ゴマに含まれる「セサミン」を摂取した人は、飲酒で顔が赤くなっても早く酔いがさめるのだとか。お酒に強い人でもセサミンにはアルコール分解を助けるはたらきがあるので、ゴマを食べてお酒を飲むと二日酔いが避けられやすいといえそうです。 目次 コレステロール値を下げる!? 赤ら顔がはやくさめる! 便秘に効果アリ! 肌荒れを防ぐ! ストレス防止にも コレステロール値を下げる!? ラットを使った動物実験では、ゴマリグナンの一種セサミンには、血液中のコレステロールの上昇をおさえるはたらきがあることがわかっている。ラットを、 高コレステロール食を与えたグループ 高コレステロールとセサミンを与えたグループ 高コレステロールとセサミンとトコフェロール(ゴマに含まれるビタミンEの一種)を与えたグループ に分けて実験したところ、セサミンやトコフェロールを加えて与えたラットは、与えていないラットより明らかに総コレステロールの上昇がおさえられていたのだ。しかも、善玉コレステロールは増えていた。セサミンには、コレステロールの吸収を妨げるはたらきがあるのかもしれない。 ■セサミンを加えると、こんなにコレステロール値が変わる! (ラットを使った実験より) グループ 血清コレステロール(mg/ml) 総コレステロール HDLコレステロール 高コレステロール食 492(±66)7.3(±1.7) 高コレステロール食+0.2%セサミン 347(±157)10.0(±2.6) 高コレステロール食+0.2%セサミン+0.2%トコフェロール 243(±11)12.8(±4.3) 高コレステロール食+0,2%セサミン+1.0%トコフェロール 184(±32)17.7(±2.8) 出典:「ゴマはなぜからだによいのか」 チクマ秀版社 赤ら顔がはやくさめる! アルコールに弱い成人男性で、セサミンをあらかじめ1日当たり100mg、1週間つづけて摂取した人とセサミンを摂取しなかった人では、飲酒後顔面の温度の変化にどのくらい違いがあるのかを調べた、おもしろい実験がある。 はじめのうちは、セサミンの摂取にはかわりなく顔面温度が上昇する(顔が赤くなる)が、30分もするとセサミンを摂取していたグループは、顔面の温度が下がるのが速かったのだ。つまり、セサミンを摂取している人は、飲酒で顔が赤くなっても早く酔いがさめるというわけだ。 もちろん、お酒に強い人でもセサミンにはアルコール分解を助けるはたらきがあるので、ゴマを食べてお酒を飲むと二日酔いが避けられやすい。 便秘に効果アリ! ゴマには食物繊維が豊富に含まれている。ほとんど消化されることがないまま、腸へ送られる食物繊維は便を柔らかくしてかさを増やし、スムーズに直腸へ送られるはたらきがある。このため、便秘の予防や解消に役立つというわけだ。 もちろん、ゴマばかりを食べることはなかなかできないので、ごぼうサラダにゴマを混ぜたり、海草にゴマをふりかけて食べるなど、ほかの食品と合わせて食べるのがいいだろう。 参考文献:「ゴマ」 並木満夫・福田靖子監修 NHK出版 肌荒れを防ぐ! 皮膚の新陳代謝を活発にする栄養素には、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、たんぱく質などいろいろあるが、ゴマにはビタミンC以外の栄養素がすべて含まれている。とくに、ビタミンCとゴマに含まれる鉄を一緒に食べると、体内でコラーゲン(皮膚の組織で重要な役割を果たしているたんぱく質のひとつ)を合成しやすくなるのだ。ゴマ油は、ボディーオイルとしても使われるほど。 ストレス防止にも 現代社会はストレスのかたまり。ゴマには、ストレスを和らげるはたらきがあるという。 セロトニンという物質は、精神安定、鎮痛、睡眠などの作用がある、神経伝達物質である。このセロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンが、脳に運ばれてビタミンB6やマグネシウムなどとともに作られる物質だ。つまり、トリプトファンを多くとれば、脳のトリプトファン濃度が高くなってセロトニンが増え、ストレスを和らげることができるのだ。ゴマには、トリプトファンやビタミンB6といった栄養素が多く含まれている。 公開日:2001年2月26日
高脂血症は日頃の生活習慣を見直していくことで、予防・改善できるのだ。まずは何かひとつ、変えてみては? 目次 脂質異常を予防する食事は? 脂質異常症のタイプ別食事療法のポイント 脂質異常症の運動のポイント 薬に頼ってもいい? 生活習慣を見直そう 脂質異常を予防する食事は? 積極的に摂りたいもの 穀類(米や麦など) 食物繊維(海藻類、豆腐や納豆などの大豆加工品、キノコなど) 緑黄色野菜(にんじん、ピーマン、ブロッコリー、トマトなど) 魚の脂 EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)はコレステロール値を下げ、中性脂肪を減少させる ジアシルグリセロール(植物油に含まれる成分。普通の食用油に比べて体に脂肪がつきにくい) 調理法もひと工夫 ゆでる、蒸す、焼くといった方法で、なるべく油を使わない 味付けを薄めにして塩分を摂りすぎないようにする 脂質異常症のタイプ別食事療法のポイント ●トリグリセライド値が高い時…糖質を制限する 砂糖類、菓子類、果物類などやアルコールは制限する ●コレステロール値が高い時…コレステロールの摂取量を抑える 食物繊維を多く摂り、コレステロールの吸収抑制をはかる 脂質異常症の運動のポイント 自分のペースで行える有酸素運動が適している。無理なく気長に続けよう。 ●ウォーキング 歩くことは手軽な全身運動。まずは普段自分が歩いているペースで2~3キロ歩くことから始めよう。次第に慣れてきたらペースを速め、距離を延ばしていく。 ●ジョギング 心肺機能を高める効果も。ウォーキングで体を慣らしてから行うこと。まずは5分くらい走ることを目安に始める。足の筋肉や関節を痛めないように、適したシューズで走ること。 ●水泳 水圧の作用で内臓のはたらきを高める効果も。1分間30~40mのペースで5分間泳ぐことから始める。疲れたら無理せずに休むこと。慣れてきたら、10分、20分と時間を延ばしていく。 ほかにも、なわとび、サイクリング、エアロビクスなどがおすすめ。 激しすぎる運動はかえって危険。頑張り過ぎず、気持ちよく汗ばむ程度で行おう! 薬に頼ってもいい? 血清脂質の値が高すぎる場合、食事や運動療法を続けても効果が現れないなら、薬に頼ることもある。しかし、食事や運動療法も同時に続けないと、薬の効果が十分に発揮されないことも。必ず医師と相談しながら、自分自身で治すという姿勢が大切だと言えるだろう。 生活習慣を見直そう ●まず禁煙! 喫煙はLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らしてしまう。 また、喫煙によってLDLコレステロールの変性が促進されると、変性したLDLが血管壁のマクロファージ細胞に取り込まれ、動脈硬化を引き起こす原因にもなる。とりあえず、本数を減らすことから始めてみよう。 ●アルコールを控えめに アルコールを飲みすぎると、肝臓での中性脂肪の合成が促進され、VDLD、LDLコレステロールを増やしてしまい、脂質異常症や動脈硬化の原因に。「アルコール+つまみ=カロリー摂取過剰」で肥満を呼び、さらには脂質異常症へ…。「酒のつきあい」が多い人は、つまみに酢の物を選ぶ、夜12時以降は飲まない、週に3日は休肝日を設ける、などを心がけたい。 ●ストレスを溜めない 食欲をコントロールする機能は脳の視床下部にあるとされる。感情の揺れがあまりに激しいと、 視床下部の食欲調節中枢機能が影響を受けてしまう。そのため、つらい、悲しいという刺激が加わると一層食欲に拍車がかかってしまうという説もある。脂質異常症対策の運動や食事がストレスにならないよう、自分のペースで気長に取り組もう。 公開日:2014年7月7日
高脂血症は健康診断などの血液検査で発見することができる。基準値をまとめてみたので、健康診断などの血液検査の結果から自分でチェックしてみよう! 目次 血液検査の仕方 基準値を知ろう 検査を受ける際に心掛けること 血液検査の仕方 脂質異常症の疑いがあるかどうかは、血清の中の脂肪成分がどれくらいあるかを調べればわかる。 健康診断や人間ドックの血液検査では、「コレステロール値」、「中性脂肪値」、「HDLコレステロール値」を測定する。この3つの数値があれば、大抵の脂質異常症の診断はできるのである。 基準値を知ろう 脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値を、基準値に照らし合わせて診断される。 血清コレステロール 基準値以上になると「高コレステロール血症」 血清総コレステロール(mg/dl) LDL-コレステロール(mg/dl) 適正域200未満120未満 境界域200~219120~139 高コレステロール血症220以上140以上 血清トリグリセライド 基準値以上になると「高トリグリセライド血症」 空腹時トリグリセライド(mg/dl) 高トリグリセライド血症150以上 HDLコレステロール 基準値未満だと「低HDLコレステロール血症」 HDL-コレステロール(mg/dl) 低コレステロール血症40未満 参考:日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドライン1997年 LDLコレステロール値 コレステロール値・中性脂肪値・HDLコレステロール値から求めることができる。130(mg/dL)以下であれば正常。 LDLコレステロール値 =総コレステロール値-HDLコレステロール値-(中性脂肪値×1/5) 参考:「気になる検査値食事で治そう1 肥満度・コレステロール値・中性脂肪値・血圧」中村丁次監修 NHK出版協会発行 検査を受ける際に心掛けること 血液検査は空腹時、一般的には朝食を抜いた午前中に行う。正確な診断を受けるためにも、以下のことを心掛けよう。 ●12時間以上、空腹にしてから検査を受ける 食事は、トリグリセライドやHDLコレステロールに影響を与えるため。検査前日の午後9時以降は食事を摂らないこと。脂っこいものをたくさん食べるのもNG。 ●前日の飲酒を避ける 飲酒のために高トリグリセライド血症を来すことがあるため。 公開日:2002年4月1日
ひとつ間違えば命に関わる動脈硬化。どこの血管が詰まるかによって症状が違うのだ。違いについて、わかりやすく表にまとめてみた。 目次 動脈硬化とは? 粥状(じゃくじょう)動脈硬化の過程は? 動脈硬化が原因の主な病気と症状 脂質異常症って若い人でもなるの? 動脈硬化とは? 動脈硬化とは動脈の壁が硬く、もろくなること。種類は3つある。 ●粥状(じゃくじょう)動脈硬化=アテローム動脈硬化 脂質異常症で起こる「動脈硬化」といえばこれ。心筋梗塞、脳硬塞を招く。大動脈、脳動脈など太くて重要なはたらきをする動脈ほど起こりやすい。 ●細動脈硬化 脳やじん臓の動脈に見られる。高血圧との関係が強い。 ●中膜硬化 糖尿病患者に見られる動脈硬化。 粥状(じゃくじょう)動脈硬化の過程は? 血中のコレステロールが増えると、血管の内皮細胞の傷付いた部分から、LDLが内膜に入り込む。 LDLは活性酸素によって酸化され、マクロファージ(* 異物や老廃物を食べる細胞)にどんどん取り込まれ、泡沫細胞(* 細胞の中に脂の成分が白く泡状に見える)になる。 さらに、血管の中膜の平滑筋細胞も増え、内膜に侵入して泡沫細胞になる。 泡沫細胞はやがてパンクして、コレステロールの結晶が死んだ細胞のかすがたまってコブを作る。 コブの中はどろどろの粥状となっている。 動脈硬化が原因の主な病気と症状 心臓に栄養や酸素を運んでいる血管に動脈硬化が起こり血流が悪くなって起こる障害を「虚血性心疾患」といい、狭心症・心筋梗塞が代表的な病気である。 狭心症と心筋梗塞の見分け方 ■痛み 状態 狭心症 心筋梗塞 どんなときに起こりやすいか ・階段を昇るときなど何かしているとき ・明け方トイレに起きたとき ・アルコールを飲んだときの早朝 安静時・動作時に関係なく起こる 発作の感じ、痛さ ・締めつけられている感じ ・重い痛み とても激しい痛み 持続時間 5~15分程度 30分以上 安静にすると 治る 治らない ニトログリセリンの錠剤で(舌下錠) 治る(1分から数分) 治らない ■その他の症状 状態 狭心症 心筋梗塞 嘔吐・冷や汗 なし あり 顔色 蒼白にはならない 蒼白になる 血圧 上昇する 降下する 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」西崎統著 PHP研究所発行 また、脳の血管が破れたり詰まったりして起こる病気の総称を「脳卒中」という。 このうち動脈硬化が原因のものが「脳硬塞」。「脳出血」は動脈硬化と全く関係がないわけではないが、主たる原因は高血圧。脳の血管が破れて、脳の中に血液が流れ出した状態のことである。 脳硬塞には「脳血栓(血管そのものが動脈硬化等で閉塞する。大半はこちら)」と「脳栓塞(ほかの部位から、異物(栓子)が飛んできて血管が閉塞する)」がある。 脳硬塞の識別症状 脳血栓 脳栓塞 発生 徐々に進行する 突然起こる 進行過程 一過性の頭痛、めまい、言語障害、手足のしびれなど 半身のマヒ、昏睡 活動中、または起床直後に急に発作。手足のマヒ、けいれんなど 頭痛はあっても軽い 意識障害 比較的軽い あまりない 顔色 蒼白になることが多い 蒼白になる 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」西崎統著 PHP研究所発行 脂質異常症って若い人でもなるの? 「脂質異常症なんて、若者がなる病気じゃないよ!?」なんて思っている人もいるかもしれない。しかし、コンビニやファーストフード店が発達して、コレステロールが多い食事を口にしやすくなっている昨今、若者の脂質異常症が増えている。スナック菓子・インスタント食品類も、摂り過ぎるのは要注意!また、体を動かす機会が極端に減ったことも大きな原因となっている。 公開日:2002年4月1日
脂質異常症にはいくつか種類があり、それぞれ治療法が異なる。きちんと治すためには、自分がどのタイプかを知っておくことが大切だ。 目次 こんな人が危ない!脂質異常症になる原因について 脂質異常症の種類 脂質異常症を放っておくとどうなる? 脂質異常症の人は献血できるの? こんな人が危ない!脂質異常症になる原因について あなたも心当たりはないだろうか? 「甘いものが好きで間食が多い」「脂っこいものばかり食べている」「食事時間が不規則だ」「お酒を飲み過ぎる」「運動不足である」 偏った食生活、運動不足による肥満、アルコールの飲み過ぎが脂質異常症の代表的な原因である。 加齢によって血清脂質も上昇するってホント? 肝臓機能が衰えてLDL(悪玉)コレステロール受容体の動きが低下、コレステロールや中性脂肪などの血清脂質が血液中に増えてくるケースがある。男性の場合、30歳くらいから急に血清脂質の値が上昇してくる。 また女性の場合、閉経後に急に血清コレステロール値が高くなってくる。これは女性ホルモンのはたらきが低下するため。女性ホルモンにはLDL受容体を増やすはたらきがあるのだ。 体質(遺伝的素因)が原因の時もある? 脂質異常症や動脈硬化の中には遺伝的な要因が大きいケースもある(原発性脂質異常症)。ただし、これは「なりやすい体質」ということ。食事&運動など、生活習慣を見直すことで改善できるようだ。 脂質異常症の種類 脂質異常症はいくつかのタイプに分類できる。代表的なものを紹介しよう。 ●LDL(悪玉)コレステロール値が高い場合:「高コレステロール血症」 食生活の変化やライフスタイルの欧米化によって、日本でも高コレステロール血症の人が急増中。国民の5人に1人は高コレステロール血症の疑いがあるとさえ言われている。 ●中性脂肪(トリグリセライド)値が高い場合:「高トリグリセライド血症」 日本人男性の脂質異常症に多いタイプ。アルコールと肥満の影響が大きいと考えられる。 ●LDL(悪玉)コレステロール値と中性脂肪(トリグリセライド)値、両方が高い場合:「複合型脂質異常症」 早発性の冠動脈硬化症を合併する恐れがある。 ●HDL(善玉)コレステロール値が低い場合:「低HDLコレステロール血症」 中性脂肪によってHDLコレステロールが減らされるという説がある。動脈硬化にかかる危険性が高まる。 同じ脂質異常症でも、中性脂肪値が高いタイプかコレステロール値が高いタイプかで、治療法も異なるのだ。自分がどのタイプか知っておくことが大切である! 脂質異常症を放っておくとどうなる? 脂質異常症自体は、自覚症状がなく「SILENT DISEASE(沈黙の病気)」といわれている。しかし、脂質異常症を放っておくと、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳血栓・脳梗塞、足などの閉塞性動脈硬化症などの原因になっていくのだ。 脂質異常症→動脈硬化→虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) →脳卒中(脳出血、脳硬塞) →腎臓病 →閉塞性動脈硬化 etc… 命に関わる大問題につながりかねない! 脂質異常症の人は献血できるの? 脂質異常症の治療(服薬)をしているかどうかで献血できるかどうかが決まる。服薬を必要としない程度の脂質異常症であれば献血はでき、その血液は他に異常がなければ有効に活用される。服薬をしている場合は「薬剤を服用中との申告があれば、その目的、薬品名を確認し、疾病の内容、献血者本人の疾病に注意して、採血の適否を判断する」ことになる。 参考:新潟県赤十字血液センター資料 公開日:2002年4月1日
脂質異常症とおおいに関係あるのが、おなじみ善玉&悪玉コレステロール。でも悪玉コレステロールは、本当に「悪」なのだろうか?その実態をもう一度確認しておこう。 目次 脂質異常症とは? コレステロール 中性脂肪(トリグリセライド) リン脂質 遊離脂肪酸 脂質異常症とは? 「脂質異常症」は血液の中に溶けている脂質(血清脂質という)が異常に多い状態のこと。血清脂質にはコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、遊離脂肪酸などがある。特に自覚症状もなく、日常生活に不都合なこともないため見過ごされがちで、健康診断などの血液検査で発見されることが多いようだ。 コレステロール 悪玉と思われるコレステロール、実は体の中ではとても重要なはたらきをしている。でも過剰になると体に蓄積されて困った存在になるのだ。 ■コレステロールのはたらき 細胞膜をつくる ホルモン(副腎皮質ホルモンや性ホルモン)の原材料となる 胆汁酸の原材料となり、消化作用を助ける 「善」か「悪」か、それが大問題だ! 一般的に「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」の2つの名前で呼ばれることが多いため、コレステロールには「善玉」と「悪玉」の2種類あると思われがちだが、実はコレステロール自体には善も悪もない。血液中での「コレステロール+中性脂質+アポたんぱく質+リン脂質」の結合の割合により、「善玉」と「悪玉」に振り分けられているのだ。 では、水が主成分の血液にどのようにして脂質が混ざっているのか? 脂質は脂肪なので、そのままでは水が主体である血液の中を移動できない。そこで「アポたんぱく」と呼ばれるたんぱく質が、リン脂質といっしょにコレステロールや中性脂肪を包んで「リポたんぱく(質)」となり、血液中でコレステロールや中性脂肪を運んでいるのだ。 リポたんぱく質は大きく4つにわけられる。 リポたんぱくの種類とはたらき 種類 合成臓器 おもな脂質 はたらき 善玉 or 悪玉 カイロミクロン 小腸 約85%が中性脂肪 ●食物から吸収した脂質を肝臓に運ぶ ●コレステロールの合成を調節する ●脂溶性ビタミンを運ぶ 悪玉 超低比重リポたんぱく(VLDL) 肝臓 約55%が中性脂肪 ●肝臓で合成された脂質を末梢組織に運ぶ ●コレステロールを調節する 悪玉 低比重リポたんぱく(LDL) 血液中 約45%がコレステロール ●コレステロールを末梢組織に運ぶ 悪玉 高比重リポたんぱく(HDL) 肝臓・血液中 約50%がコレステロール ●末梢組織から余分なコレステロールを肝臓に回収する ●中性脂肪を分解する 善玉 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」 西崎統著 PHP研究所発行 「中性脂肪が高い人が読む本」 中條やえ子著 主婦と生活社発行 ■善玉コレステロール、悪玉コレステロールのそれぞれのはたらき 善玉コレステロール 体の中の余ったコレステロールを回収し、肝臓へ戻す。「回収屋」 悪玉コレステロール 肝臓からコレステロールを運んで各組織の細胞に届ける。「配達屋」 イメージのよくない「悪玉コレステロール」にも、体にとって大切な役割があるのだ! ただ、コレステロールの量が多すぎると血管の中にたまり、「悪」となってしまう。 善玉コレステロールと悪玉コレステロールのバランスに気をつけることが大切なのだ。 中性脂肪(トリグリセライド) グリセロールに3つの脂肪酸が結合した物質。 体の中の脂質のひとつで、食物を通して体内に取り入れるものと、体内(肝臓)で合成されるものとがある。 ■中性脂肪のはたらき 体温を一定に保つ 皮下に貯えて外部から受ける衝撃から内臓を守る 体を動かすエネルギー源となる 中性脂肪はエネルギー源 中性脂肪が体内で完全燃焼すると、1g当たり約9kcalのエネルギーになる。一方、たんぱく質と糖質はともに1g当たり約4kcal。つまり中性脂肪は単位量当たりのエネルギー生産量が高いということになる。 ちなみに体重60kgの人の体内には平均9kgの中性脂肪がある。仮にこれがすべて完全燃焼しエネルギーに変わるとしたら単純計算で81,000kcal。50日分の食事に匹敵するカロリーである。 リン脂質 細胞膜の構成成分。 リン脂質のはたらき…体内の脂質などの水に溶けない性質の物質を水になじませる。 遊離脂肪酸 そのまま体内で使えるエネルギーになる。 公開日:2002年4月1日
この答えはNO。コレステロールが高いだけでは特に自覚症状がないケースが大半で、日常生活にも支障はありません。でも、実は高コレステロールの次の段階、さらにその次の段階が怖いのです。コレステロールが高いと動脈硬化という状態に陥りやすく、さらに進むと、心筋梗塞や脳出血など、死に直結する深刻な病につながりやすくなります。 目次 動脈硬化ってどんな病気? LDL(悪玉コレステロール)が原因?アテローム硬化 極悪コレステロール・Lp(a)にも注目 動脈硬化ってどんな病気? 動脈硬化とは、血管の内側の壁面に脂質、繊維、カルシウムなどが蓄積して、血管が固くなってしまう状態をいいます。これが進むと、さまざまな成分が付着することで血管の壁面が盛り上がり、血管が細く、もろくなってしまいます。最終的には、血液の流れが悪くなったり、血管が破裂したりします。その場所によっては命にかかわる深刻な事態になります。 動脈硬化には3つのタイプがあります。 ●アテローム硬化(粥状動脈硬化) 脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、お粥状のかたまりができて血管内が細くなり、血流が悪化。血管が完全にふさがってしまうこともあります。 ●細動脈硬化 脳や腎臓などの細い動脈が狭くなり、血管の壁に傷が付いてしまいます。 ●中膜硬化 腕や太ももの動脈壁の内層(中膜)が石灰化します。 LDL(悪玉コレステロール)が原因?アテローム硬化 動脈硬化の中でもっとも代表的なアテローム硬化の原因になっているのが、LDL(悪玉コレステロール)とHDL(善玉コレステロール)です。 アテローム硬化がどのようにして起こるのか簡単に紹介します。 1. 血液中のHDLとLDLがバランスがとれた状態 血管の内膜の一番内側にある、内膜上皮細胞にすき間があいたり傷がついたりすると、LDL(悪玉コレステロール)が集って傷口を防ぐはたらきをします。HDL(善玉コレステロール)は余分に集ったLDL(悪玉コレステロール)を肝臓に運ぶはたらきをします。 2. LDLが増え、HDLが減ると… 内膜上皮細胞のすき間や傷口から、HDL(善玉コレステロール)が運びきれないLDL(悪玉コレステロール)が血管内の内膜に入り込み、血管の奥の壁を傷付けたりします。 3. 血管壁がコブのようになる 内幕上皮細胞のすき間からは、LDL(悪玉コレステロール)だけでなく、カルシウムや血小板も内膜に入り込んできます。血管奥の傷からも細胞が入り込んで、内幕の中はドロドロごちゃごちゃのお粥状態に。コブのように膨れ上がります。最終的にそのすきまは血小板によってふさがれますが、これが血管をふさぐ栓のようになってしまうこともあります。 極悪コレステロール・リポたんぱくLp(a)にも注目 コレステロールと動脈硬化に深いつながりがあること、おわかりいただけましたか?ところで、Lp(a)というリポたんぱくが注目されています。 体内には、血液が凝固したときに血液中でこれを溶かすシステム(線溶系)があります。Lp(a)はこのシステムを低下させ、血液を固まりやすくしてしまうことが、わかりました。このため、LDL(悪玉コレステロール)以上に動脈硬化を進行させる力があるのではないかと言われています。 ただし、このリポたんぱくはまだまだ未知数の部分が多く、今後の研究の動向が気になるところです。
この答えはNO。コレステロールの摂り過ぎは健康の大敵と言われるようになって久しいですが、卵やイカなどコレステロールを多く含む食べ物を避けさえすれば大丈夫というわけではありません。コレステロールはどのようにして体内に取り込まれるのでしょうか?また、体内でどんなはたらきをしているのか見てみましょう。 目次 コレステロールの70%は体内で合成される 体内で重要なはたらきをするコレステロール コレステロールの70%は体内で合成される 卵やイカはコレステロールを多く含む食品ですが、そのすべてが体内に吸収されるわけではありません。また、成人の体が1日に必要とするコレステロールの量は1~1.5g程度ですが、そのうち食品から摂るのは20~30%です。残りは、人間の体内で合成されています。 体内には、卵やイカなどの食品から多くのコレステロールが摂取されたとき、体内で合成する量を減らす機能があります。しかし、これには個人差があります。また、高齢になるにしたがって低下することもあるため、コレステロールを多く含む食品を食べ過ぎないように注意することは大切です。 しかし、コレステロールは砂糖や脂肪からも合成されます。つまり、コレステロールを多く含む食品だけを食べないようにしても、砂糖や脂肪分の多い食生活を送っている限り、コレステロール過剰は治らないのです。 体内で重要なはたらきをするコレステロール 「いろいろな病気の原因になる」と、危険性ばかりが注目されていますが、コレステロールは細胞膜やホルモンの原料になる、体になくてはならない物質です。極端に避けるとかえって悪影響を及ぼすことにつながります。 コレステロールの3つのはたらき 1. 細胞膜や生体膜の材料になる 人間の体がたくさんの細胞からできています(なんと約60兆)。そのひとつひとつが中味がもれないような袋に入っています。コレステロールはこの袋にあたる細胞膜や生体膜の材料になっています。 2. ホルモンの材料になる 人間の体の機能を周りの環境に合わせて調節するはたらきをするホルモンです。コレステロールはこの材料のひとつでもあります。特に、いろいろな栄養素を体内で利用するときの助けになる副腎皮質ホルモンや男性ホルモン、女性ホルモンの材料として重要です。 3. 胆汁酸の材料になる 食物中の脂肪やたんぱく質の消化、吸収に大きな役割を果たしているのが胆汁酸という消化液です。この胆汁酸もコレステロールを材料として作られています。ただし、胆汁に含まれるコレステロールの量が多すぎると、胆石を作ってしまい、胆汁の流れを悪くしたり、胆石症や胆のうがんの原因になることがあります。
この答えはNO。血液中には、動脈硬化などの原因になる悪玉コレステロール(LDL)と悪玉コレステロールの悪さを防ぐ善玉コレステロール(HDL)が存在します。魚類に含まれる脂肪はこの善玉コレステロールを増やすはたらきがあると言われています。善玉・悪玉コレステロールとそれぞれに関わりのある食品について紹介します。 目次 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう 善玉・悪玉コレステロールの構成 コレステロールには2つの概念がある 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう コレステロールは血液によって体の各部分に運ばれます。しかし、コレステロールも脂肪の一種、そのままでは血液と分離したまま、運搬どころではありません。それで、コレステロールをはじめ、中性脂肪やリン脂質など脂質の仲間は、たんぱく質(アポたんぱく)に覆われた形で血液と混じり合っているのです。これは「リポたんぱく」と呼ばれ、主なものは4種類あります。 このうちの2つが有名な善玉コレステロールと悪玉コレステロールです。 善玉・悪玉コレステロールの構成 HDL(善玉コレステロール) コレステロールの他リン脂質を多く含む、比重が高い(High)リポたんぱくです。肝臓や小腸で合成されます。 全身の細胞膜から過剰なコレステロールを抜き取り、肝臓に運搬するはたらきがあります。血液中にHDL(善玉コレステロール)が多いと動脈硬化などにかかりにくいことが明らかになっています。 LDL(悪玉コレステロール) コレステロールを多く含みます。HDL(善玉コレステロール)より大きく、比重は低い(Low)です。体のすみずみの細胞に運ばれて 細胞膜などの原料になります。また、血管の表面の細胞膜を作るはたらきもありますが、増えすぎると動脈硬化などの原因になります。 このほか、リポたんぱくには、その他のリポたんぱくを作る素となる「カイロマイクロン」、中性脂肪を多く含む「VLDL」があります。それぞれ、血液中に存在する量が多くなると動脈硬化など深刻な病気の原因になります。 コレステロールには2つの概念がある 動脈硬化など生活習慣病に大きく関与するのは、上で紹介したHDL(善玉コレステロール)とLDL(悪玉コレステロール)になります。この2つは、「コレステロールを多く含むリポたんぱく」です。一方、コレステロールそのものが原因になる病気もあります(コレステロール胆石など)。このように、一般的にコレステロールと呼ばれるものには、「コレステロールそのもの」と「コレステロールを多く含むリポたんぱく」という2つの概念があることを覚えておきましょう。 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 肉や魚に含まれる脂肪。ひと言に脂肪といってもいろいろな種類があり、体内でのはたらきもそれぞれ微妙に異なります。この違いの素が脂肪酸です。皆さんがよく耳にするリノール酸、オレイン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのことです。脂肪酸は大きく下の3つに分類されます。それぞれの特徴をまとめました。 飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 パルミチン酸、アラキジン酸など 特徴 とりすぎると肝臓でコレステロールの形成を促進し、悪玉コレステロールを増加させます。 多く含む食品 パーム油(植物油の一種)、豚や牛の脂肪分、バターなど 多価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 リノール酸、EPA、DHAなど 特徴 悪玉コレステロールを減らして、動脈硬化の原因となる血栓の生成を防ぐぎます。しかしリノール酸をとりすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールまで減らしてしまいます。 多く含む食品 リノール酸=サフラワー・ひまわり・サラダ油など多くの植物油、ごま・松の実など種実 EPA=すじこ、はまち、いわし、にしん、さばなど DHA=本マグロ脂身、すじこ、まだい、ぶり、さばなど 一価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 オレイン酸など 特徴 多価不飽和脂肪酸同様に悪玉コレステロールを減らすが、善玉コレステロールは減らさないという実験報告がなされ、最近注目を浴び始めている 多く含む食品 オリーブ油、なたね油、調合サラダ油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、牛、豚、鶏肉の脂肪分 オレイン酸を含む食品ならたくさん食べても大丈夫? これは大きな誤解なので、注意しましょう。例えば牛や豚の脂肪ですが、オレイン酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいるのです。また、マカダミアナッツを食べ過ぎればコレステロールは増えなくても、中性脂肪は増えてしまいます。 体にいいと言われている脂肪でも摂りすぎ、偏りはダメということです。摂取量を守った上で、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂るよう、いろんな食品を組み合わせて調理することが大切です(飽和:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=1:1.5:1の比率が望ましいようです)。
この答えはNO。10%でも「多い」と感じますがそれどころではありません。30歳以上の男性の約29%、女性の約34%が高コレステロールではないかと思わせるデータが存在します。ここではコレステロールに関する検査と、高コレステロールになりやすい生活について紹介します。 目次 高コレステロールは血液検査で診断される 高コレステロールになりやすい生活チェック 高コレステロールは血液検査で診断される 高コレステロールは、動脈硬化や心筋梗塞など致命的な病気の原因になる深刻な事態ですが、それだけでは自覚症状もなく、日常生活に差し支えはありません。このため、高コレステロールかどうかは、主に血液検査によって診断されます。 血液検査の結果による診断と治療方法は以下のとおりです。ただし、これはあくまでも目安なので、数値にまどわされず、専門家の指導に従ってください。 血液中の総コレステロール量・中性脂肪値の測定結果と診断結果・治療法 総コレステロール基準値(220mg/dl)以上の人基準値付近の人基準値未満の人 中性脂肪値基準値(150mg/dl)以上の人基準値付近の人基準値未満の人 HDLコレステロール基準値(40mg/dl)未満の人基準値付近の人基準値未満の人 脂質異常症の危険は? 脂質異常症の疑いあり。さらに詳しい検査で、動脈硬化などの危険性を調べます ・12時間絶食した上での血液検査により、LDLコレステロール値を算出することもあります ・医師による問診(自分や家族がこれまで動脈硬化などにかかったことがあるかなど) 血液中の脂肪の量は正常値 その他の病気の危険は? 動脈硬化などの危険性が高い、または糖尿病などほかの病気にかかっています。 動脈硬化などの差し迫った危険はありません。 ここで油断せず、脂肪のたまらない生活を送るようにしましょう。 治療方法 食事療法と並行して薬物療法などを行います。運動療法は禁止されるケースが多いようです。 まず、食事療法と運動療法を指導されることが多いようです。ストレスを避ける、禁煙など生活指導も行われます。3ヵ月後ぐらいに再検査し、変化がない場合、薬物療法を提案されることが多いようです。 通常の検査では、LDL(悪玉コレステロール)値まで出さないことが多いのですが、次の計算式で求めることができます。 LDL(悪玉コレステロール)コレステロール値 =総コレステロール値-HDL(善玉コレステロール)コレステロール値-0.2×中性脂肪値(中性脂肪値が400mg/dl以下) LDL(悪玉コレステロール)の値が140mg以上の場合は「高コレステロール血症」と診断されます。 高コレステロールは「脂質異常症」の一形態 「脂質異常症」とは、LDLコレステロール値や中性脂肪値が基準より高い、もしくはHDLコレステロール値が低い状態を総称したものです。コレステロール値が高い「高コレステロール血症」は、脂質異常症の一形態です。脂質異常症にはこのほか、HDL(善玉コレステロール)値が低いタイプや中性脂肪値だけが高いタイプなどがあります。 高コレステロールになりやすい生活チェック 1~2年に1度血液検査を受けることは大切ですが、総コレステロール220mg/dl未満だからと言って、安心ばかりはしていられません。「高コレステロール血症」の診断基準は、これを超えると動脈硬化などになる確率が高くなるというデータをベースに決められたものです。国によっては200mg/dl以上を診断基準にしているところもあるくらいなのです。したがって、検査の数字に一喜一憂するだけでなく、日ごろからコレステロールをためない生活をするように心がけるのが一番となります。 また、高コレステロールもなりやすい人となりにくい人がいます。次のチェックであてはまるものがある場合は要注意です。 高コレステロールになりやすい人チェック 家族や親類にコレステロール値の高い人がいる 肥満気味、特に中年になって太ってきた人 更年期を迎えた人 糖尿病、腎臓病、ホルモンの病気にかかっている人 高コレステロールになりやすい生活チェック 肉や魚など脂っこいものが好き。から揚げやスナック菓子もよく食べる お酒を1日2合以上飲む 卵を1日2個以上食べる(コレステロールを多く含む食品をよく食べる) 仕事が忙しく、生活も不規則でストレスがたまりやすい 喫煙の習慣がある
この答えはYES。高コレステロールと深い関係がある動脈硬化。喫煙などによってさらに動脈硬化を進め、最終的には命にかかわる病気にかかってしまう可能性があります。 目次 動脈硬化の先には、こんな病気が待っている 虚血性心疾患 脳血管障害 動脈硬化を進める主な要因 動脈硬化の先には、こんな病気が待っている 動脈硬化も最初のうちは特に自覚症状がありません。しかし、そのまま放っておくとどんどん進み、ある日突然発作を起こして倒れてしまうことも多いようです。動脈硬化が原因となる深刻な疾患を紹介しましょう。 虚血性心疾患 心臓を動かす筋肉(心筋)に血液を送る動脈(冠状動脈)が、動脈硬化を起こした状態のことです。 ●狭心症 冠状動脈の血流が悪くなり、心筋に十分血液が供給されなくなるのが原因です。運動や仕事中に強い胸の痛みを感じるなどの発作が起こることが多く、死亡するのはまれのようです。 ●心筋梗塞 冠状動脈がふさがって心筋に血液が送れなくなり、心筋の一部が壊死します。寝ているときなどに突然、強い胸の痛みに襲われます。死亡するケースも多いです。 危険信号は、運動や興奮したりすると、心臓や上復部あたりが重苦しくなること。前胸部が痛むこともあります。 脳血管障害 脳内の動脈が動脈硬化を起こした状態です。このために脳に血液が送られなくなると、体のマヒ、失語などの後遺症が残ることが多いようです。このような症状を総称して「脳卒中」といいます。 ●脳出血 脳の動脈の一部が破れて脳の中に血腫ができます。活動中に急に頭痛や倒れるなどの発作が起きます。半身マヒ、昏睡に陥ることもあります。脳卒中の中でも死亡率が高いようです。高血圧のある人に起こりやすいようです。 ●脳梗塞 脳の動脈が詰まり、一部に壊死が起こる状態です。脳血栓と脳塞栓に分けられます。脳血栓は一過性の頭痛やめまいなどが繰り返され徐々に症状が重くなります。高脂血症、糖尿病、高血圧の人に多いと言われています。逆に、脳塞栓は急に発作が起こり、虚血性心疾患などが原因になることがあります。 危険信号としては、物忘れが増える、ぼんやりする、感情の起伏が激しくなる、頭痛やめまい、足のしびれ感がある、話そうとすると舌がもつれることが多いなどが挙げられます。 上記で紹介したのは、コレステロール値の高い人がかかる可能性の高い疾患です。このほか動脈硬化が原因で起こる病気には、腎疾患(腎硬化症など)、末梢動脈の動脈硬化、目の動脈硬化(眼底出血)などがあります。 動脈硬化を進める主な要因 動脈硬化を進める条件は、高コレステロールだけではありません。実際には次の表の諸条件がそれぞれ影響しあっています。思い当たることが多い人は要注意です。できるところから少しずつ改善していきましょう。 なお、思い当たることが多いものの、ここしばらく検査を受けていない場合は、まずは健康診断や血液検査を受けることをおすすめします。 動脈硬化を進める主な要因 高血圧 動脈の内壁に常に高い圧力がかかるため、内壁が損傷されやすいです。特に脳や腎臓の動脈硬化が多くなります。 高脂血症 LDL(悪玉コレステロール)が多い高コレステロール血症は、動脈の内壁にコレステロールが染み込みやすく、アテローム硬化(粥状動脈硬化)を促進します。特に狭心症や心筋梗塞などを起こしやすいです。 糖尿病 糖尿病の人は、中性脂肪や総コレステロール値の高い人が多いです。また、HDL(善玉コレステロール)が低くなる傾向もあります。 喫煙 1日1箱以上たばこを吸う人は、狭心症や心筋梗塞になる確率が吸わない人の約2倍という調査結果があります。たばこのニコチンは血液の粘性を高め、動脈壁内の中膜を傷つける作用があるためです。 肥満 肥満度が高くなると、LDL(悪玉コレステロール)が増えてHDL(善玉コレステロール)が減るといわれています。 ストレス ストレスが増えると血液中のコレステロールが増えてしまいます。また、高血圧や糖尿病なども 誘発しやすいようです。 運動不足 運動不足が続くと、血液中の中性脂肪やコレステロールが増えてしまいます。 甘い物または飲酒 大量の飲酒は中性脂肪を増やし、脳卒中の危険性が高まってしまいます。また、甘い物の摂り過ぎも中性脂肪を増やしてしまいます。
この答えはYES。コレステロールが高いと、がんにかかりやすいと言われていますが、コレステロールががんを引き起こすメカニズムについては、まだはっきりわかっていないことが多いようです。コレステロール値が高い人がかかりやすい病気をまとめました。 目次 高コレステロールが引き起こすさまざまな病気 糖尿病 脂肪肝 胆石症 急性膵炎 がん 高コレステロールが引き起こすさまざまな病気 糖尿病 食事から摂った砂糖などは消化されてブドウ糖となり、体内に吸収されます。そして、血液中に溶けて血糖という形で全身に運ばれています。これを筋肉細胞などがエネルギーとして利用するためには、インスリンというホルモンが必要です。このインスリンの作用が低下したり、分泌量が少なくなるのが「糖尿病」です。血糖がうまく使われなくなり、血液中の量が増え、血管を傷めてしまいます。特に腎臓や眼など毛細血管が重要なはたらきをする器官に悪影響を与えます。 糖尿病を放置していると、LDL(悪玉コレステロール)が増え、HDL(善玉コレステロール)が減ってしまい、動脈硬化にかかる可能性が高くなります。 脂肪肝 肝臓の肝細胞の中に脂肪が蓄積した状態です。長い間放置すると肝硬変などの危険な病気になることが多いようです。アルコールの飲み過ぎや糖尿病などが原因で起こることがあります。 胆石症 体内には、コレステロールが多くなると胆汁酸に作り変えて排出するはたらきがありますが、胆汁の通り道である胆道(胆のう、胆管など)に、コレステロールや胆汁成分などが固まって、石のようになってたまる病気です。突然、激しい上腹部痛にみまわれて発覚することが多いようです。しかし、ほとんど無症状で本人が気づかない場合も少なくありません。 急性膵炎 膵臓で作られる膵液という消化液のはたらきが活発になり過ぎ、膵臓の組織が消化されて(溶けてしまう)起こる病気です。胆石症に続いて起こるケースが多いです。 がん 日本人の食生活が肉中心に変わって、大腸がん、膵がん、乳がんなどが増加しているため、コレステロールとがんとの関係が研究されています。胆石症同様、コレステロールを排出するために過剰に作られ、腸内に排出された胆汁酸が、腸内細菌の作用で発がん物質に変わるのではないかと考えられています。ただし、詳しいメカニズムについてはまだわかっていないことが多いようです。
この答えはNO。コレステロールが高い人でも、1日に必要な量、たんぱく質はしっかり摂らなくてはいけません。ただし、摂りすぎは禁物です。では、どのくらいの量ならいいのでしょうか?コレステロールが多い人のための食生活をまとめました。 目次 1日の摂取カロリーの目安量を決めてしまおう コレステロールを多く含む食べ物に注意 そのほかの食生活の工夫 1日の摂取カロリーの目安量を決めてしまおう バランスのとれた食事をしながらダイエットを心がければ、同時にコレステロール値も少なくなっていきます。そこでまず大切なのが、1日の摂取カロリーです。 1日の摂取カロリーの目安 = 標準体重{(身長-100)×0.9}× 25 ~ 30kcal 例えば身長170cmの場合、 {(170-100)×0.9}×25~30kcal=1,575~1,890kcal つまり、約1,600kcal~1,900kcalになる。 身長150cm以下の人は0.9をかけなくてもよい。従って、 (150-100)×25~30kcal=1,250~1,500kcal 1,600kcalをとるか1,900kcalをとるかは、日頃どのくらい体を動かしているかで決めるのが一般的です。デスクワーク中心で通勤時間も短いという人なら低い方の値になります。ただし、突然大幅な食事制限に挑戦すると挫折してしまうことも多いため、最初は無理のないところから少しずつ試してみましょう。 コレステロールを多く含む食べ物に注意 当然ながら、コレステロールを多く含む食品には注意が必要です。次の表のように、コレステロールは主に卵や魚肉類(特に内臓)の脂肪に含まれています。 コレステロール値の高い人は、1日に摂る量を300mg以下に抑えたいところです。それなら卵を食べなければよさそうですが、卵は良質のたんぱく質やビタミンA、B2が豊富に含まれる食品。1日に小さめのM玉1個くらいは食べたいものです。どうしても量が気になるなら、うずらの卵(5~6個で鶏卵1個分)で調節することをおすすめします。 コレステロールを多く含む食品の例 食品名 1食あたりの使用量 コレステロール量 卵黄約22g(1個分)286mg 子持ちシシャモ(輸入)50g(3~4匹分)170mg いか刺し身50g150mg するめいか25g(1/4枚程度)245mg 車えび(養殖)50g(約1匹分)95mg うなぎ50g120mg しらす干し5g(大さじ1杯程度)12.5mg 鶏レバー50g185mg 若鶏もも肉(皮付き)50g47.5mg たらこ15g51mg すじこ15g76.5mg バター10g21mg マヨネーズ10g20mg カステラ50g95mg そのほかの食生活の工夫 高カロリー食品はなるべく避ける 摂取エネルギーを減らすためにまず見直さなくてはならないのは、肉類、油脂類、糖類(ごはんなどの穀類やお菓子ジュースなど)の摂りすぎです。食べる量を少なくするのはもちろん、同じ肉類でも赤身の部分を多く食べるようにするなど、質の改善も必要です。油脂類については、バター、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズなど調味料を控えることを考えましょう。特に間食やジュースなど、決めた以上に摂らないことが大切です。 野菜、特に食物繊維の多い食品をたくさん摂る 野菜に含まれるビタミンやミネラルは、体の代謝を活発にするなどの重要な役目を担っています。また、血管の老化を防ぐなど、動脈硬化の予防にもつながる栄養素です。 海藻類やきのこ、乾物などに多く含まれる食物繊維は、生活習慣予防のために注目されています。腸内でコレステロールや中性脂肪、糖質を吸着して一緒に排せつさせてしまうはたらきもあります。 1日に食べたい野菜の量は300g。淡色野菜・緑黄色野菜・食物繊維が多い野菜…とバランスよく食べるようにしましょう。 1週に3~4回は魚類のメニューにする 同じ脂肪でも、魚類に含まれる脂肪は善玉コレステロール(HDL)を増やすはたらきがあります。このほか、オリーブオイルなどに含まれているオレイン酸に、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やすはたらきがあるとして注目されています。 豆製品を見直してたんぱく質をしっかりとる 腎臓の機能に障害がない限り、たんぱく質をむやみに避ける必要はありません。例えば肉や魚の動物性たんぱく質なら、男性120g、女性100gぐらいが1日の目安です。といっても、これまでの食生活から考えると「これは少ない」と思う人が大部分でしょう。足りない分は豆腐などの大豆製品で補いましょう。大豆製品に含まれるたんぱく質は良質であるだけでなく、コレステロールを下げるはたらきがあることも確認されています。
脂質異常症を防ぐ第1歩は、食生活の改善です。面倒なくできるコツをご紹介します。最初のうちは、食事のたびにチェックするようにしましょう。そのうち、それぞれの数字が頭に入ってメニュー選びも楽になるはずです。 目次 1日に食べるものの割り振りを簡単に決める 外食のカロリー表 1日に食べるものの割り振りを簡単に決める 下に示す表は、4つの食品群をもとに作成した朝・昼・夕の献立の献立の目安です。総カロリーは約2,000~2,200kcal(女性約1,600~1,800kcal)です。普段あまり体を動かさない人は少なめ、体を動かす人は多めに、自分に合った量を設定しましょう。 「昼食・夕食」は、外食がちの人のために総量を示しています。昼・夜の総量が、この範囲内におさまるように意識しましょう。家庭料理が多い人は、自分の生活に合わせて、昼の分・夜の分を振り分けておくと便利です。 ※男女で摂取量が違う食品は( )内を女性の摂取量としました。 食品群 朝食 昼食 夕食 間食 乳製品 牛乳1杯(150g) - チーズ約20g 卵・魚介肉・豆類 卵 1個 肉または魚 120g(100g)、納豆40gまたは豆腐100g - 野菜・果物 120g(2口分×4種類を目安に) 例:トマト・きゅうり1/4切れ、ブロッコリー30g(3房ぐらい)、玉ねぎ約1/4個ぐらい 180g(5種類以上を目安に) 根菜類や乾物など食物繊維の多い野菜を使うおかずを一品 例:きんぴらごぼう、切り干し大根、ヒジキの煮物、筑前煮など 果物200g程度 芋類 100g分をどこかで。 穀類 6枚切食パン1~2枚(1枚) ごはんのみの場合茶わん4杯程度=約540~約590g(2~3杯=約320~約430g) ごはん+めん類の場合茶わん2杯程度=約300~350g(0.5杯~1杯程度=約80~190g)+めん類1食分 - 砂糖(おやつ) 1日20gが目安。 右の間食を摂る場合は15g。 ※15gの目安は大さじ1.5杯 クッキー2枚程度(16g) コーヒー(砂糖2g入) 油脂 バターまたはマーガリン小さじ1杯=5g 20g(10g)、間食を摂る場合は15g(5g) ※15gの目安は大さじ1杯+小さじ0.5杯 ポテトチップス10枚程度(14g) この表の振り分けは、あくまでもひとつの例です。朝は忙しくて野菜が摂りにくい人は、昼食や夕食の量を増やしてもかまいません。また、朝食にごはんと魚の干物、昼食にパンと卵というように、日によって入れ替えてバリエーションをつけてもいいでしょう。 野菜のうち1/3は、緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、かぼちゃなど)にします。 1日1食、少なくとも2日に1食は魚を摂るようにします。 カロリーの調整は、穀類と油脂を中心に行います。魚・肉は激しい労働をする男性でも1日150g摂れば十分です(油脂の上限は男性40g、女性30g)。 外食のカロリー表 昼食が外食になりがちの人ために、人気外食メニューのカロリーなどをまとめました。昼食にボリュームのある食事をしたら、夕食は軽くするなど総量が多くなりすぎないように心がけましょう。 ※表中のカロリー表示はひとつの例です。同じメニューでもお店によって異なることがあります。 ファーストフード バーガー類は400~500kcal台が多いようです。比較的カロリーが低いのは、ライスバーガー類、鶏の照焼きをそのままはさんだチキンバーガー、シンプルなハンバーガー、チーズバーガーなど。サラダは、グリーンサラダなどドレッシングの量を自分で調節できるものがいいでしょう。 メニュー カロリー てりやきバーガー480kcal てりやきチキンバーガー320kcal ポテトSサイズ270kcal チキンナゲット5個260kcal ポテトサラダ232kcal コールスロー139kcal お弁当・定食類 お弁当や定食は、付け合わせとして野菜類が摂れるのが魅力です。しかし、から揚げやコロッケなど揚げ物中心のメニューはカロリーも脂質も大。揚げ物メニューは週に2回くらいなど、自分で制限量を決めておきましょう。 メニュー カロリー 幕の内弁当771kcal からあげ弁当1034kcal ロースかつ定食1016kcal 和風ハンバーグ定食949kcal さしみ定食713kcal さわらの味噌煮定食759kcal ホイコーローセット729kcal 酢豚セット850kcal 一品メニュー 1品メニューは、揚げ物が入らない限りそれほどカロリーは高くありませんが、野菜類が足りないのが問題です。「600kcalくらいまでのもの」+「野菜サラダ」など、摂り方を考えましょう。サラダはドレッシングを別にしてもらい、自分でかけましょう。 メニュー カロリー スパゲティミートソース599kcal 和風ツナおろしスパゲティ493kcal チキンドリア1016kcal ミックスピザ758kcal ビーフカレー約650kcal オムライス896kcal チャーハン490kcal とんこつラーメン552kcal 天丼808kcal うな丼790kcal まぐろのたたき丼616kcal 中華丼512kcal 牛丼528kcal きつねうどん382kcal
脂肪とヒトコトで言っても種類はさまざまです。悪玉コレステロールになりやすい脂肪、善玉コレステロールを増やす脂肪があります。これらの食品を覚えてバランスよく食べるようにすることで、血液中のコレステロール値を下げることができます。 目次 コレステロールを多く含む食べ物は? 「飽和脂肪酸」の摂りすぎに注意! 食物繊維はコレステロールの摂りすぎも防ぐ コレステロールを多く含む食べ物は? コレステロールを多く含む食品の例 食品名 1食あたりの使用量 コレステロール量 卵黄約22g(1個分)286mg 子持ちシシャモ(輸入)50g(3~4匹分)170mg いか刺し身50g150mg するめいか25g(1/4枚程度)245mg 車えび(養殖)50g(約1匹分)95mg うなぎ50g120mg しらす干し5g(大さじ1杯程度)12.5mg 鶏レバー50g185mg 若鶏もも肉(皮付き)50g47.5mg たらこ15g51mg すじこ15g76.5mg バター10g21mg マヨネーズ10g20mg カステラ50g95mg 上記のように、コレステロールは主に卵や魚肉類(特に内臓)の脂肪に含まれています。 コレステロール値の高い人は、1日に摂る量を300mg以下に抑えるようにしましょう。それなら卵を食べなければよさそうですが、卵は良質のたんぱく質やビタミンA、B2が豊富に含まれる食品です。1日に小さめのM玉1個くらいは食べたいもの。どうしても量が気になるなら、うずらの卵(5~6個で鶏卵1個分)で調節することをおすすめします。 「飽和脂肪酸」の摂りすぎに注意! 脂肪には脂肪酸という物質が含まれています。皆さんがよく耳にするリノール酸、オレイン酸、 EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのことです。脂肪酸は大きく次の3つに分類されます。それぞれの特徴をまとめました。 代表的な脂肪酸 特徴 多く含む食品 飽和脂肪酸 パルミチン酸など 摂りすぎると肝臓でコレステロールの形成を促進し、悪玉コレステロールを増加させます。 パーム油(植物油の一種)、豚や牛の脂肪分、バターなど 多価不飽和脂肪酸 リノール酸、EPA、DHAなど 悪玉コレステロールを減らして、動脈硬化の原因となる血栓の生成を防ぎます。 しかしリノール酸を摂りすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールまで減らしてしまいます。 リノール酸:サフラワー・ひまわり・サラダ油など多くの植物油、ごま・松の実など種実 EPA:すじこ、はまち、いわし、にしん、さばなど DHA:本マグロ脂身、すじこ、まだい、ぶり、さばなど 一価不飽和脂肪酸 オレイン酸など 多価不飽和脂肪酸と同様に悪玉コレステロールを減らすが、善玉コレステロールは減らさないという実験報告がなされ、最近注目を浴び始めています。 オリーブ油、なたね油、調合サラダ油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、牛、豚、鶏肉の脂肪分 表を見て「オレイン酸を含む食品ならたくさん食べても大丈夫」とは誤解しないでください。例えば牛や豚の脂肪ですが、オレイン酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいます。また、マカダミアナッツを食べ過ぎれば、コレステロールは増えなくても、中性脂肪は増えてしまいます。 体にいいと言われている脂肪でも摂りすぎ、偏るのはよくありません。摂取量を守った上で、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂るよう、いろんな食品を組み合わせて調理することが大切です(1:1.5:1の比率が望ましい)。 食物繊維はコレステロールの摂りすぎも防ぐ 食物繊維は腸の中で、中性脂肪だけでなくコレステロールも吸着し排出させてくれる優れものです。ひじきや大豆、ごぼうなどに多く含まれています。ひじきと大豆の煮物や根菜類の煮物なども積極的に食卓に取り入れていくといいでしょう。 食物繊維を多く含む食品はこちら コレステロールを下げる献立作りのコツはこちら
脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値が下の基準を超えているかどうかで診断されます。診断基準をご紹介します。 目次 脂質異常症の診断基準 脂質異常症のタイプを知ろう 1. 中性脂肪値が特に高いタイプ 2. 中性脂肪値と悪玉コレステロール(LDL)値が高いタイプ 3. 善玉コレステロール(HDL)が少ないタイプ 脂質異常症の診断基準 脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値が下の基準を超えているかどうかで診断されます。これは統計的に、この値を超えると動脈硬化や心筋梗塞などになる人が多いということで定められました。 総コレステロール220mg/dL以上 LDL(悪玉)コレステロール140mg/dL以上 中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dL以上 HDL(善玉)コレステロール40mg/dL未満 HDLには余分なコレステロールを肝臓に戻すはたらきがあり、HDLが減ってしまうとコレステロールが血管にたまって、動脈硬化の危険が増すと考えられています。 なお、これは日本の基準であり、総コレステロール200mg/dL以上という厳しい基準を適用している国もあります。動脈硬化などは実際に、200mg/dLを境に急上昇するという統計もあります。 脂質異常症は肥満や高血圧と同様、ほかの深刻な病気を引き起こすことがあります。基準値ギリギリで「症」がつかなくても、「脂質異常」の状態であることにに変わりはありません。特に、普通より動脈硬化になりやすい生活習慣がある人(ストレスを感じることが多い、喫煙習慣があるなど)は、生活を改善することが望ましいといえます。 脂質異常症のタイプを知ろう 脂質異常症はいくつかのタイプに分類できる。代表的なものを紹介しましょう。 1. 中性脂肪値が特に高いタイプ 脂質異常症の中でもっとも出現頻度が高いタイプです。甘い物やアルコールの摂りすぎなど生活習慣が原因になることが多いようです。 ■併発する恐れのある病気 膵炎(アルコール多飲者に多い)、脂肪肝、胆石症。また、動脈硬化の原因になるという説も多いです。 ■治療法 原因となる食習慣の改善。運動療法。それでも効果がない場合、薬物療法を行うこともあります。 2. 中性脂肪値と悪玉コレステロール(LDL)値が高いタイプ 日本人の脂質異常症のうち約20%を占めています。肉類やスナック菓子に含まれる脂肪(飽和脂肪酸)やコレステロールを摂りすぎ、食物繊維を含む食品を摂らないと起こることがあります。 ■併発する恐れのある病気 動脈硬化や心筋梗塞、狭心症など虚血性心疾患を起こす率が高いです。 ■治療法 原因となる食習慣の改善。全体的な食事のカロリー制限。運動療法。それでも効果がない場合、薬物療法を行うこともあります。 3. 善玉コレステロール(HDL)が少ないタイプ 糖質、脂肪、アルコールを摂りすぎると、中性脂肪やLDLが増え、HDLが少なくなることがわかっています。運動不足、喫煙も同様。また、極端なダイエットでたんぱく質を極端に減らした場合も善玉コレステロールは減ってしまいます。 ■併発する恐れのある病気 HDLは動脈硬化を防ぐはたらきをするため、減ってしまうことにより動脈硬化の危険度が増すとされています。 ■治療法 原因となる生活習慣の改善。 「原因」については、生活習慣的なもののみ紹介しましたが、このほかに遺伝的なもの、病気が原因になるケースもあります。基準値より高い場合はもちろん、基準値ギリギリの場合も医師に相談してみることが大切です。 公開日:2014年7月7日
ご存じの通り、コレステロールというのも脂肪の一種。中性脂肪と同じように、体に貯まりすぎると害になると言われているモノです。それでは、コレステロールと中性脂肪、どこが同じでどう違うのか、お互い何か関係あるのか、簡単にまとめてみましょう。 目次 体内には4種類の脂肪が存在する -脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質- コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールがある 中性脂肪が増えると善玉コレステロールを減らしてしまう 体内には4種類の脂肪が存在する-脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質- 人間の体内には下の表のように、4種類の脂肪が存在します。中性脂肪は3つの脂肪酸とグリセロールという物質が結びついたものです。つまり、脂肪酸はすぐに使えるエネルギー、中性脂肪は貯蔵用のエネルギーということになります。一方、同じ脂肪でもコレステロールは体内の細胞膜やホルモンの材料なのです。 脂肪酸 生きていくために、また、活動するために必要なエネルギーとして利用されます 中性脂肪 別名、トリグリセライド。脂肪細胞の中に貯えられています。必要に応じて脂肪酸になり、エネルギーとして使われます コレステロール 細胞膜の構成成分。ステロイドホルモンの材料、胆汁酸の材料にもなります リン脂質 細胞膜の構成成分。疎水性物質の親和性を保たせます コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールがある コレステロールには善玉といわれるHDLと、悪玉といわれるLDLがあります。 LDLは食物から取り入れられたり肝臓で合成され、血液中を通って全身に運ばれて細胞膜やホルモンの合成に使われます。 ところが、血液中のLDLが増えすぎると血管壁の傷ついたところなどに付着し、結果的に血管を細くして、動脈硬化の原因になってしまいます。 一方、HDLは血管に付着したLDLを取り去って肝臓に運ぶはたらきをします。だから、体内に多ければ多いほどいいのですが、現代の日本人は逆パターンの人が多いようです。 コレステロールを増やす食品としては肉類が代表的。現代の肉中心の食生活で、LDLは増える一方のようです。 中性脂肪が増えると善玉コレステロールを減らしてしまう 最近、血液中の中性脂肪が増えると、善玉であるHDLコレステロールを減らし、悪玉コレステロール(LDL)が増えてしまうことがわかってきました。つまり、中性脂肪の増加によって動脈硬化を促進させてしまう可能性があります。 これが「脂質異常症(高脂血症)」といわれる病気。血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが基準値を超えてしまった状態のことです。 高脂血症には中性脂肪値が高い「高トリグリセライド症」とコレステロール値が高い「高コレステロール症」があります。いずれも、この時点では自覚症状はほとんどなく、動脈硬化が起こって初めてわかるケースも多いようです。
糖尿病などで高くなる総コレステロール 脂肪酸と結びついたエステル型、別々に離れた遊離型の2つがあり、合わせて総コレステロールといいます。コレステロールは血管の強化・維持に大切な役割を果たしています。副腎皮質ホルモンや性ホルモン、消化液の胆汁酸を作る材料でもあり、人体には欠かせないものです。 総コレステロールの正常値は120~220mg/dlで、平均は190mg/dlです。動脈硬化、糖尿病、甲状せん機能低下症、ネフローゼなどで高値を示し、肝硬変、甲状せん機能亢進症では低値になります。 肥満でも高くなる中性脂肪 体内のエネルギーのうち使われなかったものは皮下脂肪として蓄えられます。そのほとんどが中性脂肪です。血液の中ではエネルギー源の運搬や貯蔵、臓器や組織の維持に機能しています。 正常値は50~140mg/dlです。糖尿病、甲状せん機能低下症、アルコール性肝障害などのほか肥満でも高値になります。食事の影響も大きいので、検査は1回だけでなく、数回の測定で判定します。
脂肪の代謝を促進する お茶に含まれるカテキンは、コレステロールの上昇を抑制する作用を持っています。1日10杯のお茶を飲めば、毎日450gのステーキを食べた場合のコレステロールに対抗できるほどの作用を持っているといわれています。 この作用をキャッチコピーにした商品が、「減肥茶」といわれるダイエット用のお茶です。より肥満解消に効果的な、脂肪の代謝を促進する作用の強い種類のお茶をブレンドしたものなどが多いようです。脂っこい食事をしたときに脂肪を溶かすという「烏龍茶」「杜仲葉」「燕龍茶」(薬日本堂)、「ほうじはとむぎ」(漢方平和堂)などがあります。
野菜・魚中心の献立で成功 50代の主婦A子さんは健康診断で、コレステロール260mg/dl、中性脂肪は163mg/dlと言われました。お菓子や牛乳が好きな上に、ちょうど更年期でコレステロールが上昇しやすくなっていました。 食事療法で今までの生活を見直し、魚中心で、豆、野菜、海藻を増やし、お菓子は和菓子に変え、ウォーキングなど軽い運動も始めました。6ヵ月後に総コレステロールが183mg/dlまで下がりました。 同世代でやはり洋菓子好きでコレステロールが283mg/dlと高かったB子さんは、EPAを多く含む魚を週に10切れ以上取り、お菓子の代わりに食事の豆、野菜、海藻を増やし、1日1万歩のウォーキングも実行、20ヵ月後に総コレステロールを221mg/dlまで下げることに成功しました。 コレステロール値が下がることが自炊の楽しみ 30代のサラリーマンのCさんは検診で高脂血症と診断されました。総コレステロールが363mg/dlもあり、30%の肥満もありました。 朝食なし、昼食はラーメンや天どんなどの店屋物、夕食は焼きそばとご飯に買ってきた惣菜、夕食後にスナック菓子といった調子で、糖質と脂肪分が過剰になっていました。 この男性は父親と2人暮らしだったので、コレステロールが高いと指摘されてからは交代で自炊することにしました。不足しがちな魚、野菜、豆類、緑黄色野菜、海藻を食卓に欠かさないようにし、夕食では脂っこいものは控え、食後のスナック菓子もやめました。 コレステロール値が下がることが自炊の楽しみにもなり、8ヵ月後には総コレステロール217mg/dl、肥満度も20%に下がりました。
糖尿病によって動脈硬化は急速なスピードで進む 高脂血症と診断された場合、別の病気があって二次性か、ほかに病気のない原発性かを調べる必要があります。 糖尿病、腎臓病、内分泌疾患が原因で、血液中の中性脂肪やコレステロールの値に異常が出る場合があるからです。 特に二次性では動脈硬化が加速したり、病気が急激に悪くなるため注意が必要です。 糖尿病があると、動脈硬化は急速なスピードで進みます。血糖が増えるとLDLが変性しやすくなるなど、脂質代謝異常が引き起こされます。 インシュリンの作用の低下(インシュリン抵抗性)があると、すい臓はインシュリンが不足していると考えて、インシュリンを分泌します。このために生じる高インシュリン血症は血圧を上げたり、血管壁にコレステロールが蓄積されやすい状態をつくったりします。 慢性腎不全に陥る可能性がある高脂血症 慢性腎炎の経過中に起きるネフローゼ症候群では、尿中に排出されたたんぱく質の代わりに血液中のコレステロールが上昇し、動脈硬化を促進します。 また、糖尿病や高血圧を合併した高脂血症は動脈硬化を促進し、慢性腎不全に陥る可能性があります。 内分泌疾患の甲状せん機能低下症になると、脂質の代謝に影響します。甲状せんホルモンは、血液中のコレステロールを低下させるはたらきがあるからです。 甲状せん機能が低下すると動脈硬化を促進します。
タマゴは1日1個が限度 タマゴ1個には約250mgのコレステロールが含まれています。 日本人が1日に摂取するコレステロールの目安は500~600mgといわれていますが、血液中のコレステロールが高い場合には1日に摂取するコレステロールを300mg以下に抑えた方が良いのです。 タマゴは良質なたんぱく質の宝庫ですが、卵黄に高いコレステロールが含まれていますし、料理の下味や材料に使われることも多いので、知らずにタマゴの高コレステロールを摂取している恐れもあります。 タマゴそのものを食べるのは1日1個が限度と考えた方が良いでしょう。 タマゴ焼きを作る時はだし巻に タマゴ焼きを作る時は、だし巻きがおすすめです。だしやみりんを加えればタマゴ1個で2個分を使ったくらいのボリュームのだし巻きが作れます。 また、ワカメ、ネギ、ニラ、ウナギのかば焼きなどをタマゴに混ぜると、ボリュームも増え、惣菜としても見栄えが良くなる上、ビタミンなどの栄養素も豊富になります。ウナギに含まれるEPAやDHAにはコレステロールを下げるはたらきもあります。 また、溶いたタマゴをカップに入れてラップをかけ、電子レンジで適度に熱を加えてさらにかき混ぜるといりタマゴになります。油を使っていためる必要がなく、油のコレステロールを控えることができます。
喫煙すると、動脈硬化の防止作用を妨げる コレステロールには、動脈硬化を促進する方向にはたらくLDLと、予防する方向にはたらくHDLがあります。 1日20本以上の喫煙者はHDLが正常値(40mg/dl以上)を割っていることが多いといわれています。LDLと総コレステロールが正常値でも、HDLが低ければ動脈硬化が進むことになりますから、高脂血症の場合は喫煙が非常に大きな危険因子となります。 また、たばこの煙の中に含まれる物質はLDLの変性を促進し、動脈硬化を進展させるといわれています。 ニコチンの血管収縮作用 さらに、たばこのニコチンが持つ血管収縮作用は、動脈硬化など血管障害を悪化させます。また高血圧の喫煙者が心血管障害で死ぬ確率は、非喫煙者の3、4倍というデータもあります。 たばこが循環器に与える悪影響はHDLを下げてしまうだけではありません。特に高脂血症では、喫煙はできるだけ控えたほうがよさそうです。
食物繊維は血液中のコレステロールを下げる 肝臓で合成されたコレステロールは、胆汁液の原料である胆汁酸になります。 胆汁液は十二指腸で消化液として分泌されて脂肪の消化・分解を助け、小腸で吸収されて再び肝臓に運ばれます。 これは胆汁酸の腸肝循環と呼ばれていますが、食物繊維は小腸で胆汁酸を吸着して脂質やコレステロールが再吸収されるのを防ぐはたらきがあります。その結果、血液中のコレステロールが下がることになるのです。 水溶性の食物繊維の方が効果が高い 食物繊維にはグルコマンナン、ペクチン、グアガムなどや、玄米などの穀類、豆、海藻、果物に含まれる水溶性繊維と、セルロース、ヘミセルロース、キチン、リグニンなど野菜に含まれる不溶性繊維の2種類があります。 どちらも胆汁酸の吸着作用がありますが、特に前者の水溶性食物繊維の方が吸着作用は大きいといわれています。高コレステロール血症の場合は治療上、1日20~30gの食物繊維を取ることが望ましいとされています。
総摂取エネルギーを適正に LDLは動脈硬化を促進する悪玉コレステロールです。LDLを減らすには、肝臓で合成されるコレステロールを減らすため、まず総摂取エネルギーを適正化することが大切です。総摂取エネルギーは標準体重に仕事量の軽重を考慮して求めます。 また、3大栄養素のうち総脂肪は30%以下に制限します。具体的には脂質20~25%、タンパク質15~20%、糖質55~65%です。 1日の総コレステロールを300mg以下に 次に、1日の総コレステロール摂取量は300mg以下に制限します。ちなみに卵には1個当たり250mgのコレステロールが含まれています。 摂取する脂肪の中身では、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪を取り過ぎると、肝臓でのコレステロールの合成が高まるとともに、動脈硬化を促進するLDLを取り込んで処理する、肝臓のLDL受容体のはたらきが悪くなります。その結果、LDLを上昇させますから、取り過ぎないよう注意が必要です。
EPA、オレイン酸はHDLを増やす 摂取する脂肪のタイプで、HDLを上げたり、LDLを下げたりできます。 高脂血症には低HDL血症、高LDL血症と呼ばれるものがありますが、これらの高脂血症では、摂取する脂肪のタイプのバランスを調整することが食事療法の一環となっています。 HDLを上げるはたらきがあるのは、多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)のエイコサペンタエン酸(EPA)や一価不飽和脂肪酸のオレイン酸などです。 新鮮な青魚の脂肪を摂取 EPAはイワシ、サバ、サンマなど青い魚の脂肪に多く含まれており、HDLを上昇させるだけでなくLDLを減らす作用があります。 従って、これらの魚を料理する時は、焼き魚のような脂肪を捨ててしまう調理法よりも、新鮮な魚の脂肪も一緒に食べられるような鍋、ムニエル、煮付けなどの調理法が適しています。 オリーブ油などに多く含まれているオレイン酸にも、HDLを高く保つだけでなく、動脈硬化を促進するLDLを下げるはたらきがあります。適量であれば、アルコールもHDLを上昇させるはたらきのあることが分かっています。また適度な運動や飲酒もHDLコレステロールを上昇させます。
肉類の脂肪は血液中のコレステロールを上げる 肉類の脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれています。 飽和脂肪酸は化学的に安定していて酸化しにくく、血液中のコレステロールを上げるはたらきがあります。 飽和脂肪酸によって肝臓で合成されたコレステロールは、細胞膜やホルモンなどの成分として重要な役割を果たします。 コレステロールが少な過ぎると脳出血が起こりやすくなるという報告もあります。 魚類の脂肪は動脈硬化を防ぐ 魚類の脂肪には不飽和脂肪酸が多く含まれています。イワシ、サバ、マグロなどに多く含まれる不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は化学的に不安定で酸化しやすい性質がある反面、血液中のコレステロールや中性脂肪を下げて、動脈硬化を防止するはたらきがあります。 肉類と魚類とどちらの脂肪もバランス良く取ることが大切です。
コレステロールは血管内にたまる コレステロールは細胞膜、ホルモンなどの材料となるために、肝臓から体の各部へ、各部から肝臓へと行ったり来たりしています。HDLは、余分になって末しょう臓器の細胞の表面に表れたコレステロールを取り込んで、肝臓へ運ぶリポタンパクです。 コレステロールが悪いといわれるのは、体の隅々へ運ばれたコレステロールが、血管壁内に取り込まれたり沈着したりして血管の内腔を狭め、血管の壁を硬化させたり、血液の流れを悪くしたり、止めてしまったりするからです。これを動脈硬化と呼びます。 HDLはコレステロールを肝臓に戻す しかし、余分なコレステロールを血管壁から抜き取って肝臓に戻すHDLが運ぶHDLコレステロールは、動脈硬化とは逆のはたらきをすることになります。 HDLの値が低くなりすぎると虚血性心疾患や脳こうそくなどの発生率が上がることが分かっています。 だからHDLコレステロールは「善玉」と呼ばれるのです。HDLコレステロールの値の正常域は40mg/dl以上です。
動脈硬化を引き起こし、さまざまな生活習慣病をもたらす 血液中の脂質のうち、コレステロール(LDLまたはHDL)、中性脂肪(TG)、リン脂質などのいずれかが標準値より高い値であれば、高脂血症と診断されます。高脂血症には、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、高HDL血症などがあります。 遺伝性、もしくは不適切な食事や運動不足が原因で、血中の脂質が過剰となり、動脈硬化を引き起こして虚血性心疾患などのさまざまな成人病をもたらします。 診断基準については、虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患の発生率と血漿(けっしょう)脂質の値の相関についての疫学調査から検討されています。 日本動脈硬化学会の診断基準では、コレステロール値220mg/dl、中性脂肪150mg/dlが採用されています。いずれかがこの値以上なら高脂血症と診断されます。 食事、運動、薬物などの治療法 治療には食事療法・運動療法の他、薬物療法があります。食事療法・運動療法の効果が期待できるのは、不適切な食事や運動不足を原因とする高脂血症の軽度から中等度のものといわれています。また動脈硬化の危険因子(たばこ、ストレスなど)や合併症などがあれば、薬物療法が行われます。 コレステロール値・中性脂肪値と高脂血症(単位:mg/dl) 正常域 高脂血症 総コレステロール 120~219 220以上 LDLコレステロール 70~139 140以上 HDLコレステロール 40以上 39以下 中性脂肪(トリグリセリド) 50~149 150以上
コレステロールは体内でも生産されている 食事から取る1日のコレステロールの適正量は500~600mgが良いといわれています。卵1個には約250~300mgのコレステロールが含まれていますから、卵だけでいえば2個で1日分が摂取できることになります。 食事から摂取する以外に、コレステロールは体内で1日当たり1500~2000mgの単位で生産されています。肝臓などで生産されたコレステロールは、細胞膜やホルモンの成分としてとても重要な役割を果たしています。 取り過ぎにも不足にも注意が必要 コレステロールが過剰になると動脈硬化の原因となりますが、反対にコレステロールが不足すると赤血球や血管の細胞膜が障害されやすい状態になります。 コレステロールは、炎症や老化が原因で生じた血管壁の内皮細胞の隙き間にはり付いて、血管壁の中に異物が侵入するのを防ぎます。このコレステロールのはたらきが不足することで、血管壁に障害が起きやすくなってしまうのです。 取り過ぎにも注意する必要がありますが、極端にコレステロールの摂取が少ないといろいろな問題が生じてきます。
エネルギーの過剰摂取や運動不足で起きる高脂血症 高脂血症は遺伝もしくはエネルギー摂取の過剰や運動不足が原因で、血液中のコレステロールや中性脂肪が過剰となった状態です。総コレステロールが220mg/dl以上、中性脂肪が150mg/dl以上の場合、高脂血症と診断されます。 コレステロールは血液の中で低比重リポタンパク(LDL)と高比重リポタンパク(HDL)に含まれて存在しています。LDLは肝臓から末しょう組織へコレステロールを運びます。HDLは末しょう組織で余ったコレステロールを抜き取って肝臓へ運びます。 コレステロールを蓄積させ、動脈硬化の原因に 高脂血症になると、末しょう組織にコレステロールを運ぶLDLが増加します。過剰になったLDLは血管壁に取り込まれ、コレステロールを蓄積させます。 変性したLDLが白血球の一種であるマクロファージに取り込まれ、そのマクロファージが血管壁内に入り込んでコレステロールを沈着させるのです。 その結果、動脈硬化が起こり血管は狭くなったり詰まったりします。 動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳高速などの脳血管障害、大動脈りゅうや末梢動脈硬化症など生活習慣病の原因となります。
生命維持に重要なコレステロール 両方とも体の中の脂質の一種ですが、コレステロールは体内の構造脂質、中性脂肪は貯蔵脂質です。 コレステロールは細胞膜の成分として、あるいはステロイドホルモン、性ホルモン、胆汁酸、ビタミンDの材料として生命維持に重要な役割を果たしています。 コレステロールは血液中では高比重リポタンパク(HDL)や低比重リポタンパク(LDL)に包まれて存在します。 体内のコレステロールのうち、食べ物から摂取されたものは約3割に過ぎません。残りの7割は糖質や脂肪酸を材料に、主として肝臓のほか皮膚、腸粘膜、副腎、腎臓、卵巣、精巣などで合成されます。 エネルギー源として活用される中性脂肪 一方、中性脂肪は、摂取した糖質、たんぱく質、脂質のうち、余分なものが貯蔵脂質として皮下の脂肪組織や肝臓に蓄えられたものです。 血液中では、カイロミクロンや超低比重リポタンパク(VLDL)と呼ばれるリポタンパクが運搬役を果たしています。 食物が不足すると、中性脂肪は脂肪酸とグリセロールとに分解され、脂肪酸は各臓器でエネルギー源として、グリセロールは肝臓のエネルギー源として活用されます。
コレステロールを運ぶリポタンパクのHDLとLDL 血液中のコレステロールは、たんぱく質と複合体を形成してリポタンパクとして存在しています。リポタンパクは、比重の重さによってhigh density lipoprotein(HDL、高比重リポタンパク)、low density lipoprotein(LDL、低比重リポタンパク)、very low density lipoprotein(VLDL、超低比重リポタンパク)、cylomicron(カイロミクロン、乳び脂球)の、4種類に分けられます。 その内、コレステロールを主に運んでいるのがHDLとLDLで、HDLに運ばれているコレステロールをHDLコレステロール、LDLに運ばれているコレステロールをLDLコレステロールと呼んでいます。 悪玉のLDLと善玉のHDL 2つのリポタンパクはまったく逆のはたらきをしており、HDLが体の隅々の血管壁にたまったコレステロールを抜き取って肝臓に運ぶのに対して、LDLは肝臓のコレステロールを体の隅々に運んでいます。 LDLコレステロールが増えると、体の隅々に運ばれるコレステロールが増えて動脈硬化を促進する方向に傾くため、LDLは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。 逆にHDLコレステロールは、体の隅々の余分なコレステロールを肝臓に運び、動脈硬化の防止につながるため「善玉コレステロール」と呼ばれています。
血中コレステロール値に関係する飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸 脂肪を構成する脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。肉の油やバターなど動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれており、摂取が過剰になると肝臓でコレステロールの合成を促進し、血中コレステロール値を上げてしまいます。 一方、イワシ、サバなど青身魚や、オリーブ油、サラダ油などの植物性脂肪に多く含まれている不飽和脂肪酸には、コレステロールの胆汁への排出を促進して、血中のコレステロールを下げるはたらきがあります。 食品群別、日本人の脂質摂取量 厚生労働省の国民栄養調査で、日本人が何から脂質を摂取しているのかを食品群別に見ると、昭和30年(1955年)では肉類から摂取する脂質は1g(1日脂質摂取量の4.9%)に満たなかったものが、平成3年(1991年)では12.2g(1日脂質摂取量の21.1%)と約12倍に増加しています。コレステロールを上げる飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪の摂取が増えていることに注意する必要があります。
2つのタイプがある植物性脂肪 脂肪のタイプには飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸)があり、それぞれ生体の中で及ぼす作用に特色のあることが分かっています。 動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含んでいますが、植物性脂肪には一価不飽和脂肪酸を多く含むものと、多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸)を多く含むものの2つのタイプがあります。 オレイン酸とリノール酸の作用 植物性脂肪の善玉といえるのが、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含むオリーブ油です。オレイン酸は動脈硬化を促進するLDLを下げ、動脈硬化を予防するHDLを上昇させる作用を持っています。 一方、サフラワー油、紅花油、ひまわり油に多く含まれる多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸)の代表、リノール酸にはLDLもHDLも共に減らしてしまう作用があります。 HDLが減ると動脈硬化の促進につながるため、リノール酸は善玉・悪玉両面の性格を合わせ持つ植物性脂肪ということになります。
最近の研究では、コレステロール、中性脂肪だけでなく、カイロミクロンレナムントが多い場合も動脈硬化のリスクが高いことが分かってきました。 カイロミクロンレナムントはコレステロール、中性脂肪に次いで第3の危険な脂肪と呼ばれています。 目次 肝細胞に取り込まれるレナムントと中間型リポタンパク コレステロール、中性脂肪に並んで動脈硬化のリスクが高いレナムント 肝細胞に取り込まれるレナムントと中間型リポタンパク 血液中の脂質は、アポタンパクと呼ばれるたんぱく質と複合体を形成し、リポタンパクとして存在します。中性脂肪を運搬しているリポタンパクは、主としてカイロミクロンと超低比重リポタンパク(VLDL)です。 カイロミクロンは食事から吸収された中性脂肪を、VLDLは肝臓で合成された中性脂肪を主に運搬しています。 血液中の中性脂肪はこれらのリポタンパクに含まれたままで一部分解され、カイロミクロンはカイロミクロンレナムント、VLDLは中間型リポタンパク(IDL)になります。そして肝細胞にあるそれぞれの受容体に取り込まれるのです。 カイロミクロンやVLDLのこれらの代謝がスムーズにいかなければ血液中に中性脂肪が増え、コレステロールと同様、動脈硬化を促進します。 コレステロール、中性脂肪に並んで動脈硬化のリスクが高いレナムント 最近の研究ではカイロミクロンレナムントが多い場合も動脈硬化のリスクが高いことが分かってきました。 カイロミクロンレナムントはコレステロール、中性脂肪に次いで第3の危険な脂肪と呼ばれています。
変性したLDLを食べるマクロファージ たばこなどのフリーラジカルが原因で、肝臓から体の各部へコレステロールをせっせと運搬しているLDLが変性すると、白血球の一種であるマクロファージに食べられてしまいます。脂肪を取り過ぎてLDLが過剰になると、変性LDLも増えますからマクロファージは、どんどんLDLを取り込みます。 そのマクロファージが動脈硬化の原因を引き起こす 変性したLDLを始末してくれるマクロファージですが、LDLを取り込んでしまうと、今度は自身が炎症などを起こして広がった血管壁の内皮細胞のすき間に入り込んで、動脈硬化の原因になってしまいます。 血管壁に入り込んだマクロファージが、LDLと一緒に取り込んだコレステロールを抱えたまま泡末細胞になって壊れると、血管壁内にコレステロールを沈着させたり血管壁を内側に膨れさせてしまったりして、血管を狭めたり、時には血流を完全にふさいでしまうことがあるのです。 このような形で進行した動脈硬化をアテローム性動脈硬化、アテローム病変、またはアテローマと呼んでいます。
LDLは肝臓から各部へコレステロールを運ぶ HDLがコレステロールを末しょう組織から肝臓に運搬するのに対して、LDLは肝臓から末しょう組織へコレステロールを運搬するという逆のはたらきをします。 LDLが大量にあると、コレステロールが沈着した血管壁にさらにせっせとコレステロールを運搬し、動脈硬化を促進する方向にはたらくことになります。 コレステロール値を見るときは、善玉・悪玉のチェックも LDLコレステロールの値が高いと、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳こうそくなどの脳血管障害、大動脈りゅうや末しょう動脈硬化症などの発生率が増加することが明らかになっています。 だから、LDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれるのです。LDLコレステロールの正常域は170mg/dl以下です。 コレステロールの値を見る時は、総コレステロールの値(正常域は220mg/dl以下)のみならず、悪玉コレステロールLDLが正常域以下かどうか、善玉コレステロールHDLが正常域以上かどうかを合わせてみる必要があります。
胆のうは脂肪を分解する消化液、胆汁を分泌しています。 胆石は胆汁の中の成分が固まったもので、石ができると、胆のうの出口や胆のう管が詰まってしまうため、激しい腹痛、発熱、黄だんといった症状が出ます。 また、人間ドックや検診などで超音波検査が普及し、無症状の胆石もしばしば見つかります。 日本人はコレステロール胆石が約60% 胆石の原因は胆汁成分の変化、胆汁のうっ滞、胆道の細菌感染などです。 胆石にはコレステロール石、色素石(主成分は無機カルシウム塩、またはビリルビンカルシウム)、炭酸カルシウム石、脂肪酸カルシウム石などがあります。 日本の食生活が変化し、動物性脂肪の摂取量が増加したことにより、コレステロール系の胆石も増え、現在日本人の胆石の約60%を占めています。 コレステロール胆石は、ほとんどが胆のう内に 胆汁の中でコレステロールは胆汁酸やレシチンといった成分に溶け込んでいます。胆汁内のコレステロールが多くなり過ぎたり、逆に胆汁が少な過ぎる場合、コレステロールが過飽和の状態になって結晶化し、コレステロール胆石を作ります。 胆汁内の胆汁酸とレシチンのコレステロールに対する比率は、胆石生成インデックスと呼ばれ、胆石のできやすさの指標にされています。コレステロール胆石は胆のうの中にできることが多く、胆管の中にはめったに発見されません。
食物繊維の多い緑黄色野菜、海藻 食物繊維は小腸内で、コレステロールが原料となっている胆汁酸を吸着して、再吸収(腸肝循環)される量を減らし、血液中のコレステロールを下げるはたらきがあります。 緑黄色野菜や海藻は食物繊維を多く含んでいます。 イカ、タコ、貝類、イクラ、ウニなどはコレステロールが多く含まれる食品ですが、コレステロールを下げるアミノ酸、タウリンも多く含まれているので相殺効果があります。 タウリンはマグロ、カツオの血合い肉にも多く含まれています。 脂肪ではオリーブ油 オリーブ油に多く含まれる一価不飽和脂肪酸、オレイン酸には、動脈硬化を促進する低比重リポタンパク(LDL)を下げ、動脈硬化を予防する高比重リポタンパク(HDL)を上げるはたらきがあります。 イワシ、サバなど青い魚に多く含まれるn-3系の多価不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)には中性脂肪を減らすはたらきがあります。さらに、EPAにはHDLを上げるはたらきが、DHAにはコレステロールを下げるはたらきがあります。 また、紅花油、サフラワー油に多く含まれるn-6系の不飽和脂肪酸、リノール酸はLDL、中性脂肪を下げますが、同時に動脈硬化を防止するHDLも下げる作用がありますので摂取には注意が必要です。
たんぱく質は血管を強くする 朝食を抜く、太りたくないからと野菜や海草しか食べない、コレステロールや心臓病が怖いから肉や卵を食べない、そんなことをしていると、たんぱく質が欠乏してしまいます。 たんぱく質が欠乏すると、全身の筋肉組織が衰え、血管ももろくなり、体の抵抗力が落ちてしまいます。また、血液の成分である赤血球中のヘモグロビンが不足し、鉄欠乏性貧血が起きます。 一般的に、血中コレステロールが高いと動脈硬化を起こし、脳卒中や心筋梗塞を起こすことが知られています。しかし、コレステロールが低過ぎても、脳卒中を起こしやすいのです。 コレステロールが低過ぎると、血管の壁に栄養が補給されず、弾力性が衰えます。血管壁の衰えた部分には「え死」が起こり、動脈りゅうができて、脳出血へとつながるのです。 動脈硬化を起こすのは、肉ではなく、肉に付いている脂肪です。良質のたんぱく質は、血管を強くして弾力性を保つはたらきをする重要な栄養素です。 従って、高血圧や脳卒中が怖いからといって肉や卵をまったく食べず、たんぱく質の不足を引き起こしては、かえって危険です。動物性たんぱく質を十分に取ると、高血圧や脳卒中の予防になるのです。
LDLコレステロールを減少させる 食物繊維の多い食品はがん、心臓疾患、糖尿病などの予防に役立つほか、血中コレステロールを下げる作用もあります。 食物繊維を摂っても、体内では消化も吸収もされず、そのまま腸の中へ排出されます。その時に、コレステロールや胆汁酸を吸着します。それらを一緒に排出するため、LDLコレステロールが減少するのです。 食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、血中コレステロールの降下には水溶性食物繊維が優れています。特に水溶性のペクチンが有効です。セルロースなどの多いゴボウやセロリより、ペクチンが多いミカンなどを取る方が効果があります。 そこで、血中コレステロールの上昇を抑える食品として注目されているのが、大豆及びその加工品、魚類、植物油、ごまやクルミなどの種実類の外、食物繊維を多量に含む穀物、野菜、芋、きのこ、果実などの食品です。