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骨粗しょう症と運動の効果

骨粗しょう症(こつそしょうしょう)という病名を聞いたことがありますか。高齢の女性に多い病気で、世界保健機関(WHO)は骨粗しょう症について「骨の量が減るとともに微細な構造に異常を来し、骨が脆弱となり骨折の危険度が増す病気」と定義しています。この病気の一番の問題は、健康寿命短縮の要因の1つとされている骨折を起こしやすくなることです。ここでは身体バランス、筋力、骨密度に対する運動の効果についての比較的新しい研究を紹介します。

独自の装置を使って高齢女性の腹筋力と転倒リスクの関係を研究

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骨粗しょう症(こつそしょうしょう)という病名を聞いたことがありますか。高齢の女性に多い病気で、世界保健機関(WHO)は骨粗しょう症について「骨の量が減るとともに微細な構造に異常を来し、骨が脆弱となり骨折の危険度が増す病気」と定義しています*1。そして、骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年版*2では、有病率を2005年の人口に当てはめて計算した場合、日本の骨粗しょう症患者数は男性300万人、女性980万人と推定されるとしています。この病気の一番の問題は、健康寿命短縮の要因の1つとされている骨折を起こしやすくなることです*3。そして、骨折を予防するためには転倒を防ぐための身体バランスの改善と筋力アップ、仮に転倒しても骨折しないだけの骨密度を保持することが重要とされ、そのための有効な方法の1つに運動が挙げられています。

日本で行われた研究では、大きな血圧計のような装置でカフを胴に捲いて測った腹筋力と転倒リスクとの関係が検討されています。
研究に参加したのは慢性腰痛、膝/股関節炎、骨粗しょう症の治療中の70代から80代の独立歩行が可能な女性38人です。腰痛が3ヵ月以上続いている21人を腰痛グループ、残りの17人を非腰痛グループとして腹筋力を比べています。
その結果として、腰痛グループの腹筋力は非腰痛グループよりも明らかに弱いことがわかりました。また、腹筋力の弱さが転倒リスクを高める要因であることも報告されました*4

簡単な運動でも身体バランスが改善し筋力がアップ

では、本当に運動でバランス力や筋力がアップするのでしょうか。
スペインで行われた閉経後骨粗しょう症患者さん65人を対象とした研究では、6ヵ月間の基本的な軽い運動(ウォームアップ10分、バランス運動20分、筋力運動20分、クールダウン10分)を行うグループと、特別な運動プログラムを行うことなく通常通りに過ごすグループにおけるバランス力と筋力の変化が比較されました。
6ヵ月後の両グループの静的なバランス力、動的なバランス力、上下肢筋力の変化から、基本的な軽い運動であってもこれらの改善に繋がることが明らかになったと報告されています*5

強度の高い運動で骨密度をアップ

運動で骨密度を高められないかという研究も行われています。
研究に参加したのは閉経後1-5年の骨減少症または骨粗しょう症患者さん54人(平均年齢54歳)です。参加者は、27人ずつ、強度の高い運動を行うグループと比較的低強度の運動を行うグループに分けられました。強度の高い運動は、エアロビックダンス、トレッドミル、ジャンプ、腕立て伏せ、スクワット、ダンベル運動などで構成され、一方の低強度の運動は歩行15分とストレッチ20分でクールダウン10分という内容です。当初の計画ではそれぞれの運動プログラムを18ヵ月続け、2つのグループの結果を比較することになっていたのですが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのために13ヵ月で打ち切ることになったそうです。それでも、高強度運動グループの腰椎の骨密度は低強度運動グループよりも明らかに高くなっていたことがわかりました*6。この研究では筋肉の伸展度や力についても検討していて、やはり高強度の運動を行ったグループの方が臀部や下肢の伸展度が高く、ジャンプする高さで見た筋力も低強度運動グループに比べて明らかに優れていたと報告されています。
この研究で行われた高強度の運動を実行するのは大変そうですし、転んでも骨折しないことを示したわけではありませんが、骨密度や筋力を上げる効果は期待できそうです。

板倉先生ワンポイントアドバイス

重力のもとで体を動かすことが骨を丈夫にするために大切だということは、無重力下で宇宙飛行士が生活し、地上に帰還してきた時は、骨も筋肉も弱くなってくることで良く分かります。骨を丈夫にして、ふらつきや転倒を予防するためには運動を欠かすことはできません。運動に合わせて骨や筋肉に必要な栄養素を摂取することも忘れてはいけません。

■参考文献

公開日:2021/05/26
監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生