目次 近年、光化学スモッグが増加中! 光化学スモッグ発生の原因と発生しやすい条件 こんな症状が出たら要注意! 光化学スモッグによる健康被害を防ぐには 近年、光化学スモッグが増加中! 1970年7月18日、東京都杉並区でグラウンドで体育の授業を受けていた多数の女子高生が、目の痛みや頭痛を訴えて倒れ、病院に運ばれた。その原因が光化学スモッグと判明する。この、日本で最初に注目された7月18日は、「光化学スモッグ」の日とされている。 この光化学スモッグ、1970年代には猛威をふるっていたので、「光化学スモッグ注意報」発令で、屋内に入るよう指示された記憶がある人もいるのでは?しかし、80年代以降は沈静化。人々の記憶から遠ざかっていた公害が、ここ数年、関東地方を中心に再発している。2004年は、22都府県で延べ189日の注意報発令があり、393人の被害の届け出があった。注意報発令日は、千葉県が28日で最も多く、次いで埼玉県23日、東京都と茨城県が18日となっている。被害者は東京都、福島県、千葉県の順だった。 光化学スモッグ発生の原因と発生しやすい条件 光化学スモッグは、工場・事業所や自動車などから大気中に排出された、窒素酸化物や炭化水素、 揮発性の有機化合物などが、紫外線を受けて光化学反応を起こして二次的汚染物質を生成することにより、発生する。 このとき生成される物質のうち、酸化性物質のオゾン、アルデヒド、パーオキシ・アセチル・ナイトレート、 過酸化物などの総称を「光化学オキシダント」という。 4~10月の間、陽射しが強く気温が高く 風が弱いなどの気象条件が重なり、この光化学オキシダントが大気中で拡散されずに滞留して濃度が高くなると、 光化学スモッグが発生する。空気中の光化学オキシダントの濃度が0.12ppmに達すると、注意報が各自治体から発令される。ちなみに、濃度0.1ppmを超えると、粘膜に強い刺激を与えるため、目や鼻、喉が痛くなるといった症状を引き起こすことがある。 晴天の暑い日が続く夏場に発生しやすいため、猛暑の夏は発生回数が多く、冷夏に少ない傾向がある。猛暑が続けば、光化学スモッグが多発する可能性があるのだ。 発生しやすい条件 ●日中の最高気温が25度以上 ●午前9時以降の日照時間が2時間半以上 ●無風、または弱い風 ●地表と上空1,000mの気温差が7度以上 ●夏型の気圧配置で等圧線の間隔が広い なぜ、再発するようになったの? 70年代は、高度成長期以降に発生したさまざまな公害が社会問題になった時期。この頃までに、日本は汚染物質を排出する工場や自動車が急激に増えた。その後、工場の大気汚染物質の排出については、規制が進み、光化学スモッグも発生しにくくなっていった。しかし、自動車の排気ガスについては、規制されたものの、十分な改善がされていなかったと指摘する声もある。再発の原因としては、紫外線の増加、ヒートアイランド現象の影響、地球温暖化問題でも注目されるオゾン問題が関連しているとする仮説がある。 こんな症状が出たら要注意! 症状 目の主な症状…目がチカチカする、目が痛い、涙が出る 呼吸器の主な症状…喉が痛い、咳が出る、息苦しい その他…吐き気、頭痛、失神、手足のしびれなど 喘息などのアレルギーを持っている人は、アレルギー反応が悪化する場合もある。 処置 症状は、目や呼吸器系が中心で、一過性のものがほとんど。屋外にいた場合はすぐ室内に入り、水で目を洗ったり、うがいをしよう。そして、涼しい部屋で安静にするのが望ましい。屋内にいる場合も、窓を閉めること。 上記の応急処置をとってもよくならない場合、手足のしびれ、呼吸困難、失神などの重症の場合は、医師の診察を受けよう。なかには入院が必要になるケースも。アレルギー体質、目や呼吸器の疾患を持っていたり、甲状腺機能亢進症などの子どもは、とくに健康被害を受けやすいので、異常があれば医師の診断を受けること。 症状の程度にかかわらず、被害が出た場合は、各市町村や保健所まで知らせよう。 光化学スモッグによる健康被害を防ぐには 光化学スモッグによる健康被害には、残念ながら、これといった予防法はない。症状が出るかどうか、重症になるかどうかは個人差による。とくに被害を受けやすいのは、子どもたちだ。被害を受けないようにするには、光化学スモッグの注意報が出たら屋内に退避し、外に出ないことだ。 注意報の発令状況は、市役所や町村役場、最寄の地方総合事務所環境保全課や保健所へ。自治体などが放送により地域の住民に知らせたり、テレホンサービスなどで知らせている場合もある。環境省では、1時間ごとに発令状況を知らせる大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」というサイトを立ち上げている。 光化学スモッグが発生中とわかったら… ●なるべく屋外へ出ない ●屋外にいる場合は、屋内に入る ●窓やカーテンを閉める ●体調が悪い人は、なるべく屋内で休む ●自動車の運転は控える 以上の点を心がけよう。夏はこれからが本番。とくに暑い日は、光化学スモッグに注意することをお忘れなく! 公開日:2005年7月11日
ベトナム戦争で使用された枯葉剤にも使用されたダイオキシンですが、その致死量は非常に高く、1gのダイオキシンは体重50kgの人を1万人殺す力があると言われています。 目次 ベトナム戦争でも使われていたダイオキシン 1gで1万人が死ぬ!? じわじわと体をむしばむダイオキシン ベトナム戦争でも使われていたダイオキシン ベトナム戦争時、アメリカ軍がジャングルの木々を枯らすために枯葉剤を上空から散布したいわゆる「枯葉作戦」。この枯葉剤の中に含まれていたのがダイオキシンです。 「枯葉作戦」という言葉、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。 ベトナム戦争時、アメリカ軍はジャングルの木々を枯らすため、ハービサイドオレンジという枯葉剤を上空から散布しました。 しかし、アメリカ軍の兵士のなかから健康異常を訴える者が続出し、この枯葉剤の使用は中止になりました。しかも、ベトナム戦争後、散布の多かった地域で先天性奇形児の出生率が増えるなどの問題が起こりました。 実は、この枯葉剤の中に含まれていたのがダイオキシンです。正確には2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)という物質。 アメリカでもベトナム帰還兵の健康障害やその子どもたちの奇形の発生などが問題になり、これを機にダイオキシンに関する研究が精力的に行われるようになりました。 1gで1万人が死ぬ!? ダイオキシンの毒性は非常に強く、例えば2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの場合、モルモットの半数致死量は「0.6~2.0μg/kg」と言われています。 ちなみにμg(マイクログラム)というのは100万分の1グラムのことです。体重1kgあたり0.6~2.0μgの量で、実験したモルモットの半数以上が死んでしまうのです(モルモットは体重1kgもないので、1匹あたりの致死量はもっと少量です)。 人間の致死量もモルモットと同じ(2.0μg)だと考えると、1gのダイオキシンは体重50kgの人を1万人殺す力があることになります。 ただし、この致死量は動物によって随分差があるようです。同じような種類の動物でも致死量が何千倍も違います。 どうしてこのような差があるのかはまだはっきりしていません。 従って、実際のところ人間の致死量がどのくらいか、正確な数値もわからないのが現状です。 2、3、7、8四塩化ダイオキシンによる半致死量の比較 モルモット…0.6~2.0μg マウス…130~280μg ラット…40~60μg ウサギ…115μg ハムスター…5000μg サル…50~70μg じわじわと体をむしばむダイオキシン ダイオキシンは、青酸カリなどのように飲んですぐ死ぬというものではありません。 死ぬまでに長い時間がかかり、その時間も動物によって異なるのが特徴です。 モルモットで5~42日、マウスで15~24日という具合いになります。 さらに恐ろしいのが、ダイオキシンの慢性毒性です。致死量よりずっと低い濃度のダイオキシンでも、長期間摂取することによって慢性的な症状が現われてきます。 日本は、他国に比べダイオキシンの汚染度が極めて高いようです。しかし、人体に即影響を与えるほどの濃度ではありません。 従って、現在問題になっているのはダイオキシンの慢性毒性の方となります。 では、ダイオキシンによる慢性な症状とはどのようなものなのでしょうか。 詳しくは、不妊症、精子減少の原因はダイオキシン!?をご覧ください。
低い濃度のダイオキシンでも、長期間摂取すると慢性的な症状が現われます。具体的な症状について紹介します。ただし、ダイオキシンがこれらの病気を引き起こす、医学的なメカニズムははっきり証明されていないのが現状です。 目次 流産や奇形児出産の確率が高くなる!? ダイオキシンには、発がん作用もある!? 流産や奇形児出産の確率が高くなる!? ダイオキシンの毒性の中でも特に恐ろしいのは、生殖毒性と言われるものです。これは、子供を産む器官や産まれた子供自体に現われてくる毒性のことになります。 ベトナム戦争時、2,3,7,8-四塩化ダイオキシンを含む枯葉剤がアメリカ軍によって散布されました。その結果、これを浴びた人達に生殖障害(流産や新生児死亡などの出産異常、先天奇形など)が起こる割合が高くなりました。 また、日本でも、ダイオキシンによる汚染度が高い地域は、ほかの地域に比べて新生児死亡率が高いという報告がされています。 これについて、1979年に行われた有名な実験があります。実験内容を簡単にまとめました。 ■実験 50pptの2,3,7,8-四塩化ダイオキシンを餌にまぜて7ヵ月間アカゲザルに与えました。 ※50pptというのは1兆分の50のこと。これはアカゲザルの体重1kgあたり1.26ng(ナノ グラム。10億分の1グラムのこと)にあたります。 ■結果 8匹のうち6匹が妊娠しましたが、4匹流産。残りの2匹に子供が産まれましたが、1匹は未熟児でやがて死亡しました。 では、どのくらいの量なら産まれる子供に影響がない(毒性がない)のでしょうか。 その後、0.63ng/kg(体重1kgあたり1000億分の63g)を4年間与える実験が行われました。この実験でも、8匹のうち1匹しか産まれなかったと報告されています。 このような実験結果をもとに、産まれる子供に 影響がない(生殖毒性がない)ダイオキシンの量は約0.1ngと推定されています。 このほか、生殖毒性として以下のような症状が疑われています。 子宮内膜症 具体的な症状: 子宮の内側にある膜が異常に増えたり、子宮の内側以外にできる病気です。月経困難症、強い月経痛、不妊症などが起こります。 ダイオキシンとの関係: アカゲザルを使った実験では、126pg/kg/1日の餌を与えたところ(1日に体重1kgあたり126ピコグラム与えるということ)、71%に子宮内膜肥厚症が発症しています(ダイオキシンを与えないグループの発症率は33%)。※ピコグラムは1兆分の1グラム アメリカなどでは、不妊症や子宮内膜症が高い割合で起きており、ダイオキシンが関係している可能性が高いと言われています。 精子の減少 具体的な症状: 精巣が小さくなるなど精子を作る機能が弱まり、結果的に精子の数が減少します。 ダイオキシンとの関係: ダイオキシンが含まれる枯葉剤(2,4,5-T)の製造工場で働く人を対象にした調査で、血液中のダイオキシン濃度が高い人ほど男性ホルモンの濃度が低いことがわかりました。動物実験などでも、精巣が小さくなるなどの結果が出ています。 ダイオキシンの影響で精巣内の細胞に栄養障害が起こり、機能を低下させるのではないかと考えられています。 赤ちゃんへの影響 具体的な症状: 血液中のダイオキシン濃度が高い母親から産まれた赤ちゃんは、チロキシン(甲状腺ホルモンの1つ)の濃度が低いという調査報告があります。 ダイオキシンとの関係: チロキシンは胎児のときに脳を発達させる役割をする大事なホルモンです。 また、甲状腺ホルモンの量が少ない赤ちゃんには、アレルギー体質が多いと言われており、アトピー性皮膚炎との関係を疑う声もあります。 ダイオキシンには、発がん作用もある!? 1997年国際がん研究機関は、人に対する2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの発がん性の分類を「人に発がん性あり」というものにしました。 各国のいろいろな動物実験でも、ダイオキシンががんを引き起こすという結果が出ていますが、がんになる部位については、オスとメスで異なるようです。 人間についても、以下の表のように、各種の疫学的な調査が行われているが、がん発生が増えるという報告と、増えないという報告があります。 ダイオキシンががんを発生させるメカニズムについては、まだはっきりしたことはわかっていません。研究者の間では、ダイオキシンが直接がんを発生させるのではなく、別の発がん物質と一緒になってはたらくのではないかと考えられているようです。 対象者 がんの種類 発がんリスク※ 研究年次と研究者 アメリカの化学工場従事者 軟組織肉腫9.2倍1991.フィンガーハットほか 呼吸器系がん1.42倍 ドイツの化学工場従事者 あらゆるがん1.9倍1991.マンツほか 2,4,5-T取扱者 軟組織肉腫1.3~2.5倍1990.エリクソンほか ベトナム戦争帰還兵 結合組織などのがん4.6倍1988.コーガンほか ベトナム戦争帰還兵 あらゆるがん1倍1990.ミカレクほか ※発がんリスク=それぞれのがんの発生率が、比較対象となる人達の グループより何倍ぐらい高いかを示したもの このほか、ダイオキシンと関係がある症状としては、免疫力の低下、肝臓障害、骨髄障害(血を造る機能の低下)などがあります。
ダイオキシンの正式名称はドイツ語で、「ポリクロロジベンゾ-パラ-ジオキシン」といいます。基本的な分子構造をみると、史上最強と言われる毒は、「塩素、炭素、水素、酸素」といった、私たちの身近にある物に含まれる元素からできてしまうのです。 目次 身近なものからできてしまうダイオキシン ゴミ焼却場から離れていれば安心? 身近なものからできてしまうダイオキシン ダイオキシンの正式名称はドイツ語で、ポリクロロジベンゾ-パラ-ジオキシンといいます。難しげに見えますが、この名前こそがダイオキシンの正体なのです。 ダイオキシンという通称は、上の「dioxin」を英語読みしたもの 図1はダイオキシンの基本的な分子構造です。名前通り炭素と水素でできた2つのベンゼン環が2つの酸素で結び付けられています。 さらに、水素が塩素と置き換わったものもダイオキシンの仲間です。これらは、水素と塩素が置き換わる位置と数によって、それぞれ2,8-二塩化ダイオキシン(図2)、2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(図3)などと名づけられています。 なかでも、2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの毒性は史上最高と形容されるぐらいに強力です。 つまり、史上最強と言われる毒は、「塩素、炭素、水素、酸素」といった、私たちの身近にある物に含まれる元素からできてしまうのです。 ただし、この構造を持つ物質すべてが毒性をもつわけではないし、毒性の強さにも差があります。例えば図1のダイオキシンや、2,8-二塩化ダイオキシンにはほとんど毒性がないとされています。 ダイオキシンと似た構造を持ち、同じように毒性の強い物質があります。ポリ塩化ジベンゾフランとコプラナーPCBという物質です。学問的にこの3つをまとめて「ダイオキシン類」と呼んでいます。 ダイオキシン類はどれも、私たちの身の回りにある塩素を含んだ化学工業製品(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニデリンを含む製品)を燃やすことによって発生します。 ゴミ焼却場から離れていれば安心? 「ダイオキシン類がゴミ焼却場から出るのなら近くに住まなければいい」と考える人もいるかもしれません。しかし、問題はそれほど単純ではありません。 大都市に住む人のダイオキシン類の摂取内訳は、大気からが1.5%、水からが0.01%、土壌からが0.36%と報告されています。後の98%は食物からなのです。 しかも、そのうち60%が魚からだといいます。 次のイラストを見ればわかる通り、ダイオキシンはめぐりめぐって、確実に私たちの口に入っているのです。
狭い国土で大量のゴミを燃やしているニッポン。ダイオキシン類による汚染は、ほかの国の10倍は高いと言われています。ゴミ焼却場は近くにないという人も例外ではありません。ダイオキシンが私たちの体に入る経路の約98%は食物からと言われているからです。 目次 ダイオキシン摂取・約60%は魚から ダイオキシンの安全基準はどのくらい? ダイオキシンを食べない出さない工夫が必要 ダイオキシン摂取・約60%は魚から 1990年、大都市地域に住む人が1日に摂取するダイオキシン類の量を調査したところ、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン(ダイオキシンと似た分子構造を持ち、毒性もある物質)の合計は体重1kgあたり3.72pg(ピコグラム。1兆分の1グラム)でした。 ただしこの調査は、やはりダイオキシンと似た構造で毒性もあるコプラナーPCBの摂取量を加えていなかったため批判が多いようです。ある研究者がこのデータにコプラナーPCBの摂取量を加えてみたところ、体重1kgあたり12.45pgという結果が出ています。 ダイオキシンの摂取経路は、約98%が食物だと言われています。では、どのような食物からの摂取が多いのでしょうか。その内訳は円グラフのようになっています。なんと、約60%を魚から摂取しています。ゴミ焼却の煙とともにダイオキシンは、川を流れ雨に混じって近海を確実に汚染しているのです。 沿岸魚と市販魚のダイオキシン類を分析したところ、海岸に近いところに住んでいて、海の水の汚れに強い魚の濃度が高くなっているという報告もあります。 日本とドイツの食物経由のダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランの構成比 ダイオキシンの安全基準はどのくらい? 次の表の「耐容1日摂取量」というのは、一生の間、毎日体に入っても健康に害を与えない摂取量のことです。ダイオキシン類の安全基準として注目されていますが、国や省庁によってもバラバラなのが現状です。 各国のダイオキシン類の耐容1日摂取量 国名など 耐容1日摂取量(pgTEQ/kg/日) 日本 厚生労働省4 日本 環境省4 WHO1~4 アメリカ0.01 イギリス10 ドイツ10(目標値1) イタリア1 出典:厚生労働省資料より(一部抜粋) 問題がある日本の基準 ダイオキシンについてはまだわからないことも多いため、この数字は「当面のものとする」とのことわり付きです。 ところで日本の場合、耐容1日摂取量の対象となっているダイオキシン類は、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランのみ。コプラナーPCBは含まれていません。しかし、日本ではコプラナーPCBが環境を汚染している量が特に多いため、研究者の間ではコプラナーPCBも対象に含めるよう求める声があがっています。 ちなみに、WHO(世界保健機構)では、1998年に耐容1日摂取量を10pgから1~4pgに引き下げると同時に、コプラナーPCBも対象に含めるようになりました。 アメリカの基準が厳しいのは、「発がん性」を認めているため 日本やヨーロッパ各国に比べ、アメリカの基準がケタ違いに厳しいのは、ダイオキシン類を「発がん性物質」と評価しているためです。「発がん物質」になると、安全基準の計算の仕方がかなり厳しくなるのです。一方、日本やヨーロッパでは、ダイオキシン類は直接がんを引き起こすのではなく、ほかの物質と一緒になってがんを引き起こすのではないか(助がん作用)としているため、このような違いが出てくるのです。 ダイオキシンを食べない出さない工夫が必要 我々の食生活は安全なのか 1990年の調査では、ダイオキシン類(ダイオキシン+ポリ塩化ジベンゾフラン)の摂取は1日体重1kg当たり3.72pgと推定されています。これなら日本のダイオキシン類の安全基準(耐容1日摂取量)内と、ひとまずほっとしたいところだが、コプラナーPCBを含めると一気に12.5pgになってしまうのです。 しかし、1996年に調査したところ、コプラナーPCBを加えても1日体重1kg当たり約2pgと、ダイオキシン類の摂取量が急減していることがわかりました。減った分のほとんどは、食物からの摂取量です。1990年の調査と比べると、ダイオキシン+ポリ塩化ジベンゾフランが約5分の1に、コプラナーPCBは約10分の1になっているのです。 この理由について、ダイオキシン汚染そのものが減ったというよりは、汚染されていない地域からの輸入食品が増えたせいと考えられています。 将来のことを考えた、真剣なダイオキシン対策が必要 ダイオキシンは簡単には分解しない非常に安定した物質です。しかも、脂肪によく溶けるため、人の体に入ると脂肪組織に蓄積し、なかなか排出されません。1度体内に取り込まれると半分になるまでに5~10年もかかるのです。 だから、最近の調査で摂取量が減ったからと言って、そうそう安心していられません。1990年頃摂取しダイオキシンはしっかり体の中に残っているのです。 また、将来的に食品すべてを輸入に頼れるとは考えにくいし、海洋汚染を広がるに任せておけば、ほとんど魚が食べられないということも考えられます。ダイオキシンについては、我々は被害者でもあり、ゴミを捨てているという点では加害者でもあります。他人事ではなく、自分の問題として考えていかなくてはならないのではないでしょうか。
人間の体に入ったダイオキシンは主に脂肪組織に溜まりますが、いつまでもそこに留まるわけではなく、常に血液とともに体中を回っています。母乳はこの血液が濃縮されたものなので、ダイオキシン類も一緒に赤ちゃんの体に移動することになるのです。 目次 母親のダイオキシンは母乳を通して子どもに移る 安全基準を超えている!?母乳中のダイオキシン濃度 母乳はやめたほうがいいのか 母親のダイオキシンは母乳を通して子どもに移る 人間の体に入ったダイオキシンは主に脂肪組織に溜まりますが、いつまでもそこにとどまるわけではなく、常に血液とともに体中を回っています。母乳はこの血液が濃縮されてできるのです。特に脂肪は、血液中の約10倍に濃縮されており、ダイオキシン類もそれと一緒に赤ちゃんの体に移動することになります。 次の表は、母乳中の脂肪1gに含まれるダイオキシン類(ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン)の量を国別に比較したものです(1989~1990年調査)。日本のダイオキシン汚染度は世界でもトップクラスですが、母乳にも顕著に現われています。ただし、日本国内でも汚染の度合いには差があるようです。 国名 量(pg)※ 日本(大阪)51 日本(福岡)24 アメリカ15~17 イギリス17~29 ドイツ28~32 インド6 南ベトナム7~32 ※pg(ピコグラム)は1兆分の1グラム 安全基準を超えている!?母乳中のダイオキシン濃度 赤ちゃんは、母乳から毎日どのくらいの量のダイオキシンを摂取してしまうのでしょうか。次の表は、日本のある4都市における母乳中のダイオキシン類の濃度と、赤ちゃんが摂取すると推定されるダイオキシンの量を示したものです。いずれの都市も厚生労働省の耐容1日摂取量(一生の間毎日摂取しても健康に影響がないとされる量/体重1kg当たり10pg)より何倍も多いことがわかります。 場所(人数) 母乳中濃度(pgTEQ/g脂肪) 乳児の摂取量(pgTEQ/kg/日) A(7)10.949.1 B(6)28.1126.5 C(3)18.382.4 D(15)15.067.5 しかもこれは、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランのみの数字です。コプラナ-PCB(ダイオキシンと分子構造が似ていて毒性もある物質)も加えると、体重1kg当たりの摂取量は67.1pg~149pgにまでなるのです。 母乳はやめたほうがいいのか ダイオキシン類の濃度が高い母乳で育った赤ちゃんは、人工乳育児の赤ちゃんに比べて血液中ダイオキシン濃度も高くなります。血液中の脂肪1グラムあたりのダイオキシン類の量が9倍ぐらい高いという調査もあるくらいです。やはり母乳育児はやめたほうがいいのでしょうか。 しかし、母乳にはさまざまな免疫抗体が含まれているというメリットもあります。赤ちゃんは母乳を飲むことで、病気などと戦う力をつけていくのです。また、「おっぱいをあげる」ということは、母と子の愛情関係を確立していくうえで重要な過程のひとつでもあります。 現状では、例えば3ヵ月くらいまでは母乳中心、あとは少しずつ人工乳に変えるなどの工夫をしていくしか方法はないようです。
我々の一見豊かな使い捨て生活が産み出した、ダイオキシン。汚染をこれ以上広げないためにはどうしたらいいのでしょうか。最後に、ダイオキシン対策について考えてみましょう。 目次 身の回りにたくさんあるダイオキシンの素 ダイオキシンを減らす生活を始めよう 身の回りにたくさんあるダイオキシンの素 日本列島を汚染しているダイオキシンのほとんどは、ゴミ焼却場から発生したものです。つまり、我々が捨てたゴミがもとになっています。 燃やす過程でダイオキシンをもっとも出しやすいのは、プラスチック製品の材料であるポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニデリン(以下塩ビ)です。では、塩素を使っていないプラスチックなら安全なのかというと、そうとも言えないようです。 例えば、発泡スチロールなどは塩素を含みませんが、燃える過程でほかのゴミから発生した塩素と結合してダイオキシンになりやすいのです。 次に紹介しているのは、塩ビ製品のほんの一例となります。軽い気持ちで使い捨てしているものが多いのではないでしょうか。我々ひとりひとりが気持ちを変えない限り、ダイオキシンは増え続けるのです。 ●文房具…消しゴム、ものさし、下敷き、シャーペン、ビニール製の筆入れ、ほとんどが塩ビ製品です。ノートなら大丈夫かと思いきや、紙を塩素漂白する過程でダイオキシン類が発生しているそうです。 ●キッチン…キッチンの塩ビ製品と言えば、一時ラップが問題になりましたが、塩ビを使わない製品が増えてきました。それよりも気になるのは、1食作るたびに5~6枚は捨てている、食品のパッケージ(ビニール袋、卵パック、食品トレイなど)です。このほか、プラスチックコップ、ビニール手袋など。 ●お出かけ…ビニールレインコートやカッパ、ビニール長靴、ビニール傘。「雨降ったらコンビニで傘買えばいいや」というのはやめにしましょう。このほかビニールバッグやサンダル、合皮のくつなど。 ●薬品…ばんそうこうや、病院で処方される錠剤のパッケージ、氷枕のビニール部分など。 ●家庭用品…ビニールホース、トイレ掃除などで使うモップ、延長コードなど。 ●おもちゃ…ビニール製の人形、水遊びグッズ、トランプなど。 ●住宅…住宅建材としては壁紙を始め、塩ビ製品が多く使われています。 ●パッケージ…キッチン用品に限らず、歯ブラシのパッケージ、文房具のパッケージなど塩ビ製品が多いようです。 ダイオキシンを減らす生活を始めよう ダイオキシンを減らすためにできることはいろいろあります。全部でなくてもいいので、できることから始めていきましょう。 ゴミになるものをできるだけ買わない。素材の表示を見てから購入する 買い物のときに中身はもちろんパッケージの素材まで確認します。ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニデリンなど、「塩化」とついているビニール製品は避けるようにします。 とはいえ、日本ではこれらの素材表示の義務がないため、表示してある製品の方が少ないのが現状です。行政やメーカーには、素材表示を義務化するよう求めましょう。 ゴミの分別、リサイクルに協力する。家庭でのゴミ焼却はやめる ダイオキシン問題はゴミ処理の問題と切り離しては考えられません。たとえ、ダイオキシンが出ないゴミでも、ルール通り分別、リサイクルするようにしていきましょう。また、家庭用の小さい焼却炉などからもダイオキシンは発生します。 ゴミ処理&リサイクルの情報に敏感になる ダイオキシンやゴミ処理に関する情報には常に一通り目を通すようにしましょう。 特に、自分が住んでいる自治体の広報誌などは要チェックです。身近なところのゴミ行政がどう進んでいるか把握しておきたいものです。
新築のマンションや一戸建てが危ない! 最近、建材や家具から発散するホルマリンなどによる空気汚染が原因といわれる「シックハウス症候群」が増えています。 主な症状としては、新築のマンションや一戸建てに入居した人が、目がちかちかしたり、気分が悪くなったりするというものです。 シックハウス症候群は、「化学物質過敏症」の1つです。 化学物質過敏症は、 1980年代後半になって欧米で指摘され始めた現代病で、微量の化学物質に反応して、目の痛み、頭痛、全身のけん怠感、不眠などの症状を起こします。 原因としては 人工的に作り出される化学物質の増加 ビル・住宅の気密性の向上 ストレスの増加 などが考えられていますが、まだ実態はよくわかっていません。 予防するには…? シックハウス対策として、国立公衆衛生院では「新築後、半年は換気をこまめにしたり、床材や家具をはがしてホルマリンの少ないものに代えるのも重要」としています。
生物や人間のホルモン機能を阻害する化学物質 化学物質の有毒性として新たに生物や人間のホルモン機能を阻害する「内分泌(エンドクリン)かく乱作用」が注目を集めています。 これは、いわゆる環境ホルモンと呼ばれるもので、身の回りのプラスチック製品や農薬、洗剤などが発生源になっているケースが多いだけに深刻です。 問題の物質には、ノニフェノールやビスフェノールA、フタル酸エステルなどがあります。これらはプラスチック製品を作る時に使われるもので、がん細胞の増殖や生殖障害を引き起こす危険性があると指摘されています。 この他、ジフェニルエーテル系の農薬や経口避妊薬のピル、合成女性ホルモンDESにも同様の危険性がみられ、専門家から警告されています。 こうした環境ホルモンは現在、約70~100種類あげられています。アメリカのFDA(食品医薬品局)は約7万5000種類の化学物質の内分泌かく乱作用を検査し始めました。 怖いダイオキシン汚染 一方、ダイオキシンは合成有機化合物の中でも最強の毒物といわれ、最近ではゴミ焼却炉から出ることが分かって大きな社会問題になりました。極微量でも有毒なため研究調査が難しい物質ですが、食品のダイオキシン汚染は比較的よく分かっています。 食品群別にみると、魚介類が全体の60%と圧倒的に多く、次いで牛乳・乳製品(10.3%)、肉・卵(10%)です。 ダイオキシンは強烈な催奇形性(胎児に障害をおよぼす毒性)や発がん性を持っているといわれ、農薬や製紙工場の排水からも見つかっています。