結核患者は2007年時点で国内に2万5千人以上にのぼり、現在も油断できない感染症です。全結核の約9割といわれる「肺結核」の予防と対策について説明します。 目次 結核は過去の病気ではない! 肺結核の症状と予防方法 しっかり治療して肺結核の再発を防ぐ 結核は過去の病気ではない! 人気若手女性お笑いタレントの発病で話題になった「肺結核」。「結核なんて、昔の病気ではないの?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。確かに、結核は、産業革命当時のヨーロッパで死因の3割以上を占めるほど大流行し、日本でも戦前には「不治の病」として恐れられ、正岡子規、石川啄木、樋口一葉などの多くの著名人も、結核を原因として亡くなっています。 ですが、1940年代以降に抗結核薬の開発が次々に行われ、結核医療が飛躍的に向上したため、結核の流行は徐々に衰退しました。ところが、80年代に入って、HIV感染者など免疫の落ちている人の間での結核発病、薬剤耐性を持つ結核菌の発生などが起こり、再び結核患者の増加が問題になってきたのです。 こうした状況の中、WHOでは1993年に「結核非常事態宣言」を発表。結核が過去の病気ではないことを各国に知らしめました。日本でも1999年に厚生省が「結核緊急事態宣言」を発表し、予防と感染拡大防止の対策を推進してきました。厚生労働省「結核登録者情報調査年報集計結果」(概況)によると、日本には2007年時点で2万5千人以上の結核患者が存在しており、現在も油断できない感染症であることを物語っています。 肺結核の症状と予防方法 結核は、通常は肺から始まり「肺結核」として発病します。リンパや血液を通してほかの臓器にも広がる「肺外結核」を発病することもありますが、全結核の約9割が「肺結核」です。症状には、次のようなものがあるので注意しましょう。 風邪と似ているからといって見過ごさないで!肺結核の症状 咳が2週間以上続く 黄色、緑色の痰が出る 37度台の微熱が2週間以上続き、寝汗が出る 疲れやすく、食欲が低下する 息切れや胸の痛みがある 血の混じった痰が出る 多くの場合、結核菌に感染してもすぐには発病しないため、感染に気付かずに数十年も過ごしてしまう人も多いようです。しかし、菌は体内で生き続け、疲労や病気、加齢などで体の抵抗力が低下したときに増殖して、発病してしまいます。 結核菌は、「空気感染」によって広がります。つまり、空気中に浮遊した結核菌を吸いこむだけで感染してしまいます。したがって、周りに発病者が出た場合には、ツベルクリン反応検査、胸部レントゲン検査、細菌検査によって、感染の有無を確かめることが大事です。ツベルクリン反応検査は通常直径10mm以上の反応で陽性とされますが、検査を行った場所に直径60mm以上の大きな反応が出たり、反応部位に水疱ができたりした場合には後ほど発病する可能性が高いようです。その場合、抗結核薬の投薬を行うことによって、発病を予防することができます。また、現在は乳児期にBCG予防接種を受けて、結核の免疫をつけることができます。しかし、一生涯免疫が続くわけではないため、効果の過信は禁物です。 肺結核の症状が疑われたら、マスクをして早めに結核科、呼吸器内科、内科を受診しましょう。地域の保健センターに問い合わせると、結核診療が可能な施設を紹介してもらえます。また、病院内では集団感染する疑いもあるため、放置していてはいけません。病院に着いたらまず、受付で自分が肺結核かもしれないということを申し出ましょう。 しっかり治療して再発を防ぐ もし、肺結核の感染が疑われる場合には、まず胸部レントゲン検査を行い、さらに、痰を採取して結核菌の有無を調べます。肺結核と診断された場合には、抗結核薬を服用して治療を行います。特に最初の2ヵ月間は、数種類の強力な薬をしっかり服用して殺菌する必要があります。医師の指示通りに治療を行えば、通常は、6~12ヵ月間で完了します。感染症法により、治療費の公費助成が受けられるため、地域の保健センターに問い合わせましょう。 症状が軽い場合には医師の判断のもと、通院治療が可能です。しかし、痰に多量の結核菌が発見され、症状が重い場合には、他人への感染を広げないためにも入院し、伝染の危険性が低くなるまで隔離して投薬治療と検査を行います。 肺結核は、きちんと治療を行えば短期間で退院でき、通院で服薬治療を続けながら通常の日常生活を送ることができる疾患です。しかし、自己判断で治療を中断すると再発する可能性もあります。医師の指示に従い、じっくり確実に治療を続けていくことが肝心です。 公開日:2009/05/18
「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。なお、優先席以外ではマナーモードに設定し、通話はお控えください」。電車に乗っていると、携帯電話の使用に関する車内アナウンスが聞こえてくることがある。通話マナーの問題は言うまでもないが、優先席付近についてこのアナウンスを流しているのは、心臓ペースメーカーの使用者に対する配慮が求められているため。そもそも、携帯電話の使用と関係があると考えられている心臓ペースメーカーとは、どのようなものなのだろうか? そもそも心臓ペースメーカーとは 心臓は体中の血液を集めたり送り出したりするため、つねに収縮と拡張とを繰り返している。これを「拍動」といい、1日に約10万回おこなわれる。 ところでこの拍動のリズムが、電気刺激によって作られていることをご存知だろうか。電気刺激を作り出しているのは、右心房にある「洞結節(どうけっせつ)」というところ。 ここから興奮が心筋細胞に伝わり、心臓を収縮させたり拡張させたりしているのだ。 ところが、洞結節に支障が起こると、不整脈が生ずる。脈拍が不規則になったり、緩んだり、あるいは速くなったりするのである。不整脈はときに脳梗塞を招くばかりか、意識障害をも引き起こす。場合によっては、突然死につながることも――。 洞結節のかわりに、脈拍を作り出してくれるのが「心臓ペースメーカー」だ。電池と制御回路、それに刺激を心臓に伝える電極リード線から成っている。心筋に人工的な刺激を与えることで、心収縮を発生させるものだ。もともと体の外に取り付ける「体外式」が使われていたが、1960年代には皮膚の下に埋め込む「植込み式」が開発された。 携帯電話によって誤作動が引き起こされる!? 携帯電話は、通話中のみ電波を出しているわけではない。携帯電話の近くに心臓ペースメーカーの使用者がいた場合、この電波の影響により、誤作動が引き起こされてしまう可能性があると考えられている。優先席付近では携帯電話の電源を切るように呼びかける車内アナウンスは、この考えに基づいて、携帯電話の使用者に注意を促している。 ○×クイズにチャレンジ! 優先席付近で携帯電話の電源を切るのは、お年寄りが携帯電話の着信音に驚き、心臓に負担がかかってしまうから? 答え × … 優先席は、心臓ペースメーカー使用者が座っている可能性がある。距離が離れていれば、携帯電話からの電波は影響を及ぼさないが、至近距離では誤作動を招く恐れがある。 電車の中では、優先席に近付かなければ、心臓ペースメーカー使用者と接近することはない? 答え × … 満員の電車内では心臓ペースメーカー使用者と、知らずに接近していることがある。ラッシュアワーのような混雑した状況では、総務省が定めた指針に従い、携帯電話と心臓ペースメーカーとの距離が15cm程度以下にならないよう、注意を払うようにしたい。 携帯電話の電波が原因で、ペースメーカー使用者が死亡した例はない? 答え ○ … これまでの死亡例はゼロとされている。ただし今後、誤作動がもとで思わぬ事故が発生しないとも限らない。配慮を怠らないようにしよう。 心臓ペースメーカーを使っている人は、携帯電話を使えない? 答え × … 利用は可能。ただし、ペースメーカー植込み部位より15cm以上離して使用する。通話の際は、植込み部位と左右反対の耳に当てる。持ち歩くときも、植込み部位から15cm以上離して携帯するか、電源を切ること。 携帯電話のほかにも注意すべき機器はある? 答え ○ … 携帯電話以外にも、IH式電気炊飯器の電磁波により、心臓ペースメーカーの設定がリセットされてしまった事例が報告されている。ペースメーカーの使用者 は、炊飯中はもとより保温中もIH式電気炊飯器のそばに長時間立ち止まらないようにするべきだ。このほか、店舗の出入口などに設置された盗難防止装置によって、誤動作が引き起こされる可能性もある。 ■関連記事 心電図検査とは?心電図検査の結果からわかること 心拍数と寿命 重症心不全への再生治療の実際 公開日:2014年6月23日
2002年11月。スカッシュ中の高円宮殿下が突然亡くなった。原因は心臓の動きが不規則になる不整脈「心室細動」である。この事件が発端となり、心停止などの患者に対する応急措置がおおいに重要視されるようになった。全国の消防署などでおこなわれる「救命講習」には、大勢の一般市民が参加。2005年の愛知万博では、こうした市民の働きにより一命をとりとめた観客もいる。とっさの事故にいつでも対応できるよう、ぜひ救命手当を覚えておこう! 目次 バイスタンダーの力で命を救え! 救命手当を覚えよう:Step1. 人工呼吸と心臓マッサージ 救命手当を覚えよう:Step2. AED(自動体外式除細動器)操作 こんなときには…? 講習はどこで受けられるの? バイスタンダーの力で命を救え! 119番通報してから救急車が到着するまで全国平均で約6分。最近は、119番通報の頻度が全国的に増えたため、平成14年度の平均は6.3分となっている(出典:総務省「平成15年版消防白書」) 。このような状況ではたして命は助かるのだろうか? カーラーの救命曲線は、心臓や呼吸が止まってからの時間経過と死亡率をあらわしたもの。心臓停止の傷病者を3分間放置すると、死亡率は50%となることがわかる。5分後ではさらに高率だ。救急車がきてくれるまで手をこまねいて見ていたら、大切な命が失われかねないことがわかるだろう。つまり、突然死を防ぐには、救急救命士や病院の医師だけでなく、その場に居合わせた人「バイスタンダー」の力が不可欠なのだ。 救命手当を覚えよう Step1. 人工呼吸と心臓マッサージ 1. 意識の確認 傷病者に近づき、耳元で「大丈夫ですか?」「もしもし」などと声をかけ、傷病者の肩を軽くたたく。 2. 救援を頼む 意識がなければ大声で「誰か来てください」と人を集める。そして、「あなたは、救急車を呼んでください」「あなたはAEDを持ってきてください」などと指示。 3. 気道の確保をする 頭部側の片手を傷病者の額に当て、もう一方の手(胸側)の人差し指と中指をあごの先に当てる。これを持ち上げて気道を確保する。ただし、下あごの柔らかい部分を圧迫したり、無理に頭を後ろに反らせたりしないこと。 4. 呼吸を調べる 気道を確保したまま、自分の顔を傷病者の胸側に向け、頬を傷病者の口と鼻に近づける。呼吸の音を確認するとともに、自分の頬で相手の吐く息を感じとる。 5. 人工呼吸をおこなう 呼吸がなければ、人工呼吸開始。気道を確保したまま、額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみ、自分の口を大きくあけて傷病者の口を覆うこと。息が漏れないようにして、ゆっくりと2回吹き込むのがコツ。 6. 循環のサインをチェック! 4.の要領で、呼吸をチェック。また、体になんらかの動きが見られないか10秒以内に調べる。 7. 心臓マッサージをする 循環のサインがなければ、直ちに心臓マッサージ開始。まず胸の一番下の肋骨を人差し指と中指で触れ、そのまま指を肋骨に沿って胸の真ん中まで移動させる。真ん中の頂点で指を止めたら、もう一方の手の付け根をこれに並べ、平行に置く。上からもう一方の手のひらを重ね、肘をまっすぐにして体重をかけ、胸を圧迫。大人は15回、子どもは5回繰り返す。 Step2. AED(自動体外式除細動器)操作 AED…電気ショックを与え、心臓の筋肉けいれんを回復させる医療機器。音声や文章メッセージなどで手順を教えてくれるので、小学生でも使用可能。2004年から一般市民の使用も認められており、駅や空港などに設置されるようになった。 1. AEDの電源を入れる AEDを傷病者の横に置き、ケースから本体を取り出すか、ケースを開ける。さらに電源ボタンを入れる。 2. 電極パッドを傷病者の胸部に貼る 傷病者の胸を開いたら、電極パッドの袋を開封してシールをはがし、粘着面を胸に貼る。パッドの一方は、右前胸部に、もう片方は左側胸部に。 3. 心電図を解析 電極パッドを貼り付けると「傷病者から離れるように」というメッセージが流れる。周囲の人たちにも「みんな離れて」と指示。解析が自動的にスタートする。 4. 除細動を行なう 除細動の指示が出たら、作動を開始。「電気ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ、自動的に充電がおこなわれる。完了すると、「除細動ボタンを押してください」という音声が。周囲の人を離れさせたうえで、除細動ボタンをオン。 ※以後、除細動を繰り返すか作動を終了するかは、AEDの指示に従う。 こんなときには…? ●雨が降ってきた… 肌が水で濡れているとAEDが作動しない。タオルなどで水滴を拭き取ろう。 ●傷病者の家族が体にとりすがっている… 肩から上に外傷があると思われる場合は、傷病者の体をゆすったり動かしてはならない。また、AEDを通電するときは近くにいると危険。ただちに離れさせる。 ●傷病者に胸毛がある… こうした場合は電極パッドがうまく貼れない。一枚のパッドを使って胸毛を剥がし、別の電極パッドを装着しよう。 講習はどこで受けられるの? 全国の消防署では、一般市民を対象とする「普通救命講習」や「普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習」「上級救命講習」などをおこなっている。詳しくは消防署や、自治体の防災窓口などに問い合わせるとよい。いざというときに困らないよう、ぜひプロのコーチを受けよう! 公開日:2005年11月7日
発症後24時間以内に死亡してしまう突然死。突然死とはどんなもので、どのようなときに起こるのでしょうか。突然死を予防するには、定期健診などで心電図の検査を受けることが重要です。そこで、突然死と関係が深い心室細動を取り上げて紹介します。また、突然死を避けるための生活習慣も紹介します。 目次 突然死とは 突然死はどんな状況で起こる? 突然死のこんな前兆に要注意 健康診断でチェックするべき突然死の危険因子 「心電図」の異常はそのままにしない 突然死しないための生活習慣チェックポイント 突然死とは 「ううっ!」と痛みを感じ、容態が急変してしまう。ある日突然のごとくやってくる死。 「事故や自殺などの外因性の原因がなく、それまでまったく病気がないか、あっても安定した状態にありすぐに悪化する気配がなかったのに、突然病気が発症して24時間以内に死んでしまう場合」を突然死と呼んでいます。とくに、発病から1時間以内に亡くなってしまったケースを「瞬間死」ということもあります。 突然死を起こす直接の原因の約半数は心臓です。残りは脳(くも膜下出血や脳内出血、脳梗塞など)や呼吸器系に原因があると言われています。 実際に突然死した人の実態を把握するのはとても難しいようです。なぜなら、突然死というのが死亡の原因ではなく、死に方の問題だからです。ただ、突然死する人は意外に多く、亡くなる人の5人に1人が病気を発症して24時間以内に亡くなっているとも言われています。 突然死はどんな状況で起こる? 予防医学の専門家・川村孝氏(京都大学保健管理センター長)らが、愛知県内の勤労者男女約20万人を対象に、1989年から7年間にわたって調査した中に、突然死した264人のデータがあります。 ●40代、50代が最も多い ●女性より男性のほうが約2倍の確率で起こる ●月別にみると4月が多い(平均的な月に比べて1.62倍) ●ウィークデーに比べて日曜日は1.9倍、土曜日が1.36倍と、週末に起こるケースが多い ●深夜から未明にかけて起こることが多く、午前0時から3時は、午前9時から12時の1.71倍の確率 ●死因は、心臓血管系が半数以上。原因がわかっているものでは、急性心筋梗塞が最も多いが、8割方が原因不明で、心不全である(正確に言えば、心不全は死因ではなく、心臓が機能しなくなって停止したということ) ●勤務中に突然死する確率は2割弱、勤務外が8割強。その内訳は、睡眠中が20%、入浴中が5%、用便中が5%と、自宅で倒れる確率が多い このデータによると40代・50代の働き盛りの男性が突然死してしまったケースが目立ちます。 また、 4月や週末に多いのは、おそらく職場や家庭の環境の変化などが精神的・肉体的ストレスとなっていることも原因ではないかと考えられています。 突然死のこんな前兆に要注意 突然死はほんとうに「突然」やってくるのでしょうか。その前触れはなにもないのでしょうか? 実際、突然死を起こす前に前駆症状を訴える確率は低いようですが、前兆がないわけではなさそうです。 急性心筋梗塞やくも膜下出血などで突然死した人が事前に訴えていた自覚症状には、次のようなものがあります。 突然死のこんな前兆 近ごろ、体がだるく、疲れがなかなか取れない 熱っぽい状態が続いている なんとなく体調が悪い 頭が痛い 食欲がない 時々胸が痛む 肩こりが激しい 手足がしびれる このような症状は「風邪かな?」「睡眠不足かな?」とも思われるようなもので、取りたてて珍しい症状ではないため、自覚症状から突然死を予知することは難しいようです。結局のところ、定期健康診断などを受け、その結果、突然死する危険因子がないかどうかを判断するのが、一番の予防法となります。定期健診で高血圧や高コレステロールなどの異常があった場合、「そうなんだ」と放っておかず、必ず生活習慣を改善し、治療を受けるなどするようにしましょう。 健康診断でチェックするべき突然死の危険因子 血圧 収縮期血圧が160mmHg以上の人は、120mmHg未満の人に比べて7.4倍、拡張期血圧が100mmHg以上の人は、80mmHg未満の人に比べて5.2倍も突然死する確率が高い コレステロール 総コレステロール値が、250mg/dl以上または140mg/dl未満だと突然死する確率が、2倍前後高くなる 肥満 BMI指数が、26.5以上の人は、標準の人に比べて2.7倍突然死する確率が高い 尿酸値 尿酸値が8.0mg/dl以上の人は、正常値の人に比べて3.4倍突然死する確率が高い 心電図 期外収縮(ふつうのリズムより早期に心臓が収縮する状態)や心房細動(心房筋が規則的な収縮をできなくなる状態)などの不整脈があると、突然死する確率は3.7倍になる 出典:川村孝(京都大学保健管理センター長)ら調査 「心電図」の異常はそのままにしない 「心電図の異常」の多くは心配のいらない不整脈ですが、なかには突然死の原因になる不整脈もあります。定期健康診断で心電図に異常があると言われた場合には、一度専門医で診断を受けましょう。 突然死を起こす不整脈「特発性心室細動」とは? 心臓は筋肉でできているポンプであり、そのはたらきによって血液を全身から集めて体中へ血液を送り出しています。この規則正しい収縮のリズムが狂ってしまった状態が不整脈です。 不整脈には、大きく分けて脈が速くなる頻脈性不整脈と脈が遅くなる徐脈性不整脈があります。なかでも、頻脈性不整脈の一種である心室細動は最も危険な不整脈であり、突然死の原因にもなっています。 心室細動とは、心臓の心室筋がばらばらに動いて血液を送り出すポンプの役割を果たさなくなった状態です。これが数分間続くと全身に血液が循環しないため、死に至ってしまいます。心室細動になる要因は、心臓の冠動脈が詰まる心筋梗塞や肥大型心筋症、拡張型心筋症です。 最近の研究では、特発性心室細動を起こす人には心電図に特有の形や振幅が出現することがわかってきたため、きちんとした心電図の検査を受ければ特発性心室細動のリスクは下げることができます。 心臓の声をしっかり聞こう! 突然死しないための生活習慣チェックポイント もちろん、定期健診による心電図のチェックも必要ですが、なんといっても日常生活から気を付けることが大切。日々の積み重ねが突然の不幸を避ける最も有効な方法です。 朝の光を浴び、規則正しい生活をする 突然死の原因ともなる心筋梗塞や狭心症の発作が深夜から明け方にかけて集中するのには理由があります。 人間の脳にある視床下部には、自律神経やホルモンの中枢など、重要な神経細胞がぎっしり詰まっています。その自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、本人の意思とは関係なくうまくバランスをとりながらはたらいています。 早朝から午前中は、ちょうど体が休息から活動に変わる時間帯であり、目が覚めるとそれまで活発にはたらいていた副交感神経のはたらきが低下し、反対に交感神経が活発になります。交感神経が活発にはたらくと、血圧が上昇したり、心拍数が増加するのです。 ところが、不規則な生活や夜更かしなどをすると自律神経のリズムが乱れ、血圧や心拍数が急激に上昇して心臓の冠動脈に負担をかけてしまいます。そのため、動脈硬化が進み冠動脈の血流が悪くなったり、詰まったりして狭心症や心筋梗塞などの発作が起こりやすくなるのです。 これを防ぐには、まず規則正しい生活をして、自律神経のリズムを乱さないこと。とくに、朝の光を浴びると目からはいった光は脳の視床下部に送られ、生体リズムが覚醒モードに入ります。1日の生活をスタートさせるには、できるだけ決まった時間に起き、朝の光を十分に浴びることが理想的です。 ■相反する『自律神経』2種のはたらき 交感神経のはたらき 副交感神経のはたらき ●心臓のはたらきを速める ●血圧を上げる ●消化を抑制する ●排泄を抑制する ●心臓のはたらきを抑える ●血圧を下げる ●消化を促す ●排泄を促す ストレスや過労に注意 阪神淡路大震災やロサンゼルス地震の後に心臓に起因する突然死が急増したとの報告があります。 自分では疲れていないとか、ストレスなんてたまっていないと思っていても、実際には心的・肉体的に負担がかかっていることがあるのです。特に、ストレスは定期健診などで分かるものではないので、ある程度は自分で振り返りながら注意する必要があります。 職場や家庭などで悩みがあったり、ちょっと働き過ぎだなと思う場合には早め早めに休養を取るようにしましょう。また、本人がなかなか気づかない場合もあるので、周りから見て「働き過ぎだな」と思える人には、休養を取るよう勧めましょう。 運動中の突然死にも要注意 突然死は運動中にも起こることがあります。 中高年の場合、ランニングのスタートやゴール直後、ゴルフの最中などに突然死することが多いようです。 普段から血圧が高い、コレステロール値が高い、また心臓になんらかの疾患があるなどの危険因子を持った状態で急激に運動をすると、心臓に負担がかかってしまうのです。 もし、事前に心電図に異常があるなどするのなら、あらかじめ運動負荷心電図やマスター2段階テストなどの検査を受けておきましょう。 また、運動中は水分を十分に摂り、急激な運動は避けるようにしましょう。 ■関連記事 10年以内の心筋梗塞などを発症する確率を予測 あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう! リスク指標が刷新!脂質異常を再確認 重症心不全への再生治療の実際 公開日:2003年7月28日
心臓は産まれてから死ぬまで休むことなく動きつづける大切な臓器です。しかし、案外知らないことも多いのではないでしょうか。基本的な心臓の病気について紹介します。 目次 なぜ増えている?心臓病 心臓病で亡くなる人の約半数が「虚血性心疾患」!? 「狭心症」はどんな病気? 「心筋梗塞」はどんな病気? 知っておきたい主な心臓病 心臓からの危険信号「不整脈」を見逃すな! なぜ増えている?心臓病 近年、心臓病の患者が増えているのをご存知ですか?現在、日本人の死因の1位はがん、続いて2位は心臓病(心疾患)、3位は脳血管疾患となっています。しかし、数年前までは、心臓病よりも脳血管疾患で亡くなる人のほうが多かったのです。ここ数年、脳血管疾患での死亡者数は減少してきているのに対し、心臓病で亡くなる人は増加傾向にあります。 ■心疾患の死亡者数と死亡率 出典:厚生労働省「人口動態統計」 なぜ、心臓病は増えているのでしょうか?その一因としてライフスタイルの欧米化が指摘されています。心臓病のなかでも、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患は、長年にわたる不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が大きく関わっています。多くの欧米諸国で死因の第1位が心臓病であることを考えると、日本人も動物性脂肪をたくさん摂るなど食生活が欧米化していることが、心臓病患者が増加したことの大きな要因であると考えられているのです。 さらに、以前は心臓病といえば、50代、60代の高齢者がなる病気というイメージがありましたが、最近では30代、40代でも虚血性心疾患になる人が増えています。また、食生活の欧米化の影響などを考えると、現代の子供たちが成人するころには心臓病の患者数はますます増加するだろうと危惧されているのです。近い将来、10代20代でも虚血性心疾患が日本人の死因上位になるかもしれません。 心臓病で亡くなる人の約半数が「虚血性心疾患」!? 心臓がポンプのようなはたらきをするために、心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を運んでいる血管に動脈硬化が起こり、血流が悪くなって起こる障害を「虚血性心疾患」といいます。心臓病で亡くなる人の約半数がこの虚血性心疾患です。虚血性心疾患には、「狭心症」と「心筋梗塞」があります。 狭心症と心筋梗塞の違いは、狭心症は酸素不足の状態が一時的で回復するのに対し、心筋梗塞は血栓などで心臓のまわりに巻きついている冠状動脈が完全に閉塞し、その先の血流が途絶えて心筋が壊死を起こしてしまいます。一度死んでしまった心筋は回復しないため、心臓に大ダメージを残してしまうのです。 「狭心症」はどんな病気? ■どんな病気? 冠状動脈のどこかが狭くなり、心筋に血液が十分流れなくなると心臓に必要な血液を得ることが難しくなる箇所ができます。その部分が酸素不足に陥り、胸痛、圧迫痛、動悸、息切れなどの症状を起こす病気です。昼間、何かの動作によって起こる場合を労作性狭心症といい、夜間、ことに早朝の安静時によく起こる場合を異型狭心症といいます。 ■狭心症の主な症状 労作性狭心症は、階段を駆け上がるなど何かの動作に伴って痛みが起こります。一般的には胸の中央が痛みますが、人によってはのどや下顎、歯、耳などが痛むこともあります。痛みは「ぎゅっと締めつけられるような」「圧迫するような」「焼き火箸で胸をかき回されるような」などと表現されることも。発作は1~10分程度でおさまることが多いようです。また、異型狭心症の場合は、1日のうちで決まった時間帯に発作が起こる傾向があります。 ■狭心症の発作が起きたら? 発作が起きたらまずニトログリセリンやニトロールなどを舌下頓服すると、1分くらいで効き目が現れます。 ■狭心症の治療法 労作性狭心症の場合は、心臓の仕事量を減らしたり、心臓の筋肉への酸素供給量を減少させるような内科的治療や、大動脈ー冠動脈バイパス術、冠動脈形成術のような、冠動脈を流れる血液量を増やすための外科的治療が行われます。大動脈ー冠動脈バイパス術では、開胸する必要がありますが、冠動脈形成術は胸を開けることなく皮膚の上から血管を突いて行えるため、患者に与える負担は少なくなります。 心筋梗塞はどんな病気? ■どんな病気? 心臓をとりまく冠状動脈のどこかが極端に狭くなったり完全に詰まってしまった場合に起こる病気です。そこから先の部分には、血液が行かなくなり、心臓の筋肉が死んでしまいます。冠状動脈が閉塞する原因は、血管壁に付着したアテローム(粥状硬化)によって狭くなったり、アテロームの破裂による血栓の形成などです。 ■心筋梗塞の主な症状 何の前ぶれもなく急に発作が起きます。胸が焼けるような激しい痛みに襲われ、その痛みは30分以上と狭心症より長く続きます。あぶら汗、呼吸困難、冷や汗が出て、死ぬかもしれないという恐怖感を伴うことも少なくありません。痛みの程度も一般的に狭心症より強いです。 ■心筋梗塞の発作が起きたら? ニトログリセリンやニトロールは無効か、効果があっても不十分です。激しい胸の痛みを感じたら、一刻も早く救急車を呼び、医師の診察を受けること。 ■心筋梗塞の治療法 狭心症の場合と同様に、冠動脈の閉塞・狭窄した部分をカテーテルを使って拡張する血管内の手術(経皮的冠動脈形成術)や冠動脈バイパス術などの外科的治療が行われます。冠動脈形成術では、風船やステントと呼ばれる金属などを使って血管の内腔を広げます。 知っておきたい主な心臓病 虚血性心疾患は心臓病の代表のようなものですが、そのほかにもさまざまな心臓病があります。その主だったものを紹介します。 心筋炎 心臓に風邪などのウィルスが付着して、炎症や過度の反応を起こす病気です。風邪の症状が起こってから1~2週間後に発病することが多く、軽ければ自覚症状はありません。多くの場合は、発熱、咳、頭痛、だるさなど、風邪のような症状が先行するため、気がつかず見過ごしていると心筋の細胞破壊がどんどん進んでしまい、不整脈や心不全の原因をつくることになります。 心臓弁膜症 心臓がポンプのような役割を果たす時に、血液の逆流を防ぐために心臓についている弁の開きが悪くなって、血液が心臓の部屋から出て行きにくくなったり(弁狭窄症)、弁の閉じ方が悪くなって血液が逆流してしまう(弁閉鎖不全症)病気です。 心膜炎 心臓を包み込んでいる心膜が炎症を起こす病気。心膜が急性に炎症を起こしたものを急性心膜炎、急性心膜炎や心筋梗塞の心破裂、外傷により心膜に急激に心膜液や血液が溜まってしまうものを心タンポナーデ、心膜炎が原因で心膜が固くなり、慢性の心臓拡張不全を起こすものを慢性収縮性心膜炎といます。 心内膜炎 細菌が血流によって心臓に入り、異常のある部分や弁に付着して繁殖し、発熱を引き起こす、たちの悪い病気になる可能性があります。心臓弁膜症の患者は、かかりやすいようです。 心臓からの危険信号「不整脈」を見逃すな! 心臓はポンプのように膨らんだり縮んだり(これを拍動と言う)して全身に血液を送っています。その回数はなんと1日10万回にもなります。そのリズムは、右心房の上部にある「洞結節」という特殊な心筋細胞の集まりから心臓に出される電気刺激によって作られています。洞結節で発生した電気的興奮は、洞結節→心房→房室結節→ヒス束→右脚・左脚に分かれる→プルキンエ線維→作業心筋 という順に伝わり、作業心筋に伝わると電気的興奮が起こって収縮という現象を起こします。洞結節から出される刺激は1分間に約60~100回です。これが、正常な順序で伝わっていくメカニズムを正常同調律といいます。その正常同調律以外の心臓のリズムすべてを不整脈というのです。 主な不整脈の種類は次の通りです。 期外収縮 心房や心室など、洞結節以外で命令が起き、早めのタイミングで収縮するために脈が余分に打ったり、心臓が十分に収縮できず脈がとんだように感じるもの。不整脈のなかで最も多くみられます。 頻脈性不整脈 1分間に100回以上の電気的興奮が起こるもの。主な原因としては、電気的興奮が一定の同じ場所をぐるぐる旋回する(リエントリー)と考えられています。代表的なものとして、洞性頻脈、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室性期外収縮、心室細動などがあります。 徐脈性不整脈 1分間に60回以下の電気的興奮しか起こらないもの。電気的興奮が起こらなかったり、電気的興奮が通らない場合に起こります。代表的なものとして、洞不全症候群、房室ブロックなどがあります。 不整脈のすべてが悪いのかというと、実はそうとも言えません。不整脈の多くは気にしなくていいものですが、血圧の低下、冷や汗、胸の違和感や苦しさ、目の前が暗くなるなどの症状を感じる時には注意が必要です。ひどい場合には、意識がなくなり、失神を起こすこともあり、生命に関わる危険性もあるからです。 自覚症状を感じたり、健康診断などでとった心電図によって不整脈が発覚したら、一度は専門医の診察を受けましょう。 公開日:2003年4月28日
心臓病を見逃さないためには、早期発見、予防が大切です。心電図の波形からもさまざまなことがわかります。うまく利用して、心臓病予防に努めましょう。 目次 心臓の検査ってどんなことをするの? 心臓からのメッセージ「心電図」を読み取ろう! 心電図の種類 検査や治療ってどのくらいの費用がかかる? ストップ・ザ・心臓病 心臓の検査ってどんなことをするの? 心臓病は、職場や地域での健康診断や人間ドックなどで発見されることも多くあります。「健康診断なんてあまり役に立たない」といった先入観を捨て、心臓病の早期発見のためにも定期的に受診しましょう。もちろん、自覚症状があるなら迷わずすぐに医師の診断を受けるようにしましょう。実は心臓のどこに問題があるのかは医師の問診で8割以上わかると言っても過言ではないからです。胸のどこが、どんなときにどのように痛いのかを正確に医師に伝えるようにしましょう。 心臓病の主な検査内容 ●血圧測定 心臓病の原因の大きな部分を占めるのが血圧。まずは、正しい血圧かどうかをチェックします。 ●血液検査 血液の生化学検査では、総コレステロールや中性脂肪が増えたり、HDLコレステロールが減ることで動脈硬化の進みやすさがわかります。また、心臓病と密接な関係がある糖尿病は、血糖値やヘモグロビンA1Cなどでわかります。 ●心電図 心臓が発しているごく微小の電圧を12種類の電極から記録し、それを波形で表すものです。 ●超音波検査 超音波を利用して心臓の状態を画像として映し出す検査方法です。心臓の大きさ、心筋の厚さ、肥大の部分、心筋の収縮の様子、弁の動き、腫瘍などがあるかないか、などを知ることができます。 ●胸部X線検査 心臓のシルエットを知ることができ、心臓の大きさや4つの心房・心室が拡大していないか、また、心不全でみられる肺うっ血や胸部大動脈瘤の有無も確認できます。 ●心臓カテーテル検査・冠動脈造影検査 冠動脈の異常を実際に目に見える形で示すものです。血管の中にごく細い管(カテーテル)を挿入して、血管や心臓の中の血圧や内腔の様子や血流を調べます。どの部分がどの程度悪くなっているのかを正確に捉えることができますが、検査費用は約35万円ほどかかります。 心臓からのメッセージ「心電図」を読み取ろう! 心電図というとあの波形を思い浮かべる人も多いはず。心臓の筋肉が収縮するごとに発生する微量の活動電流の変化を図形に記録したものが心電図です。簡単な検査で豊富な情報が得られることもあって、心臓の肥大や虚血などの心臓病の早期発見や診断にかなり有益です。とくに、不整脈の診断には欠かせません。 心電図の波形の山や谷は、それぞれP、Q、R、S、T波と名づけられており、それぞれの波の大きさと時間の関係が重要になります。P波は電気信号が心房内を伝わっていく状況を、QRS波は電気信号が心室内を伝わっていく状況を、T波は伝わった電気信号が消えていく状況を示しています。正常な脈の場合は、規則正しく波が繰り返されますが、何らかの原因で不整脈がある場合には、波に乱れが出ます。 心電図と不整脈 ■正常な脈 ■トゲ(QRS波)の間隔の乱れに注意 ほぼ同じスタイルのトゲが出ていますが、トゲの出る間隔が不規則で乱れが認められます。 ■トゲのスタイルに注意 トゲの間隔は、ほぼ規則正しく並んでいますが、異なったスタイルのトゲが混在しているのが認められます。異なったスタイルのトゲは、普段と異なった場所から電気の興奮が起こっているか、あるいは興奮の伝わり方が普段と異なっていることを示し異常です。 心電図の種類 標準十二誘導心電図 一般に臨床で用いられている心電図です。ベッドに横たわった安静な状態で胸や手足に6つの電極を付け、しばらくそのままで測定します。安全で苦痛のない検査です。 ホルター心電図 24時間心電図を連続記録するもの。最高、最低心拍数や不整脈の種類、数、発生時間や心拍数との関係、STセグメントの低下または上昇と時間的関係や運動との関係を検討し、不整脈の診断をすることができます。 イベント心電図 携帯心電計携帯できる大きさの心電図です。携帯することで症状のあったときに自分で心電図がとれるため、24時間いつでも計測が可能です。24時間心電図を計測するホルター心電図でも症状を捉えられない患者に有効です。とった心電図は電話で病院や専門のサービスセンターへ送信し、医師に解析をしてもらうことができます。 負荷心電図検査 運動負荷心電図「トレッドミル検査」 安静にしているときには正常でも、運動をしたときに不整脈が出ることもあります。よく知られているものは、二段の階段を一定時間昇り降りしたあとに心電図をとる「マスター二段階テスト」や、ベルトの上を歩くことで運動負荷を行う「トレッドミル検査」や、固定した自転車のペダルを踏んで主に下肢に負荷を掛ける「エルゴメーター検査」などです。 体表面電位図 特殊な検査が必要なときに使われるもの。これは、前胸部、背胸部に約80~100の電極をつけて心臓の電気現象を細かくコンピューターで分析します。 電気生理学的検査 心臓のなかにカテーテル電極を入れて心房や心室の小さい電位を記録し、電気刺激を加えて頻拍発作を起こさせたりして不整脈の起こり方を調べる検査です。 検査や治療ってどのくらいの費用がかかる? 人間ドックでは体全体の健康状態をチェックしますが、特に心臓が気になる!という人は、心臓の専門ドック(心臓ドックなど)の検査を行うことをおすすめします。 身体測定や血圧測定、血液検査、胸部X線、心電図(ホルター心電図や運動負荷心電図)、超音波などの検査を行うと、費用はおおよそ3~5万円(病院によって異なる)となります。 また、万が一心臓病が見つかった場合、治療費はどのくらいかかるのでしょうか。心臓病の治療で使われるカテーテルは1本約30万円とも言われています。それを用いた手術を行った一例を挙げてみると、 (例) 心筋梗塞の緊急手術で、PTCA法を行い、約40日間入院した→約300万円 もちろん、公的医療制度により自己負担額が300万円というわけではありませんが、それでもかなりの治療費が必要になる。 そうならないためにも、定期的な検査は必要です。 ストップ・ザ・心臓病 心臓病にならないためには、早期発見や予防を心がけることがまず大切です。「痛くなってから」「症状が出てから」病院へ行けばいい、では手遅れになることもあります。 自分や大切な家族が心臓病にならないためにも、「ストップ・ザ・心臓病」の心がけを忘れないようにしましょう。 生活習慣を見直そう! ●食生活の見直し 動物性脂肪の摂り過ぎ、不規則な食事など、食生活の乱れは最も危険です。まずは食生活の見直しからはじめましょう。 ●運動習慣の見直し 日頃運動不足だと感じている方は、ぜひ運動をしましょう。とはいえ、ジョギングやテニスをいきなりはじめる必要はなく、毎日の生活でできる運動からスタートさせましょう。ウォーキングは心肺機能を鍛えることができる有酸素運動として最も有効的です。 ●生活習慣の見直し 喫煙や過度の飲酒はご法度です。とくに百害あって一利なしのたばこは、すぐにでも禁煙をはじめましょう。 ●定期的な検診や医師の診察 職場や地域での定期検診や健康診断を利用しましょう。ちょっと費用はかかるが、心臓ドックや人間ドックをするのもおすすめです。不整脈などちょっと気になる人は、これまで病院でとっていた心電図が家庭でとれるものもあるので、これまでより手軽に心電図をとって医師に診てもらうのもいいでしょう。 ■関連記事 10年以内の心筋梗塞などを発症する確率を予測 あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう! 重症心不全への再生治療の実際 公開日:2003年4月28日
刺激伝導系の故障で起きる不整脈 心臓が規則正しく拍動するのは心臓内の洞結節という部分のおかげです。洞結節からの電気刺激が、房室結節を経由して心筋に伝わって、初めて規則正しい拍動が起こります。この刺激伝導系に故障が起きると、心室が勝手に収縮を始めてしまいます。これが不整脈です。 そこで、心拍数をコントロールする必要があります。そのために、洞結節に代わって人工的に電気刺激を与えて心臓を興奮させる方法が取られます。 その装置が人工ペースメーカーです。一時的に刺激を与える体外式・胸壁式と、半永久的治療を目的とした埋め込み式があります。 6~7年以上機能する埋め込み型ペースメーカー 埋め込み型は、リチウム電池で6~7年以上も機能します。入浴なども可能で日常生活に特に支障はありません。 ただし、気をつけなければならないことがあります。電気製品です。強い電波、電界、磁界を発するものに近寄ると誤作動の危険があるのです。電気機械や送信アンテナ、携帯電話などには注意が必要です。
心電図とは 心臓は全身に血液を循環させるポンプとしてはたらいています。その指令を送っているのが上大動脈と右心房の間にある洞結節という部分です。洞結節は1分間に70回前後のひん度で電気刺激を発生します。それが心房や心室へ伝えられ心筋が収縮するわけです。 その心筋の電気的変化を体表面に装着した電極から検出し、波形として記録したものが心電図です。 十二誘導心電図が最も一般的で、健診などでも使われています。心電図は不整脈や虚血性心疾患などの検出に適しています。それぞれ特有の波形を示すからです。 ただし、発作が起きている時でないと不整脈などの異常心電図変化は現れません。そこで、診断する前に軽い運動をしてから心電図を測定する方法も用いられます。これが運動負荷心電図です。これでも異常をとらえることができないこともあります。 ホルター心電図とは ホルター心電図が有用なのはこんな場合です。これは携帯型の装置で24時間の心電図を連続的に記録できるものです。心電図変化をとらえられる可能性はより高くなります。 心臓に何らかの変化があった時だけに作動するイベントホルター心電図も普及しつつあります。
心臓の役割は生命維持に必要な血液を全身に造ること 心臓はよくマンガなどに描かれるようにハート型をしています。大きさは人の握りこぶしよりやや大きい程度、重さは成人で約250~350gです。 規則正しく収縮と弛緩を繰り返して血液を絞りだす筋肉(心筋)からできており、内部は左右の心房と心室の4つの部屋に分かれます。 心臓は生命維持に必要な血液を全身に送るという重要な役割を持っています。酸素やエネルギー源を豊富に含んだ動脈血を体のすみずみに回すために、規則的なポンプの作用をします。 1回の心拍動で送り出される血液量は約60ml、1分間で約5L 送りだされた血液は、帰り道に各組織から二酸化炭素やエネルギー消費後の老廃物を受けとって静脈血となり、心臓(右心房)に戻ります。さらに肺に送られて新鮮な酸素を得て動脈血となり、再び心臓(左心房)に戻って大動脈に送りだされます。 1回の心拍動で送り出される血液量は約60ml、1分間に約5Lにのぼります。 左右の心房と心室、右心室と肺動脈、左心室と大動脈の間にはそれぞれ弁(心臓弁膜)があって、血液が逆方向へ流れるのを防ぎます。いわゆる「心臓の音」は血液が押しだされて弁が閉まる時にたてる音です。
心臓・血管への影響 怖いのは、慢性的なストレスで心身の疲れがたまっている時に急性ストレスが追い打ちをかける場合です。 慢性ストレスが続くと、免疫力の低下や動脈硬化など、身体の老化現象が起こりやすくなります。 そこに急性ストレスが加わると、急激な血圧上昇や血液の凝固などの変化に身体が耐えきれず、急性心不全や心筋梗塞の発作が起きやすい状態になるのです。 人ごとではない悲劇 過労死は、「過重労働が誘因となって心臓死などを発症し、永久的労働不能や死亡に至った状態」と定義されます。 具体的な事例を見ると、過重労働という慢性的なストレス状態にある人が突発的な事故に出あった時に、死に至る発作を起こすことが多いのです。 例えば、常にノルマに追われて緊張が続いていた人が、ある日大切な書類を紛失したことに気付いた途端、心筋梗塞を起こした、また、時間外労働が数年続いていた人が、大きなプロジェクトを終わらせて、ほっとした途端に急性心不全で倒れた、というものなどです。 緊張の持続の後で急にほっとするのも、ある意味で急性のストレスになるので、休息の取り方にも気を付けなくてはなりません。
適量の飲酒は心臓血管疾患のリスクが低い 米国保健科学協議会(ACSH)が、各国の医療関係者が発表した研究報告をまとめて分析しました。すると、1日に日本酒に換算して1、2合程度のお酒を飲む人が、最も心臓血管疾患のリスクが低いという結果が出ました。これには人種や性別、地域条件を越えた共通性が見られます。 そして、病気だけでなく事故や事件を含めたあらゆる原因による死亡率(全死亡率)と1日の飲酒量をグラフにするとJ型のカーブになります。このことから「Jカーブ効果」といわれます。 日本人の適量は少ない ところが、日本人の場合、約半数はアセトアルデヒド脱水素酵素が遺伝的に欠損しているため、アルコールに弱いといわれています。ですから、外国人と同じ量のアルコールでは、日本人にとっては反対に害になる可能性があります。 そのため、日本人にとって心臓血管疾患のリスクが低くなるお酒の適量は、外国人よりも少ない量と考える方が良いでしょう。さらに、アルコールの許容量は個人差がありますし、アルコール依存症や薬物乱用者など、適量という概念が当てはまらない人もいます。 なお、このJカーブ効果はもともと飲まない人に飲酒を進めるものではなく、大量飲酒の人に適量を勧めるものです。
栄養状態が良くても大酒家は心不全を起こす アルコール依存症の人が、飲酒中や飲酒後に急死することがよくあります。これは、アルコール依存症の禁断症状が見られる時期には、血栓ができやすくなるため、心筋梗塞を起こしたのではないかと考えられています。 また、お酒をたくさん飲み過ぎて、ビタミンB1不足により、脚気衝心といわれる心不全が起こったとも考えられます。ところが、栄養状態が良くても、大酒家は心不全を起こすことがあります。拡張型心筋症に似た状態を示す「アルコール性心筋症」があることも分かってきました。 この原因は、アルコールやアルコールの代謝物が直接心臓に作用すると考えられています。30~50歳代に多く、一般的にアルコールを10年以上飲んでいる人に見られます。初期症状としては、動きや息切れなどですが、進行すると呼吸困難を起こし急死してしまうことがあります。 適量は冠動脈疾患の危険性を減らす説もある ところが、適量のアルコールは心臓の栄養血管である冠動脈疾患の危険性を減らすという説もあります。これは、善玉のHDLコレステロールがアルコールによって増えるからと考えられています。 しかし、もともとお酒に弱い日本人に当てはまるかどうか分からない点もあります。一方、お酒をたくさん飲むと明らかに病気がなくても、不整脈が生じることもあります。このようにアルコールはかなり心臓に対して作用することが分かってきています。 ■関連記事 働き盛りのあなたを襲う「突然死」はある日突然訪れる!?突然死を予防するには 重症心不全への再生治療の実際
動脈硬化の条件がそろう たばこの煙に含まれるニコチンには、心拍数の増加、血圧上昇、末しょう血管の収縮などをもたらす作用があります。また、ニコチンや、ニコチンによって副腎髄質からの分泌を促進されたカテコラミンは、血小板凝集能を高めるため、血栓ができやすくなります。 一方、やはり煙に含まれる一酸化炭素は、ヘモグロビンと大変強い結合力を持ち、両者が結びついたカルボキシヘモグロビンは血管内皮を酸欠状態にし、内皮を傷つけます。 そして、血中の脂質についても、善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすので、動脈硬化はますます起こりやすくなります。 喫煙者と非喫煙者で有病率に明らかな差 心筋梗塞などの虚血性心疾患に関する研究の中には、1日20本を超える喫煙者は非喫煙者に比べて、疾患の発生率が3.2倍という報告もあります。 また、喫煙を開始した年齢と、動脈硬化に起因する心疾患の間にも関連性があると指摘されています。19歳までに喫煙を開始した人は、非喫煙者の2倍強、病気になる危険度があると結論を出した調査もあります。 気道を直接刺激 たばこの煙に含まれる刺激物質は、気道に無数にある繊毛の運動を妨げることが分かっています。 また、喫煙による慢性的な刺激は気道を過敏にし、たばこの葉からの抽出物には、アレルギーのもととなるアレルゲンが含まれていることも最近、報告されています。 従って、たばこは気管支ぜん息などの誘因となっていると考えられています。
心臓病の人が多い 運動は健康にとって大変いいのですが、高血圧であったり、心臓に疾患を持っている人は、専門医の指導を受けてから取り組むのが鉄則です。本人は、自分の病気を軽く見てしまうことが多いのです。 毎年、ジョギングやマラソン中に倒れ、そのまま亡くなる人が跡を断ちません。 そのほとんどは心臓病を指摘されていたり、高血圧で治療中だったという人が少なくありません。 ではどうして、と考えるのはしごく当たり前のことですが、自分の病気を軽く見て、「少しぐらい走っても」と思った結果です。 健康管理は自分のために 「ぼくは時々健康診断を受けているから大丈夫」という例が多いのですが、なかには、健康診断では異常が出なくても、心不全などで倒れ、亡くなった例もあります。 健康診断の結果はその時点でのことであって、それ以後も異常なしといっているわけではありません。 日常のチェック項目 日常の体調の不調のチェック項目は、次の13項目です(野間口英敏=東海大学体育学部教授 考案)。 食欲がない 便秘や下痢をしがちである 発熱しやすい 寝汗がひどい 顔や手にむくみがある 軽い運動でもどうきや息切れが激しい 安静にしていても息苦しい 疲れやすく回復が遅い 寝つきが悪くよく眠れない 減量していないのにやせてきた 体の一部に原因不明の痛みがある 耳鳴りや目まいがする 異常にのどが渇く
マグネシウムを多く含む食品群 マグネシウムは、緑黄色野菜、豆類、穀物、海藻類、アーモンドやチョコレートなどに多く含まれています。 マグネシウムの必要摂取量は、成人で1日300mgですが、実際に摂取している量は200~250mgで、不足しています。 マグネシウムは、加熱や精製、食品の加工の過程で80%も失われてしまいます。 また、カルシウムの取り過ぎも、マグネシウムの不足を引き起こします。重量比として、カルシウム2に対し、マグネシウムは1以下が理想的です。 マグネシウムには、カルシウムが血管や組織に沈着するのを防ぐはたらきがあります。十分に取れば、高血圧を予防できる可能性があります。 また、筋肉をし緩させる作用があるとされています。手や足の脱力感やこむら返り、凝り、痛みなどは、マグネシウムの不足から起きることがあります。 欠乏すると心臓病を起こす マグネシウムが欠乏すると、心臓障害を起こしやすく、突然死とも関係があるといわれています。突然死した人の冠動脈には、マグネシウムが非常に少なくなっているのが分かっています。 慢性的にマグネシウムが不足すると、血管の狭さくが起きて、虚血性心臓病を誘因すると考えられています。 ■関連記事 働き盛りのあなたを襲う「突然死」はある日突然訪れる!?突然死を予防するには 重症心不全への再生治療の実際
心拍数によって寿命が分かる? 心拍数と寿命の関係については、名古屋大学医学部第一内科の林博史氏が面白い論文を発表しています。 それによると、人間の一生の心拍数は安静時で15億(拍)、活動を考慮すると20~23億(拍)といわれています。哺乳類では動物の種類によらず一生の心拍数はおよそ一定です。心拍数と寿命の間に成り立つ数式を簡略化すると、 寿命(分)=20~23億(拍)÷1分当たりの心拍数 となり、寿命は心拍数に反比例することが分かっています。 これを人間の心拍に当てはめると、1分当たりの心拍数が90拍だと寿命は約45年、同50拍だと約75年になります。 つまり、1分間の心拍数が速い人ほど寿命が短いというわけです。 寿命と関係の深い因子とは? また、寿命に関する疫学調査でも、中年男女が75歳まで生き抜くのに関係の深い因子の検討が行われ、男性の場合は、心拍数、1日の喫煙本数、収縮期血圧、肺活量が寿命を左右するのに重要な因子であることが分かりました。 一方、女性の場合は、心拍数の代わりに長寿の両親に恵まれることが必要であるとの結果が出ましたが、その理由は分かっていません。 ■関連記事 心電図検査とは?心電図検査の結果からわかること 重症心不全への再生治療の実際