乳がんや子宮頸がんといった「女性特有のがん」が話題となる一方、女性の部位別がん死亡者数でもっとも多いのが「大腸がん」であることは、あまり知られていないかもしれません。どの病気でもそうですが、大切なのは早期発見です。早期発見の最も有効な手段となるのが「大腸がん検診」です。40歳以上の人は定期的に大腸がん検診を受けるようにしましょう。 目次 女性のがん死亡者数1位は「大腸がん」 40歳を過ぎたら大腸がん検診へ 「異常なし」でも油断は禁物 女性のがん死亡者数1位は「大腸がん」 部位別のがんによる死亡者数(女性・2009年) 近年、乳がんや子宮頸がんに対する女性の意識が高まっています。 乳がんの早期発見にマンモグラフィー検査が有効であることや、子宮頸がんはワクチンの接種で予防できることなども、広く知られるようになりました。 女性特有のがんがさまざまなメディアで取り上げられる一方、女性の部位別がん死亡者数でもっとも多いのが「大腸がん」という事実は、多くの人が意外に思うかもしれません(2009年現在)。 しかも、実は2003年以降ずっと1位であり続けているのにも関わらず、あまり注目を浴びていないというのも驚くべき点でしょう。 なお、男性の死亡者数では肺がん、胃がんに続いて第3位。全部位合計の死亡者数は、女性が約13万8千人、男性が約20万6千人となっています(2009年現在)。 40歳を過ぎたら大腸がん検診へ 初期の大腸がんは、自覚症状が現れることはほとんどありません。 血便が出ることはあるものの、痔と思い込む人もいて、見逃されることが多いようです。 大腸がんの早期発見でもっとも有効だといえるのが、住んでいる地域や職場の集団検診や人間ドックなどで検診を受けることです。 大腸がんは、早期に発見されれば90%以上の人が治るといわれているので、検診を受ける意義は高いといえるでしょう。 大腸がん検診の対象年齢は40歳以上です。 問診のほかに、便の中にわずかな量の血液が含まれていないかを調べる「便潜血検査」が行われます。 これは、2日分の便を採取し、検査機関に提出するだけという簡単なものでありながら、死亡率を減らせることが証明されている信用度の高い検査だと考えられています。 便の採取は専用の検査容器で表面をこするだけでできるため、検査を受ける人にとって大きな負担にはなりません。 「異常なし」でも油断は禁物 便潜血検査で「陽性」(異常あり)という結果が出た場合は、さらに詳しく調べるために内視鏡検査などを受けることになります。 ただし、痔や月経による出血でも反応することがあるため、陽性だからといって必ずしも大腸がんであるとはいえません。 反対に、大腸がんがある場合でも100%の確率で陽性の反応が出るわけではないため、「陰性」(異常なし)という結果が出た人も、大腸がんの可能性を完全に否定することはできません。 このような発見漏れが起きる事態を避けるためにも、40歳以上の人は定期的に大腸がん検診を受けることが望ましいといえます。 公開日:2011/11/28
「恥ずかしいから」と病院に行かない人も多い痔。症状が大腸がんと紛らわしいこともあり、放置しておくのは危険です。また、女性特有の痔になりやすい要因もご紹介します。 目次 痔の3タイプ 注意!痔と大腸がんの「よく似た症状」 実は多い!?女性の「痔主」 痔の3タイプ 日本人にとって、痔はポピュラーな病気だと言えるだろう。自分が痔であることに気付いていない、潜在痔主も多いと考えられている。痔には、大きく分けて3つのタイプがある。 痔核(イボ痔) 肛門の血行不良で、毛細血管の一部がこぶ状になったもの。ポタポタ、またはシャーッと出血する。 裂肛(キレ痔) 硬い便で肛門の粘膜が裂けて起こる。痛みと、トイレットペーパーにつく程度の出血がある。 痔ろう(アナ痔) 肛門の周りに激痛と発熱を伴うおできができる。治ったと思っても再発しやすい。 注意!痔と大腸がんの「よく似た症状」 血便や肛門からの出血があったときに「いつもの痔だろう」とたかをくくっていたら、実は大腸がんだったというケースもある。40歳以上で、血便や出血がたびたび起きるようなら、念のため大腸がんの可能性を疑っておいたほうがいいだろう。 痔と大腸がんは、血便や出血のほかにも「便秘になる」「便が細くなる」など、似た症状がある。市販の痔の薬を使っても症状が改善されない場合、早めに病院で診てもらおう。 なお、これらの症状は、以下の病気でもみられることがある。 大腸(直腸)ポリープ 直腸脱 大腸憩室(だいちょうけいしつ)症 肛門掻痒(こうもんそうよう)症 見張りイボ 尖圭(せんけい)コンジローム 大腸がん検診を受けに行こう! 実は多い!?女性の「痔主」 痔は男性に多い病気というイメージがあるが、意外にも女性の「痔主」も多いもの。女性特有の痔のリスクもあるので、普段から気をつけていよう。 便秘しやすい 便秘は痔の大敵。女性は男性に比べて便意を我慢しがちなので、便秘しやすい傾向がある。さらに生理前には女性ホルモン(黄体ホルモン)の影響で腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなり、便秘を起こしやすくなることもある。 冷え性になりやすい 薄着になる機会が多い、体の脂肪が厚くて一度冷えたら温まりにくいなどの理由により、女性は男性よりも冷え性になりやすい。体が冷えると肛門周りの血流が悪くなって、うっ血から痔を招いてしまう。 妊娠中、便が出にくい 妊娠中は女性ホルモン(黄体ホルモン)の影響で便秘がちになるとともに、大きくなった子宮が大腸を圧迫して便が出にくくなるため、痔になりやすい。 出産時のいきみが肛門に負担をかける 出産時にはかなりの力でいきむため、肛門に負担がかかり、イボ痔やキレ痔になることもある。 ■関連記事 がん10年生存率は56.3%、80%以上は前立腺、甲状腺、乳房、子宮体など 国立がん研究センター/全国がんセンター協議会 こんな自覚症状には要注意!早期発見でがんに打ち勝つ 食道がん公開セカンドオピニオンで悩み解決、専門医・薬剤師・患者会がコラボライブ もし、がんにかかったら…入院日数や費用はどのくらいかかる? がん告知で「びっくり退職」はちょっと待った!サバイバー伝授!がんとお金(2) 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2002年11月5日更新日:2020/09/25
カラダと家計を守る、がんの早期発見 日本で死亡者数の上位を占める胃がんと大腸がんは、初期にはこれといった体調の変化はないことが多い。自覚できる症状があっても、検査を受けない限り、ほかの病気と区別するのは難しい。わずかな体調不良で病院へ行ったら、がんが見つかったというケースもある。 胃がんも大腸がんも、早期のうちに発見して治療すれば、大掛かりな手術をしなくても、高い確率で治すことができる。がんが進行していて、入院・手術ともなれば、治療のためにカラダにかかる負担も、経済的な負担も大きくなる。症状が出る前に、できるだけ早く見つけることは、カラダにとっても家計にとっても、大切だと言える。 がんの疑いがあれば、精密検査を必ず受けよう がん検診の結果、がんの疑いがあると判定された場合は、精密検査が必要となる。しかし、「どこも悪くないから大丈夫だろう」と自己診断して、精密検査を受けない人も少なからずいる。確かに、結果的にがんではない可能性はあるものの、それは精密検査を受けたからこそ分かること。発見が遅れて後から後悔しないためにも、精密検査はきちんと受けておこう。 内視鏡検査は恐くない! 胃がんと大腸がんの精密検査では、内視鏡検査が推奨されている。先端に取り付けられた超小型CCDカメラによって、胃や腸などの内側を鮮明に映すため、小さな病変でも発見しやすい。病気の疑いがある場合は、確定診断を行うために、組織の一部を採取することもできる。また、検査の時間は比較的短く、近年は内視鏡の先端も細く改良されてきたため、患者の負担は以前よりも大幅に軽減されている。 安心して受けるための内視鏡検査Q&A がんの早期発見のためだとわかっていても、内視鏡検査に対して、まだ不安は残るかもしれない。そんな方は、よくある質問に対して、下記のようにQ&A形式で回答しているので参考にして、検査に備えよう。 Q. 時間はどれくらいかかるの? 胃内視鏡検査の場合、口から内視鏡を差し入れ、検査する時間はだいたい10~15分。大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入して、検査は数十分とされている。ただし、これは内視鏡による検査だけの時間であり、実際には検査前の準備にも必要となる。また、前日に夕食をとる時間の決まりなどもあるので、病院であらかじめ詳しい説明を受けておこう。 Q. 人前でお尻を見せるのは恥ずかしくない? 大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を入れて行われる。特に女性の場合、「お尻を見られるのが恥ずかしくて検査を受けず、がんの発見が遅れた」ということになれば、悔やんでも悔やみきれないだろうが、その心配はいらない。お尻の部分に縦の切り込みが入った紙パンツや検査着に着替えて行われるため、お尻を出すことなく検査を受けることができる。また、ドアやカーテンなどで仕切られた検査室で行われるので、ほかの患者さんに見られる心配もない。安心して受けよう。
食生活や普段の生活を変えてもなかなか治らない便秘もあります。そんなときは、なにか別な病気が隠れていることも…。どんな便秘のとき、病院へ行った方がいいのでしょうか?考えられる病気などをまとめました。 目次 便秘のタイプをチェック! 便秘になってしまう病気の例 生活習慣の改善を続けよう 便秘のタイプをチェック! 便秘になりやすい人は、排便できない日が続いても「よくあること」と、つい軽く考えてしまいます。しかし実際には、腸などの病気が原因で便秘になっている可能性もあります。普段の便秘と様子が異なる場合、病院で検査を受けてみましょう。 生活習慣を変えても改善しない 思い当たることがないのに、急に便秘になった 強い腹痛や吐き気、発熱などの症状もある お腹がポコリと膨れた感じがする お腹の中がいつも張っているような感じがする 便に粘液や血液が混じっている 便が白っぽい 便がねっとりしていて真っ黒 排便時に強い痛みをともなう 幼児期のころから便秘が続いている 便秘になってしまう病気の例 腸閉塞、腸捻転 腸がつまったり、ねじれたりする。激しい腹痛が起きることもある。 大腸がん・ポリープ 大腸の内壁に腫瘍ができることで、便の通りが悪くなる。便に粘液や血液がついたり、細い便が出たりすることもある。 その痔、大腸がんの疑いも!? 潰瘍性大腸炎 大腸の粘膜で炎症が繰り返し起きると、炎症の跡がコブのようになることがある。それによって腸の内側が狭くなり、便の通りが悪くなる。 若者のおなかが大ピンチ!?潰瘍性大腸炎&クローン病 S状結腸過長症 直腸へ続くS字状の部分が生まれつき長いため、便秘になりやすい。 生活習慣の改善を続けよう 検査の結果、特に異常がなければ、やはり生活習慣の改善が便秘の解消には欠かせない。適度な運動と、水分と食物繊維の摂取を心がけたい。 便秘薬を使う場合も、生活習慣の改善は並行して続けよう。 ■関連記事 がん10年生存率は56.3%、80%以上は前立腺、甲状腺、乳房、子宮体など 国立がん研究センター/全国がんセンター協議会 その痔、大腸がんの疑いも!?痔と大腸がんのよく似た症状 食道がん公開セカンドオピニオンで悩み解決、専門医・薬剤師・患者会がコラボライブ 働き盛りに多い潰瘍性大腸炎・クローン病、仕事と両立する鍵は?Gコミュニティ 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2001年7月16日更新日:2020/09/25
これまでの研究により、多くの場合、がんは日常の生活習慣が原因となって発生することが明らかにされています。なかでも、喫煙や肥満、飲酒などは、確実に関連していることがわかっています。がんの原因となる、周辺環境や生活習慣をまとめました。 目次 がんの発生と生活習慣の関連をチェック! がんを予防する食事とは? がんの発生と生活習慣の関連をチェック! 国立がん研究センターは、WHO(世界保健機関)による食事関連要因に関する評価に、IARC(国際がん研究機構)によるたばこに関する評価の結果を加えた概要として、予防効果の確実性についてランク分けされた下記の表を公表しています。これをもとにして生活習慣を見直し、がんを予防しましょう。 リスクを下げるもの 関連の強さ 要因 関連するがんの種類 確実 身体活動結腸がん 可能性大 野菜・果物口腔がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん 身体活動乳がん 可能性あり / データ不十分 食物繊維、大豆、魚、N-3 系脂肪酸、カロテノイド ビタミンB2、B6、葉酸、B12、C、D、E カルシウム、亜鉛、セレン非栄養性植物機能成分(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) リスクを上げるもの 関連の強さ 要因 関連するがんの種類 確実 喫煙口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん、尿路がん、膀胱がん、子宮頸部がん、骨髄性白血病 他人のたばこの煙肺がん 過体重と肥満食道(腺がん)、結腸がん、直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん、腎臓がん 飲酒口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、乳がん アフラトキシン肝臓がん 中国式塩蔵魚鼻咽頭がん 可能性大 加工肉腸がん、直腸がん 塩蔵品および食塩胃がん 熱い飲食物口腔がん、咽頭がん、食道がん 可能性あり / データ不十分 動物性脂肪 ヘテロサイクリックアミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物 WHO technical report series 916. Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases (2003), IARC monograph on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume83, Tobacco Smoke and Involuntary Smoking (2004) 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がんを予防する食事とは? WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究協会)による評価報告書「食物・栄養・身体活動とがん予防」では、食品や栄養素のがん発生リスクがまとめられています。このなかで、赤肉(牛、豚、羊などの肉)や加工肉(ソーセージ、サラミ、ベーコン、ハムなど)は、大腸がんの発生リスクを上げることが「確実」と判定されています。それらの摂取を控えることが、大腸がんの予防になると言えます。 食物関連要因とがんとの関連(まとめ)WCRF/AICR 2007 リスクを下げるもの 関連の強さ 食物関連要因 関連するがんの種類 確実 運動結腸がん 授乳乳がん 可能性大 肥満乳がん(閉経前) 運動乳がん(閉経後)、子宮体部がん 果物口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん 非でんぷん野菜口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん アリウム野菜(にんにく、玉ねぎなど)胃がん にんにく、食物繊維、牛乳、カルシウムのサプリメント大腸がん 食物に含まれる葉酸膵臓がん 食物に含まれるカロテノイド口腔・咽頭・喉頭がん、肺がん 食物に含まれるβ-カロテン、食物に含まれるビタミンC食道がん 食物に含まれるリコピン、食物に含まれるセレン、セレニウムのサプリメント前立腺がん リスクを上げるもの 関連の強さ 食物関連要因 関連するがんの種類 確実 肥満食道がん(腺癌)、大腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん、腎臓がん、膵臓がん 内臓脂肪大腸がん 高身長大腸がん、乳がん(閉経後) 赤肉・加工肉大腸がん アルコール口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん アフラトキシン肝臓がん 飲料水中の砒素肺がん β-カロテンのサプリメント肺がん 可能性大 肥満胆嚢がん 内臓脂肪膵臓がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん 成人期の体重増加乳がん(閉経後) 出生時過体重乳がん(閉経前) 高身長膵臓がん、乳がん(閉経前)、卵巣がん アルコール肝臓がん、大腸がん(女性) 塩蔵食品・塩分胃がん 中国式塩蔵魚鼻咽頭がん 飲料水中の砒素皮膚がん マテ茶食道がん 食事からのカルシウム前立腺がん World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: a Global Perspective. AICR, Washington DC (2007) 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター このほかに、特定のがんの原因となるウイルスや細菌もあります。例として、C型肝炎ウイルスが肝臓がんを、ヒトパピローマウイルスが子宮頸がんを引き起こすことがあります。 また、ダイオキシンやアスベストなどの環境汚染物質や、環境ホルモンと呼ばれる物質にも発がん性があると言われています。
大腸は消化管の最後の部分 大腸は、直径が小腸に比べて2~3倍(最も太いところで5~7cm)、全長約1.5mの消化管です。 形は小腸のようにのっぺりとした管ではありません。縦走筋でできた幅8mmほどの縦のすじ(結腸ひも)が3本、ほぼ等間隔で付いていて、それにたぐられて縦の方向にゆるやかな蛇腹状になっています。 盲腸・結腸・直腸に分かれ、結腸はさらに口側から上行・横行・下行・S状結腸に分けられます。大腸壁は小腸より薄く、輪状ヒダやじゅう毛はありません。大腸の末端である直腸は骨盤内臓で、外界への開口部が肛門です。 大腸ではほとんど消化は行われない 栄養素は小腸で吸収されて、その残りかすが大腸へ入ってきます。大腸では消化はほとんど行われません。その役割は内容物が約4分の1の容量になるまで水分を吸収することです。また、再利用できるナトリウム、塩分を調節的に吸収し、カリウムを排出します。 消化物は少しずつ固くなり、それが直腸にたまってくると直腸粘膜が刺激されて便意が起こり、大便として肛門から排せつされます。