望月吉彦先生
更新日:2016/10/03
タバコについてあまり知られてはいないけれど、重要な情報をお伝えします。
2020年東京オリンピックでの禁煙が話題になっています。それに関することです。本来、話題になるのがおかしい話なのです。
なお、本稿の要旨は屋内での受動喫煙防止を訴えることを旨としています。日本国から、タバコを追放せよとか、屋外で他者のいない場所での喫煙までも禁止しようとか、そういうことを言っているのでは無いことを予め、申し添えます。
日本国は“たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約:WHO Framework Convention on Tobacco Control、略称FCTC”を批准しています。世界172ヵ国が批准しています。
日本も2004年3月9日、この条約に署名し、同年5月19日国会の承認を得ています。つまり、批准しているのです(注:批准とは署名をした条約の内容について国家が最終確認を行い、署名した条約に拘束されることについて同意を与えることです。国会の承認を得るとはそういう深い意味があるのです)。
対外条約に署名した国は署名した条約に反しないよう、国内法を改正して、法律を整備する義務があります。それが「世界標準」です。しかし、タバコに関する限り、日本は「異端児」です。国内法を整備していません。各国と比べると、その異常さがよく解ります。
下図は厚労省のホームページに掲載されている各国の「公的場所での喫煙規制事情」です。日本だけ特異であることがよく解ります。日本は飛行機以外、法的規制がありません。あまりにも他国とかけ離れています。
表: 主要国の受動喫煙防止法の施行状況(2012年時点)
「進んでいる世界の受動喫煙対策」e-ヘルスネット 情報提供(厚生労働省)
※ここを見る(クリックする)と詳しい説明とこの表の詳細がわかります
オリンピック開催都市には受動喫煙防止法(条例)が必須です。レストラン、バー、移動手段(交通機関)を含む完全禁煙が求められています。IOCは1988年よりオリンピック大会及び開催都市での禁煙方針をつらぬいています。日本でも、一時議論されましたが、いつの間にか沙汰止みになっています。ブラジルでは全土が、屋内全面禁煙です。平昌オリンピックを開催する韓国も、北京オリンピックを開催した中国も、ソチオリンピックを開催したロシアも同様です。日本だけが、FCTCを無視した格好になっています。2020年東京オリンピックまでには、FCTCに関わる国内法をしっかりと整備して、対策をしないと世界中の物笑いの種になります。
FCTC第8条には、「(条約の)締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所および適当な場合には他の公共の場所におけるタバコの煙にさらされることからの保護を定める効果的な措置を講ずる。」とあります。
FCTCを批准しているなら、諸外国と同様、法の整備が必要です。タバコ問題は、さまざまな議論がありますが、単純な話なのです。日本国が署名、承認、批准したFCTCを遵守するように法改正をすれば良いだけなのです。このまま、FCTCを無視して、屋内全面禁煙を認めないなら、国としてFCTCの枠組みから外れるように宣言すべきです。今のままなら、「約束を守らない、守れない国」の烙印を押されてしまいます。及び、このままだとFCTCを遵守しないのは「憲法違反」です。日本国憲法第98条 第二項にはこうあります。「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」当たり前ですが、締結した条約を無視するのはこの項にも違反していることになります。
屋内全面禁煙の健康に及ぼす影響に関しては、さまざまな研究報告があります。有名なのはアメリカモンタナ州ヘレナ町での研究です。
同町では2002年、屋内全面禁煙法が施行され、劇的に心筋梗塞での入院が減りました。半減したのです。ここまでは普通の話です。
しかし、タバコ会社から訴訟がおこされ、屋内全面禁煙が解除されます。それが2003年のことです。そうしたら、一気に心筋梗塞での入院患者数が、増えて元の木阿弥状態になってしまいました。
禁煙を解除したら悪化する報告は、私が探してもこれしか見つけられませんでした。禁煙を解除するのが極めて稀だからだと思っています。
とにかく、タバコが原因で生じる病気にかかりたくなかったら、禁煙しましょう。
望月吉彦先生
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