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電子カルテ時代に必須のスキルとは~よく使う便利なソフトなど(望月吉彦先生) - ドクターズコラム

大人の健康情報

望月吉彦先生

更新日:2019/12/16

電子カルテ時代に必須のスキルとは

今年も今回が最後です。今年もお読み頂きありがとうございました。
今、多くの病院で電子カルテを導入しています。電子カルテがすべて良いわけではありませんが、一昔前は判じ物のような文字、「他人にはもちろん」後で読もうとしても「自分でも読めない」文字、さらには、いい加減な外国語(主にドイツ語)で書いたカルテを多く見ました。
読めないカルテを読める看護師さん、読めない処方箋が読める薬剤師さんというような特殊技能?の持ち主もいました(います)。
医師はドイツ語でカルテを記していると思われていました。今も、そう思っている方も多いかも知れません。それは「嘘」です(参考記事:『百人一首』は宇都宮が起源?AKB48の起源は平安時代から?)。
「ドイツ語まがい」でカルテを記していました。良いことではありません。ドイツ語で、日本人の患者さんの病状を正確に記すことはできません。
今は電子カルテが普及しつつあります。もちろん、日本語で記載します。というかキーボードで入力します。

厚労省HPより引用

電子カルテは2001年から運用が始まり、段々と使用率が上昇していますが、当初の目標だった400床以上の病院の6割での使用には至っていません
電子カルテはとても便利ですが大きな問題がいくつかあります。

  • 使っている電子カルテのソフトが違うと病院を移る度にその操作を覚えないといけません。
    患者さんを診るより先に電子カルテの使い方を覚えないと働けないので、大変です。紙カルテ時代なら、勤務開始日から診療ができましたが、今は勤務開始前に、電子カルテ操作を覚えないと医療ができません。
  • 自分でカルテを書くのに使った登録辞書、医学辞書が引き継げません。
    これは結構悲しいです。病院を移ると数年かけて作った自分なりに工夫した辞書が使えないので不便です。
  • 病院間どうしでのデータのやりとりがオンラインでは、できません。
    つまり患者さんのデータのやりとりは未だにデータを印刷して行います。

ちなみにフィンランドの電子カルテネットワークは富士通製で、フィンランド国内で病気になって、かかりつけ医以外に受診しても、それまでの病歴、薬歴、検査歴などがすぐにわかるようになっています。いい加減な治療、いい加減な病歴記載をしていると他の医師に解ってしまいます。それもある意味、良いことだと思います。仲間同士の評価ができます。

それはともかく、日本の電子カルテシステムの将来を考える時期になっていると思いますが、電子カルテを作っている会社はたくさんあり、なかなか前に進まないでしょう。
今回は、電子カルテ入力に必要なスキル、あれば便利なソフトなどをご紹介しようと思います。最初に紹介するのはタッチタイピングです。

「寝ころびながらでも、一週間でタッチタイプができるようになる」

10数年前に勤務していた病院で電子カルテが導入されました。当時、論文を書くのにワープロ(ソフト)を使うようになり、キーボードと画面を何回も見ながら、指でパチパチとゆっくり入力していました。雨だれ式タイピングでした。同僚だった麻酔科のI先生は両手でキーボードを見ずにパソコンの画面だけを見て素早く、タイピングしていました。タッチタイピングをしていたのです。それを見て自分もあのように入力したいと思っていました。映画「ローマの休日」で記者役をしていたグレゴリー・ペックがタッチタイピングをしているのを見て、あれくらい早くキーボードが打てればいいなあと思ったりもしていました。

そんなことを考えていた時に、たまたま、当時東京大学医学部付属病院麻酔科の諏訪邦夫先生が書いた「キーボード革命―情報電子化時代への基本技術(中公新書)」を読み、タッチタイピングの重要性やタッチタイピングの方法論を学びました。
諏訪先生は将来、キーボードでカルテを打つことが普通になる、論文を書くのも同様である、ゆえにタッチタイピングを覚える必要があると繰り返し説いていました。この諏訪先生の本と、もう一冊タッチタイピングの教則本を購入して練習しました。後者のタッチタイピングの教則本はあまりに素晴らしい本だったので、皆に勧めたり、貸したりしてるうちにどこかに行ってしまいました。書名も著者名もわかりません。確か
「寝ころびながらでも、一週間でタッチタイプができるようになる」
というような題名の本でした。タッチタイピングは寝ころびながらあるいは風呂に入りながらでも学べることがこの本でわかりました。キーボードを見ないでの練習が半分、実際のキーボードでの練習が半分というような方法が書いてありました。簡単にその方法を紹介しましょう。

  • QWERTYキーボードを使う。
    通常のキーボードです。左上がQWERTY配列です。
  • QWERTYキーボードのキーの配列を覚える。
  • キーの配列を覚えるには、声に出して覚える事が必要、キーボードにある場所を頭に思い浮かべながら、声に出して覚える。
    これは寝転びながらでも、お風呂に入ってもできますね。周りに人がいると困りますが…

    左上:QWERT (キュー ダブリュー イー アール ティー)
    右上:POIUY(ピー オー アイ ユー ワイ)
    左中段:ASDFG (エー エス ディー エフ ジー)
    右中段:; LKJH (セミコロン エル ケー ジェイ エイチ)
    左下段:ZXCVB (ゼット エックス シー ブイ ビー)
    右下段:/.,MN(ダイアゴナル ピリオド カンマ エム エヌ)

    これを数日唱えていたら、たしかに覚えてしまいました。
  • 覚えたら実際にキーボードを操作する。ローマ字入力を覚える。先ず、母音を覚え、次に子音を覚える。
    最初はAIUEOを打てるようにする。もちろん、タッチタイピングで入力する。次にKA KI KU KE KO SA SI SU SE SO、、、と打ってみましょう。

そういう方法論でした。
たしかにキーボードの位置を覚え、AIUEOを打てるようになると、段々と打てるようになりました。今なら、タッチタイピング練習ソフトがたくさんあるので、もっと早く覚えることができるかもしれませんが当時、そんな便利なソフトはありませんでした。
しかし、上述の本の記述通りに練習したら、本当に一週間程度で、タッチタイピングができるようになりました。やってはみるモノですね。これができるとキーボードを見ながらポツポツと打つ雨だれ式タイピングが不要なります。首の疲れが格段に減りました。

心臓手術には拡大鏡が必要

話は変わりますが、心臓手術には拡大鏡が必要です。拡大鏡は焦点深度が決まっているので、首をあまり動かすことができません。ですから、手術が終わると首が痛くなります。雨だれ式タイピングだと、カルテを書くのに目をPCの画面とキーボードと何回も行き来させる必要があり、首が痛くなります。それが無くなり、首が格段に楽になりました。患者さんの顔を見ながら、カルテを書くこと(打つこと)もできます。タッチタイピングができるようになり、カルテを打ち始めた当時は患者さんが驚いてくれました。

諏訪先生が説くようにタッチタイピングを覚えると良いことばかりでした。というわけで、電子カルテ入力に限らず、タッチタイピングを覚えましょう。一旦覚えると、何時までも使えます。デジタル時代に必須のスキルだと思います。

ここで、余談を少しします。キーボードに慣れてくると、右手だけ、あるいは左手だけで打てる言葉があることに気づきました。

1. 右手だけで打てる言葉(右手側には母音がOとIとUの3つあるので右手だけで打てる単語の方が多いですね、多分)

  • 公共広告機構 koukyoukoukokukikou 19文字
  • 驚異の驚異 kyouinokyoui 12文字
  • 富士急行 hujikyuukou 11文字
  • 藤子不二雄 hujikohujio 11文字
  • U字工事 yuujikouji 10文字
  • 番外 飛行場の飛行機:hikoujyounohikouki 18文字

2. 左手だけで打てる言葉(左手側には母音が2つ、AとE)

  • 渡良瀬川 watarasegawa 12文字(この川のそばに住んでいたことがあります)
  • 早稲田 waseda 6文字
  • 明後日 asatte 6文字

似たようなことを考える人がいて、右手だけで打てる言葉だけをたくさん採取しています。なぜか左手だけで打てる言葉は採取していません。謎です。
右手だけで打てる言葉の一覧(ニコニコ大百科)

閑話休題、音声入力が段々と発達してもキーボードは残ると思います。そういうわけで、タッチタイピングはこれからも、大学生や社会人にとって必須の技能だと思います。

こんなソフトやこんなモノを使っています

さて、今度は電子カルテなどの文章を書くのに私が使っているソフトを紹介します。

1.「ATOK」

https://atok.com/index.html

日本語変換はATOKを用いています。医学辞書が充実していますので愛用しています。MS-IMEは自然な変換が、まだまだです。不十分です。最近はGoogle-IMEも使っていますが、使い勝手はatokに一日の長があります。

2.「Dさんの長押しIME起動2」フリーソフト

https://www.vector.co.jp/soft/winnt/util/se410793.html?ds

日本語と英語混じりの文章を書く時に、日本語入力と英語入力の切り替えには何らかのキーボード操作が必要ですが、このソフトがあると、キーの長押しでIMEのOn/Offの切り替えができます(基本的にどのキーでも大丈夫です)。
例えば「動脈瘤は英語でaneurysmと言います」と打つとき、aを打つときにaを長押しするとそれまでの日本語入力が英語入力に変わります。いちいち、別なキーを押す必要がありません。使い慣れると英語と日本語が混じった文書入力が格段に楽になります。このソフトにはおまけの機能があります。それは大文字と小文字の切り替えを、普通は「シフトキー」+「Caps Lockキー」を同時に押す必要がありますが、このソフトを使うと「Caps Lockキー」を押すだけで、大文字と小文字の切り替えができるような設定ができます。これだけでもかなり便利です。

3.「Clibor(クリボー)」フリーソフト

https://freesoft-100.com/review/clibor.php

これはコピーペーストを多用する文章の入力、及び定型文の入力が多い時に威力を発揮します。

  • コピーは10000まで登録されます(そんなに使いませんが、、)。
  • 定型文も多数登録できます。

文章を書いていて、多数のコピーペーストが必要な時、このソフトがあると必要コピー箇所を複数コピーしておいて後から必要に応じてペーストができます。実に便利です。このソフトには「FIFOモード」というのが、あり、FIFOモード状態で文章をいくつかコピーして次に何度かペーストするとFIFO状態でコピーした文章が連続してペーストされます。解りづらいですね。実際に使ってみてください。この機能を使った時、大げさに言えば、感動しました。

4.「紙copi」

https://www.kamilabo.jp/

思いついたことをメモしたり、ウェブページなどからの取り込みが簡単にできます。無料のlite版と有料版があります。まずは無料版で試してみると良いですね。
「紙copi」 は後述の「Dropbox」と連動することができます。自分で使っているパソコンに「紙copi」と「Dropbox」があれば簡単に連動できます。Aというパソコンで「紙copi」で作った文章がBのパソコンでも出てきます。リアルタイムにAとBのパソコン上の紙copiでの文章が変わっていく様を見ていると時代は変わったと思います。良い時代です。

5.「captio」

iPhone、iPadで使えるアプリです。これは思いついたこと、やらなければならないことをiPhoneに入力すると「自分にメールを送ってくれる」のです。音声入力もできるので例えば「○○さんにに電話」「△△さんにメール」と入力すればその内容が登録した(自分のメールアドレス)に送られます。メモ帳が無くても、片言隻語を入力しておけば、自分にはわかりますね。とても重宝します。その場で撮った写真も、以前撮った写真も送れます。とても便利なアプリです。

6.「Dropbox」

これはソフトではありません。オンラインストレージサービスです。書いた文書、撮った写真、音楽などをDropboxに保存しておくと、インターネットがつながる環境にあれば、どこでも自分の「Dropbox」の内容を見ることができます。これは便利です。なお、スマホと連動すれば、紙データや写真をPDF、pngにする機能があります。写真と違い、その紙データ、写真データをスキャンすると自動で切り取ってPDF、pngファイルにして「Dropbox」内の指定したファイルに保存できます。とても便利です。

7.「VoiceTra(ボイストラ)」

https://voicetra.nict.go.jp/

翻訳アプリです。iPhone、Android両方で使えます。
音声入力できる言語:17
言語翻訳できる言語:27
言語音声出力できる言語:14言語
と多機能です。実際に結構使えます。医療系の用語もかなり高度な言葉も翻訳できます。外国旅行での日常会話なら充分使えると思います。音声でもテキストでも入力ができて、翻訳もできます。

8.「グーグル翻訳」

最近、スマホでもアプリとして使えるようになりました。音声、テキスト入力はもちろん、カメラで撮影した言葉も翻訳できます。外国に行って食事をする際、外国語で書かれたメニューを写真に撮れば翻訳できるそうです(まだ試していません)。つくづく、便利な時代になったと思います。

番外1:キーボード

タイピングに必要なのは、良いキーボードです。パソコンを使い始めた時は、パソコン付属のキーボードを使っていました。それで満足していました。しかし、ある病院で放射線科の先生が全員、Realforceというキーボードを使って画像所見を入力していました。何故、このRealforceを皆で使っているかと伺ったら、「打ちやすい」「手の疲れが違う」とのことでした。試し打ちをさせて頂いたら、かなり打ちやすいです。
インターネットで検索するとこのRealforceキーボードはキーボードの中で圧倒的な高評価を得ていることが解り、10年以上前に購入して今も、毎日使っています。高価ですが、10年以上、使えます。腱鞘炎にもなりづらいです。是非、一度試してみて下さい。普通のキーボードと全く違います(REALFORCE:http://www.realforce.co.jp/products/index_office.html)。

写真:東プレ REALFORCE 108UBK / 変荷重キーボード/静電容量無接点 / 108キー / USB SJ08B0

私が使っている英字だけの刻印があるシンプルなテンキー付きのキーボードです。これで一日ほぼ、カルテ記載だけで約5000文字を打ちます。
シンプルで使いやすいです。WindowsでもMacintoshでも使えるキーボードが出ています。昔は、筆記用具が大切でした。文章を書く人は、万年筆、鉛筆、ボールペンなどにこだわる方も多かったと思います。キーボード入力をするなら自分の好みのキーボードを見つけるべきだと思います。ここに挙げた「Realforce」以外にも多くのキーボードがあります。自分にあったキーボードを探す時代だと思っています。なお、ドイツ語入力用キーボード、フランス語入力用キーボード、アラビア文字入力用キーボードを見た事があります。様々なキーボードを集めてキーボード博物館を作って展示してくれると嬉しいのですが。。

番外2:耳栓

写真:3M 耳栓 E-A-R プッシュインス ひもなし 318-4000

うるさいと仕事ができませんが、これがあると静かな環境をすぐに作れます。
3M 耳栓 E-A-R プッシュインス ひもなし 318-4000

この耳栓は -30dbです。例えば、電車内はだいたい70dbくらいの騒音ですが、これを使うと40dbくらいに騒音が軽減されます。山小屋での睡眠にも必須です。隣の方がいびきをかくと眠れませんが、これがあると眠れます。

以上、今回はこんなソフトやこんなモノを使っているよという紹介です。

注1:タッチタイピングとは

キーボードを見ずにキーを打ってパソコンに正しく入力できる技術のことです。
以前は「ブラインドタッチ」という和製英語を使っていました。現在は「タッチタイピング(Touch Typing)」と言うことが一般的になっています。タッチタイピングとは逆に、キーを見ながら、1つずつキーを打つ方法は「Hunt-and-peck Typing(雨だれ式タイピング)」といいます。Hunt=狩る peck=つつくです。それがなぜ雨だれ式タイピングを意味するようになったかは不明です。

注2:

ローマ字入力よりかな漢字入力の方が本来日本語の入力方法だと思いますが、日本語と英語を使う必要がある方はローマ字入力を覚えると便利です。

注3:

IME=input method editor、キーボードの組み合わせで英数、日本語、中国語etc.が入力できるようになります。

来年も皆様にとって良い年であることを祈念します。終。

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング1階 プラザ 111 内
TEL:03-6779-8181
URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/

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