望月吉彦先生
更新日:2020/06/29
前回より続きます。
「コレラからコロナを考えよう」という主旨で書いています。
前々回でコッホが細菌を発見し、コッホの4原則を確立したことをお伝えしました。
コッホが細菌により「病気」が生じることを発見してから、ゴールドラッシュのような「病原性細菌の発見競争」が始まり、実に多くの病原性細菌が見つかりました。
少しだけ挙げてみましょう。
ほかにも、数多くの「病原性細菌」が発見されています。今も、発見されています。最近の有名どころでは、なんといっても「ピロリ菌」でしょう。
以下は余談中の余談です。読み飛ばしてください。
結核菌の発見は3月24日です。昔々、仲の良かった女性の誕生日が3月24日でした。その日に彼女と食事を共にしました。
彼女曰く「今日は何の日か覚えている?わかる?」
私「今日はね、、、。 あ、そうだ。コッホが結核菌を発見した日だ!」
彼女「。。。。。。。。。。」 黙ってしまいました。
もちろん、わかっていて、冗談で言ったのですが、しばらく口を利いてもらえませんでした。冗談でも言って良いことと悪いことがある。時と場合によるのです。。皆様も、是非注意を。。
前回で物理の話を書きました。患者さんと接触しない、距離を保つ、密にならないことでCOVID-19の感染を防ぐのです。
図1
図1は1656年にペストがイタリアで流行した時に描かれた医師の姿です。
くちばしのようなものは今でいうマスクですね。ペストに罹患した患者さんを診察する時につけていたのです。患者さんの話を聞く際、あまり近づくと、ペストに感染しやすいと感覚的にわかっていたのでしょう。
また、長いマントのような服も身にまとっています。これは今で言う感染防御衣でしょう。ペストには「腺ペスト」と「肺ペスト」があり、一般にペストというとリンパ管を冒す「腺ペスト」です。腺ペストは、ネズミ→ノミ→人間という経路で感染が広がります。「腺ペスト」にかかった患者さんのリンパ管から漏れる体液からも感染します。
つまり、ノミ、体液から医師の身を守るため、大仰にも思える服が必要だったのです。ペスト菌が発見されたのは、それから300年後のことです。香港で見つかっています。上述しました。
下の写真2は、今回フランスが配っているマスクです、日本のアベノマスクと違い様々な形状のマスクがあるそうです。中には1656年のペストの時に医師がつけているくちばしのような「マスク」に似ているモノもあるようです。
写真2:フランスで配られたマスク
下に今使われている、感染防御衣を示しました。
写真3:感染防御衣
やっていることは300年前と少しも変わりません。というわけで今も昔も似たようなことやっています。
一昔前までは、医療機関で金銭授受をする窓口、鉄道で切符を購入する窓口など、ガラス張りの仕切りがありその下に小さな金銭授受窓口が備えてあるのが普通でした(写真4)。
「結核」を初めとする感染対策、泥棒対策だと言われています。段々とこのような仕切りのある窓口は減り、仕切りがない窓口が普通になってきていました。しかし、COVID-19対策で、窓口にはビニールのすだれが普通になり、金銭やりとりをする部分もアクリル板などで仕切られるようになってきました。以前のカタチに戻りつつあります。この流れは、一時的ではなく恒久的になると予想します。
写真4:国鉄時代の切符窓口
さて、COVID-19の話に戻りましょう。COVID-19はコレラと大きな違いがあります。コレラと違って、国や地域で罹患率、死亡率が大幅に違うのです。
国内でも罹患率がかなり違います。現時点(2020-06-21)で、岩手県ではCOVID-19に罹った人ゼロです。東京とは随分と違います。
下に各国別の、人口1,000,000人当たりの死亡数(2020-06-10時点)と平均年齢を示します。
国の横にある数字が死亡数、緑文字はその国の平均年齢です。平均年齢はあの有名なCIAのデータです(https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/fields/343rank.html)。こんなデータもCIAは分析しているのですね。
******** 以下、死亡率が低い国を示します ********
日本とベルギーでは100倍以上、台湾とベルギーでは2700倍も死亡率が違います。モンゴル、ベトナムに至っては死亡者ゼロですが、平均年齢が若いからでしょうか?
台湾はCOVID-19発症初期から、徹底した対策をとったことで有名です。最初に、阿鼻叫喚状態だった中国もいつの間にか日本より死亡率が低くなっています。総じて東アジア諸国は低いのです。一方、悲惨なのはヨーロッパと北米です。
COVID-19のように、地域差、国による死亡率が違う病気はあまりありません。この差が出ている原因を探るのが「疫学」の目的の1つです。死亡率に差が生じる原因がわかれば対策をとることができるかもしれません。そこで、今回のCOVID-19死亡率差を説明すべく様々な仮説が唱えられています。
アジア人はCOVID-19に対する免疫力が高いという人種説、地域による気候風土原因説、温度説、湿度説、紫外線の照射量説なども「仮説」として出ています。BCGを継続して接種している国は死亡率が低いのでBCG仮説が有力です。しかし、今のところ、どの説もまだまだ検証が必要です。まだ、この病気が見つかってから、半年も経っていません。わからないことだらけです。いつの日か「これだ!」と言う説が検証され、COVID-19予防、COVID-19治療に役立てば良いですね。
次回は記録がいかに大切かを端的に示す例をお示ししましょう。
望月吉彦先生
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