると、動脈の壁にコレステロールがくっついて動脈硬化を起こします。 一方、HDLコレステロールは、動脈の壁にたまったコレステロールを取り除くはたらきがあります。ですから、HDLコレステロールは血管を広げることになり、高血圧や心筋梗塞などの心臓病を予防するとされています。このHDLコレステロールを十分にはたらかせるためには、血中総コレステロール量を220mg/dl以下にして、 HDLコレステロールを40mg/dl以上に保つ必要があります。 適量は守りましょう ところが、このようなはたらきをするアルコールの量は、ビールでは大瓶1本、清酒なら1合、ウイスキーならダブルで1杯程度です。それ以上のアルコールの量は、HDLコレステロールを増やすどころかかえって害になり、生活習慣病を起こす原因となります。
適量のお酒は場を盛り上げる 世界各国にそれぞれ特有の料理とお酒があります。フランス料理にはワイン、ドイツ料理にはビール、中国料理には老酒、そして、日本料理には日本酒と、それぞれの料理にとても相性が良いお酒があります。そして、その国のその土地にふさわしい食文化や飲酒文化がそれぞれ作られています。 適量のお酒には食欲を増進させ、さらにお料理の味を引き立てるという効果があります。その上、お酒にはリラックスしたムードを作り出したり、明るく楽しく場を盛り上げたりします。 ところで、お酒を飲む時は、食物を一緒に取ると良いといわれます。これは、胃腸の粘膜に食物が防御壁をつくり、胃が荒れるのを防ぎ、アルコールをゆっくり吸収させるはたらきがあるからです。 食べながら飲めば飲み過ぎない さらに、食べながら飲むとお酒を飲むペースもゆっくりになりますから、血中アルコール濃度も急激に上がることはなくなりますし、おなかがいっぱいになって飲み過ぎることもなくなります。 ですから、精神的な面と体の構造上の面の両方から、アルコールと食事は切り離せない関係なのです。
飲酒はストレスの解消法 ストレスは心と体に加わった外的刺激に対応するために、体自身が起こす生理的な緊張状態です。ある程度のストレスは活力を与えるという点からすれば、必要なものといえるでしょう。ところが、ストレスがかかった状態が長く続くことは、体にとって良いことではありません。 そのストレスを解消するためにお酒を飲むことが多いのは、周知の事実です。適量のお酒は体だけでなく心の緊張も取り除き、ストレスを発散させるのにかなり効果があるようです。ですから、ストレスが原因で起こる病気をお酒によって予防できる可能性もあります。 日本では4割がお酒で発散 厚生労働省が行った「健康福祉動向調査」でも、国民の2人に1人は日々の生活にストレスを感じているそうです。そのストレスの解消法として、手軽に「酒を飲む」と回答した人は4割以上を占めました。このようにわが国のサラリーマンは、日々の社会の束縛をお酒の酔いでしばし忘れて、自らを解放させているようです。 しかし、お酒だけに頼ってストレスを発散させるだけでなく、ストレスの原因を正確に知り、その原因を取り除くようにすることも大切です。