成長ホルモンの過剰分泌で、体に変化 もし、あなたがすでに大人であるにもかかわらず、じょじょに手足の先が大きくなったり、額やあごが肥大したらどう思う?「太ったせいかな…」そう考えてダイエットをしたりする程度で、まさか外見の変化が「病気」のせいだとは考えないだろう。 このように、体の先端が肥大する病気を「アクロメガリー」、または先端巨大症という。脳の下垂体に腫瘍ができ、成長ホルモンが過剰に分泌されて起こる病気だ。 多くの場合、外見上の変化だけでなく頭痛や高血圧、いびき、多汗などの症状もともなうが、外見上の変化がゆっくり進むのに加え、頭痛などの症状もごく一般的なものであるため、多くの人は特別な病気だとは気づかない。 また、成長ホルモンが過剰に分泌される状態が続くと、糖尿病や高血圧、高脂血症といった合併症を併発し、ゆくゆくは心臓病などの深刻な病気を引き起こしてしまう。そのため、アクロメガリーの患者さんは平均で10年ほど寿命が短いと言われている。 アクロメガリーの語源は? はじめて聞いた人には印象的な「アクロメガリー」という病名。名づけ親はフランスの神経学者ピエール・マリー(1853-1940)で、ギリシャ語で先端をあらわす“akron”と巨大をあらわす“mega”に由来して名づけられた。 古いアルバムの自分が、違う顔だったら… アクロメガリーかどうかを診断するには、内分泌科や脳神経外科などで、成長ホルモンなどの量を調べる血液検査を行う。アクロメガリーが疑われる場合には、さらにCTやMRIなどの画像診断装置で、腫瘍があるかどうかを確認する。 アクロメガリーはまれな病気であることから医師にも詳しい人が多くなく、生活習慣病などと勘違いされてなかなか発見されない。下記のような外見上の変化、症状はアクロメガリーのサイン。昔のアルバムをめくって今の自分との違いにびっくりしたり、数年ぶりに会った友人などに「顔つきが変わった!」と指摘されるケースも多いようだ。 外見上の変化 額・目の上・下あごが突き出る/鼻が大きくなる/唇が分厚くなる/舌が大きくなる/指輪が入らなくなる/靴が入らなくなる さまざまな症状 頭痛がする/視力が低下する/噛み合わせが悪くなる/舌がからまる/声が低くなる/大きないびきをかく/指先がしびれる/関節痛/全身汗をかく/日中に眠くなる/生理不順/性欲低下など 早めに治療すれば、元の自分を取り戻せる アクロメガリーの治療は、まず原因である腫瘍を取り除く手術を行うのが一般的。最近では、頭に穴を開けることなく手術用顕微鏡や内視鏡を使って鼻の穴から手術する方法が確立されており、熟練した医師が行えば安全性も高い。 しかし腫瘍が大きいために手術が難しい場合や、手術をしても成長ホルモン量が減らない場合は、薬物や放射線などで治療を続ける。 腫瘍を取り除くと生活習慣病に似た症状は消えるが、外見の変化は完全にとり戻すことができない。太くなった指や分厚くなったかかとは元に戻るが、額やあご、唇などの変化は残念ながら戻らないという。そのため、なるべく早い段階で医療機関を訪れ、アクロメガリーと診断されて適切な治療を受けることが重要だ。 公開日:2007年1月9日
実は、おとなの体にも必要な成長ホルモン。そもそも成長ホルモンとは?子どもの成長に関わるだけではなく、人間が生きていく上で欠かせない成長ホルモンの大切な役割を紹介。 目次 成長ホルモンとは? 背を伸ばすだけじゃない~成長ホルモンの役割 おとなの「成長ホルモン欠乏症」が注目される理由とは!? 成長ホルモンとは? 成長ホルモン(Growth Hormone;GH)は脳の下垂体から分泌されるホルモンのひとつ。文字通り、成長を促すことをおもな役割としている。 成長ホルモンはおもに肝臓にはたらきかけ、軟骨細胞を増殖する作用があるIGF-I(ソマトメジンC)を分泌して、骨の成長を促している。さらに、直接、軟骨細胞にもはたらきかけ、IGF-Iの分泌を促進してもいる。 成長ホルモンがIGF-I(ソマトメジンC)にはたらきかけることで、骨が長くなり、身長が伸びるというわけだ。 また、成長ホルモンは筋肉でたんぱく合成を促進したり、心臓などさまざまな臓器や器官の発育にも関わっている。つまり、成長ホルモンは私たちの体作りにとても重要な役割を持っているのだ。 そもそもホルモンとは? 背を伸ばすだけじゃない~成長ホルモンの役割 成長期が過ぎれば、重要な役割はないと考えられてきた成長ホルモン。しかし成長ホルモンは、私たちの基本的な生体活動である代謝に大きな影響を与えているのだ。 例えば、脂肪の分解を促したり、たんぱく質の合成を促進したり、糖質、骨、水分やミネラルなどさまざまな代謝を調節しながら、体が常に一定の状態に保たれるよう、バランスを保つ役割を果たしている。 おとなの「成長ホルモン欠乏症」が注目される理由とは!? おとなの成長ホルモン欠乏症はあまり問題視されなかった。「成長ホルモン=成長を促進するホルモン」と考えられ、それ以外のはたらきはそれほど重要視されていなかったからだ。 しかし、おとなの成長ホルモン分泌不全症の場合、心疾患による死亡リスクが高まることが報告された。さらに、成長ホルモンの欠乏による肥満や運動能力が落ちることでQOL(生活の質)が著しく低下することなどが分かり、注目されるようになったのだ。 公開日:2004年3月1日
女性にあるホルモンが女性ホルモン、男性にあるのが男性ホルモンと思い込んでいませんか?実は女性も男性も体内で両方のホルモンを作っています。そもそもホルモンって何?知っているようで知らなかったホルモンの話をご紹介します。 目次 そもそもホルモンとは? 男性ホルモン&女性ホルモンのはたらき 女性にも男性ホルモンはあるし、男性にも女性ホルモンはある ホルモンコラム:どこが違うの?「ホルモン」と「フェロモン」? そもそもホルモンとは? 「ホルモン」と聞いてあなたは何を想像するでしょうか?男性の逞しさや女性の色っぽさ、はたまた焼肉の臓物系?イメージ先行で具体的にどんなものだか今ひとつわかりにくいホルモン、そもそもはギリシア語で「呼び覚ますもの」「興奮させるもの」「刺激するもの」といった意味の言葉です。定義は以下の通りです。 ●ホルモンは体内にある細胞でしか作られない化学物質で、その数は70種類以上存在するとも言われます ●脳の視床下部、甲状腺、卵巣、睾丸などの内分泌腺で生産、貯蔵され、刺激に応じて血管を通って分泌されます ●それぞれのホルモンには各「標的細胞・器官」があり、そのはたらきをコントロールします ●ホルモンは代謝の調節を行います ホルモンは無色透明ですが、取り出して純化すればただの白い粉です。成分は大きく分けて2種類あり、ひとつがアミノ酸を原料としているもの、もうひとつがコレステロールを原料とした非たんぱく質のものとなります。 アミノ酸を原料とするホルモンには甲状腺ホルモンやアドレナリンなどがあり、非たんぱくホルモンは睾丸・卵巣・副腎皮質から分泌されているいわゆる性ホルモンです。 体内に分布する主な内分泌腺とホルモン 男性ホルモン&女性ホルモンのはたらき 男性ホルモンは男性を男性特有の体つきや思考回路に発育させるホルモンのこと。テストステロン、アンドロステネジオン、デヒドロエピアンドロステロンの3種類の総称として「アンドロゲン」と呼ばれます。健康な男子の場合、1日におよそ7mg程度の分泌があるといいます。 一方、女性ホルモンは、女性特有の体つきや体のリズムを司るものです。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。エストロゲンは排卵の準備をするホルモンで生理の終わりごろから排卵前にかけて分泌が高まります。プロゲステロンは排卵後に分泌され、排卵を抑制するはたらきがあります。女性の体内で分泌される一生分の女性ホルモンの量はおよそスプーン1杯程度。これほど微量でこれだけの威力を発揮する化学物質はほかにはちょっと見当たらないかもしれません。 女性にも男性ホルモンはあるし、男性にも女性ホルモンはある ところで名称のイメージから、男性にあるのが男性ホルモンで女性にあるのが女性ホルモンだと思い込んではいませんか?実は男性の体内でも女性ホルモンが作られますし、女性の体内でも男性ホルモンが作られます。でも、女性には精巣がないし、男性には卵巣がありません…。一体どこで、どうやって作られているのでしょうか? 男性ホルモンは人体の生殖器官と副腎で作られます。女性の生殖器官は卵巣にあたり、男性ホルモンはここで作られています。しかも、女性の体内の男性ホルモンは、女性ホルモンの量に比べて10倍以上も多いそうです。 では男性の場合、女性ホルモンはどこで作られているのでしょうか。実は性ホルモンは変化するもの。コレステロールから弱男性ホルモンと呼ばれるものが作られ、男性ホルモンから女性ホルモンが作られます。男性ホルモンも女性ホルモンも構造はよく似ており、酵素の微妙なはたらきによって全く違うはたらきをする2つのホルモンが誕生するのです。男性の体内の女性ホルモン量は、女性に比べておよそ半分程度のようです。 ホルモンコラム:どこが違うの?「ホルモン」と「フェロモン」? 「ホルモン」と「フェロモン」。どちらもなんとなくセクシーなイメージがあり、名前も似ていることから漠然と似たようなものだと思っている人も多いかもしれません。しかし、両者のはたらきは全く違います。ホルモンは生物の体内で作られ、その体内でしか作用しません。対してフェロモンは体外に放出されて同種のほかの固体に作用するものです。人間のフェロモンについては現在解明中ですが、鼻の中にフェロモンを感知する「鋤鼻(じょび)器官」があるとされ、男女間の相性にも影響があるのでは?とも言われています。 ■関連記事 更年期チェック!汗、ほてり、痛み、息切れなどがありますか? 更年期にやさしいサプリメント 痛み+疲れ+更年期症状で退職するも社会復帰を果たした患者さんの体験記