大人の健康情報
望月吉彦先生
更新日:2024/08/05
前回までに以下のうち、1~14まで紹介が終わりました。今回は、15を紹介します。
- ノーベル賞を受賞した“父アイントホーフェン”一家のこと
- “子アイントホーフェン”一家のこと
- 心電図研究のこと
- アイントホーフェン父子は心電計で特許をとり、その特許収入でヨットを購入したこと
- “子アイントホーフェン”が行ったオランダとインドネシアとの無線通信実験のこと
- “子アイントホーフェン”が日本に連れてこられた経緯
- インドネシアから日本への移送、日本到着後の移送
- “子アイントホーフェン”一行の日本での生活
- “子アイントホーフェン”が日本で行っていた実験、研究とは?
- “子アイントホーフェン”を東京で診察した日本人医師のこと
- “子アイントホーフェン”の死因(東京大空襲で亡くなったのか?)
- “子アイントホーフェン”を診察した池田泰雄先生と日野原重明先生との関係など
- “子アイントホーフェン”の葬儀の様子
- 終戦そしてオランダに帰国
- 論文余話
論文余話
このシリーズは本稿で最後になります。長々とお付き合い頂きありがとうございました。
小宮まゆみ著 「敵国人抑留:戦時下の外国民間人」3) にアイントホーフェン医師の子息のことが記されていたのを読み、小宮まゆみ氏に資料を提供して頂いたことが、本論考を起こすきっかけでした。小宮まゆみ氏には、子アイントホーフェンと共に東京で抑留生活を送ったオランダ人が抑留体験記を書き、それが和訳されていることなども教えて頂きました。そしてオランダにNPO法人「日蘭イ対話の会」 という会があることも教えて頂きました。この会は「第二次世界大戦で生じたわだかまりをいつまでも、いつの日か解消したい願ったオランダ人、日本人、インドネシア人」が対話をするための会だそうです。この会は2000年から活動しています。同会の代表 「タンゲナ鈴木由香里さん」を、小宮山まゆみさんから紹介して頂き、タンゲナさんとメールで連絡が取れるようになりました。
タンゲナさんに、“子アイントホーフェン”一家のことなどを伺ってみたところ、(2019年5月)「子アイントホーフェンのお孫さんが、第二次世界大戦中に捕虜として日本で過ごした記録を出版されました(筆者注:多少、改変しています)」との連絡を頂きました。
↓本論考の元になった本です。
“Ineke van der Wal : De Tempel met de Chrysanten : Krijgsgevangene in Tokio, 1st ed. Independently published, Holland, 2017 オランダ語版”
“Ineke van der Wal著:「The Temple with the Chrysanthemums: Dutch Prisoners of War in Tokyo」2017年 刊 英語版”
この本こそ、本論考の底本です。この本が出版されるよりも、かなり以前に私が探究していたら、あるいはこの本がオランダ語だけでの出版なら、“子アイントホーフェン”のお孫さんの書いたこの本と出会うことはなかったでしょう。そうなれば論文を書かなかったと思います。しつこいようですが、研究、探究には「できることは全部やる」ことが大切だと改めて感じました。あきらめずに探究することは大事ですが、「時」を味方にできないと探究はできないとも感じました。
その後、タンゲナさんにお骨折り頂き、Ineke van der Walさんとも連絡を取れるようになり、本論考で上掲の本からの文章の引用、写真の引用許可を頂きました。その経緯を示します。
180:医学雑誌「心電図」に論文を投稿した経緯(8)
この論考は著者から正式な許可を得て図版、文章を引用しています。こういうことも、きちんと行う必要があります。様々なことがありました。無事、論文となりました。いつかオランダにあるアイントホーフェン父子の墓を訪れ、この論文を捧げたいと思います。
右が小宮まゆみ様 左がタンゲナ鈴木由香里様です。
コロナ禍により、オランダ在住のタンゲナ鈴木由香里さんは、日本への渡航ができなくなっていました。しかし、コロナが下火になり、来日されました。小宮まゆみ様、タンゲナ鈴木由香里様と共にお目にかかることができました。2022年10月のことです。お二方のご尽力が無ければ論文は書けませんでした。ここに改めて謝意を表します。 完
いつかお読みください(再掲)。
心電計の発明者アイントホーフェン医師の共同研究者だった同医師の子息が太平洋戦争下の東京で亡くなっていたことに関する考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jse/41/1/41_30/_article/-char/ja/
■関連記事
【参考文献】
- Mochizuki Y, Okamura Y, Iida H, et al. : Iodine-impregnated drapes enable recording of precordial electrocardiogram. Ann Thorac Surg, 1999 ; 67 : 1184-1185
- 本橋均:絃の影を追って:W. Einthovenの業績,初版.医歯薬出版,東京,1969
- 小宮まゆみ:敵国人抑留:戦時下の外国民間人,初版.吉川弘文館,東京,2009 ; 173-176
- 日本電気株式会社編:日本電気ものがたり,初版.日本電気,東京,1980 ; 157
- Ineke van der Wal : De Tempel met de Chrysanten : Krijgsgevangene in Tokio, 1st ed. Independently
published, Holland, 2017
- Ineke van der Wal : The Temple with the Chrysanthemums Dutch Prisoners of War in Tokyo, 1st ed.
Independently published, USA, 2017
- Snellen, HA : Willem Einthoven(1860-1927)Father of electrocardiography : Life and work, ancestors and
contemporaries. Springer, Netherlands, 1995
- Einthoven Jr, WF : The string Galvanometer in wireless telegraphy. Proceedings, 1923 ; 26 : numbers 7, 8.
- Einthoven W, Einthoven WF, Willem van der Horst, et al. : Brownsche Bewegingen van een gespannen
snaar. Physica, 1925 ; 5 : 358-360
- ノーベル賞委員会:Willem Einthoven - Nobel Lecture - Nobel Prize.
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1924/einthoven/lecture/(2021年 2月閲覧)
- 明治大学平和教育登戸研究所資料館:地域から追う登戸研究所.
https://www.meiji.ac.jp/noborito/event/6t5h7p00000gn1xj-att/6t5h7p00000o50en.pdf(2021年 2月閲覧)
- オランダ日本インドネシア対話の会:Deportation to Japan : Search for Clarity.
https://sites.google.com/site/dlgnji4nl/programmas/conf08/2gre-en(2021年 2月閲覧)
- 心電図 Vol. 41 No. 1 2021 13 ) 日野原重明:心電計の歩み.検査法の変遷(Clinical Laboratory編集委員会編).診療新社,大阪,1982 ; 295
- 聖路加国際病院 100年史編集委員会編:聖路加国際病院の 100年.聖路加国際病院,東京,2002
- 大蔵省印刷局編:官報 1921年 08月 27日.国立国会図書館デジタルコレクション
- United States Department of the Army : Pamphlet - Dept. of the Army. Tokyo, 1949 ; 579
- War Graves Commission Oegstgeest(Oorlogsgravencomit? Oegstgeest) : Comit? Herdenken en Vieren Oegstgeest.
https://www.oorlogsgravenoegstgeest.nl/en/resistance-fighters/einthoven-en(2022年 2月閲覧)