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女性の肥満解消に知っておきたい運動と食事の関わり

体重が増えた、着ていた服がきつくなってきた、医師から太りすぎを指摘されたなど、特に、中年以降になると肥満が気になる方が多くなると思います。食事を制限して運動をすれば状況は改善するとわかっていても、実行するのはなかなか大変です。そこで、有効性についての認識を高めれば事態は好転すると思い、ここでは、肥満解消に運動と食事がどのように関わるか、その効果について、女性にフォーカスした研究を紹介します。

トレッドミルやインドアサイクリングを使った運動の効果

写真:トレッドミルやインドアサイクリングを使った運動

屋外での運動は意欲だけではなかなか実行できません。雨が降ったり、気温が低かったりすると、「今日は止めておこう」ということになりがちです。しかし、室内で運動できるとなると、このような言い訳は通用しません。

南アフリカの諸国では、急激な都市化に伴うライフスタイルの変化によって肥満や体重増に関係する病気が増え、社会問題化しているそうです。特に、女性への影響が大きいことから、肥満解消の方法が検討されています。
Witwatersrand大学(南アフリカ)の研究グループは、職員を対象に学内のジムでトレッドミルを使ってウォーキングするグループと普通の生活を続けるグループを比較し、運動の効果を調べました。トレッドミルを使ったウォーキングは週3回、1回あたり30分で、これを12週間続けてもらいました。その結果、運動を行ったグループでは体重と腹囲が減り、血圧が下がったのに対して、普通に生活をしていたグループは体重も腹囲も増え、血圧も上がってしまったと報告されています*1

ポーランドでは、40~60歳の肥満女性を対象にインドアサイクリングの効果が研究されました。週に3回、55分間のインドアサイクリングを3ヵ月間続けたところ、体重が減っただけでなく、善玉コレステロールと筋肉量が増え、心臓病のリスクが低下することがわかったと報告されています*2

やはり運動+ダイエット(食事制限)は肥満解消の王道

世の中にはおいしいものがたくさんあってダイエット(食事制限)は大変ですが、やはり運動と組み合わせることでその効果がぐっと上がることが報告されています。
オランダでは閉経後の肥満女性をダイエット(1,200~2,000kcal/日)のみのグループ、ダイエット+運動(45分間の有酸素運動を週5回)のグループ、何もしないグループに分けて、皮下脂肪と内臓脂肪の変化を比べています。その結果、ダイエットのみのグループとダイエット+運動のグループは、何もしないグループに比べて体重が6~7%減り、皮下脂肪も内臓脂肪も減っていました。また、ダイエット+運動のグループは、ダイエットのみのグループに比べて内臓脂肪の減り方に差はありませんでしたが、皮下脂肪が大きく減ることがわかったとのことです*3

イスラエルでは、中年の肥満女性を運動+ダイエット、ダイエットのみ、運動のみ、何もしないの4つのグループに分けて、8週間にわたるそれぞれの減量プログラムに参加してもらい、その効果を比較する研究が行われました。その結果、運動+ダイエット(1,000~1,500kcal/日)を行ったグループが、体重だけでなく生理機能や心理的な改善度について最良の結果を示したと報告されています*4

米国で行われた研究では、閉経後肥満女性を対象に、体重10%減目標のダイエット、週225分間の中~高強度の有酸素運動、これらの組み合わせ、ライフスタイル変更なしの4つのプログラムが比較されました。減量効果はダイエット+運動のグループが最も高かったのですが、運動だけでは過食やストレス解消のための食事が減らせないこともわかりました*5。この研究グループは、閉経後肥満女性の摂食行動の改善にはダイエットが効果的と結論づけています。

板倉先生ワンポイントアドバイス

肥満は糖尿病や高血圧、癌などの合併症をひきおこすリスクが高くなるので、さまざまな減量法が研究されています。食事制限をして摂取エネルギー量を減らせば体重は下がりますが、栄養素の不足で健康障害を招くおそれがあります。体力を高め筋肉を減らさないためには運動が大切です。栄養に配慮しながら、日常的に運動を続けることが勧められます。

■参考文献

  • *1:Gradidge PJL, et al. Afri Health Sci 2018; 18(4): 917-921
  • *2:Ratajczak M, et al. Int J Environ Res Public Health 2020; 17(23): 8718
  • *3:Van Gemert WA, et al. BMC Public Health 2019; 19: 174
  • *4:Joseph G, et al. Women's health (London, England). 2020; 16; 1745506520932372
  • *5:Mason C, et al. Int J Behav Nutr Phys Act 2019; 16(1): 113
公開日:2021/03/31
監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生